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タックスヘイブン対策税制
- 特定設備等の特別償却
- 中小企業者の機械等の特別償却
- 新築貸家住宅等の割増償却
- 交際費等の課税の特例
- 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
- 土地の譲渡等がある場合の特別税率
- 収用等の場合の課税の特例
- 特定資産の買換えの場合等の課税の特例
- 準備金
- 税額控除
- 新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例
- 移転価格税制
- タックスヘイブン対策税制(9件)
特定外国子会社について、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないとして、租税特別措置法第66条の6第1項の規定が適用されるとした事例
裁決事例集 No.32 - 292頁
請求人の香港にある特定外国子会社(租税特別措置法(昭和60年法律第7号による改正前のもの)第66条の6第1項に規定する特定外国子会社をいう。)は、業務執行に関する重要な意思決定機関である取締役会は、すべて請求人の本店所在地である○○(国内)で行われていること、自ら取引の当事者となり貿易業を営んでいるにもかかわらず、取引の基本的事項は請求人により決定され、請求人から指示された業務を行っているにすぎないこと等からすると、貿易取引の支配、管理及び運営を香港において自ら行っているものとは到底認められないから、同項に規定する課税対象留保金額に相当する金額を請求人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入した原処分は相当である。
昭和61年7月3日裁決
請求人のパナマ子会社は特定外国子会社等であるから、同社の損失を直接請求人の所得金額の計算上合算して申告するのは相当でないとした事例
- 請求人は、法人税法第11条《実質所得者課税の原則》によりパナマ子会社の損失を請求人の所得金額に合算したものであり、また、「船舶所有権等に関する契約公正証書」によれば当該外航船舶の所有権は請求人にあると認められることからも、本件には租税特別措置法(以下「措置法」という。)第66の6条《内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入》は適用されないと主張する。
しかしながら、船舶は子会社の所有であること、また、法人税法第11条と措置法第66の6とはそれぞれ独立した規定として存在することが意図されているといえ、両者の適用関係が競合する場合には、まず、法人税法の特別法である措置法の規定が適用されることから、請求人の主張には理由がない。 - 請求人は、仮に、措置法第66の6の規定が適用されるとしても、パナマ子会社は株式を発行しておらず、同法第2項第1号の規定によって「発行済株式等」の保有割合を基準に判定される外国関係会社ひいては特定外国子会社等にも当たらないので、この点からも請求人にはタックスヘイブン対策税制の適用はないと主張する。
しかしながら、パナマ会社法は、発起人による「株式を取得することの合意」によって法人が設立でき、株式の発行自体が設立要件となっていないことからすると、パナマ法人が請求人の特定外国子会社等であるというためには、請求人が当該取得に合意した株式を所有していることが要件であるところ、[1]パナマ法人の設立時の役員が請求人の役員であること、[2]請求人が同社設立時の商業登記簿謄本の写しを保管していること、[3]請求人は、同社の発起人からなんらの権利を主張されることなく、支障なく業務運営を遂行していること及び[4]パナマ会社法においては株主が会社運営に直接関与する場合があることからすれば、発起人と請求人との間では、発行予定株式等の全部の譲渡に関する契約ないしこれに類する契約が黙示的にせよ締結されたものと推認されるから、このことによって請求人はパナマ法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を承継したものと認めるのが相当であることから、請求人の主張には理由がない。 - 請求人は、原処分は従来の法令の解釈を変更して突如としてなされ、一貫性を欠く恣意的な処分であるとし、また、請求人に対して「タックスヘイブン対策税制により申告すべし」との原処分庁の指導がなかったことから、信義誠実の原則に反すると主張する。
しかしながら、請求人がパナマ子会社の損失を所得金額に合算して申告したのは、請求人自身の独自の法令解釈により判断した結果であり、また、原処分庁は、請求人に対して「パナマ子会社についてタックスヘイブン対策税制が適用されない」という公式見解を示したことはないことから、信義誠実の原則が適用される余地はなく、請求人の主張には理由がない。
平成13年12月21日裁決
租税特別措置法第66条の6に規定する特定外国子会社等の各事業年度の課税対象留保金額の計算上、特定外国子会社等が翌事業年度に行った中間配当の額を、当該各事業年度の未処分所得の金額から控除することはできないとした事例
特定外国子会社等の各事業年度の課税対象留保金額の計算上、未処分所得の金額から控除される利益の配当等の額に当たるか否かは、当該各事業年度に係る利益の配当等の額であるか否かによるのであり、特定外国子会社等が行う利益の配当等の額が、どの事業年度の繰越利益から構成されるかによるのではない。
したがって、特定外国子会社等が翌事業年度に行った中間配当の額を、当該各事業年度の未処分所得の金額から控除することはできない。
平成15年3月5日裁決
海外のF島に本店を置くG社が、0%から30%までの間の税率を選択できる制度を利用して26%の税率を選択して納付したF島の法人所得税については、法人税法第69条第1項に規定する外国法人税に該当せず、G社は租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当するとした事例
法人税法第69条第1項に規定する外国法人税の意義に照らして、G社が納付したF島の法人所得税(以下「本件法人所得税」という。)について審理したところ、次のから
のとおり、本件法人所得税は当該外国法人税に該当せず、G社は租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当すると解される。
G社は、免税を選択すれば納付しなくてもよいこととなるものを、あえてF島当局に26%の税率の適用申請をして納付したということができ、本件法人所得税は極めて任意性の強い支出であり、また、発生の避けられない国際的二重課税の排除を目的とした外国税額控除制度の予定する外国法人税とはいえないものというべきである。
本件法人所得税は、税率を納税者側で選択してF島当局に申請して承認を受けるものであり、同一の所得に対して同一の税額が算出されるものではないため、納税者間の画一性(公平性)を維持するための強行性を維持するものであるとはいえず、我が国の法人税に相当する税の範疇を逸脱したものと認められる。
本件法人所得税の納付の選択には、タックスヘイブン対策税制の適用(課税)回避以外に合理的理由がないと認められ、タックスへイブン対策税制の適用(課税)回避に資する本件法人所得税は我が国の租税本来の概念とは大きく乖離したものといえ、また、当該F島の税制はタックスへイブン対策税制の適用(課税)の回避を支援する国際的にも有害な税制であるとされていることからみても、このようなものを我が国の法人税に相当する税として取り扱うことは、税負担を著しく害するものとして許されないというべきである。
平成18年8月14日裁決
「○○」取引を行う特定外国子会社等について、その主たる事業は「卸売業」に当たらず、その事業を主として本店所在地国において行っている場合にも該当しないとした事例
請求人は、同人の特定外国子会社等に該当するL区の子会社が行う事業(以下「本件事業」という。)は、自らは製造を行わないで、自己の所有に属する原材料をK国の企業に支給して製品を造らせ、これを自己の名称で販売するものであり、日本標準産業分類上卸売業に分類される「製造問屋」であるから、租税特別措置法第66条の6第3項第1号に規定する「卸売業」に該当する旨主張する。
しかしながら、当該製品の製造に係る費用を同子会社が負担していることなどからすると、同子会社は、自己の計算において原材料を仕入れ、加工等をして製品を完成させ、最終消費者以外の事業者に販売する事業を行っていたと認められるところ、同号に規定する「卸売業」とは、有体的商品を仕入れ、物理的又は化学的な変化を加えずに、最終消費者以外の事業者に販売する事業をいうから、本件事業は、同号に規定する卸売業には該当しないと認められる。また、外国子会社合算税制の適用除外要件を適用するために行う事業区分の判定は、租税特別措置法第66条の6第3項各号の立法趣旨・目的等も勘案して判定すべきものであり、必ずしも日本標準産業分類の分類どおりに判定するものではないと解される上、その事業内容の実態に照らしても、本件事業は同項第1号に規定する「卸売業」には該当しないと認められるから、請求人の主張は採用できない。
平成19年10月16日裁決
外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準の適用に当たり、特定外国子会社等はその事業を主として本店所在地国で行っていると認定した事例
原処分庁は、請求人がL国M区に有する子会社J社について、その主たる事業は製造業であると認められるところ、L国P市に所在するL国工場で主として製造行為を行っており、その事業を主として本店の所在地であるM区において行っているとはいえないから、外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準を満たさないと主張する。
しかしながら、J社は、M区の下請業者に委託して原材料を半製品に加工製造させ、その半製品をL国工場において組立加工していることから、J社は、M区においても製造行為を行っていると認められる。またM区における半製品の製造費用の額が製造費用の総額の過半を占めていることからすると、J社は、製造行為を主としてM区で行っていると認められる。
そうすると、J社については、外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準を満たすことになり、他の適用除外要件も満たしていることから、外国子会社合算税制は適用されない。
平成20年2月20日裁決
請求人の各E国子会社は、個々の法人としての実体を有していることから、当該各子会社の損益を請求人の所得金額と合算して申告することは認められず、また、当該各子会社は、租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当するから、同項の適用があるとした事例
請求人は、各E国子会社を設立した目的は租税回避目的ではないこと、
各E国子会社は実体を有さず単なる名義人であり請求人がその損益を請求人の損益と合算経理して申告しており各E国子会社には未処分所得はないこと、
租税特別措置法第66条の6の規定は合算経理を禁じたものではなく法人税法第11条の規定により各E国子会社の実質所得者は請求人であると自認して合算申告していることを否定する理由はないこと、
租税特別措置法第66条の6の規定が法人税法第11条の特別法として優先的に適用される関係にはないこと等から、租税特別措置法第66条の6の規定は適用されない旨主張する。
しかしながら、各E国子会社は、契約上の地位を有し、自ら船舶を所有して定期傭船契約を結び収益を得るなど個々の法人としての実体を有していると認められるので、法人税法第11条の規定を適用して当該各会社の損益を請求人の所得金額と合算して申告することは認められず、また、当該外国法人は租税特別措置法第66条の6に規定する特定外国子会社等の所定の要件を満たすことから、原処分は適法である。
また、請求人は、確定申告書に添付した「減価償却費明細書」に誤りがあったとして減価償却費の総額は変更せずに個々の船舶の償却費を加減算した訂正後の「減価償却費明細書」を提出し、特定外国子会社等の課税対象留保金額の算定に当たっては当該訂正後の「減価償却費明細書」に基づくべきである旨主張する。
しかしながら、その後の事業年度の確定申告書に添付された「減価償却費明細書」をみると、確定申告書に添付された「減価償却費明細書」との連続性があること、さらに、請求人は租税特別措置法第66条の6の規定を適用して更正処分が行われることを前提に個々の船舶の償却費の訂正を求めていることからしても、確定申告書に添付された「減価償却費明細書」の記載内容には誤りはなかったものと認められ、各船舶の減価償却費の計算は確定申告書に添付された「減価償却明細書」に記載された金額に基づき行われることとなる。
平成20年2月6日裁決
租税特別措置法第66条の6第1項の規定による課税の特例は租税回避行為がある場合に限定して適用されるべきであるということはできないとした事例
《要旨》
請求人は、租税特別措置法第66条の6《内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入》第1項の規定による課税の特例(外国子会社合算税制)は、内国法人に租税回避行為がある場合にのみ適用すべきであり、外国子会社合算税制の適用により我が国の国際競争力を弱めるような事態が生じる場合には適用されない旨主張する。
しかしながら、外国子会社合算税制は、租税特別措置法第66条の6第1項において外国子会社合算税制が適用される特定外国子会社等を定義した上で、同条第4項において適用除外要件を定め、特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域で事業活動を行うことについて十分な経済的合理性がある場合には、同条第1項の規定を適用しないとして、課税要件を具体的かつ明確に定め、その適用範囲を国際的な租税回避行為の事案に限定するとともに、法の適正な執行が担保されるようにした規定であると解され、同条がそれ以上に、「租税回避行為がある場合」といった要件まで要求していないことは、条文の文言上、明らかであるから、外国子会社合算税制は、租税回避行為がある場合に限定して適用されるべきであるということはできない。
《参照条文等》
租税特別措置法第66条の6(平成21年法律第13号による改正前のもの(適用事業年度によっては、平成18年法律第10号、平成19年法律第6号、平成20年法律第23号による各改正前となる。))
《参考判決・裁決》
平成19年10月16日裁決(裁決事例集№74・226頁)
平成20年2月20日裁決(裁決事例集№75・415頁)
外国子会社合算税制の適用において法人税法第12条第1項の規定が適用されるとした事例(
令和2年1月1日から令和2年12月31日までの連結事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
令和2年1月1日から令和2年12月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・
一部取消し)
《ポイント》
本事例は、外国私法により成立した法律関係が信託に該当し、外国子会社合算税制の適用において法人税法第12条第1項の規定が適用されることから、特定外国関係会社の基準所得金額の計算上、信託財産たる株式に係る配当に相当する金額は、子会社から受ける配当等の額として控除されると判断したものである。
《要旨》
原処分庁は、オランダ王国で設立された財団が株式(本件株式)と引き換えにデポジタリー・レシートを発行する契約(本件発行契約)により成立した法律関係は、法人税法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第12条《信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属》第1項に規定する信託に該当せず、また、外国子会社合算税制における基準所得金額の計算において、同項の規定は適用されないから、本件株式に係る配当(本件配当)に相当する金額は、租税特別措置法施行令(令和2年政令第207号による改正前のもの)第39条の115第1項第4号に規定する子会社から受ける配当等の額に該当せず、請求人の特定外国関係会社(本件h法人1)の基準所得金額の計算上控除することはできない旨主張する。
しかしながら、本件発行契約等における合意のうち我が国の信託法第3条《信託の方法》第1号に規定する内容に当てはまる部分については、我が国の信託法上の信託契約に相当し、本件発行契約等により成立した法律関係は、法人税法第12条第1項に規定する信託に該当するものと認められる。また、外国子会社合算税制における基準所得金額を計算する場合においても、法人税法第12条第1項本文の規定の適用により、同項本文に規定する信託の受益者が当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされると解される。したがって、本件h法人1は、同項本文の規定により、信託財産に属する資産である本件株式を有するものとみなされ、かつ、本件配当は受益者である本件h法人1の収益とみなされるから、本件h法人1の基準所得金額の計算上、本件配当に相当する金額は、租税特別措置法施行令第39条の115第1項第4号に規定する子会社から受ける配当等の額に該当し、控除される。
《参照条文等》
法人税法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第12条第1項
租税特別措置法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第68条の90第1項
租税特別措置法施行令(令和2年政令第207号による改正前のもの)第39条の115第1項第4号
信託法第2条、第3条、第4条
《参考判決・裁決》
名古屋地裁平成23年3月24日判決(訟月60巻3号655頁)