必要経費

取得費の意義、範囲

  1. 配当所得
  2. 不動産所得
  3. 事業所得
  4. 給与所得
  5. 山林所得
  6. 譲渡所得
    1. 取得費
      1. 代物弁済による場合の取得費
      2. 相続、贈与による場合の取得費
      3. 借入金利子
      4. 譲渡担保の受戻し費用
      5. 開発負担金
      6. 減価償却資産の減価相当額
      7. 弁護士費用
      8. 道路の取得費
      9. 信用取引による株式の取得価額
      10. 取得価額の認定
      11. 取得費の意義、範囲(2件)
    2. 譲渡費用
  7. 一時所得
  8. 雑所得

特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費を概算取得費とすることはできないとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)

令和6年4月22日裁決

《ポイント》
 本事例は、特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費については、当該特定口座内における当該上場株式等の受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等において当該上場株式に関する固有の計算方法により一元的に計算されることを予定しているのであって、納税者が申告するに当たり概算取得費とすることはできないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、1源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡所得の金額を申告するに当たり、租税特別措置法第37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》第1項が特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額とそれ以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額とを区分して、これらの金額を計算する旨規定したのは、特定口座創設の趣旨等からすれば、投資家の所得計算の負担を軽減するために金融商品取引業者等が計算を代行したにすぎないから、納税者が確定申告において取得費等を含めて譲渡所得の金額を再計算することができる旨、2租税特別措置法関係通達(措置法通達)37の11の3−14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》は計算代行者である金融商品取引業者等の計算等に関する定めであって、納税者が概算取得費を譲渡所得に係る取得費として譲渡所得の金額を計算することは妨げられない旨それぞれ主張する。
 しかしながら、1特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該上場株式等の特定口座への受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等が固有の計算方法により一元的に計算することが予定されており、2措置法通達37の11の3−14が、概算取得費による取得費を認める旨を定めた措置法通達37の10・37の11共−13《株式等の取得価額》を準用していないのは、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算に当たり、概算取得費を取得費とすることを認めない趣旨であると解すべきであるから、納税者が源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を申告するに当たり、概算取得費を取得費とすることはできない。

《参照条文等》
 所得税法第48条第3項
 所得税法施行令第118条第1項
 租税特別措置法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第37条の11の3第1項、第3項
 租税特別措置法施行令(令和3年政令第119号による改正前のもの)第25の10の2第1項

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請求人が売却した車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)

令和7年6月24日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人の売却した車両の価値が、その属する類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しないから、当該車両が「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとしたものである。

《要旨》
 請求人は、1売却した車両(本件車両)は、請求人が専ら観賞用に取得し、メンテナンスをせずに製造当時の状態のまま保管していたことなどから、自動車の本来の効用を果たさなかったことが客観的に明らかであること、2本件車両は、希少価値を有し、かつ、代替性のないものであること及び3本件車両のようなスーパーカーはその希少性に基づく価格がその価値として定着し、著しく高い価格で取引されることが社会通念化していることから、本件車両は、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、1車両の機能は、経年や使用によって一般的・類型的に逓減すること、2本件車両の価格は、その希少性だけでなく自動車本来の機能にも価値が置かれて形成されていることは明らかであること及び3本件車両は製造から28年程度しか経過しておらず、本件車両と同種の車両の価格推移は未だ不確定な面があることからすると、鑑賞以外の実用的な目的又は機能が想定される本件車両が、「骨とう」に類するといえる程度の長期間を経てもなお確立した高い価値を維持しているような場合に当たると解することはできず、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しないから、本件車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当する。

《参照条文等》
 所得税法第2条第1項第19号、第38条第1項及び第2項、第49条第1項
 所得税法施行令第6条、第85条第1項

《参考判決・裁決》
 東京地裁令和5年3月9日判決(訟月70巻11号1255頁)
 東京高裁令和5年11月30日判決(訟月70巻11号1223頁)

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