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借入金利子
登記名義変更の訴訟費用を支払うための借入金の利子は土地の取得費には当たらないとした事例
裁決事例集 No.9 - 14頁
既に取得した資産について、その登記名義を真正な所有権者の名義に変更するための訴訟費用を支払うために借り入れた借入金の利子は、間接的には資産の所有権を確保するための支出であっても、資産を取得するために直接要した費用ではないから、所得税法第38条に規定する資産の取得費に含めることはできない。
昭和49年12月24日裁決
土地取得後これを利用することなく譲渡した場合には、その土地の取得に要した借入金の利子及び抵当権設定費用等は当該土地の取得費に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 No.17 - 27頁
- 資産の利用を目的として資産を取得した場合におけるその資産の取得のための借入金の利子の性格は、当該資産を供した利用目的のための費用と観念するのが通常であって、その利用によって収入を得た場合においては、当該利子は、不動産所得の金額の計算上控除すべき必要経費に該当し、他方、資産を譲渡することにより値上がり益を得ることを目的として資産を取得した場合においては、資産取得のための借入金の利子のうち、譲渡の日までの部分に対応する金額は、譲渡収入を得るための通常、かつ、必要な費用と考えられ、資産の取得に要した金額に該当するものと解される。
- 資産の取得の目的は、取得者の内心に係る事柄であり、第三者がその真意を知ることは困難であること及び取得時の取得目的がその後において変更されることが少なくないことを考慮すると、資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等からみて、客観的にその目的及び目的の変更を認定するのが合理的であるから、たとえ個人がその内心においては業務の用又は居住等の用に供する目的で資産を取得した場合であっても、何らの用に供することなく譲渡した場合には、当初から値上がり益を得ることを目的として取得したものとして、取得のために要した借入金の利子は取得費に算入し、また、内心においては値上がり益を得る目的で資産を取得した場合であっても、その後において目的を変更して業務の用又は居住等の用に供した場合には、その時以後の期間に対応する借入金の利子は、業務上の必要経費又は家事費に当たると解するのが、それぞれ租税負担の合理性、衡平性の観点からみて相当である。
- 借入金の担保のための抵当権設定費用及び借入金債務返済契約の公正証書作成費用は、借入金債務に付随する費用であって借入金利子と同性質のものであるから、借入金利子が資産の取得費を構成するのと同様の理由によって資産の取得費に含まれると解するのが相当である。
昭和54年9月27日裁決
譲渡所得の計算上、資産の取得のための借入金の利子のうち、当該資産を居住のために使用開始した日の後の期間に対応する部分の金額は、資産の取得費に該当しないとした事例
居住のために使用する資産を取得するための借入金の利子のうち、その借入れの日から当該資産を居住のために使用開始する日までの期間に対応するものは、資産の取得に要した金額に該当し、当該資産を居住のために使用開始した日後当該資産を譲渡する日までの期間に対応するものは、資産の取得に要した金額に該当しないと解するのが相当である。
本件についてみると、請求人が本件物件を居住のために使用開始した日は、昭和57年4月2日であると認めるのが相当であり、本件利子のうち昭和57年4月3日以後の期間に対応する部分の金額は、日常的な生活費ないし家事費にすぎないものと解されることから、資産の取得に要した金額に該当しない。
平成6年5月13日裁決
ゴルフ会員権の平日会員権から正会員権に転換するための資金の借入金利子は、本件転換に必要な準備費用に該当するものとして、使用開始の日までの期間に対応する部分について取得費に該当するとした事例
ゴルフクラブの会員資格が平日会員から正会員に転換することは、従前の平日会員のゴルフ場の施設を利用する権利の範囲が拡大することである。
そうすると、本件転換を行うための本件追加金は、当該拡大した部分を取得するために要した費用であり、客観的価格を構成すべき取得代金として認められ、本件譲渡所得の金額の計算上控除される取得費に算入することは相当である。
したがって、本件借入れは本件追加金を支払うために行ったものであり、これに伴う本件借入金利子は、本件転換に必要な準備費用に該当するものとして、使用開始の日までの期間に対応する部分について、本件平日会員権のゴルフ場の施設を利用する権利の拡大した部分の取得費に該当するものと認められる。
本件の使用開始の日は、本件正会員権の本件追加金の払込日の翌日とみるのが相当である。
なお、本件抵当権設定費用は、本件借入れの担保提供に係るものであり、取得費に算入するのが相当であり、本件抵当権抹消費用は、本件借入れに伴う借入金を返済したことに基づく抵当権抹消登記の手続費用であるから、借入金返済後の担保資産の管理費用であると認められ、取得費に該当するとは認められない。
平成10年10月30日裁決
譲渡した土地が使用貸借により親の居宅の敷地として利用されていた場合における当該土地の所得税基本通達38ー8に定める「使用開始の日」は、両親が当該居宅に居住を開始した日であるとした事例
譲渡した土地の取得費に算入される借入金の利子は、取得目的に応じた使用又は処分がされた日までの期間に対応する借入金の利子とされているが、土地の取得目的は主観的には一応定まっていても、潜在的な他の目的を排除し難い場合が多く、かつ、当初の取得目的がその後変更されることも少なくないことを考慮すると、土地の地目、形状等に照らし、客観的にみて使用の事実があったと判断されるときに、取得目的に応じた使用があったと認めるのが相当である。請求人は、親子という生活共同体の構成員として両親が居住するための建物の建築用地として本件土地を取得したものであり、本件土地は本件家屋の敷地の用に供されていることから、本件においては、請求人の両親が本件家屋を居住の用に供した日をもって本件土地を使用開始したとするのが相当である。
平成17年7月4日裁決
賦払の契約により購入した固定資産に係る購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合に該当するとして、当該固定資産の使用開始後の期間に係る利息等相当部分は取得費に当たらないとした事例
請求人は、本件契約書に記載された譲渡代金の額(以下「本件譲渡代金の額」という。)は、区分できない一単位の譲渡対価であり、その額には利息は存在せず、所得税基本通達38―8の「購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合」に該当しないことなどを理由として、本件譲渡代金の額をすべて支払った場合には、本件譲渡代金の額の全額が本件マンションの取得費に当たる旨主張する。
しかしながら、[1]本件マンションは、即金譲渡価格が31,600,000円であると認められること、[2]本件契約書の別紙に記載されている割賦金は、本件案内書の即金譲渡価格31,600,000円、一時金3,000,000円のタイプの割賦金の額と一致することが認められること、[3]本件マンションの購入代価は、即金譲渡価格31,600,000円であると認められること、[4]本件譲渡代金の額に係る利息等相当部分は、本件譲渡代金の額のうち、購入代価31,600,000円を除いた52,911,100円であると認められることから、本件マンションの購入代価及び利息等相当部分が具体的な金額として区分されており、賦払の契約により明らかに区分されている場合に当たると認められる。したがって、本件マンションの購入代価及び利息等相当部分が具体的な金額として区分されており、賦払の契約により明らかに区分されている場合に当たると認められ、本件マンションの使用開始の日後の期間に係る利息等相当部分は取得費に当たらない。
平成18年4月7日裁決
譲渡した土地には建物が存するが、建物の使用が主な目的でないこと及び建物が建築されている部分は極めて僅かであること等から、所得税基本通達38−8の2の(1)のハの定めにより使用開始の日を判定することが相当であるとした事例
《要旨》
請求人は、土地を譲渡したことによる分離長期譲渡所得の金額の計算上、当該土地(本件各土地)の上に存する建物(本件各建物)を事業の用等に供したことはないから、所得税基本通達38−8の2《使用開始の日の判定》の(1)のロの定めにより、本件各土地の取得のための借入金(本件借入金)の利子(本件借入金利子)の全額が本件各土地の取得費に該当する旨主張し、他方、原処分庁は、本件各土地には本件各建物が存するものの、本件各土地に占める本件各建物の床面積の割合は僅かであり、所得税基本通達38−8の2の(1)のロ及びハの定めにより判定することに合理性は認められないので、本件各土地の使用開始の日がいつであるかは、資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等客観的な事実に基づき総合的に判断すべきであるところ、本件借入金の借入れの日には既に本件各土地は使用されていたのであるから、本件借入金利子は本件各土地の取得費に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件各土地は、放牧、牧草栽培を用途にしている土地であり、本件各建物の使用が主な用途であるとは認められないこと及び本件各土地の地積のうち本件各建物が建築されている部分は極めて僅かであることからすると、本件各土地は、所得税法基本通達38−8の2の(1)のハに定める建物等の施設を要しないものに該当すると認められることから、同ハの定めにより使用開始の日を判定するのが相当である。
《参照条文等》
所得税基本通達38−8、38−8の2