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相続、贈与による場合の取得費
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- 取得費
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遺産の代償分割に当たり他の相続人に支払った金額は当該代償分割によって取得した資産の取得費の額に算入できないとした事例
裁決事例集 No.15 - 37頁
相続により取得した資産は、所得税法第60条第1項の規定により相続人が引き続き所有していたものとみなされるから、当該資産について譲渡所得の金額の計算上控除される取得費は、被相続人がその資産を取得したときの購入代金及び取得に要した費用等の合計額である。
したがって、遺産分割に関する調停の結果、相続財産の分割に代え、他の共同相続人に対し債務を負担することによって相続財産を取得する代償分割の場合においても、その取得資産は相続によって取得したものにほかならないから、当該資産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、他の共同相続人に対して負担した債務をその資産の取得費に算入すべきであるとする請求人の主張には理由がない。
昭和52年12月22日裁決
遺産の代償分割に当たり他の相続人に支払った金額は、当該代償分割によって取得した資産の譲渡所得の金額の計算上、譲渡資産の取得費の額に算入できないとした事例
裁決事例集 No.21 - 72頁
いわゆる代償分割の方法により遺産分割を了して相続した資産を譲渡した場合、その代償分割に際して負担することとなる債務は、相続人相互における各取得財産の価額を調整する目的で負担するものであって、その相続により取得した資産の取得代価として負担したものではないから、その債務の額を譲渡所得の金額の計算上取得費の額に算入することはできない。
昭和55年12月9日裁決
代償分割の支払代償金とその借入利息は譲渡所得の金額の計算上の取得費に当たらないとした事例
請求人が支払った代償金は遺産分割調整金債務であって、被相続人の他の債務が相続税の課税価格の計算上控除されるので相続財産の取得費を構成しないのと同様、消極財産(遺産債務)として調整済みであるから、譲渡所得の計算上取得費の額に算入できない。
また、代償金の原資となった借入金に係る支払利息も同様である。
平成4年10月28日裁決
請求人は、本件宅地を売買により取得した旨主張するが、売買ではなく贈与により取得したと認めるのが相当であるから、分離長期譲渡所得の金額の計算上、収入金額から控除する取得費を当該収入金額の100分の5に相当する金額で算定して原処分は相当であるとした事例
請求人は、本件土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額の計算上控除される取得費について、本件土地の取得時の登記原因が売買となっていること等を理由に、売買による取得価額2,524,000円とすべきであると主張するが、売買契約書もなく代金の授受もないこと及び取得時に贈与税の申告をしていることから、贈与により取得したと認めるのが相当である。
請求人の主張する取得費は、贈与税の課税価格を取得費としたものであって、本件取得費には当たらず、所得税法第60条第1項及び措置法(平成3年法律第16号による改正前のもの)第31条の5第1項を適用して取得費を算定した原処分は相当である。
平成4年12月1日裁決
他の相続人らに支払われた金員は代償債務の支払であり、請求人の譲渡収入金額から控除することはできないとした事例
請求人は、相続した本件土地の持分の譲渡代金から支払った本件調整金は、本件土地の換価分割による支払であるから請求人の譲渡代金から控除すべきであると主張するが、[1]請求人は、相続税の修正申告において本件調整金を代償分割に基づく債務として控除していること、[2]他の相続人らは、当該金員を譲渡収入金額に含めないで確定申告していること、[3]請求人は請求人の長女の確定申告書の作成に当たって親権者として関与し、その内容を熟知しているにもかかわらず[2]と同様の申告をしていること、[4]遺産分割協議書等によれば、本件土地について各相続人の持分を定めた上で、別途、調整金として他の相続人らは各500万円の相続をすることとし、この金員は請求人の持分に相当する譲渡代金のうちから支払うこととなっており、また、被相続人のその他の財産の全部を請求人が相続することになっていたことからみれば、本件調整金は、請求人から他の相続人らへの代償分割による代償債務のための支払と認めるべきである。
したがって、本件調整金相当額を請求人の譲渡収入金額から控除することはできない。
平成6年3月23日裁決
本件譲渡資産は、換価分割により取得したものではなく、代償分割により取得したものであるから、他の相続人に支払った代償金は譲渡所得の計算における取得費には該当しないとした事例
請求人は、本件譲渡資産は、家庭裁判所の調停案のとおり、他の相続人らが相続し、これを直ちに請求人が6,000万円で買い取る旨の遺産分割の合意を見るに至ったものであるから、他の相続人らからの取得額6,000万円を本件譲渡所得における取得価額とすべきであると主張する。
しかしながら、上記の調停案は請求人が提案したものにすぎず、他の相続人らは一貫して金銭による分割を要求していたことからも係る調停案に合意していたとは認められない。
かえって、最終調停期日に作成された調停調書によれば、請求人は、被相続人の遺産のすべてを単独取得し、その代償として他の相続人らに対し、6,000万円の支払義務があることを認める旨の調停が成立したことが認められるのであるから、請求人の本件遺産分割が換価分割であるとの主張は採用できず、代償分割によるものであるとして、譲渡所得の金額の計算上、本件代償金6,000万円を取得費の額に算入しなかった原処分は相当である。
平成9年12月15日裁決
単純承認により相続した土地(買換資産)を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算において、控除できる土地の取得費は、租税特別措置法第37条の3《買換えに係る特定の事業用資産の譲渡の場合の取得価額の計算等》の規定に基づき算定した取得価額によることが相当であるとした事例
請求人は、請求人の母(被相続人)が租税特別措置法第37条第1項の規定を適用して取得した買換資産について、母から相続した後に譲渡したものであるから、所得税法第60第1項の規定が適用され、母の購入金額等が取得価額となると主張する。また、租税特別措置法第37条の3に規定する「適用を受けた者」とは、買換資産を取得した被相続人であることから、請求人に適用されるものではない旨主張する。
所得税法第60条第1項は、相続等により取得した資産の取得費等の計算においては、その相続した者が引き続きこれを所有していたものとみなすと規定し、取得時期及び取得価額を引き継ぐこととしており、取得価額は、別段の定めがあるものを除き、被相続人が取得に要した同法38条に規定する「資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」となる。
ところで、請求人が譲渡した資産は、被相続人が生前において租税特別措置法第37条第1項を適用して取得した買換資産であり、これを単純相続により取得した後に請求人が譲渡したものであるから、この場合の取得価額についても、所得税法第60条第1項の規定が適用され、被相続人の取得価額が引き継がれることとなるところ、買換資産の取得価額にかかる租税特別措置法37条の3の規定は、所得税法38条に規定する「別段の定め」に該当するものであるから、被相続人の取得価額は、租税特別措置法37条の3の規定により計算された価額となり、請求人は、この価額を所得税法60条1項の規定により、被相続人の取得価額として引き継ぐこととなる。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
平成15年4月23日裁決