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その他
退職年金に係る債権は譲渡されているからその所得は請求人に帰属しないとした事例
原処分庁は、請求人の破産手続によって、役員退職年金に係る債権が債権回収会社へ債権譲渡されたとしても、当該年金に係る所得は請求人に帰属する旨主張する。
しかしながら、本件退職年金における債権は、差押禁止財産に該当せず、請求人における破産財団に属する債権であるところ、本件退職年金について定めた内規には、本件退職年金の譲渡を禁止する特約等はなく、管理処分権を有する破産管財人から債権回収会社へ適法に譲渡されていること、また、本件退職年金は役員としての功労に対する報賞の性格を有するものであって、労働の対償として支払われるものではないから、労働基準法第11条に規定する「賃金」には該当せず、同法第24条第1項の賃金等の労働者への直接払の義務規定も適用されないことから、請求人の本件退職年金に係る債権は、本件譲渡により失ったものと解され、当該年金に係る所得は全額が請求人に帰属しないから、原処分の一部は取り消されるべきである。
平成20年10月24日裁決
請求人に支払われた協力金名目の金員は、請求人を介して請求人の関係会社に支払われたものであり、請求人に帰属しないとした事例
《要旨》
原処分庁は、借地人(P社)から請求人に支払われた協力金名目の金員については、P社から請求人に対する貸付金とする契約を締結しているが、実質は、P社に返還を要しない金員であり、請求人の不動産所得に係る総収入金額に算入すべきであるとし、また、貸付金に仮装したものであると主張する。
しかしながら、本件は、請求人が請求人の土地をP社に賃貸するに際し、当該土地の上に存する請求人の関係会社(M社)が所有する建物の取壊費用等をP社が負担することとしたものであり、当該費用等は協力金として請求人を介してM社に支払われたものと認められ、当該協力金は、M社に帰属し請求人には帰属しない。
請求人が代表取締役を務める内国法人が外国法人と締結した業務委託基本契約に基づく業務委託手数料は、請求人の給与には当たらず、当該内国法人に帰属するとした事例(平成21年分〜平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成26年7月1日裁決)
《ポイント》
本事例は、請求人が外国法人との間で雇用契約を締結して給与を受領するのと同時に、請求人が代表取締役を務める内国法人と当該外国法人との間で業務委託基本契約を締結して、当該内国法人が業務委託手数料を受領していることについて、当該業務委託基本契約は通謀虚偽表示により仮装されたものである旨の原処分庁の主張に対し、当該業務委託基本契約について通謀虚偽表示は成立しないから、同契約は有効に締結されたものとして、同契約に基づく当該業務委託手数料は、請求人の給与には当たらず、当該内国法人に帰属するとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人が外国法人(本件外国法人)との間で雇用契約を締結して給与を受領するのと同時に、請求人が代表取締役を務める内国法人(本件法人)と本件外国法人との間で業務委託基本契約(本件業務委託基本契約)を締結して、本件法人が業務委託手数料を受領していることについて、本件業務委託基本契約は通謀虚偽表示によりなされたもので無効であるとして、本件外国法人から本件法人に支払われた業務委託手数料の全部が請求人の給与に当たる旨主張する。
しかしながら、本件業務委託基本契約において合意されている内容は、本件法人が、その代表者である請求人に、本件外国法人の下で、当該外国法人の副社長としての業務を行わせ当該外国法人が本件法人にその対価を支払うというものであり、本件法人が本件外国法人に対して、請求人の労働力を提供することを債務とするものと認められ、実際、同契約に基づき、本件法人は、その債務を履行し、本件外国法人から業務委託手数料を受領している。そして、当審判所の調査によっても、本件業務委託基本契約が通謀虚偽表示により仮装されたものであることを基礎づける証拠は見当たらず、原処分庁からも提出されていない。したがって、本件業務委託基本契約に基づく業務委託手数料は、請求人の給与には当たらず、本件法人に帰属する。
《参照条文等》
民法第94条
請求人ほか3名が相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入について、当該賃料収入の全額が請求人に帰属するものである旨の原処分庁の主張を排斥した事例(
平成18年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、
平成18年分の所得税の更正処分、
平成19年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、
平成20年分〜平成23年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、
平成24年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、
平18.1.1〜平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・

棄却、
全部取消し、
一部取消し、
一部取消し、棄却・平成27年6月19日裁決)
《要旨》
原処分庁は、請求人ほか3名の相続人らが相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入について、請求人が他の相続人ら3名に渡しておらず、また、その全額を請求人の不動産所得として申告していたことなどからすれば、当該賃料収入の全額が請求人に帰属するものである旨主張する。
しかしながら、相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものと解するのが相当であるから、当該賃料収入は、その全額が請求人に帰属するのではなく、法定相続分に応じて請求人ほか3名の相続人らにそれぞれの割合で帰属するものと認めるのが相当である。
《参考判決・裁決》
最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決(民集59巻7号1931頁)