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先物取引による所得
商品先物取引の所得について、事業所得ではなく雑所得に当たるとした事例
裁決事例集 No.18 - 17頁
請求人の商品先物取引は、取引回数、取引数量等からみると、営利性・有償性及び継続性・反復性が認められるが、それが事業というためには、更に事業としての社会的客観性を要するものと解されるところ、商品の先物取引は投機性の強いものであって本来事業になじみ難い性格を有すること、請求人は生活の資のほとんどを畳製造業からの所得により得ていたこと、商品先物取引は商品取引所取引員所属の外務員の勧奨を受けて始め、その助言を受けて行っていたこと、商品の先物取引を行うために特別の人的物的施設を設けていなかったこと、必要経費も当該取引に直接要した費用以外に通常事業に付随する必要経費をほとんど要しなかったこと等の諸点を総合勘案すると、請求人の商品の先物取引程度のものは、一般社会通念に照らし、いまだ事業とは認められないものと解するのが相当である。
昭和54年5月31日裁決
商品先物取引により生じた損失の所得区分は雑所得に属するとした事例
裁決事例集 No.35 - 19頁
請求人は、本件商品先物取引に係る所得は、[1]営利性、有償性、[2]継続性、反復性、[3]自己の危険と計算による企画遂行性、[4]精神的、肉体的労力の程度、[5]人的、物的設備、[6]資金調達方法及び[7]職業、経歴及び社会的地位からみて事業所得であると主張するが、請求人の社会的地位(商品先物取引が禁止されている登録外務員であり、かつ、商品先物取引業を営む会社の役職ある地位にある)及び商品先物取引が一般的に極めて投機性の強い射こう的な取引であって、元来、事業としてなじみ難い取引であること等から総合的に判断すれば、本件商品先物取引は所得税法にいう対価を得て継続的に行う事業とは認められず、本件商品先物取引に係る損失は、雑所得に属する。
昭和63年6月30日裁決
請求人が行った外国為替証拠金取引は、事業として社会的客観性がいまだ認められず、「対価を得て継続的に行う事業」には該当しないとした事例
請求人は、請求人が行った外国為替証拠金取引はその取引回数が約1,400回で、取引金額にすると130,000,000円を超える規模であり、1日に費やす時間も平均15時間に及ぶことからみて事業所得を生ずべき事業に該当する旨主張する。
しかしながら、ある経済的行為が所得税法施行令第63条第12号の「対価を得て継続的に行う事業」に該当するか否かは、当該経済的行為の営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無のほかに事業としての社会的客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当該経済的行為の種類、自己の役割、人的・物的設備の有無、資金の調達方法、費やした精神的・肉体的労力の程度、その者の職業・社会的地位などの諸点を検討する必要がある。そして、一定の経済的行為が反復・継続して行われることによって事業として社会的客観性が認められるには、相当程度安定した収益を得られる可能性がなければならない。
これを本件についてみると、一般に外国為替証拠金取引は投機性の高い取引であり、継続的に相当程度安定した収入が得られる可能性が乏しく、本来事業になじみがたい性格を有するものであること、
請求人は、自らが代表取締役を務める法人2社からの役員報酬により生計を立てていること、
請求人は、インターネット情報などを参考に取引を行っているが、外国為替証拠金取引の企画遂行に当たって相当程度の精神的・肉体的労力を要していると認められないこと、
外国為替証拠金取引のための積極的な資金調達が認められないこと、及び
外国為替証拠金取引を反復継続して行うための人的物的設備を有していないことが認められ、これらのことを考慮すると、請求人が行った外国為替証拠金取引は、事業として社会的客観性がいまだ認められず、「対価を得て継続的に行う事業」に該当するということはできない。
《参照条文等》
所得税法第27条第1項、第69条第1項
所得税法施行令第63条
平成22年2月16日裁決