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税額控除等

課税仕入れ等の税額の算出

  1. 仕入税額控除
    1. 課税仕入れ等の範囲
    2. 課税仕入れ等の時期
    3. 課税仕入れ等の税額の算出(13件)
    4. 仕入税額控除の不適用
    5. 簡易課税制度
  2. 貸倒れの場合の税額控除

課税仕入れ等の税額の算出にあたり、個別対応方式による計算は、一括比例配分方式により計算することとする課税期間が2年を経過していないため、当該方式による計算はできないとした事例

裁決事例集 No.49 - 554頁

 請求人は、原処分庁が、本件課税期間の課税仕入れ等の税額の算出にあたり、一括比例配分方式につき、同方式を継続して2年間適用していないとして本件更正処分を行ったが、前々課税期間においては、一括比例配分方式により確定申告をした後、更正の請求に基づき、原処分庁が、仕入税額控除についてその全額を控除する減額の更正処分をしているから、減額の更正があっても、仕入税額控除の計算方法が変更されたものではないことから、前々課税期間から一括比例配分方式を適用していることになる旨主張するが、請求人の前々課税期間における課税売上割合は、100分の95以上のため、消費税法第30条第2項の一括比例配分方式は適用できないところ、更正の請求に基づき、同条第1項による仕入税額控除の計算方法に基づく減額の更正をしたものであって、前々課税期間においては一括比例配分方式を適用していないことになる。
 したがって、一括比例配分方式の適用開始時期は前課税期間となり、消費税法第30条第5項で規定する当該方式により計算することとする課税期間が2年を経過していないため、本件課税期間においては、個別対応方式による計算はできない。

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請求人が採用した個別対応方式における課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとの区分方法は合理的基準の一つであるとして、異議決定で採用した一括比例配分方式による計算を排斥した事例

裁決事例集 No.62 - 462頁

 原処分庁は、請求人が不動産の賃貸収入に係る課税仕入れの消費税額を個別対応方式により計算して申告したことについて、建物の建築費が「課税資産の譲渡等に要するもの」と「その他の資産の譲渡等に要するもの」に明確に区分されていないので、一括比例配分方式により課税仕入れの消費税額を計算すべきであると主張する。
 しかしながら、請求人の建物の建築費の区分方法は、当該建築費の大部分を共通の資産の譲渡等に要するものであると認識した上で、これを建物の使用面積割合で課税資産の譲渡等に要するものと、その他の資産の譲渡等に要するものに区分するというものであって、合理的な基準の一つであると認められるところ、請求人の個別対応方式による課税仕入れの消費税の計算は正当である。

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住宅として賃貸中の建物を譲渡目的で取得した場合には、仕入税額控除における個別対応方式では「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分されると判断した事例

裁決事例集 No.70 - 369頁

 請求人は、本件各信託不動産(土地及び建物)に係る賃貸収入(住宅の貸付けに伴う賃貸収入)は、当該各不動産の取得に伴い付随的に生じたものにすぎず、当該各不動産の取得が当該各不動産の譲渡を目的とするものであることを妨げるものではないから、当該取得に係る課税仕入れは、消費税法第30条第2項第1号(個別対応方式)の適用に当たり、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分されるべき旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件各信託不動産を、譲渡する目的だけでなく、その賃貸収入を得る目的を併せ持って取得したものであり、また、本件課税期間において、本件各信託不動産を取得した日から課税資産の譲渡等に該当しない当該各不動産に係る賃貸収入(住宅の貸付け)が生じている以上、本件各信託不動産に係る課税仕入れにつき、個別対応方式において、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することはできず、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分するのが相当であるから、請求人の主張には理由がない。

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個別対応方式による仕入税額控除額の計算に当たり、一括仕入れの調剤薬品等の仕入れを共通売上対応分であるとした用途区分に区分誤りはなかったとした事例

裁決事例集 No.71 - 719頁

 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項に規定する課税仕入れ等の税額の計算を行うに当たり、原処分庁は、個別対応方式を選択して申告している請求人が、共通売上対応分とした調剤薬品等の仕入れについて、課税売上げ対応分があったとしても当該売上げは本来の目的とは別途に事後的に発生するものであり、課税仕入れを行った日の状況においては非課税売上対応分とすべきであると主張する。
 しかしながら、調剤薬品等は、そのほとんどが非課税売上げとなっているものではあるが、現実的に、課税売上となる販売として[1]他の保険薬局(同業者)への小分け販売、[2]医師の指示書による販売、[3]自費診療(患者負担10割)による販売が発生していることから、その仕入れた時点における区分は、課税売上げのみに要する課税仕入れ又は非課税売上げのみに要する課税仕入れとは認められないから、共通売上対応分の課税仕入れとするのが相当である。

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いわゆる個別対応方式により課税仕入れに係る消費税額を計算する場合における「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の区分は個々の課税仕入れについて行う必要があるとした事例

裁決事例集 No.73 - 536頁

 請求人が、本件不動産を信託財産とする信託受益権を取得し、本件不動産の取得に係る本件付随費用の消費税額について、個別対応方式により仕入控除税額を計算するに当たり、本件付随費用の総額を、本件不動産を構成する本件個々の資産の取得価額の比で本件個々の資産に配賦し、本件個々の資産の取得目的に応じ「課税対応」及び「共通対応」に区分したところ、原処分庁は、本件付随費用はいずれも「共通対応」に区分すべきであるとして消費税等の更正処分を行った。
 これに対し、請求人は、消費税の課税対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計の内訳について、個別対応方式における対応区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて対応関係を判定すべきであり、本件付随費用は本件個々の資産にそれぞれの取得価額の比で配賦されているから、個別対応方式における区分は明らかである旨主張する。
 しかしながら、課税仕入れとは、「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」のそれぞれの取引を指すことから、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税仕入れにつきその区分が明らかにされている場合」とは、課税仕入れである個々の取引についての対応区分が明らかにされている必要があるものと解される。
 そうすると、請求人は、本件付随費用について、その総額を一つの単位とし、各付随費用の合計額を本件個々の資産の取得価額により按分した結果をもって「課税対応」及び「共通対応」に係る課税仕入れの額として集計したに過ぎず、個々の課税仕入れにつきその区分を判定していないことは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。

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消費税の控除対象仕入税額の計算方式について、一括比例配分方式を選択して申告した後に、更正の請求により個別対応方式に変更することはできないとした事例

裁決事例集 No.78 - 500頁

 請求人は、まる1消費税の導入の趣旨に反して、消費税等相当額の負担を強いられていること、まる2一括比例配分方式は簡便法であって、個別対応方式こそが原則的な控除対象仕入税額の計算方法であること、まる3請求人の控除対象仕入税額は、本件税理士の責めに帰すべき事由により、請求人に不利な計算方法により算定されていることから、本件更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を一括比例配分方式から個別対応方式へ変更することができる旨主張する。
 しかしながら、納税者が消費税法第30条第4項の規定の適用を選択して一括比例配分方式により控除対象仕入税額を算定し確定申告をした場合には、更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を一括比例配分方式から個別対応方式へ変更することはできないと解されるところ、請求人は、同項の規定の適用を選択して一括比例配分方式により控除対象仕入税額を算定し確定申告をしたものと認められることから、本件更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を変更することはできない。
 また、上記まる1については、請求人が、課税仕入れについて、用途区分を明らかにしてさえいれば、いずれの計算方法を選択するのが税負担の面で有利であるかは、法定申告期限までに容易に判明することであること、上記まる2については、本件両方式のいずれの計算方法により控除対象仕入税額を算定すべきかは、いずれの計算方法が原則的な計算方法であるかによって決せられるものではなく、請求人がいずれの計算方法により控除対象仕入税額を算定して確定申告をしたかによって決せられるものであること、上記まる3については、請求人は、自己の意思と責任において本件税理士に税務代理を委任したものである以上、受任者である本件税理士の行為は委任者である請求人の責任の範囲内の行為と認められることから、請求人の主張にはいずれも理由がない。

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控除対象仕入税額の計算方法につき個別対応方式を選択してなされた申告に対して、課税仕入れの用途区分が誤っているとして同方式により再計算して行われた更正処分につき、錯誤を理由として一括比例配分方式に選択を変更して控除対象仕入税額の再計算を行うべきとして、その違法性を主張することは許されないとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、課税上の選択権を行使する過程において錯誤により選択を誤った場合には、法が定める更正の請求等の救済方法以外にも先例(最高裁平成2年6月5日判決)による救済が認められるべきであり、本件においては、請求人が納付税額が少なくなる方法を選択するという内心の意思を実行する過程において、単純な計算誤りにより仕入れに係る消費税額の計算方法の選択を誤ったものであるから、請求人が錯誤に基づいてした個別対応方式の選択の是正が認められるべきであるにもかかわらず、原処分庁が、確定申告における請求人の選択のまま個別対応方式により本件更正処分を行ったことは違法である旨主張する。
 しかしながら、請求人において仕入れに係る消費税額の計算で個別対応方式を選択する過程において過誤又は勘違いがあったという事情は認められるものの、仮に当該事情が錯誤に当たるとしても、国税通則法においては、納税者が自主的判断によって提出した申告納税方式による国税の確定申告書に記載した課税標準等又は税額等の是正については、まず、修正申告又は更正の請求の手続を通じて行うべきことが予定されているところ、請求人は、当該事由に基づいて一括比例配分方式に選択を変更して仕入れに係る消費税額を計算したところで修正申告も更正の請求も行っていないのであるから、原処分庁が本件確定申告書において請求人が選択した個別対応方式によって仕入れに係る消費税額を再計算した本件更正処分を違法とする理由はない。

《参照条文等》
消費税法第6条、第30条

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請求人が取得した介護施設に係る課税仕入れの用途区分については、課税用ではなく共通用であるとした事例

平成22年12月8日裁決

 請求人は、本件課税期間においては介護保険法上の指定を受けていないため、請求人が取得した認知症対応型共同生活介護を内容とする地域密着型サービス事業(本件介護事業)に対応し得る本件施設において本件介護事業を行うことは不可能であり、本件課税期間における本件施設に係る課税資産の譲渡等は自動販売機手数料のみしかなく、本件施設は飽くまで課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税用)として供したから、本件施設に係る課税仕入れの用途区分は課税用に区分される旨主張する。
 しかしながら、消費税法基本通達11−2−20《課税仕入れ等の用途区分の判定時期》が定める、課税仕入れを行った日の状況とは、当該課税仕入れを行う目的や当該課税仕入れに対応する資産の譲渡等がある場合には、その資産の譲渡等の内容等を勘案して判断するのが相当である。
 請求人は、1本件課税期間より前に本件介護事業の適正事業者の決定を受け、本件施設の新築工事に着工し、本件課税期間中にその引渡しを受けたこと及び、2本件課税期間中に介護保険法に規定する地域密着型サービス事業を行う事業所の指定を受けるための指定申請書を提出し、同期間内にその指定通知書を受理していることからすれば、請求人は本件施設の取得日において、介護保険法の規定に基づく介護事業を行う目的で本件施設を取得したものと認められる。
 そして、本件介護事業に係る資産の譲渡等については原則として消費税は課されないこと、請求人は本件課税期間内において本件施設に関し自動販売機設置手数料を得ていることから、本件施設に係る課税仕入れの用途区分については、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通用)に区分するのが相当である。

《参照条文等》
 消費税法第6条第1項、第30条、別表第一第7号イ
 消費税法施行令第14条の2第3項第2号
 消費税法基本通達11−2−20

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請求人が取得した建物及び水道施設利用権に係る個別対応方式における課税仕入れの用途区分について、それぞれ取得の日の状況で判断した事例

平成23年3月23日裁決

《ポイント》
 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等のみに要するもの及び課税資産とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分(用途区分)は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる。
 この事例は、マンションの取得に際し、建物部分と水道施設利用権をそれぞれ別の時期に取得していたことから、それぞれ取得の日の状況で用途区分を判断したものである。

《要旨》
 請求人は、本件建物の取得目的がF社に対して本件建物及びこれに付属する機械式駐車場(本件マンション)に係る信託受益権を売買することにあり、また、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社との間の信託受益権売買契約の法的な解除やテナントとの間の賃貸借契約の締結がされていなかったとして、本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れが課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税用)に該当する旨主張し、一方、原処分庁は、本件マンションの取得目的は販売及び住宅として貸し付けることであったことから本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通用)に該当する旨主張する。
 請求人は、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社による信託受益権の売買残代金の支払が事実上不可能で、F社との間の信託受益権売買契約を解消することとなり、同契約において予定されていた日に信託受益権の譲渡が行われないとの認識を有していたといえ、さらに、請求人は、F社が破産手続開始の決定を受ける以前に、本件マンションの新たな売却先を探すため、L社に本件マンションの再査定を依頼したことが認められ、本件マンションの売却先及び売却時期が未定の状況下で、請求人自らがH社との間で本件マンションの管理委託契約を締結し、入居者の募集を開始したという賃料収入を得ることを前提とした行為をしていることを考え併せると、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、請求人は、本件マンションの新たな売却先が見つかるまでの間、本件マンションを住宅として貸し付け、これによる賃料収入を得ることを予定していたと認めることができる。そうすると、本件建物の取得に係る課税仕入れを本件信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことには合理性がないというべきであり、本件建物の取得に係る課税仕入れは、共通用に該当すると認めるのが相当である。
 一方、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れのあった日においては、請求人に帰属すべき賃料収入が生ずる可能性は、具体的なものではなかったというべきであり、同日における状況からすれば、請求人に賃料収入が帰属することが予定されていたということはできず、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れを信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことが不合理な区分とまではいうことはできないから、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは、課税用と認めるのが相当である。

《参照条文等》
 消費税法第30条第2項

《参考判決・裁決》
 平成18年2月28日裁決(裁決事例集No.71・719頁)

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住宅の貸付け等の用に供している建物を販売用として取得したとしても、課税仕入れの用途区分は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するとした事例

平成24年1月19日裁決

《ポイント》
 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分する場合の当該区分(いわゆる用途区分)は、課税仕入れを行った日の状況により行うと解されている(消費税法基本通達11−2−20)ところ、この事例は、住宅の貸付け等の用に供している建物を販売用として取得した場合の用途区分について判断を示したものである。

《要旨》
 請求人は、販売する目的で本件各建物を取得したのであるから、その取得に伴い住宅貸付けによる収入が発生する場合であっても、その取得は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に規定する個別対応方式による課税仕入れ等に係る消費税の控除額の計算において、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に該当する旨主張する。
 しかしながら、課税仕入れ等の用途区分の判定は、課税仕入れ等を行った日の状況により、当該課税仕入れ等の目的及び当該課税仕入れ等に対応する資産の譲渡等の内容を勘案して行うのであるから、本件各建物の取得は、たとえその取得目的が販売用であったとしても、その取得の時点において本件各建物は住宅の貸付け等の用に供されていたのであるから、「課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に該当する。

《参照条文等》
 消費税法第30条第2項第1号
 消費税法基本通達11−2−12、11−2−20

《参考判決・裁決》
 平成17年11月10日裁決(裁決事例集No.70・369頁)

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米軍基地内における資産の譲渡等は非課税取引に該当するとした事例(平22.5.1〜平24.4.30の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成26年5月8日裁決)

平成26年5月8日裁決

《要旨》
請求人は、在日米軍基地内の営業店舗におけるアメリカ合衆国軍隊の構成員等に対する物品の販売(本件米軍基地内取引)については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)第15条の規定により消費税法が適用されないから、消費税法上の「国内において行った資産の譲渡等」に該当せず、また、消費税法別表第一にも掲げられていないため、課税売上割合の計算において分母及び分子のいずれにも算入されない旨主張する。
 しかしながら、消費税法第2条《定義》第1項第1号が「国内」を「この法律の施行地」と定義しており、在日米軍基地が日本の領土内にあることは明らかであるから、本件米軍基地内取引は、消費税法上の国内における資産の譲渡等に該当する。そして、条約である日米地位協定は国内法である消費税法に優先して適用されることになるところ、本件米軍基地内取引は、日米地位協定第15条第2項前段に規定する諸機関による商品等の販売に該当し消費税が課されないが、本件米軍基地内取引に係る商品の購入については、同項後段の規定により消費税が課されることとなる。ところで、仕入税額控除の制度は、多段階課税である消費税の累積を避けるため仕入れに含まれている消費税額を控除するという制度であるから、消費税が課されない売上げに対応する課税仕入れに係る消費税は本来的に仕入税額控除の対象とはなり得ないものであるところ、日米地位協定第15条第2項が「諸機関による商品及び需品の日本国内における購入」には日本の租税である消費税を課する旨規定していることからすると、本件米軍基地内取引は、消費税法における仕入税額控除に関する規定の適用上、同法別表第一に掲げられているか否かとは関わりなく、国内において行った資産の譲渡等には該当するものの、国内において行った課税資産の譲渡等には該当しないものと取り扱うのが相当であり、その対価の額は課税売上割合の計算において分母に算入され、かつ、分子に算入されないこととなる。

《参照条文等》
消費税法第30条
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第15条

《参考判決・裁決》
神戸地裁平成14年7月1日判決(税資252号順号9154)

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請求人が行った建物のリース取引に係る課税仕入れの用途区分については、共通用に区分するのが相当であると認定した事例(1平22.9.1〜平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、2平23.9.1〜平24.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・1一部取消し、却下、2棄却、却下・平成26年12月10日裁決)

平成26年12月10日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が賃借する建物の賃貸借契約に係る取引は、法人税法上売買があったものとされるリース取引に該当し、当該リース取引に係る課税仕入れの用途区分は、非課税用ではなく共通用に該当するとして、原処分の一部を取り消したものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が締結した有料老人ホーム(本件物件)の賃貸借契約については、法人税法上売買があったものとされるリース取引に該当するところ、本件物件は、入居者が生活を営む場所及び日常生活を送る上で必要不可欠な場所で構成されており、その全体が住宅に該当することから、本件物件に係る課税仕入れの用途区分は、個別対応方式の計算上、非課税売上げのみに要するものに該当する旨主張する。
 しかしながら、本件物件においては、入居者に対して、非課税売上げである居住スペースの貸付け及び介護サービスの提供だけでなく、課税売上げである居室清掃や洗濯等の各種サービスの提供が予定されていた上、実際にこれらの売上げに必要な設備を備えていたことが認められるから、本件物件に係る課税仕入れの用途区分は、個別対応方式の計算上、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れに該当する。

《参照条文等》
 消費税法第30条第1項、第2項
 消費税法基本通達11−2−20

《参考判決・裁決》
 平成22年12月8日裁決(裁決事例集No.81)
 平成17年11月10日裁決(裁決事例集No.70・369頁)

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請求人が土地及び建物を信託財産とする信託受益権の取得に要した手数料に係る課税仕入れの用途区分については、共通用に区分するのが相当であるとした事例(平成26年4月1日から平成27年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成30年4月25日裁決)

平成30年4月25日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人の信託受益権の取得時においては、信託財産である土地及び建物の事業用資産の賃貸のみではなく、当該信託受益権を譲渡することを目的としていたと認められることから、当該信託受益権の取得に要した手数料に係る課税仕入れの用途区分は、課税用ではなく共通用に該当するとしたものである。

《要旨》
 請求人は、土地及び建物(本件各物件)を信託財産とする各信託受益権(本件各信託受益権)の取得に要した各手数料(本件各手数料)に係る課税仕入れについて、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に規定する個別対応方式による用途区分の判定をするに当たっては、その用途区分は、当該課税仕入れをした事業者が有する、その課税仕入れを行った日における確定的な状況の下においての、目的、意図等をも勘案した上で、なお客観的に判断すべきであり、また、本件各物件はその取得時には事業用に賃貸されており、決算上も有形固定資産に計上しているから、本件各手数料に係る課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当する旨主張する。
 しかしながら、個別対応方式による用途区分の判定は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととされ、課税仕入れを行った日の状況とは、当該課税仕入れの目的及び当該課税仕入れに対応する資産の譲渡等がある場合にはその資産の譲渡等の内容等を勘案して判断するのが相当であり、本件各信託受益権の取得時においては、本件各物件の賃貸のみではなく本件各信託受益権を譲渡することを目的としていたと認められること及び会計上の科目の判定が課税仕入れの用途区分の判定につながるものではないことなどからすれば、本件各手数料に係る課税仕入れは、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分するのが相当である。

《参照条文等》
 消費税法第30条第2項第1号
 消費税法基本通達11−2−20

《参考判決・裁決》
 名古屋地裁平成26年10月23日判決(税資264号順号12553)
 さいたま地裁平成25年6月26日判決(税資263号順号12241)
 平成26年12月10日裁決(裁決事例集No.97)

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