所得金額の計算

繰越欠損金

  1. 収益の帰属事業年度
  2. 益金の額の範囲及び計算
  3. 損失の帰属事業年度
  4. 損金の額の範囲及び計算
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金(5件)
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

翌期へ繰り越す欠損金額の記載誤りによる過大控除は当該欠損金額の繰越控除を行った事業年度において是正すれば足りるとした事例

裁決事例集 No.26 - 138頁

 法人税法第57条によれば、確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前5年以内に開始した青色申告事業年度に生じた欠損金額がある場合には、当該欠損金額に相当する金額は各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなっており、その際、損金の額に算入される欠損金額に相当する金額を法人税申告書に記載することは、その適用要件とされていないから、当該金額は法人税申告書の別表一(一)及び別表七の所定欄の記載の有無に関係なく、各事業年度の正当な欠損金額を基礎として算定されるものであり、法人税申告書への繰越欠損金の記載誤りによる過大控除は、繰越控除を行った事業年度で是正すれば足りるというべきである。

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修正経理に係る損失の額は、仮装経理をした各事業年度について税務署長が更正を行うことにより確定すると判断した事例

裁決事例集 No.69 - 186頁

 請求人は、仮装経理に基づく過大申告額を修正経理した場合の損失の額について、その損失の額が法人税法第57条第1項に規定する前5年以内の各事業年度に係る金額であれば、当該損失の額は修正経理をした事業年度の損金として認められるべきである。また、税務調査が遅くなり、さらに前回調査で仮装経理の事実を確認していたのであるから、国税通則法第70条第2項を適用することは違法である旨主張する。
 しかしながら、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される金額は、その金額がその事業年度において生じたものであることが必要であり、修正経理に係る損失の額は、仮装経理をした各事業年度について税務署長が更正を行うことにより、当該仮装経理をした各事業年度の損金の額として確定し、欠損金相当額は繰越欠損金として控除対象となるものであって、国税通則法第70条第2項の規定により減額更正できなかった欠損金額は生じなかったことに確定したのであるから、これを本件事業年度の繰越欠損金の当期控除額として損金の額に算入することはできない。また、税務調査は、法人税法第153条の規定に基づき行われるもので、質問調査の範囲、程度、時期、場所、手段など実定法に特段の定めのない実施細目については、これを担当する原処分庁の職員の合理的な判断にゆだねられていると解されるところ、請求人に対する税務調査について不当、違法とする事情は認められない。さらに、請求人は、前回調査時には修正経理を行った確定申告書を提出していなかったのであるから、その主張は失当である。

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過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じていたことが判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確定することができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入できるとした事例

裁決事例集 No.70 - 249頁

 東京高等裁判所昭和63年9月28日判決(昭和62年(行コ)第68号法人税更正処分取消請求控訴事件、最高裁判所平成元年4月13日判決の原審)によれば、過去の事業年度における欠損金額を繰越欠損金の額として控除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するためには、その過去の事業年度において所得金額の計算上欠損金額が認められる場合でなければならないとされている。すなわち、過去の事業年度について、その後に欠損金額が生じたことが判明した場合においては、更正により当該事業年度の欠損金額として確定することができる場合に限り、当該欠損金額を控除事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入できると解すべきである。
 これを本件についてみると、既に法定申告期限から5年を経過していることから、原処分庁は、国税通則法第70条第2項の規定により、請求人の平成8年7月1日から平成9年6月30日まで、平成9年7月1日から平成10年6月30日まで及び平成10年7月1日から平成11年6月30日までの各事業年度(以下「平成11年6月期以前の各事業年度」という。)について、本件使用料の額を所得金額から減算する更正をすることができなかったことが認められる。
 そうすると、平成11年6月期以前の各事業年度については、当該各事業年度の所得金額の計算上、いずれも本件使用料の額を所得金額から減算することによる欠損金額は生じなかったことが確定したのであるから、これを平成14年7月1日から平成15年6月30日までの事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入することはできない。

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繰越欠損金額の損金算入の要件である「連続して確定申告書を提出している場合」に当たるかどうかは、繰越欠損金額を損金の額に算入しようとする事業年度の確定申告書提出時の現況によるとした事例

裁決事例集 No.75 - 370頁

 請求人は、本件事業年度の所得の金額の計算上、繰越欠損金額を損金の額に算入して、法人税の確定申告書を提出し、その後、本件更正処分前に、欠損金額が生じた事業年度後の事業年度で無申告であった事業年度に係る確定申告書を提出しているのであるから、法人税法(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当する旨主張する。
  ところで、法人税の確定申告書の提出は、各事業年度の所得の金額等を確定する行為であるところ、法人税法第57条第1項の規定は、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入すべき金額に係る別段の定めとして、一定の条件のもとに繰越欠損金額を損金の額に算入することとした規定である。このことから、各事業年度の所得の金額の計算上繰越欠損金額を損金の額に算入するかどうかは、遅くとも、内国法人が当該各事業年度に係る確定申告書を提出する時までに定まっていなければならない。そうすると、法人税法第57条第1項の適用要件を規定する同条第10項にいう「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当するかどうかも、当該各事業年度に係る確定申告書の提出時までに定まっていなければならないことになる。
  したがって、法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」とは、繰越欠損金額を損金の額に算入しようとする事業年度に係る確定申告書の提出時において、欠損金額が生じた事業年度後の各事業年度について確定申告書が提出済みである場合をいうものと解される。
  これを本件についてみると、請求人が本件事業年度に係る法人税の確定申告書を提出した時点において、欠損金額が生じた事業年度後に無申告の事業年度があり、請求人が、その後に、無申告であった事業年度に係る確定申告書を提出したとしても、繰越欠損金額が生じた事業年度から連続して確定申告書を提出していることにはならない。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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請求人の役員らが行った債権放棄による債務免除については、法人税法施行令第117条に規定する事実に当たらないから、法人税法第59条第2項の規定は適用できないとした事例

裁決事例集 No.77 - 303頁

 請求人は、請求人の役員であるAらの債権放棄(以下「本件債権放棄」という。)による債務免除は法人税法施行令第117条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に当たり、法人税法第59条第2項の規定に該当するから、原処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、法人税法施行令第117条第1号から第3号までに規定する各事実は、いずれも法律によりその手続が定められているもので、その債務者の全資産を対象にすべての債権者に対して公正な弁済が行われるよう裁判所が関与して行われるものであるから、同条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」とは、債務超過に陥った債務者について、上記の手続に準じ、すべての債権者に対して公正な弁済が行われることが保障されているものに限られると解すべきであるところ、請求人は、1臨時株主総会において、本件債権放棄の要請を行うことを決議しただけで、Aらからの借入金以外の借入金及び買掛金などの営業債務に係る債務額の整理に関する事項などについて債権者集会で協議を行うなど、法人税基本通達12−3−1に定める、法律等の定めに準じた一連の手続等は行われていないと認められること、2本件債権放棄による債務免除を受けた直前の平成16年9月期の事業年度末において、貸借対照表上、債務超過の状態にはあるものの、事業経営が成り立たなくなるほどの経営の危機に陥っている状態ではなかったと認められること、3さらに、本件債権放棄による効果は、請求人の資金繰りにはほとんど影響がないことからすると、請求人も自認しているように、請求人があえてAらに対して債権放棄の要請という手段を早急にとらなければ、請求人は、債務超過の状態によって倒産するという状況にあったとは認められないこと、及び4請求人は、競売物件の取得等に係る資金として融資を受けるには、E銀行P支店からの求めに応じて債務超過の状態を解消する必要があったことから、請求人の財務内容を表面的に改善するためにAらに本件債権放棄の要請を行ったものと認めるのが相当である。
 そうすると、本件債権放棄による債務免除は、多数の債権者によって協議の上決められたものでなく、単に請求人とAらとの間における私的な協議によって決定され、その内容が一定の計画のもとに合理的に定められたものではないと認められることから、法人税法施行令第117条第4号に規定する事実に当たらないとした原処分は適法である。

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