附帯税

認めなかった事例

  1. 延滞税
  2. 過少申告加算税
    1. 過少申告加算税の賦課
    2. 正当な理由
      1. 認めた事例
      2. 認めなかった事例(23件)
    3. 更正の予知
  3. 無申告加算税
  4. 不納付加算税
  5. 重加算税

扶養控除額を過大に申告したことについて国税通則法第65条第2項に規定する正当な理由が認められないとした事例

裁決事例集 No.22 - 13頁

 給与所得者であった請求人は、年の中途において退職し、その後その年の12月末までに所得がない場合には、退職前の請求人の扶養親族を請求人及び他の納税者のそれぞれの扶養親族としても違法ではないと信じて確定申告書を提出したものであり、扶養控除の額を過大に申告し、不正に所得税額の還付を受ける意思は全くなかったこと、つまり、確定申告書の提出に当たり請求人が所得税法の規定を知らなかったこと、また、原処分庁が請求人に対しその説明をしなかったことをもって、国税通則法第65条第2項に規定する正当な理由となり得ないことは明らかであるから、扶養控除額の減額に基づく修正申告に係る納付すべき所得税額に対して過少申告加算税を賦課決定した原処分は相当である。

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法定申告期限内に原処分庁が還付申告に係る誤りを指摘しなかったとしても過少申告をしたことにつき正当な理由があるとは認められないとした事例

裁決事例集 No.23 - 1頁

 還付を求める確定申告書について誤りがある場合には、法定申告期限内に納税者が訂正できるよう措置を講じ、適切な指導をすべきであるのに原処分庁はこれを怠ったとの主張について、申告納税制度の下における所得税の確定申告は、本来、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであり、当初の確定申告に誤りがあったとしても、それは納税者自身の責任であり、これについて原処分庁が法定申告期限内にその誤りにつき請求人に適切な指導をしなかったからといって、過少申告したことにつき国税通則法第65条第2項に規定する正当な理由があるとは認められない。

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相続人間において相続財産の帰属について係争中である場合でも、国税通則法第65条“過少申告加算税”第4項の「正当な理由」があるとはいえないとした事例

裁決事例集 No.43 - 4頁

 国税通則法第65条“過少申告加算税”第4項の「正当な理由」とは、過少申告が真にやむを得ない理由によるものであって、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になる場合をいうものと解され、それが納税者の税法の不知や誤解に基づく場合は、これに当たらない。
 相続人間において相続財産の帰属について係争中であっても、[1]本件各株式が相続財産に含まれることが明らかであること、[2]請求人がこれを認識していること、[3]相続人の一人であるB女は本件各株式を相続財産に含めて申告していることなどからすれば、請求人に過少申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になるとは到底いえず「正当な理由」はない。

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相談担当者が知り得なかった申告漏れ等は、国税通則法第65条“過少申告加算税”第4項にいう「正当な理由」には当たらないとした事例

裁決事例集 No.43 - 10頁

 請求人は、当初申告が税務署の相談担当職員の指導に基づいて作成されたものであるから正当な理由があり、過少申告加算税を賦課すべきでないと主張するが、相談時点では修正申告の原因となった事実を担当職員が知り得る状況になく、その後の調査によって明らかになったものであるから、「正当な理由」には当たらない。

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適正な申告を行えなかったことが、申告書の作成を依頼した税理士の過失に起因するとしても、国税通則法第65条第4項の「正当な理由」には該当しないとした事例

裁決事例集 No.44 - 36頁

 請求人は、自らの意思と責任において本件相続に係る相続税の申告をB男に任せ、B男は、請求人の代理人としてA税理士に本件当初申告書を作成させ、これを提出したものである以上、たとえA税理士の過誤によって本件当初申告が過少申告となったとしても、本件当初申告書は請求人の責任において提出されたものであり、かつ、過少申告となったことについて正当な理由があるとは認められない。

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債権償却特別勘定の設定に関する税務署長の認定が相当期間なされなかったとしても過少申告をしたことにつき正当な理由があるとは認められないとした事例

裁決事例集 No.45 - 1頁

 請求人は債権償特別却勘定の設定に関する税務署長の認定が相当期間なされなかったことから、原処分庁の事務処理の怠慢を理由に、過少申告加算税の賦課決定が不当である旨主張するが、更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。

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建造引当権に関する国税庁長官通達は、法令にない取扱いを新たに示したものとすることはできず、法令の不知、誤解は通則法第65条第4項の「正当な理由」があるとは認められず、調査担当者の具体的な指摘前に修正申告をしたとしても同法第65条第5項に該当しないとした事例

裁決事例集 No.45 - 9頁

 請求人は建造引当権に関する国税庁長官通達は法令に当たらず、請求人において不知のものであったから過少申告をしたことにつき通則法第65条第4項の「正当な理由」がある旨主張するが、同通達は措置法第65条の7第1項に掲げる表の第16号又は17号にいう「船舶」に関して、建造引当権が船舶に当たらないとの解釈を示したもの(解釈通達)とみるのが相当であり、国税庁において法令にない取扱いを新たに示したものと見ることはできないし、同通達に従った税務処理は納税者が税法の規定に従って当然になすべき処理と一致している。また、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」とは、災害その他納税者の責めに帰することができない真にやむを得ない事由をいうものであり、納税者の法令の不知や誤解はこれに当たらないものと解されるから、本件においては、上記「正当な理由」があるとはいえない。
 さらに、請求人は調査担当者の具体的な指摘前に自発的に修正申告をしたから通則法第65条第5項に該当する旨主張するが、同項にいう「調査」とは所得金額の計算の基礎となった事実や法令の解釈適用に係る誤りの個別具体的な指摘を意味するものでなく、これらの有無を確認する目的でする質問、検査等のすべてを意味するもの、すなわち調査全般を指すものであり、本件においては、調査担当者が請求人の関与税理士に請求人の法人税の調査を行う旨事前通知し、請求人の本店において請求人の帳簿の検査等を行った事実があるから上記「調査」があったことになる。また、本件においては上記帳簿の検査のみならず、建造引当権の処理についての問答がなされている事実及び請求人が建造引当権に係る正当な税務処理を承知していた事実が認められるから、請求人は「更正があるべきことを予知して」いたと推認でき、通則法第65条第5項の規定は適用できない。

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納税相談に際し、請求人は買換えであることを申し出ていない等の状況の下で、担当職員が請求人提示資料中の、登記済権利証添付書類の内容についてまで十分検討しなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないとした事例

裁決事例集 No.47 - 22頁

 租税特別措置法第37条第1項の事業用資産の買換え特例の適用に関し、請求人は同特例の適用ができないとの原処分庁の指摘を受け、修正申告をした。これに伴う過少申告加算税の賦課決定処分に関し、請求人は、納税相談に際し、担当職員に対して本件農地の譲渡に関する一切の資料を提示して譲渡所得金額の適否について指導を受けたものであり、その資料の一部である登記済権利証には「農地の買替え」の文言が記載されていたことから、税の専門家である担当職員は、請求人から相談のなかったことについても当然すべての資料を詳細に検討して指導する義務があるのにこれを怠ったものである旨主張する。しかし、[1]請求人が本件農地は買換資産であることを申し出なかったことは明らかであること、[2]請求人が提示した売買契約書及び譲渡費用の領収書等により譲渡所得金額を算定することができたこと等から、担当職員が登記済権利証の添付書類の内容まで十分に検討しなかったとしても、そのことをもって原処分に取消しを免れないほどの違法、不当があったとはいえず、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められない。

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修正申告のしょうようがあった後になされた修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであるとした事例

裁決事例集 No.47 - 31頁

 請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないと主張するが、調査担当職員が請求人の青色申告決算書等を検討し、請求人等に対し電話により質問した上で、修正申告をしょうようしていることからすれば、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであり、過少申告加算税の賦課決定処分は相当である。

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公的年金等に係る雑所得の金額を算出するに際し、いわゆる「雑所得速算表」を誤認した結果、所得税の確定申告が過少申告となった場合において、誤認したのは請求人の過失によるものと認められ、また、原処分庁から指摘があれば訂正するつもりで法定申告期限前に申告書を郵送したところ、期限内に指摘されなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例

裁決事例集 No.58 - 1頁

 請求人は、公的年金等に係る雑所得の金額を算出する際に、「所得税の確定申告の手引き」に記載されている公的年金等に係る雑所得の速算表(以下「雑所得速算表」という。)を誤認しただけであり、このような単純な誤りについては過少申告加算税を課すべきではない旨主張する。
 しかしながら、雑所得の金額を算出するに当たって、雑所得速算表を用いて計算する場合、同表には具体的な計算方法も例示されており、請求人が通常の注意を払えばその計算方法を認識できたと認められ、雑所得の計算方法を誤認したのは請求人の過失によるものであるから、当初申告が過少となったことについて真にやむを得ない理由があったとは認められない。
 また、申告納税制度の下での所得税の確定申告は、本来納税者自身の判断と責任において法定申告期限までに提出されるものであるから、原処分庁が法定申告期限内に雑所得の金額の誤りを指摘しなかったからといって、そのことを理由に不当とすることはできない。
 したがって、原処分庁の行った過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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土地がいわゆる公図混乱地区に所在し、その地積の確定は測量が完了するまではできなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由に当たらないとした事例

裁決事例集 No.59 - 37頁

 請求人らは、本件更正処分による納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったのは、やむを得ない事情によるものであり、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある旨主張するところ、本件土地が公図混乱地区にあったため、その地積の確定には相当の時間を要し、現に原処分庁が本件更正処分をした時点において、本件土地の測量が完了していなかったことは認めることができる。
 しかしながら、過少申告加算税が、過少な申告という事実のみをもって賦課されるものであることに照らすと、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められる場合とは、税法の解釈に関して申告当時に公表されていた見解がその後改変されたことに伴い修正申告をした場合など、申告当時に適法とみられていた申告が、その後の事情の変化により、納税者の故意過失に基づかないで過少申告となった場合のように、過少申告をしたことが真にやむを得ない理由によるもので、かかる納税者に過少申告加算税を課すことが不当又は酷になる場合を意味するものと解するのが相当である。
 本件において、請求人らは、当初、本件土地の一部について、その登記名義が被相続人であるにもかかわらず、これを相続財産として申告しなかったばかりか、本件土地の地積は不動産登記簿上の地積とも、本件貸付台帳上のそれとも異なることを認識しながら、あえて当該貸付台帳上の地積等に基づいて本件申告をしたのであり、本件土地が公図混乱地区にあり、また、その地積を確定した上で修正申告をする予定である旨を調査担当職員に告げていたとしても、請求人らは、本件申告時において、本件土地の地積が本件申告に係る地積の範囲内であり、これを超えるものではないことを客観的に裏付ける事実を認識していたものということはできないのであるから、正当な理由があるとは認められない。

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原処分庁の調査担当職員が請求人の消費税に係る経理処理を是正しなかったとしても、国税通則法第65条第4項及び第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例

裁決事例集 No.61 - 20頁

 請求人は、税務調査において、調査担当職員から、外航航路に就航している航空機(以下、「外航機」という。)のハンドリング業務について消費税の免税に該当する旨回答を受けたと主張する。
 この点について、本件調査担当職員は、当審判所に対し、税務調査の際に、請求人から外航機のハンドリング業務に係る消費税について、元請先の航空会社の指導に基づき免税の経理処理をしているとの説明を受け、それ以上の確認を行わないまま、調査を終了した旨答述している。
 ところで、税務官庁が、税務調査において、納税者の経理処理について、特に指摘をしなかったからといって、当該経理処理を公的あるいは確定的に是認したものでないことは明らかであり、その後の税務調査において、当該経理処理の誤りが判明した場合に、その是正を求めることはむしろ当然である。
 そうすると、本件調査担当職員が請求人の消費税に係る経理処理を是正しなかった事実のみを持って、請求人に対して誤った指導を行ったというのは相当でない。

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土地の時効取得に係る一時所得の収入金額の発生時期について時効を援用した平成9年分としたことは、課税要件明確主義及び合法性の原則から逸脱したものとはいえないし、税法の不知、誤解等は、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例

裁決事例集 No.61 - 30頁

 請求人は、修正申告の基因となった土地の真実の所有者は現在訴訟中で不確定であるから、当該土地の時効取得に係る一時所得は、租税法律主義からいえば課税要件明確主義及び合法性の原則から逸脱しているし、時効を援用した時が一時所得の収入金額の発生の時であるとの判断は税理士や弁護士等の法律の専門家でも知らないのであるから、一般市民には対処のしようもなく、このような場合にまで過少申告加算税を賦課することは不当若しくは酷であると主張する。
 しかしながら、時効による権利の得喪の効果は時効を援用した時に確定的に生ずると解されており、請求人は本件土地に係る調停申立書において、時効取得を原因とする所有権移転登記を求める旨の主張をしているのであるから、本件土地の時効取得に係る一時所得の収入金額の発生時期を時効を援用した本件年分としたことは、課税要件明確主義及び合法性の原則から逸脱したものとはいえないし、税法の不知、誤解等は、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」には該当しないことから、請求人の主張には理由がない。

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国税通則法第65条第4項にいう「正当な理由があると認められるものがある場合」には、過少に税額を申告したことが納税者の税法の不知又は誤解であるとか、納税者の単なる主観的な事情に基づくような場合までを含むものではないとした事例

裁決事例集 No.64 - 65頁

 請求人は、原処分庁は本件確定申告書提出時点において、既に生命保険等の支払に関する調書の提出を受けていたのであるから、請求人に対して法定申告期限までに本件確定申告書の内容に誤りがある旨指摘し、それを是正するよう指導すべきであったのに、法定申告期限後相当期間を経過してから本件修正申告書の提出しょうようをしたもので、原処分庁の事務処理が遅かったことが原因であるから、国税通則法第65条第4項の「正当な理由がある場合」に該当する旨主張する。
 しかしながら、申告納税制度のもとにおける所得税の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであるから、請求人自身の判断と責任において作成され提出された本件確定申告書の内容に誤りがあったことは、請求人自身の責任であるというべきである。
 また、請求人の場合、本件解約保険金等を平成10年分の一時所得の総収入金額に算入せず確定申告したことが真にやむを得ない理由によるとはいえず、過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるともいえないから、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。

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確定申告書の提出から1年経過後になされた過少申告加算税の賦課決定処分に不当はないと判断した事例

裁決事例集 No.64 - 72頁

 請求人は、本件賦課決定処分は、本件確定申告書の提出から1年も経った後に一方的になされたものであるから不当である旨主張する。
 しかしながら、過少申告加算税は、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合を除き、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課されるものであるところ、請求人は、過少申告をしたものであり、また、請求人の主張する事情は、本件修正申告書の提出により納付すべき税額の計算の基礎となった事実とは何ら関係がないから、これが同項に規定する正当な理由に該当しないことは明らかであり、さらに、請求人の場合、他に同項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、本件賦課決定処分を不当ということはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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譲渡所得の金額の計算を誤ったのは、譲渡した土地は亡父が生前に事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例を適用して取得した買換資産であることを知らなかったためであること、また、老後の生活のため売却したものであること等の事情を課税処分において考慮すべきであるとの請求人の主張には理由がないとした事例

裁決事例集 No.64 - 78頁

 請求人は、譲渡した土地が亡父から相続した土地であったため、本件土地が買換資産であり、本件土地の譲渡時に別件土地の取得価額を引継価格として譲渡所得の金額が計算されることを知らなかったこと、及び家族の老後の面倒をみるという経済上の事情があることを考慮し、情状酌量により原処分の全部を取り消すべきであると主張する。
 しかしながら、租税法律主義の下、現行の租税法には課税処分において情状酌量をすべきとの規定はないことから請求人の主張には理由がない。
 また、本件更正処分は、請求人が確定申告書の提出に当たり、譲渡所得の金額の計算上、取得費に誤りがあったことに基因し、かつ、当該誤りを是正するために行われたもので、当初適正であった申告につきその後の事情の変更により過少申告となったことによるものではないことは明らかであるから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある場合には該当せず、賦課決定処分は適法である。

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社会福祉法人に土地を贈与し、国税庁長官に租税特別措置法第40条の規定に基づく承認申請をした場合において、これに対する不承認通知が所得税の法定申告期限までになかったことが国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由に該当しないと判断した事例

裁決事例集 No.65 - 26頁

 請求人は、法定申告期限内に適正な確定申告ができなかったのは、本件承認申請に対する国税庁長官からの不承認通知が法定申告期限までになかったからであり、また、通知が法定申告期限までにない場合は、原処分庁が請求人に対し、譲渡所得の申告が必要であることの指導をすべきであるが、その指導もなかったのであるから、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められるものがある場合に該当する旨主張する。
 しかしながら、法人に対する資産の贈与は、所得税法第59条の規定により譲渡所得の課税対象であることが認められ、譲渡所得の申告が必要なことは明らかである。そして、請求人が租税特別措置法第40条の規定に基づく承認申請書を国税庁長官に提出したからといって、譲渡所得が非課税となるものではなく、国税庁長官の承認を受けたものについて非課税となるにもかかわらず、請求人は、譲渡所得の申告をしなかったことが認められる。請求人が法定申告期限までに譲渡所得の申告を行わなかったのは、不承認の通知があるまで譲渡所得の申告は必要がないとの請求人の誤った税法解釈に基づくものであり、また、当初の申告に誤りがあったとしても、それは納税者自身の責任においてされたものであり、これについて原処分庁が請求人に申告内容を正すという指導をしなかったからといって、請求人の納税義務に影響を及ぼすものではなく、正当な理由には該当しない。

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申告相談担当職員による誤った指導等はなく、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないと判断した事例

裁決事例集 No.67 - 17頁

 「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、例えば、確定申告の申告相談等において、納税者から十分な資料の提供等があったにもかかわらず、税務職員が納税者に対して誤った指導を行い、納税者がその指導に従ったことにより過少申告になった場合で、かつ、納税者がその指導を信じたことについてやむを得ないと認められる事情がある場合のように、過少に税額を申告したことが納税者の責めに帰することができない客観的な障害に基因する場合など、その申告が真にやむを得ない理由によるものであり、納税者に過少申告加算税を課すことが、不当又は酷になる場合を意味するものであって、その過少申告が納税者の不知又は誤解であるとか、納税者の主観的な事情に基づくような場合までを含むものではない。

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公共事業施行者が誤って発行した公共事業用資産の買取り等の証明書等に基づいて、租税特別措置法第33条の4第1項の規定による特例を適用して確定申告したことが、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないと判断した事例

裁決事例集 No.67 - 25頁

 収用に伴う移転補償金が、収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除の特例の適用の対象となるのは、租税特別措置法第33条第1項又は同条第3項に該当する場合である。
 そうすると、収用に伴う移転補償金が本件特例の適用の対象となるか否かは、公共事業施行者との契約、移転補償の対象となった資産の所在地及び資産の取壊し等の事実によって検討すべきであるところ、請求人は、公共事業施行者が誤って発行した公共事業用資産の買取り等の証明書等をもって、本件特例に該当するものとして確定申告を行ったが、これは、法の誤解あるいは判断の誤りであると認められること、また、その他請求人には、正当な理由がある場合に該当すると認めるに足りる証拠はないことから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある場合に該当しないと認めるのが相当である。

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贈与により取得した株式を株式発行会社の法人税の確定申告書に記載された所得金額等を基に評価したことにより贈与税の過少申告をしたことについて正当な理由はないとした事例

裁決事例集 No.70 - 9頁

 国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」とは、過少に税額を申告したことが納税者の責めに帰すことができない客観的な障害に起因するなど、その申告が真にやむを得ない理由によるものであり、納税者に過少申告加算税を課すことが不当若しくは酷になる場合を意味するものと解される。請求人は、本件贈与税の申告に際し、D社の法人税の確定申告書に記載された所得金額等を基に同社の株式の価額を算定したものであるが、その所得金額等は、その後同社による修正申告によって増加するに至ったのであるから、そもそも誤った内容のものであったのであり、これは同社の法人税の申告が適正に行われていなかったことによるものであるところ、請求人は、上記確定申告書の提出時において同社の代表取締役の地位にあったのであるから、同社の税務申告の最終責任者であると認められ、また、本件贈与税の申告時においても同じく代表取締役の地位にあったのであるから、上記法人税の確定申告書の記載内容が適正であるかどうか確認できる立場にあった。これらのことを考慮すると、その誤りを看過し、本件では、過少申告となったことが、真にやむを得ない理由によるもので、請求人に過少申告加算税を課すことが不当若しくは酷になる場合に当たるとは認め難い。

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過少申告となった原因は、単なる記載誤り及び法律に明示されていない事項の解釈誤りによるものであり、悪意がないから、社会通念的には「正当理由がある場合」に該当する旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.71 - 21頁

 過少申告加算税は、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課される性質のものであると解され、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、申告時においては、その当時の諸状況に照らして適法と認められるべきであった申告がその後の事情の変更等により、納税者の故意過失に基づかないで当該申告が過少となった場合のように、当該申告が真にやむを得ない理由によるものであり、納税者に過少申告加算税を課すことが、不当又は酷になる場合を意味するものと解され、その過少申告が納税者の税法の不知又は誤解によるなどの納税者の主観的な事情に基づくような場合までを含むものではないと解される。よって、請求人の主張には理由がない。

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確定申告期限以前において判断能力がなかったとは認められないから、納税者の責めに帰すことができない客観的事情は認められないとした事例

裁決事例集 No.75 - 61頁

 請求人らは、被相続人は○○症という病にり患しており、本件修正申告書等を提出した平成18年11月15日には既に判断能力がなかったと思われるから、同申告書等を提出した行為そのものが無効であると主張する。しかしながら、たとえ○○症であったとしても、そのことだけで意思能力が直ちに失われるものではなく、本件調査における調査担当者への質問に対する被相続人の回答・対応に異常は認められず、「聴取書」の作成に当たっても、その内容に不自然不合理な点も見受けられない。また、本件調査に基づいて行った修正申告は、調査担当者が実額及び一部推計で算出した所得と同額であり、その内容が理解できずに実際の所得金額と異なる不合理なものであったということもできない。これらを総合して判断すると、被相続人が、本件修正申告書等を提出した当時に興奮状態ないし幻聴などの症状により、本件修正申告書等の内容を認識し、判断できる能力を欠いていたと認めることはできない。
 また、請求人らは、被相続人が○○症を発病した以降においては、国税通則法第65条第4項及び同第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由がある場合」に該当する旨主張する。しかしながら、「正当な理由がある場合」とは、真に納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情があり、加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうのであって、加算税が、当初から適法に申告し納税した者との不公平を是正し、適正な申告納税の実現を図り、納税の実を挙げようとする行政上の措置であることからすれば、これらの正当な理由とは、当該加算税に係る本税の確定申告期限までに存在した事情であることが必要であり、被相続人においては、上述のとおり本件修正申告書等の提出時において判断能力がないとはいえず、このことは確定申告期限以前においても同様と認められる。また、その他、審判所の調査においても納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情は認められないことから、請求人らの主張は採用できない。

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法人税基本通達14−1−1の2ただし書が適用されると誤解して申告したことにつき国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」はないとした事例

裁決事例集 No.76 - 29頁

 請求人は、E社が発行する株式及び新株予約権等に投資することを目的とする民法上の組合である本件組合の非業務執行組合員であるが、本件組合契約における出資金1口当たりの単価は、本件組合が新株予約権の発行に際して払い込みをなすべき額と、その行使に際し払い込みをなすべき額との合計額と同額であり、一方請求人を含む各組合員は、当初本件組合に払い込むべき出資金を払い込み、その後各組合員が個々に新株予約権の行使を希望する都度に残額を払い込むことが求められ、さらに、本件組合は、出資金の全額が払い込まれた場合には、組合財産の運用、組合財産の分配についての業務執行組合員の判断にかかわらず、新株予約権を直ちに行使し、発行された株式を当該組合員に現物分配することとされ、実際にもそのように現物分配していることからすれば、本件組合への新株予約権の割り当て時点において、事実上その出資口数に応じた新株予約権にかかる権利義務が請求人に帰属したものと認められる。
 新株予約権の取得に係る利益は、既に確定している請求人の出資口数に相当する新株予約権と一体となった利益で、請求人に帰属する固有の利益であり、本件組合からの分配を経由しない利益として法人税法第22条第2項に基づき益金の額に算入すべきであり、法人税基本通達14−1−1の2が定める組合事業に関する利益金額又は損失金額のうち分配割合に応じて利益を受けるべき金額又は損失の負担をすべき金額(帰属損益額)に該当するものではない。
 したがって、新株予約権の取得に係る利益について、法人税基本通達14−1−1の2ただし書きが適用される余地はなく、請求人が同通達ただし書きの適用があると理解し、当該利益を新株予約権を取得した事業年度の益金の額に算入せず確定申告をしたことは、税法の不知や法令解釈の誤解など請求人自身の事情に基づくものであるから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。

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