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評価単位
数筆の宅地によって形成されている本件土地の評価は、各筆ごとに行うべきではなく、また、本件ため池について、原処分庁が現況により、本件ため池の価額を宅地比準方式によって評価したことは相当であるとした事例
裁決事例集 No.42 - 199頁
請求人は、8筆の宅地によって形成されている一画地の本件土地の価額を評価する場合には、各筆の固定資産税評価額の合計額を基に評価する方法を認めるべきである旨主張するが、利用状況からすると、本件土地の価額は、二つの区画に区分して評価するのが相当である。
また、本件のため池について、固定資産税が非課税であるとしても、現況が「公共の用に供するため池」でなく、開発規制もないこと、更に、本件ため池の一部が相続開始後に譲渡されている事実からすると、原処分庁が本件ため池の価額を宅地比準方式によって評価したことは相当である。
平成3年11月30日裁決
土地の一部を物納する予定につき、物納予定地と残地に分けて評価すべきであるとの請求人の主張について、物納予定の有無は本件土地の相続開始時における現況に影響を及ぼさないから区分して評価することは相当でないとした事例
請求人は、本件土地の一部は物納予定地であり、物納により分離されるので、残地は地積が減少して形状も悪化することになり、この事情を無視して相続開始時の形状のままで評価するのは妥当ではない旨主張する。
しかしながら、土地を評価するに当たっては、相続開始時において物理的に一体として利用されている土地ごとに区分して評価するのが、「相続開始時における財産の現況」に即した評価と解されるところ、本件土地は、相続開始時においてE株式会社にまとめて貸し付けられ、物理的に一体として利用されており、物納予定地と残地に区分して評価するのは相当ではない。
相続により財産を取得した者が、物納するか否か及び当該財産のどの部分を物納するかについては、相続開始後において、その者の意思、行為等によって決定したり、また、変更することができるものであるから、本件土地の相続開始時における現況に影響を及ぼすものではない。
平成7年1月12日裁決
貸し付けている宅地の評価に当たって、借地権者が3棟の建物を建築しそれぞれ別の事業の用に供していたとしても、その土地全体が一人の借地権者に貸し付けられており、かつ分割されることなく相続されていることから、その土地全体を1画地の宅地として評価することが相当であるとした事例
請求人は、本件土地は借地権者の所有するガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として最有効使用されているものであるから、建物の事業の用に供されている状況ごとに区分し、それぞれを1画地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件土地はその全体が借地権者の事業に係る建物の敷地として一体として貸し付けられ、現実に借地権者の事業の用に供されていることが明らかであり、また、本件土地は分割されることなく、その全部を相続人が相続していることから、貸し付けられている土地全体を1利用単位、すなわち1画地の宅地と判断するのが相当である。
平成10年6月23日裁決
遺産分割の一部が財産評価基本通達7−2(1)注書に定める不合理分割に当たる場合には、その不合理分割に当たる部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、それ以外の部分は分割後の画地により評価単位を判定するのが相当であるとした事例
請求人らは、相続開始前までは被相続人が一団の農地として利用していた本件各土地について、本件各土地の一部の遺産分割は財産評価基本通達7−2《評価単位》(1)注書に定める不合理分割に該当するから、同定めのとおり、分割前の利用の単位である本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、財産評価基本通達7−2(1)注書の趣旨は、不合理分割された土地をそのまま評価した場合、実態に即した評価がなされないため、課税の公平に資する目的で評価単位を是正することにあると解されることからすると、遺産分割の一部が不合理分割である場合には、不合理分割に当たる部分についてのみ是正すれば足りるから、その部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、その余の部分については、分割後の画地により評価単位を判定するのが相当である。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達7、7−2、24−4、40、40−3
建物の一部が収用に伴い取り壊された前後を通じて、評価対象地の利用状況及び権利関係に変化がなかったことから、評価単位は1つとすべきとした事例
《要旨》
請求人は、本件土地は、その一部が過去の収用により買い取られたことに伴い、建物の一部が取り壊されており、当該収用後に未利用の状態であった空き地部分と建物の敷地として使用貸借していた部分との2つの利用単位からなっているので、それぞれ別の評価単位として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件土地は、当該収用以前から1棟の建物の敷地として一体として利用されており、当該収用に伴い建物の一部が取り壊された後も、その利用状況及び権利関係に変化がないことからすれば、財産評価基本通達7−2《評価単位》の定めに基づき1つの評価単位(1画地)として評価すべきである。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達7−2
相続人の一人が遺産分割により取得し同族会社に一括貸ししていた単独所有地及び共有地の評価単位は、全体を一画地として評価するのが相当とした事例
《ポイント》
本事例は、相続人の一人が遺産分割により取得した単独所有地及び共有地(いずれも立体駐車場の敷地)について、当該共有地が、遺産分割の前後を通じて当該単独所有地と同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる場合には、共有地であることによる使用等の制約は実質的には認められないから、当該単独所有地と区分して評価する必要はないとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人らが相続により取得した一団の雑種地(本件各雑種地)は、その一部について、共有者の有無及び共有持分の割合が異なるため、5区画に区分した評価単位により評価すべきとし、開発許可を要する面積の基準を上回る1区画のみを財産評価基本通達24−4《広大地の評価》に定める広大地として評価すべきである旨主張し、他方
請求人らは、本件各雑種地については、一部の雑種地が共有となっているものの、全体が同族法人に賃貸され、当該法人が立体駐車場の敷地として利用していた土地であることから、全体を一つの評価単位により評価すべきであり、広大地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件各雑種地は、堅固な立体駐車場の敷地として一括で貸し付けられ、一括して貸付けの用に供されていたことなどから、当該相続に係る遺産分割後も同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる状況にあり、一部が共有地であることによる使用、収益及び処分の制約が実質的にないものと認められ、その利用状況、権利関係等から、全体を一つの評価単位により評価すべきであるが、
本件各雑種地の属する幹線道路沿いの地域における標準的使用は、商業施設等の敷地であり、本件各雑種地を当該地域の標準的使用に係る敷地の地積に区分したとしても、開発行為を行うに際して公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められないことから、本件各雑種地は、広大地には該当しないものとして評価すべきである。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達7、7−2
《参考判決・裁決》
静岡地裁平成19年7月12日判決(税資257号順号10752)
平成22年7月22日裁決(裁決事例集No.80)
登記簿上、主たる建物及び附属建物と記載されているとしても、当該各建物の機能、配置及び貸付けの状況などから、当該各建物の敷地を区分して評価することが相当であるとした事例(平成22年4月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平成25年10月1日裁決)
《ポイント》
本事例は、登記簿に主たる建物及び附属建物と記載されているとしても、当該各建物が、独立して機能すること、接していないこと及び別の第三者に貸し付けられていることからすると、当該各建物の敷地を区分し、2画地の宅地として評価すべきであるとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人Dと被相続人の共有であった家屋(本件家屋)の敷地(本件土地)の評価単位について、本件家屋は、登記簿上、主である建物(本件主建物)を「共同住宅」、附属建物(本件附属建物)を「店舗・共同住宅」として記載されているので、本件附属建物は、効用上、本件主建物と一体のものとする登記がされていること、
住宅地図においては、本件主建物と本件附属建物は接していること、
請求人Dと被相続人は、本件家屋を共同住宅及び店舗として賃貸していることから、1画地の宅地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、1画地の宅地の判定は、その宅地を取得した者が、その宅地を使用、収益及び処分をすることができる利用単位又は処分単位であって、原則として、宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として、使用貸借による使用貸借権を除く。)の存在の有無により区分し、
他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分して行うものと解されるところ、本件主建物と本件附属建物は別棟で接しておらず、それぞれが独立して機能する建物と認められ、また、本件主建物は共同住宅として、本件附属建物は店舗付住宅として、それぞれ別の第三者に貸し付けられていたことから、本件主建物の敷地部分と本件附属建物の敷地部分は別の利用単位と認められるので、本件土地は、2画地の宅地として評価するのが相当である。
《参照条文等》
財産評価基本通達7−2
所有する宅地とその宅地に隣接する相当の地代を支払って借り受けている借地権は、一体で評価することが相当であるとした事例(平成22年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成26年4月22日裁決)
《ポイント》
本事例は、所有する宅地に隣接する宅地を相当の地代を支払い借り受けている場合において、相当の地代を支払って借り受けている借地権の価額は零と評価されるが、当該借地権は土地を専属的に利用できる権利であるから、所有する宅地と当該借地権が一体で利用されている場合には、これらを併せた全体を評価単位(1画地の宅地)として一体で評価することが相当であるとしたものである。
《要旨》
請求人らは、相続により取得し、隣接する各借地(本件各借地)とともに貸家の敷地として利用していた宅地(本件宅地)の価額について、本件各借地に係る借地権は、相当の地代の支払により、その価額が零とされ財産的価値がないものであるから、財産的価値がない使用借権が設定された場合と同様に、本件宅地のみを財産評価基本通達7−2《評価単位》(1)に定める評価単位(1画地の宅地)として評価すべきと主張する。
しかしながら、本件各借地に係る借地権は、借地借家法上の借地権であり、被相続人は、本件各借地を継続的かつ専属的に利用できる権利を有し、相続開始日において、本件宅地と本件各借地を併せて、貸家の敷地としてその全体を一体として利用していたものであるから、借主の死亡が終了原因とされ、人的つながりのみを基盤とする使用借権が設定された場合と同一にみることはできないので、本件宅地の価額は、隣接する本件各借地と併せた全体を評価単位(1画地の宅地)として評価することが相当である。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達7−2
昭和60年6月5日付直資2−58ほか「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」
昭和48年11月1日付直資2−189ほか「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」
《参考判決・裁決》
静岡地裁平成19年7月12日判決(税資257号順号10752)
千葉地裁平成15年4月22日判決(税資253号順号9330)
青地(旧水路)により分断されている2つの土地についてその利用状況等から1つの評価単位とすると判断した事例(平成24年11月相続開始に係る相続税の再更正処分及び更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平成28年12月7日裁決)
《ポイント》
本事例は、青地(旧水路)により分断されている2つの土地についてその利用状況等(物理的及び法的)から1つの評価単位として取り扱うのが相当であると判断した上で、各土地を評価するに当たっては、まず青地部分の土地を含む各土地全体の評価額を算出し、その後、当該評価額から青地部分の土地の価額を控除して評価するのが相当であると判断したものである。
《要旨》
原処分庁は、本件1土地(生産緑地)と本件2土地(生産緑地)は、市が所有する青地(旧水路)により分断されており、各土地は別個の評価単位として取り扱うべきである旨主張する。
しかしながら、相続開始日において、本件1土地と本件2土地との間には青地が介在していたものの、当該青地は全て埋め立てられており、水路としての機能を失っていたこと、
本件1土地及び本件2土地は、青地部分の土地を含めて一体の畑として耕作されていたこと、
市は、本件1土地、本件2土地及び青地部分の土地を一体の生産緑地地区に定める都市計画を決定していたことなどの各事実が認められる。したがって、本件1土地及び本件2土地の各土地は、物理的にも法的にも分断されておらず、また、その利用も一体であったと認められるため、一団の生産緑地、すなわち1つの評価単位として取り扱うのが相当である。そして、本件1土地及び本件2土地の各土地を評価するに当たっては、まず青地部分の土地を含む各土地全体の評価額を算出し、その後、当該評価額から青地部分の土地の価額を控除して評価するのが相当であり、その場合、
当該青地部分の土地の売買が成立し得るのは請求人らと市の間に限定されること、
市が当該青地部分の土地を請求人らに売却した場合の売買代金である払下げ費用相当額は、国有財産評価基準によりその算定方法が画一的に決められていることからすると、青地部分の土地の価額については、相続開始日において当該青地が請求人らに払い下げられたとした場合の払下げ費用相当額とするのが相当である。
使用貸借により貸し付けている土地の評価単位について判断した事例(平成23年6月相続開始に係る相続税の各更正の請求に対する各更正処分・一部取消し、棄却・平成28年12月20日裁決)
《ポイント》
本事例は、所有する土地(雑種地)の一部を自ら使用し、他の部分を使用貸借により宅地又は雑種地として貸し付けている場合に、地目が相違しても、その全体を一団の雑種地として評価するのが相当であると判断したものである。
《要旨》
請求人らは、テニスクラブ(本件テニスクラブ)の敷地の一部として利用している各土地の価額は、本相続財産以外の土地を含む本件テニスクラブの敷地として利用されていた土地全体を一つの「評価単位」として財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(本件通達)に定める広大地補正率を適用すべきである旨、及びf市との締結に基づく各協定書において、開発行為を行おうとした場合に制約を受けたことを理由にその協定に関する区域を一つの評価単位として、居宅として利用されていた土地(本件B区画)及び駐車場として利用されていた土地(本件C区画)を評価する際に、本件通達に定める広大地補正率を適用して評価すべきである旨主張する。
しかしながら、土地の評価単位は、原則として、遺産分割後の取得者ごとに区分した後、利用の単位となっている土地ごとに判定した評価単位を基に評価すべきであり、本件の場合、取得者別、利用の単位別に区分した4区画の土地をもって、それぞれを一つの評価単位として評価すべきである。また、本件B区画及び本件C区画について、協定を締結したとの事実関係を前提としても、本件通達の定めに照らし、何ら影響を及ぼすものではない。したがって、請求人らの各主張は認めることはできない。
なお、本件に係る各相続財産の土地の評価単位の認定につき、当該土地の使用貸借に係る利用状況などに照らせば、使用貸借に基づく権利は、貸主、借主間の人的なつながりのみを基盤とするもので借主の権利が極めて弱いことから、自己の所有する雑種地の一部を自ら使用し、他の部分を使用貸借により宅地又は雑種地として貸し付けている場合には、たとえ地目が相違しても、その全体を一団の雑種地として評価するのが相当であり、また、同様に、自己の所有する宅地又は雑種地に隣接する宅地又は雑種地を使用貸借により借り受け、自己の所有する宅地又は雑種地と一体として利用している場合であっても、所有する宅地又は雑種地のみを1画地の宅地又は一団の雑種地として評価するのが相当である。
《参照条文等》
財産評価基本通達7−2