財産の評価

評価基準の適用

  1. 評価の原則
  2. 土地及び土地の上に存する権利
    1. 評価基準の適用(5件)
    2. 倍率方式による評価
    3. 路線価による評価
    4. 各影響要因に基づく加減
    5. 私道
    6. 土地区画整理事業施行区域内の土地
    7. 貸宅地
    8. 使用貸借に係る土地
    9. 賃借権
    10. 借地権
    11. 区分地上権
    12. 土地所有権移転請求権
    13. 貸家建付他
    14. 雑種地
    15. 農地
    16. 山林
    17. その他
  3. 家屋及び庭園設備
  4. 動産
  5. 取引相場のない株式
  6. 出資の評価
  7. 預貯金
  8. 貸付金債権等
  9. 預託金制のゴルフ会員権
  10. 施設建築物の一部の給付を受ける権利
  11. 構築物

借地権の価額は、不動産鑑定士が、実際に支払われている賃料に基づく純収益を還元して得た収益価格を標準として、売買事例を基に算定した比準価格等を比較考量して算定した鑑定評価額ではなく、評価基本通達に従って評価した価額が相当であるとした事例

裁決事例集 No.51 - 620頁

 請求人は、不動産鑑定評価基準は、賃貸されている借地権付建物の価格を求める場合について、実際実質賃料に基づく純収益を基に還元して得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定すると定めており、また、バブル崩壊後の不動産の取引の実態や融資の際の担保評価をみると収益性を重視しているところから、本件借地権の価額は、実際の賃料収益を基に算定した収益価格の80パーセント相当額と近隣の取引事例に比準して算定した比準価格に見込再調達原価を基に算定した建物価格を加算した積算価格の20パーセント相当額の合計額から建物の価額を除いて算定した本件鑑定評価額により評価すべきであり、更正の請求を認めるべきであると主張する。
 しかしながら、本件鑑定評価額の収益価格は、建ぺい率及び容積率を最大限まで使用していない建築後40年近くも経過し老朽化や陳腐化の激しい建物における近隣相場より著しく低廉な賃料を基に算定されたもので、借地権の最有効使用の状況における適正な賃料を基礎として算定されたものではなく、客観的な交換価値を表す価額とは認められないので、この収益価格を標準に上記のウエイトで算定した本件鑑定評価額は適正な価額とは認められない。
 そこで、近隣の取引事例からみて時価相当と認められる借地権の比準価格を基に、特に不合理であるとは認められない評価基本通達に定める貸家建付借地権の評価方法に従って算定した借地権の価額は、当初申告に係る価額を超えるので、更正の請求は認められない。

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地価の急落により時価が路線価を下回る、いわゆる逆転現象が生じているとして、鑑定評価額による申告がなされたが、相続開始日における時価は相続税評価額を上回っていることが認められるとして、原処分庁が相続税評価額により評価したことを相当と認めた事例

裁決事例集 No.54 - 375頁

 請求人は、本件各土地の存する地域は地価が急落しており、時価が路線価を下回る、いわゆる逆転現象が生じているので、不動産鑑定士の鑑定評価額による申告を認めるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件鑑定評価額には次のとおり種々の不適切な点が認められることから、本件鑑定評価額が相続税法第22条に規定する時価を表しているものとは認められない。

  1.  本件鑑定評価書が採用した各取引事例は、その属する地域と本件各土地の近隣地域との特性に相当の相違がみられること及び底地の取引事例を活用していることなどから、不適切なものと認められる。
  2.  本件鑑定評価書が採用した収益事例は、その属する地域が本件各土地の近隣地域と同一需給圏とはいえないことから、不適切なものと認められる。
  3.  本件鑑定評価書が採用した公示地は、その属する地域と本件各土地の近隣地域との特性に相当の相違がみられることから、不適切なものと認められる。

 そこで、当審判所において本件各土地の相続開始日における価額について検討したところ、本件各土地の価額は、原処分庁が評価基本通達に基づいて評価した価額をいずれも上回っていることが認められた。
 よって、原処分庁が本件各土地の価額を相続税評価額により評価したことは相当と認められる。

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相続税評価額は審判所が算定した時価を上回っているとして、時価を上回る価額による処分の一部を取り消した事例

裁決事例集 No.54 - 420頁

 請求人は、本件宅地の存する地域は地価が異常に下落しており、相続開始日における時価が相続税評価額を下回っているから、本件通知処分は本件宅地の時価の解釈を誤った違法な処分であり、本件宅地の価額は請求人が依頼した不動産鑑定士の鑑定評価額によるべきである旨主張する。
 一方、原処分庁は、原処分庁が依頼した不動産鑑定士による本件宅地の鑑定評価額は相続税評価額を上回っているから、本件宅地の価額は相続税評価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人が提出した鑑定評価書には、鑑定評価に採用した取引事例に不適当なものがみられるなど種々の不的確な点が認められることから、当該鑑定評価額は本件宅地の価額を表しているものとは認められず、また、原処分庁が提出した鑑定評価書の写しには、その鑑定を行った不動産鑑定士の氏名が明らかにされていないことから、本件宅地の価額を証明する証拠資料として採用することはできない。
 そこで、当審判所において、本件宅地と同一の用途地域内にある取引事例等を抽出し、これらの現況を確認し、土地価格比準表に準じて地域要因及び個別要因の格差補正を行う方法により本件宅地の価額を算定したところ、一部の宅地について、審判所が算定した価額が相続税評価額を下回っていることが認められたので、審判所が算定した価額を当該宅地の価額とするのが相当である。
 よって、本件通知処分はその一部を取り消すべきである。

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親族の居住用家屋の敷地の用に供されていた宅地は使用借権の付着した宅地として、樹苗地として低い賃料で法人に賃貸されていた畑地は、賃借権の付着した雑種地として評価するのが相当とした事例

裁決事例集 No.65 - 671頁

 請求人らは、本件土地には隣接土地に係る判決の効果が及び、借地法人が営業を継続する限り返還されることのない土地であるところ、財産評価基本通達にはこのような土地の評価方法の定めがないことから、財産評価基本通達によることのできない特別の事情があり、その価額は、収益還元法によって時価を算定した鑑定評価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件土地と隣接土地とでは取得の経緯及びその占有者(借地法人)の使用権原を異にするものであるから、本件判決において判断された「遺産分割に当たって、家業の樹苗園が存続する限りは使用させるとの使用貸借契約が黙示的に成立した」との法律関係は本件土地には認められないので、財産評価基本通達により難い特別な事情があるとは認められない。
 また、請求人の鑑定評価額を検討するに、収益還元法による価額を基礎とするところ、収益還元法には収益、還元率など算定が困難と認められる諸要素があり、また、前提となる土地の利用関係に誤認が認められるところから、請求人の主張する鑑定評価額は採用し難い。

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本件土地の価額は、相続後に本件土地を譲渡したときの価額の7割相当額によるか、又は公売価額を基準として算定した金額とすべきとの請求人の主張に対して、路線価は時価を上回っておらず、また、特殊性のある公売価額を客観的時価と認めることはできないとした事例

裁決事例集 No.67 - 589頁

 請求人らは、本件土地の価額について、相続開始日における本件土地に係る路線価は、相続後に本件土地を譲渡した際の価額を上回っているから、当該譲渡価額を基に評価すべきであると主張する。
 しかしながら、本件土地について、路線価を基礎として算定した評価額(単価)は、同じP市p町に位置し、都市計画法上の用途地域や建築基準法上の規制も同じである本件公示地の公示価格を基礎として算定した価格を下回っていることから、本件土地に係る路線価は本件土地の時価を上回っているとはいえない。
 また、請求人らは、本件土地の価額は、本件譲渡価額の7割相当額とすべきである旨主張するが、評価水準は、課税行政庁内部において土地の評価に関する取扱いを統一するに当たり、評価の安全性にも配慮しながら均一な評価を効率的に行うために取り入れられているものであって、実務上少なくともこれを乗じた価額を下回ることは通常ないであろうと認めるところにより課税処分等をするための計算上の一要素にすぎないものであるから、土地の時価を個別の事情に基づき個々に求める場合に評価水準をしんしゃくすべき合理的な理由は全くなく、本件土地の価額は、本件譲渡価額の7割相当額とすべきであるとの請求人らの主張は採用できない。
 さらに、請求人らは、以上の主張が認められないならば、本件土地の価額は、請求人らが把握している本件公売価額に基づき算定すべきであるとも主張するが、公売は、換金を目的とした強制売却であるという特殊性を有しており、その売却価額が客観的時価より低額であるのが通例であると認められること、また、本件公売地と状況が類似し、本件土地と同一区域内の土地の売買実例との比較においても、本件公売価額を本件土地の時価と認めることはできない。

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