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無償譲渡と認めなかった事例
- 第二次納税義務の通則
- 清算人等の第二次納税義務
- 共同的な事業者の第二次納税義務
- 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務
- 処分の意義
- 徴収不足との関係
- 無償譲渡と認めた事例
- 無償譲渡と認めなかった事例(15件)
- 低額譲渡と認めなかった事例
- 利益を与える処分
- 受けた利益額の算定
- 債務免除
- その他
- 事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務
- その他
不動産の売買契約の不履行により保証金を没収したことが国税徴収法第39条の無償譲渡に該当しないとした事例
裁決事例集 No.23 - 207頁
請求人が滞納者から不動産の売買契約の不履行により、保証金を没収したことが国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当するかどうかは、保証金と対価的関係に立つ請求人の給付の存否を確定することによって判定すべきであるところ、請求人は本件不動産の保全に要した資金に係る金利その他諸費用一切の負担をすることになっていて、これらの負担と対価的関係に立つ金員として保証金を取得したこと、かつ、没収されるべき保証金の額が当該給付の内容等に照らして不相当に高額でないことが認められるから、当該没収は無償譲渡に当たらず、したがって、原処分庁が同条の規定に基づいてなした第二次納税義務の告知処分は相当でない。
昭和56年10月23日裁決
債務の弁済を滞納会社から受けたことについて、同社からの利益の享受に当たらないとした事例
裁決事例集 No.26 - 163頁
滞納会社が土地の譲渡代金の一部を同社の役員である請求人の債務の弁済に充当したことは、請求人が同社から利益を受けたものであると原処分庁は主張するが、請求人は滞納会社が本件土地を取得した際、その取得代金を滞納会社に立替えていて、当該立替えによる債権を有していたことから、滞納会社は当該立替金を請求人に返済したものと認められる。
したがって、請求人は滞納会社から利益を受けていないのであるから、請求人に対する第二次納税義務の告知処分は違法である。
昭和58年10月31日裁決
離婚9か月前にした妻に対する土地建物の贈与が国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当しないとした事例
裁決事例集 No.29 - 177頁
原処分庁は、離婚9か月前にした請求人(滞納者の妻)に対する本件土地建物の贈与は国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当するとして同人に第二次納税義務を課したが、[1]贈与当時、既に請求人は滞納者に対し離婚を申し出ており、その後も離婚の協議が継続していたこと、[2]離婚の協議が成立した際、滞納者と請求人との間で本件土地建物の贈与は離婚に伴う財産分与又は慰謝料の支払としての意味をもつものであることの了解があったこと、[3]離婚の原因が滞納者の家庭生活の放棄にも等しい行為に起因していることなどから、本件土地建物の贈与は、離婚に伴う財産分与又は慰謝料の支払の趣旨でなされたものであり、必要かつ合理的な理由があったものと認められるから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡には該当しない。
昭和60年4月17日裁決
妻名義で購入した不動産は、自己資金により購入した固有財産であると認定することにより無償譲渡に該当しないとした事例
原処分庁は、本件不動産を滞納者が前所有者から購入し請求人に無償譲渡したとして、請求人に対し国税徴収法第39条の規定に基づいて第二次納税義務の告知をしたが、滞納者は、本件不動産を購入する資金を有していたとは認められないこと及び
本件不動産は、請求人が自己資金により購入したものと認められることから、本件不動産の取得者は請求人とみるのが相当であり、原処分は取り消すべきである。
平成4年5月29日裁決
贈与があったことを前提としてなされた第二次納税義務告知は、受領した金員の性質を誤認したものであり、取り消しするのが相当であるとした事例
原処分庁は、滞納者から請求人に支払われた本件金員は相続分の前渡しないし将来の生計の資本とした贈与に当たると主張するが、滞納者には請求人との間に締結した農地使用の契約違反があり、したがって、請求人に損害賠償請求訴訟等の取下げを義務付ける合意に基づいて支払われたという必要かつ合理的な理由が存在することから、本件金員は和解による示談金と認められる。
よって、本件金員の授受は贈与によるものであると認定した原処分は相当ではなく、国税徴収法第39条の規定を適用した第二次納税義務の告知は取り消されるべきである。
平成4年8月31日裁決
不動産賃貸業を営む請求人が賃借人から敷金及び建設協力金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例
原処分庁は、建物賃貸人である審査請求人が建物賃借人である滞納者から建設協力金等の残額の返還債務の免除を受けたことが国税徴収法第39条に規定する債務の免除に該当すると主張する。しかしながら、国税徴収法第39条にいう無償譲渡等の処分とは、経済的合理性を欠き広く第三者に不相当な利益を与える処分をいい、その態様に制限はないと解するのが相当である一方、その行為が経済的合理性を欠き第三者に不相当な利益を与えるものでない限り、同条にいう無償譲渡等の処分に該当しないと解するのが相当であるところ、敷金については、未払賃料と明渡し費用に充てられた結果、その返還請求権は発生しなかったと認められ、建設協力金については、建物賃貸借契約に定められた「賃借人の都合による中途解約の場合、賃借人が当該契約と同等以上の条件で新たな賃借人を斡旋し、新たな契約が締結されない限り、賃借人は敷金及び建設協力金の残額の返還請求権を放棄する。」との条項が、滞納者の都合によって賃貸借契約が中途解約された場合に生ずる請求人の損害の賠償に代えて、建設協力金の残額の返還請求権を放棄し、その後請求人に生じた損害の多寡を問わず精算しないこととしたものと解されるから、建設協力金の残額の返還請求権の放棄は、賃貸借契約の中途解約によって請求人に生じることが予想される損害の賠償に代えて行われる違約金債務の弁済と同視することができ、本件建設協力金の額が本件建物の工事代金以下で不相当に高額とはいえず、また、その返済期間が建物の賃貸借期間と同期間で不相当に長期間であるともいえないことからすれば、請求人に対して一方的に不相当な利益を与えるものとはいえず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に当たるということはできない。
平成20年12月3日裁決
国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力発生時期につき、請求人が父から贈与された農地については所有権移転に係る農地法上の許可を受けていないことから、その他の不動産等については贈与された時若しくは請求人がその不動産等に係る第三者対抗要件を具備した時のいずれに解しても、同条の「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という要件が充足されていないとした事例
本件告知処分が適法であるとするためには、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分の効力が、本来の納税者である請求人の父が納付すべき国税(本件国税)の法定納期限の1年前の日以後に発生していることが要件となるが、父から請求人へ贈与された不動産等(本件贈与不動産等)のうち農地法上の農地については、所有権を移転する場合には、農地法第3条《農地又は採草放牧地の権利移動の制限》又は第5条《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定により、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならず、この許可は農地の所有権移転についての効力発生要件と解されているところ、これらの不動産については、農地法が定める所有権移転のための許可を得ていないのであるから、本件告知処分時においてこれらの不動産について無償譲渡等の処分の効力が発生したということはできない。
また、その他の不動産等についてみると、請求人が父から不動産等を贈与されたのは、本件国税の法定納期限の1年前の日よりも前であること、更に、不動産のように、第三者に対する対抗要件として登記を要するものについては、第三者対抗要件を具備したときに無償譲渡等の処分の効力が発生すると解したとしても、本件国税の法定納期限の1年前の日から本件告知処分時までの間において、請求人は、本件贈与不動産等につき第三者対抗要件を具備していないから、「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という国税徴収法第39条の適用要件を欠くこととなる。
なお、原処分庁は、無償譲渡等の処分の効力の発生時期に関し、本件贈与不動産等につき、贈与を原因とする請求人への所有権移転登記手続を命ずる判決の確定によって、請求人は当該不動産についての所有権移転登記手続をなし得る権利を取得したのであり、同判決の確定がなければ請求人は第三者対抗要件を具備することはできないのであるから、本件においては同判決の確定をもって国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力が発生したと解するのが相当である旨主張するが、同判決の確定によってはじめて贈与による所有権移転の効果が生じるものではなく、同判決を債務名義として請求人が単独で所有権移転登記手続をなし得るとしても、同判決の確定によって請求人が第三者対抗要件を具備したことにならないことは明らかであるから、原処分庁の主張には理由がない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
請求人が滞納法人から、不動産売買に係る仲介手数料に相当する債務の免除を受けたとは認められないとした事例
原処分庁は、請求人と本件滞納法人との間における不動産の売買を仲介した仲介業者が、請求人分の仲介手数料(本件仲介手数料)として金員を受領し、請求人あての領収証が発行されているところ、当該金員は本件滞納法人が自ら調達した金員により支払われたものであるから、請求人に本件滞納法人に対する本件仲介手数料に相当する債務が発生し、同時に、本件滞納法人が当該債務を免除した旨主張する。
しかしながら、上記不動産の売買契約においては、請求人が支払わなければならない当該不動産の代価や仲介手数料を含む売買に関して生ずる請求人が負担すべき一切の費用は、請求人が上記不動産の購入資金として借り入れた金員から賄われるべきものであったと認めるのが相当であり、本件滞納法人が本件仲介手数料を自ら調達した金員で支払ったのは、請求人が上記不動産の購入資金として借り入れた金員の中から本件仲介手数料が支払われるべきところ、請求人が当該不動産の購入資金として借り入れた金員から借入れに伴う事務手数料や登記費用等を控除した金額の全額が請求人の普通預金口座から上記不動産の抵当権者の普通預金に直接振り替えられたため、本件仲介手数料の支払に充てることができなくなったことによるものと認められる。
したがって、請求人が負うべき本件仲介手数料の支払債務を本件滞納法人が履行したと認めることはできず、そうすると、本件滞納法人には請求人に対する本件仲介手数料に相当する額の返還請求権は発生せず、それを無償放棄することもあり得ないのであるから、請求人が本件滞納法人から本件仲介手数料に相当する債務の免除を受けたと認めることはできない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
債権譲渡の債務者対抗要件が具備されていないから、無価値の債権の代物弁済により債務が消滅したとして国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとはいえないとした事例
《ポイント》
この事例は、請求人が滞納法人に負っていた借入金債務の支払に代えて返済資力のない債務者に対する請求人の債権を代物弁済したことにより請求人が利益を受けたとして、原処分庁がした国税徴収法第39条の第二次納税義務の納付告知処分等の適否が争われたところ、代物弁済の目的とされた債権の一部は、債務者対抗要件を欠いており、いまだ滞納法人に帰属しているとみることができるから、その部分については無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものであり、過去にこのような事例について判断した裁判例や裁決例はなく、先例となるものである。
《要旨》
請求人が有していた各貸金債権の代物弁済によって本件滞納法人の請求人に対する短期貸付金(本件短期貸付金)の消滅の効果が発生するためには、代わりの給付を現実に行うことが必要であるところ、当該各貸金債権の一部については、債権譲渡の第三者対抗要件が具備され、代わりの給付が現実にされたということができるとともに、主債務者及び保証人に資力がなく弁済を受けることが事実上不可能なものであるから、無価値物による代物弁済として国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分があったといえる。
しかしながら、他の貸金債権については、債務者対抗要件である債務者への通知を欠いており、代わりの給付が現実になされたとはいえず、本件短期貸付金のうち、当該貸金債権の代物弁済によって消滅したとされる部分は、いまだ消滅せず、本件滞納法人に帰属しているとみることができるから、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとは認められない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
民法第467条
請求人の預金口座に入金された滞納者が受領すべき譲渡代金の一部については、当該預金口座の入出金状況等から当該金員が請求人の処分権限内に移転したとはいえず、滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできないとした事例
《要旨》
原処分庁は、本件滞納者が受領すべき譲渡代金の一部が、本件滞納者が代表取締役を務めていた法人の普通預金口座から請求人の普通預金口座(本件請求人口座)に振り替えられたことにより、当該振替金(本件振替金)は本件滞納者から請求人の処分権限内に移り、本件振替金が本件滞納者に還流した事実も本件滞納者に対する対価等の支払の事実も認められないから、本件振替金は、本件滞納者から請求人に無償で譲渡された旨主張する。
しかしながら、本件請求人口座については、本件振替金の入金当時、本件滞納者の子であり請求人の配偶者であるEにおいて自由に出金できる状態にあり、入出金のすべてをEが行っているだけでなく、その口座の動向について、請求人が何ら把握していないのであって、引き出された金員が請求人個人の用途に使用されたことを認めるに足りる証拠がないだけでなく、かえって出金のあった日にE名義の預金口座に相応額の入金があるという同人のために費消されたことをうかがわせる事実が認められるのであり、Eが請求人の配偶者であることを併せて考えると、本件請求人口座が請求人に帰属すると認定することはできず、同口座はEの管理下にあったいわゆる借名口座であるとみるのが相当である。そうすると、本件請求人口座に本件振替金が入金されたことをもって、請求人の処分権限内に本件振替金が移転したとはいえないから、本件滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできず、ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
請求人が賃借人から敷金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例
《要旨》
原処分庁は、請求人が、請求人所有の建物の賃借人(本件滞納法人)からの申出により、賃貸借契約(本件賃貸借契約)を賃貸借期間の途中で解約するに当たり、本件滞納法人との間でした、本件滞納法人が請求人に対して敷金(本件敷金)の返還請求権(本件敷金返還請求権)を放棄する旨の合意(本件合意)に基づき、その放棄を受けたことは、本件滞納法人による国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「債務の免除」に該当する旨主張する。
しかしながら、国税徴収法第39条にいう債務の免除とは、広く第三者に利益を与えるものというと解されるところ、本件合意は、本件滞納法人がその賃借する建物を本件合意で定めたとおり明け渡すことを条件として、本件賃貸借契約の解約によって発生する損害賠償の額を予定し、その損害賠償請求権と本件敷金返還請求権等とを相殺することを定めたものであり、社会通念上、損害賠償の額を予定し、相殺することについて合理的な期待を有すると認められる範囲内にあるから、本件合意による約定は有効と認められ、これにより請求人の損害賠償の額が本件敷金等に相当する額に制限された上、その損害賠償請求権と本件敷金返還請求権等とが相殺されて消滅することとなることからすると、本件合意により請求人が利益を受けたということはできない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
滞納者の預金口座から出金された金銭が請求人の預金口座に入金されたことは、国税徴収法第39条の無償譲渡には該当しないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し・平成26年1月7日裁決)
《要旨》
原処分庁は、原処分庁が主たる納税者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するために請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)について、請求人と本件滞納者との間に債権債務関係はなく、本件滞納者の預金口座から出金された金銭(本件金員)が、請求人の預金口座(本件請求人口座)に入金されていたことから、請求人は本件滞納者から本件金員を無償で譲り受けており、本件納付告知処分は適法である旨主張する。
しかしながら、本件金員が本件請求人口座に入金された後、請求人が本件請求人口座の預金を費消等することはなく、本件金員と同額の金員が、本件請求人口座から出金され、本件滞納者の代表取締役が実質的に支配する別法人(本件関連法人)の預金口座に入金された後、同代表取締役が所有していた自宅不動産の競落資金に充てられたことなどからすると、本件金員の請求人口座への入金は、本件関連法人によって競落資金として利用されるまでの資金移動の一過程であったというべきであり、請求人が本件滞納法人から金銭を無償で譲り受けたとは認められないことから、本件納付告知処分はその全部を取り消すべきである。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
滞納者が自己の債務弁済に係る事務を請求人に委任していたことからすると、滞納者の預金口座から請求人の預金口座への振込入金は、当該委任に係る事務に関連して行われたものというべきであるから、当該入金をもって国税徴収法第39条が規定する無償譲渡等の処分があったということはできないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し・平成28年5月10日裁決)
《ポイント》
本事例は、争点の判断に当たり、審理の範囲を原処分庁が主張する間接事実の有無のみに絞ることなく、原処分庁が主張していない間接事実を認定し、当該認定事実から課税等要件の充足を否定したものである。
《要旨》
原処分庁は、滞納者の自宅売却代金(本件売却代金)の一部が滞納者の預金口座から請求人の預金口座に振込入金(本件入金)されたところ、滞納者が請求人に対して本件入金に係る金員の返還を求める意思を示していないこと、
請求人が本件入金を自宅のリフォーム費用に充てていることなどから、本件入金は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》が規定する無償譲渡等の処分に該当する旨主張する。
しかしながら、滞納者が本件売却代金を原資とする滞納者の債務弁済に係る事務を請求人に委任していた事実(本件委任)が認められることからすると、本件入金は、請求人が本件委任に係る事務に関連して行ったものというべきであるから、本件入金をもって国税徴収法第39条が規定する無償譲渡等の処分があったということはできない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は不相当に過大ではないから無償譲渡等の処分があったとは認められないとして、国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し・平成30年1月11日裁決)
《ポイント》
本事例は、離婚に伴う財産分与が民法第768条の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、滞納者(請求人の元夫)から請求人に対する預金債権及び生命保険契約等に係る解約返戻金の支払請求権(本件各債権)の譲渡は、滞納者が営んでいた事業(本件事業)の請求人への引継ぎに伴い無償で譲渡されたものであり、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分」(無償譲渡等の処分)に該当する旨主張する。
しかしながら、本件事業の引継ぎに伴い、滞納者から請求人に対し本件各債権の無償による譲渡があったとは認められず、滞納者と請求人の離婚協議の場で作成された合意書その他の状況等を踏まえると、本件各債権は離婚に伴う財産分与により滞納者から請求人に譲渡されたものと認めることが相当である。そして、離婚に伴う財産分与が民法第768条《財産分与》の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、無償譲渡等の処分があったとは認められない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
民法第768条
《参考判決・裁決》
最高裁昭和58年12月19日第二小法廷判決(民集37巻10号1532頁)
平成25年7月4日裁決(裁決事例集No.92)
滞納法人の売上げを譲り受けたことによる国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に基づく第二次納税義務の納付告知処分の取消請求において、請求人が受けた利益の一部は滞納法人に係る売上げではないとした事例
《ポイント》
滞納法人の売上除外等に加担した法人の口座へ売上金を振り込ませた後、請求人に当該売上金を現金又は振込みにより無償譲渡したとして告知処分された第二次納税義務について、請求人及び関係者らの答述等の信用性を検討した上で、上記加担した法人の口座に振り込まれた金員の一部は、滞納法人に係る売上げではないとして、当該第二次納税義務の一部を取り消したものである。
《要旨》
原処分庁は、滞納法人が各取引先から受け取るべき売上金が、請求人の指示の下、請求人の知人が主宰する法人を発行元とした各請求書に基づき、請求人に交付されたことについて、請求人、滞納法人の代表者及び請求人の知人(請求人ら)が認めていることから、滞納法人から請求人に対して、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償の譲渡があった旨主張する。
しかしながら、一部の取引先について、請求人らから、滞納法人に帰属する売上げを請求したものであるとの具体的な申述はなく、当該取引先から原処分庁への回答書にも、滞納法人に帰属する売上げであるなどの具体的な記載もない。また、本件の全証拠を検討しても、滞納法人に係る売上げであると断定するに足りる証拠は認められない。
《参照条文等》
国税徴収法第39条、第141条
国税徴収法施行令第14条第1項