ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例要旨 >> 法人税法関係 >> 賞与支払の事実
賞与支払の事実
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
役員の結婚式、結婚披露宴の費用は損金算入できないとした事例
裁決事例集 No.1 - 30頁
結婚式、結婚披露宴は、社会通念上私的行事であり、法人の取引先同業者等を招待した場合であっても、これらの費用を法人の交際費として損金とすることは相当でない。
昭和45年12月17日裁決
役員の配偶者に支給した金員は当該役員に対する賞与であるとした事例
裁決事例集 No.6 - 38頁
役員及び使用人の配偶者の内助の功は、請求人に直接及ぶものでなく、役員及び使用人による労務の提供を通じて請求人に及ぶものであるから、配偶者に支給した金員は、労務の提供者である役員及び使用人に対し支給された給与とみるのが相当である。
したがって、役員の配偶者に支給した金員は、その役員に対する臨時的な給与であり、役員賞与と認めるのが相当である。
昭和48年6月19日裁決
法人がその役員個人との業務委託契約に基づきその業務の対価として役員に支払った金員を役員賞与に該当するとした事例
裁決事例集 No.21 - 116頁
役員に対して管理職給という名目で支払った本件金員は、役員に対する給与ではなく、役員個人に対し別途委任したゴルフ会員権の販売代理権の獲得等の業務の対価であると主張するが、これらの業務を別途委任したことを証するに足りる証拠がなく、また、これらの業務に直接携わっていない管理職的地位にある使用人にも支給している事実があることから、これらの業務の対価として支払われたものとは認められず、仮に本件金員が業務の対価の名目で支払われたとしても、請求人の事業目的がゴルフ会員権の売買であることから、これらの業務そのものは、役員の業務執行の範囲に含まれ、これらの役員業務を含む役員業務一般に対する対価として支給されたとみるのが相当であり、かつ、その支給金額は売上金額を基とし、定期、定額のものでなく、臨時的なものと認められるので、本件金員は役員賞与とするのが相当である。
昭和55年12月24日裁決
法人がその役員に土地等を低額譲渡した場合におけるその譲渡価額と時価との差額相当額は役員賞与に該当するとした事例
裁決事例集 No.21 - 127頁
請求人が、その役員に対して譲渡した本件土地等の価額については、請求人が本件土地等に隣接する土地等をその直前に第三者に譲渡しており、その間、土地の価額の変動がほとんどないこと、本件土地等と隣接する土地等のいずれもその利用状況がおおむね同一であることから、隣接土地等の第三者への譲渡価額を基に本件土地等の価額を算定したところ、当該譲渡価額が著しく低額と認められるので、当該算定した価額と当該譲渡価額との差額に相当する金額を役員に対する臨時的な給与、すなわち、役員賞与として損金の額に算入しないこととした原処分は相当である。
昭和55年11月27日裁決
役員のみで行った旅行について、業務遂行上必要なものであったと認められないとして当該旅行費用を参加役員に対する賞与とした事例
裁決事例集 No.32 - 220頁
請求人は、本件旅行は、役員相互間の意思疎通を図るとともに採石場の視察及び取引先等の事業関係者にも該当する役員の接待を行い事業の円滑化に資する目的で行ったものであるから、本件旅行費用は業務遂行上必要なものであり交際費に該当すると主張するが、本件旅行において、採石場の視察を行ったとの事実は認められず、取引先等の事業関係者という者は役員の立場にある者であることなどから取引関係者の接待ということもいえず、また、旅行中に役員間の意見対立の調整等が図られたという事実も認められないので、本件旅行は役員のみで行われた観光目的の旅行であり、その費用は業務遂行上必要なものと認められず、役員賞与に該当する。
昭和61年12月4日裁決
相当の地代を収受して貸し付けていた土地を貸付先である請求人の役員に更地価額より低い価額で譲渡したことは、時価と譲渡価額との差額相当額の役員賞与を支給したことに当たるとした事例
裁決事例集 No.38 - 188頁
本件土地の賃貸借契約に当たり、権利金に代えて相当の地代を収受することとし、それを地価の上昇に応じて増額しているから、借地権の経済的価値は零と評価されるところ、請求人は、請求人の役員である当該土地の賃借人に対し、時価を大きく下回る価額で本件土地を譲渡し、その下回ったことについて特段合理的な理由は認められず、むしろ、譲受人が請求人の取締役であるがゆえに、かかる価額で譲渡が行われたものであると認められるから、譲渡時における時価と請求人の譲渡価額との差額は、当該役員に対し実質的に贈与したものと認めるのが相当であり、役員賞与に該当する。
平成元年8月9日裁決
大学に在学中の従業員(代表取締役の長男)に対する給料等の金員は代表取締役に支給された報酬、賞与であると認定した事例
請求人は、大学に在学中の代表取締役の長男に対する給料名義の金員は従業員である長男本人に対し支給した給与である旨主張するが、[1]請求人は同人に対して従業員としての管理等をしておらず、同人が請求人に勤務した事実も認められないこと、[2]請求人は代表取締役がその株式の過半数を所有する同族会社であり、代表取締役がその事業を主宰していること、[3]また、長男に対する給料名義の金員は、代表取締役の妻が受け取り、管理し、代表取締役の報酬等と併せて同人の生活費等に充てられていることなどから、本件金員は、代表取締役に対して支給された役員報酬、賞与と認めるのが相当であり、当該役員賞与については損金の額に算入されない。
平成4年11月18日裁決
取締役が行った取引により当該取締役が取得した金員については、当該取締役の業務上の権限によって判断すると、役員賞与と認めることはできないとした事例
- 原処分庁は、請求人の前代表取締役が代表取締役を退任後(退任後は単なる日常業務に従事する取締役)に行った個人名義の取引について、同人が請求人のただ一人の常勤取締役として、日常の業務をゆだねられ、請求人の実質的な代表取締役として、その業務を行っていたと認定し、同人が取得した金員は、請求人が隠れた利益処分として同人に対し賞与を支給したものと経済的実質において変わりがなく、当該取得した金員は、請求人から同人に対し賞与として支給されたものと認められるとして更正処分した。
- [1]当該前代表取締役は、代表取締役退任後は、請求人の経理及び資金管理には関与せず、会社の運営は後任の代表取締役が行っていたこと、[2]当該前代表取締役は、請求人の給与の支給に関する権限を有していないこと及び[3]同人は、新代表取締役に隠れて取引をしたものと認められることから、当該前代表取締役が、代表取締役を退任後も請求人の実質的な代表取締役としての業務を行っていたとは認められず、請求人の給与の支給に関する権限を持たない同人の行為をもって、同人が取得した金員について、請求人が同人に対し賞与として支給したものと認めることはできない。
また、上記金員に関し、請求人と当該前代表取締役との間には、金銭消費貸借契約が締結されているとは認められないから、上記金員を同人に対する貸付金であると認定することはできない。
しかし、上記取引は、当該前代表取締役が役員の業務として行ったものであるから、請求人に帰属すると認められ、当該前代表取締役が新代表取締役に隠れて上記取引に係る金員を取得していることからすれば、請求人は、当該前代表取締役に対し同人が取得した金員に相当する債権を有しているというべきである。
平成6年12月21日裁決
簿外の売上金等から支出した功労金及び支払利息は、事業年度末において、債務が確定しているとはいえず、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入することができないとした事例
請求人は、簿外資金から支出した功労金について、念書等で使用人に確約したものであり、事業年度末に金額及び債務が確定しているので、未払いであっても、本件事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入すべきである旨主張するが、本件念書等が支給日より前に作成され、かつ、本件事業年度終了の日までに支給金額、支給日を本件使用人に周知していたと認定することはできず、債務が確定していたと認めるに至らないから、本件功労金は、本件事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入することはできない。
また、請求人は、簿外資金から支出した支払利息(本件金員)につき、約定書のとおり、金額及び債務が確定している旨主張するが、本件約定書は、金利を年6パーセント程度の割合で支払うとする不確定の数字のものであり、支払期日の具体的な記載がないこと及び本件功労金に係る同日付の念書等については上記のとおりであることからすると、本件約定書が作成日とする日に存在したとは認めがたいこと並びに計算明細書についても、審査請求書の作成時に作成され、本件金員の額と一致していないことから、本件約定書は、後日作成されたものと推認するのが相当である。
平成7年6月9日裁決
売上除外をして請求人の役員らの各預金口座に振り込まれた金員は、請求人からの役員給与に該当し、じ後に請求人に対し役員らの返還債務が発生した場合であっても、当該金員につき役員らが現実に取得している限り、当該各預金口座に振り込まれた時点で役員らの給与に該当するとした事例(平18.6.1〜平25.5.31の各事業年度の法人税の各更正処分ほか・棄却・平成27年7月1日裁決)
《要旨》
請求人は、請求人の役員ら名義の各預金口座に振り込まれた金員(本件各金員)は、請求人の意思決定の下に役員らへ支給されたとはいえず、また、本件各金員については、役員らが請求人へ返金する旨株主総会において決議したのであるから、本件各金員を請求人から役員らに支給された給与であるとした納税告知処分は違法である旨主張する。
しかしながら、法人の代表者等が法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配している事情がある場合には、法人の代表者等が当該法人の事業活動を通じて得た利得は、給与支出の外形を有しない利得であっても、それが法人の資産から支出されたと認められる場合には、当該利得は法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与であると解されるところ、本件においては、役員らが請求人の株式の3分の1ずつを保有し、役員らの決議の下に請求人の経営方針が決定されていることから、請求人の業務においては、役員らが法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配しているものと認められ、また、本件各金員は、役員らが請求人の事業活動を通じて得た利得であり、役員らが管理する各預金口座に振り込まれ任意に処分できる状態になったことからすれば、役員らの各預金口座に振り込まれた時点で役員らに帰属したといえる。そうすると、本件各金員は、役員らがその地位及び権限に対して請求人から受けた給与であると認められ、当該給与につき、じ後に返還債務が発生した場合であっても、本件役員らが現実に本件各金員を取得した限り、その時点で給与に該当するというべきである。
《参照条文等》
法人税法第34条、所得税法第28条
《参考判決・裁決》
仙台高裁平成16年3月12日判決(税資254号順号9593)