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役員退職給与
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
代表取締役から取締役への分掌変更に伴い支給した役員退職金について損金算入が認められないとした事例
裁決事例集 No.22 - 133頁
代表取締役から取締役への分掌変更に伴い支給した役員退職給与について、[1]臨時株主総会議事録及び取締役会議事録等は、いずれも真正に作成されたものと認められないことから、代表取締役辞任及び本件役員退職給与の支給についての証拠資料とは認められないこと、[2]当該議事録の内容について所定の商業登記がされていないこと、[3]その当時当該代表取締役は高齢であったが、著しく健康を害していたとは認められず、かつ、他に定時株主総会まで従来どおり代表取締役としての執務ができない特段の事情があったと認めるに足りる証拠資料がないこと及び[4]取締役への分掌変更後における報酬の支給状況等からみて、当該取締役が臨時株主総会時において、実質的に退職と同様の事情にあったとは認められないから、当該役員退職金は損金の額に算入することはできない。
昭和56年6月23日裁決
過大役員退職金に当たらないとした事例
裁決事例集 No.28 - 225頁
原処分庁は、退職した請求人の専務取締役(請求人の社長等とは同族関係にない。)に対して支給した退職金のうち、使用人期間分については不相当に高額な部分があると主張するが、同人は請求人の設立以来実質的に社長代理として請求人の業務発展に多大な貢献をし、昭和36年1月以降は常務取締役と呼称され、それにふさわしい功績を残したと認められることから、同人の請求人就職以来の全期間の功績を評価して、この功績倍率を請求人と類似する法人の平均功績倍率に近似する3倍とし、これによって退職給与の額を計算した請求人の計算に不合理はなく、不相当に高額な部分があるということはできない。
昭和59年12月25日裁決
適正退職給与の額を功績倍率法により算出すべきであるとの原処分庁の主張を退け、1年当たり平均額法により算出することが相当であるとした事例
裁決事例集 No.32 - 231頁
請求人の退任役員に対する退職給与の額は、功績倍率法により算出した金額と1年当たり平均額法により算出した金額とのうち、いずれか高い金額を超える部分の金額を不相当に高額な部分の金額とすべきであるとの請求人の主張について、原処分庁は1年当たり平均額法は役員退職給与の額の算定の重要な要素である最終報酬月額が考慮されていないため、功績倍率法に比べて合理性を欠くので、採用できないとしたが、最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。
昭和61年9月1日裁決
役員退職慰労金の算定に当たり、みなす役員としての期間を算入すべきであるとの主張を退けた事例
裁決事例集 No.37 - 185頁
請求人は、退職した専務取締役の在職期間の算定について、いわゆる「みなす役員」であった期間をも算入すべきであると主張するが、みなす役員として勤務していたとの事情が明らかではないこと、役員に就任した当時に退職金の支給を受けていたこと等からすれば、みなす役員に該当するとは認められず、役員の在職期間の算定においては、みなす役員であったと主張する期間を算入することは認められない。
平成元年6月21日裁決
退職した役員に支払った役員退職給与の一部を親会社に対する寄付金であるとして否認した原処分を取り消した事例
裁決事例集 No.38 - 196頁
本件役員退職給与99,000,000円については、税引後手取額が退職役員名義預金に預け入れられた後に、62,102,000円(振込手数料を含む)が外国関連会社に送金されているが、その送金額は、外国親会社及び外国関連会社が退職役員の出向期間中退職役員のために立て替えて支払ってきた年金掛金相当額を返済したものであって、これがためその送金額相当分を架空の退職給与とはいえない。
平成元年12月20日裁決
業務上の事故で死亡し退職した代表者の遺族に対する退職金は不相当に高額であるとした事例
裁決事例集 No.40 - 177頁
請求人は、死亡退職した代表者の遺族に対し、死亡退職金として9,100万円を支給しているが、業務上の死亡により退職した者に対しては、通常の退職給与より多額に支給されるのが一般的であると認められることから、比較法人の平均功績倍率により算定した通常の退職給与額に、業務上死亡の退職事情を考慮して相続税法基本通達3−20の取扱いに準じ死亡時の普通給与の3年分を加算した金額をもって役員退職給与の適正額とし、その金額を超える部分は不相当に高額な役員退職金に当たるとした原処分は相当である。
平成2年12月20日裁決
役員退職給与等の支給及びその金額について社員総会の承認を要する場合、その支給等に関する役員規定の理事会における承認をもって、本件死亡退任役員に係る退職慰労金等の債務が確定したということはできないとした事例
請求人は、本件事業年度において、損金経理により未払金に計上した死亡退任した役員に対する役員退職慰労金及び弔慰金(本件退職慰労金等)の額は平成8年5月31日に開かれた理事会の決議に基づき制定された「役員規定」に依拠しているから、本件退任の事実をもって、本件退職慰労金等の支給金額が具体的に確定する旨主張する。
しかしながら、法人税法第22条第3項第2号には、原則として、債務の確定した費用のみを損金の額に算入する旨規定されているところ、本件役員規定において、役員退職慰労金等は社員総会の承認を得て支給する旨、退職慰労金等の額は社員総会において承認された額とする旨が定められているから、退職慰労金等を支給するか否か、及び支給金額を幾らとするかについては、いずれも社員総会の承認に委ねられていることが明らかであり、そして、本件事業年度中に、本件退職慰労金等の支給に関して社員総会で何ら決議がされていない以上、本件役員の退任を原因として、本件退職慰労金等の額が自動的に決せられ、請求人がその支払い義務を負うことになると解することはできず、本件事業年度中に、本件退職慰労金等に係る債務が確定したということはできない。
平成13年11月13日裁決
比較法人の平均功績倍率が、裁判事例や裁決事例による功績倍率よりも低いことのみをもって相当性を欠くものではないとした事例
請求人は、法人税法第36条及び法人税法施行令第72条に規定する適正役員退職給与の額の具体的な判断基準としていわゆる功績倍率法を用いることについて争いはないが、原処分庁が類似比較法人として選定した会社は不明であり、その数も少ないこと、代表取締役と取締役の功績倍率が同じというのは不自然であり、社会通念上も余りに低率であること、Fは創業以来の代表取締役であること、Hは創業者の妻であり創業以来の取締役であること、裁判事例や裁決事例でも功績倍率が3.3〜3.6倍というのは定着していることなどからすると、Fの功績倍率を3.6、Hの功績倍率を3.3とするのが相当である旨主張する。
原処分庁は、功績倍率を求めるために、請求人の類似比較法人として4社を選定しているところ、その抽出基準は請求人の事業内容や事業規模等を反映させたものであって合理的なものと認められ、実際に比較法人を抽出するに当たって、し意的に抽出した等の事情は認められない。
ただし、比較法人のうち、a法人については、資金繰りのために役員退職給与規定に定められた功績倍率より大幅に低率の功績倍率に基づいて算定した退職給与を支給したとの特殊な事情があり、実際に支給された金額も他の3社に比べて大幅に低いものであることに照らすと、比較法人からa法人を除外した3社を比較法人として、功績倍率を算定するのが相当である。そうすると、平均功績倍率は1.9となる。
確かに、平均功績倍率を算出するに当たっては、比較法人の数が多いことは望ましいが、その数が少ないことのみをもって、算出された平均功績倍率が相当性を欠くということはできず、上記の事情によれば、比較法人を3社として平均功績倍率を算出したことに合理性がないとはいえない。
また、功績倍率を定めるに当たっては、代表取締役か取締役か、また、創業以来の役員であるかどうかなどの名目だけではなく、会社への実際の貢献度等の実質も考慮されるべきであるところ、当審判所の調査によっても、上記の平均功績倍率を本件に当てはめることが相当性を欠くと認められるほどに、F及びHの請求人への貢献度が高かったことを裏付ける事情は認められない。
さらに、本件に関する具体的事情を考慮せず、裁判事例や裁決事例と異なるというだけで、上記の平均功績倍率が社会通念上不相当に低率であるということもできない。
平成19年11月15日裁決
代表取締役が代表権のない取締役に分掌変更したことに伴って請求人が支給した金員について、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえず、法人税法上の損金算入することができる退職給与に該当しないとした事例(平成22年6月1日から平成23年5月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、平成23年5月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分・棄却・平成29年7月14日裁決)
《ポイント》
本事例は、分掌変更後も、請求人の経営ないし業務において主要な地位を占め、請求人の取締役として重要な決定事項に関与していたことが認められるから、当該取締役は、分掌変更により、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないとしたものである。
《要旨》
請求人は、その代表者(本件役員)が代表取締役社長を辞任し、代表権のない取締役会長となったこと(本件分掌変更)に伴い、請求人が本件役員に対し支給した金員(本件金員)について、本件役員は本件分掌変更により本件役員の各業務に関する権限を他の役員等に移譲し、仕事量、質及び内容が大幅に縮小又は変更したため、請求人の役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあったといえるから、本件金員は法人税法上の退職給与に該当する旨主張する。
しかしながら、本件分掌変更に伴い、本件役員の地位や職務につき相当程度の変動が生じたことは認められるものの、本件役員は、本件分掌変更後も、請求人の経営ないし業務において主要な地位を占め、請求人の取締役として重要な決定事項に関与していたことが認められるから、本件役員は、本件分掌変更により、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえず、本件金員は法人税法上の損金算入することができる退職給与に該当しないものと認められる。
《参照条文等》
法人税法第34条
法人税基本通達9-2-32
請求人が請求人の元代表者に退職金として支払った金員は、当該元代表者に退職の事実があるから、損金の額に算入されるとした事例
《ポイント》
本事例は、請求人の代表取締役及び取締役を辞任した元代表者が、辞任後も継続して請求人の事業運営上の重要事項に参画していたとは認められず、請求人を実質的に退職していなかったとは認められないとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人の元代表取締役(本件元代表者)が、退職後においても、引き続き請求人の経営に従事しており、みなし役員に該当するから、実質的に退職したとは認められないとして、請求人が本件元代表者に支払った退職金の金額(本件各金員)は、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第1項括弧書き所定の退職給与に該当しない旨主張する。
しかしながら、原処分庁がその認定の根拠として摘示する各事実には、いずれもその裏付けとなる退職当時の客観的な証拠がなく、各関係者の各申述においても、本件元代表者の請求人への具体的な関与状況が明らかではない。そして、本件元代表者は、退職後に請求人から報酬等を受領していないと認められ、本件元代表者の退職後に請求人の代表取締役となった者が、その代表取締役としての職務を全く行っていなかったと認めるに足りる証拠もないことからすると、本件元代表者が退職後も継続して、本件各法人の経営に従事していたと認めることはできないから、本件各金員は、退職給与として、本件各法人の損金の額に算入される。
《参照条文等》
法人税法第34条第1項
《参考判決・裁決》
東京地裁平成29年1月12日判決(税資267号順号12952)