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貸倒損失及び債権償却特別勘定
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
債務保証契約に基づく保証債務の弁済額について損金算入を認容した事例
裁決事例集 No.5 - 30頁
本件債務保証契約は、各証拠資料によると、原処分庁が主張するように、倒産寸前の状態にあった会社に対する一方的救済のための契約で贈与を目的としたものと解することは困難であり、請求人が提供した担保不動産の強制執行のおそれが生じたので、やむなく債権者との間に債務弁済契約を締結したものと認められ、かつ、求償権の行使はできない状態であるから、当該債務弁済契約により分割返済のために支出した金額は損金算入を認めるのが相当である。
昭和47年8月22日裁決
債権償却特別勘定の対象となる貸金等の額の算定に当たってはその債務者に対する支払手形の額を控除すべきであるとした事例
裁決事例集 No.13 - 32頁
請求人は、債権償却特別勘定の対象となる貸金等の額を算定する場合において、同一人に対し貸付債権と支払手形があったとしても、これを相殺することはできないとして、貸金等の額から控除することとなる「実質的に貸金等とみられない金額」について、原処分庁が貸倒引当金の算定について定めた法人税基本通達11−2−4“実質的に債権とみられないもの”を準用して、貸金等の額から支払手形の額を控除して債権償却特別勘定の対象となる貸金等の額を算出したことは不当である旨主張する。
しかしながら、既存の債務は、支払手形が当該債務の支払に代えて授受されたものでない限り、その手形債務が支払われるまでは手形債務と併存し、既存債務は、その債権者に対して有する債権となお相殺関係を失わないものと解され、また、債権償却特別勘定及び貸倒引当金はいずれも法律上存在する債権の貸倒れの見積額であり、両者はその本質を異にするものではないから、これらについての法人税基本通達の定めを区別して解する理由はない。したがって、債権償却特別勘定の対象となる貸金等の額を算定する場合において、当該債務者に対して有する貸金等の額から控除すべき「実質的に貸金等とみられない金額」には、当該債務者に対する支払手形の額を含むものと解するのが相当であり、請求人の主張は失当である。
昭和51年9月25日裁決
いまだ履行していない保証債務については貸倒れとしてこれを損金の額に算入する余地はないとした事例
裁決事例集 No.17 - 39頁
保証人が主たる債務者に対して求償権を取得するのは、保証債務を履行したときであり、保証人の事前求償債権を会計処理上債権として計上することは認められないと解するのが相当であって、本件のように和解により保証債務を履行することとなった場合においても、その妥当性を失うものではないから、いまだ履行していない保証債務については、貸倒れとしてこれを損金の額に算入する余地はない。
昭和53年11月27日裁決
手形交換所において取引停止処分を受けた取引先が妻名義で振り出した手形は債権償却特別勘定の対象となるとした事例
裁決事例集 No.21 - 154頁
請求人の取引先Aが事業不振に陥り、大口債権者に銀行取引用の印鑑等を管理されることとなったため、B銀行にAの妻名義の当座取引口座を設け、請求人から買い受けた商品代金支払のため当該名義を冒用して約束手形を振り出し、請求人に交付したことなどの事実からみて、請求人が取引先Aから受け取った振出人をAの妻名義とする約束手形は、実質的にはAが振り出した手形であり、法人税基本通達9−6−4(現行9−6−5)の(2)のハに定める「他の第三者の振り出した手形」に当たるとして債権償却特別勘定の繰入れを否認した原処分は相当でない。
昭和55年11月12日裁決
債権償却特別勘定の設定は認められないとした事例
裁決事例集 No.24 - 84頁
債権償却特別勘定は、請求人が確定した決算に基づいて、自ら繰入額の計算をすべき性格のものであり、債権償却特別勘定の設定が可能な状況にあるからといって、原処分庁が請求人の行った貸倒処理に代えて、積極的に債権償却特別勘定の繰入額を認定計算の上計上すべき性質のものではないから、請求人が本件売掛債権について、債権償却特別勘定を設定し、本件売掛債権の50パーセント相当額の損金算入を認めるべきであると主張することには理由がない。
昭和57年7月21日裁決
本件各貸付金に係る貸倒損失については、貸倒れの事実が認められず、あるいは当該事業年度以前に貸倒れの事実が生じていたと認められるとして、それを当該各事業年度の損金の額に算入することはできないとした事例
請求人は、[1]本件甲債権については、平成9年3月期において、事実上回収不能にある債権(法人税基本通達9−6−2)に該当することが確認されたから、同期の損金の額に算入すべきである、[2]本件乙債権及び本件丙債権については、同期又は平成10年3月期において、債務者の死亡及び相続人等の不存在が確認されて法律的に消滅した債権(同通達9−6−1)に該当することとなったから、各期の損金の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、[1]本件甲債権については、平成9年3月期において、請求人が債務者所有の山林に根抵当権を設定したままであること、当該債権に係る連帯債務者及び連帯保証人が土地等を有していることから、同期において、同債権が回収不能となっていた(貸倒れ)とは認められない、[2]本件乙債権については、死亡した債務者には兄弟姉妹が存在しており、また、債務者の死亡、相続人の不存在は債権の消滅原因でないから、この点に関する請求人の主張には理由がなく、そして、平成9年3月期において、請求人が同債権の債務者の所有地に抵当権を設定したままであり、また、その連帯保証人にその履行を全く求めたことがないことから、同債権が回収不能となっていたとは認められない、[3]本件丙債権については、上記と同様の理由から、法律的に債権が消滅したとする請求人の主張には理由がなく、そして、請求人は、昭和62年に提起した別件民事訴訟に係る請求の趣旨において、本件丙債権の債務者が支払不能の状態にあるとしていたこと、当該債務者は昭和61年5月に自己破産を申立て、それが昭和63年11月に完結していることから、同債権が遅くとも平成元年3月期には回収不能になっていたと認められ、それを平成10年3月期の損金の額に算入することはできないので、請求人の主張には理由がない。
平成15年2月19日裁決
請求人が債権放棄をしたとして計上した雑損失の金額は寄附金の額に該当するとした事例(平24.1.1から平24.12.31の事業年度の法人税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成28年2月8日裁決)
《要旨》
請求人は、請求人が個人事業を営む代表者に有していた売掛金(本件債権)の放棄は、代表者が旧賃貸人から賃借していた建物(本件建物)に係る旧賃貸人による本件建物の明渡し等を求めた訴訟についての和解により旧賃貸人が代表者に対して債権放棄を行っている事実からも明らかなように、その時点において本件債権の回収可能性がなく、本件債権の放棄の金額は法人税基本通達9−6−1《金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ》の(4)の取扱いにより損金の額に算入することができる旨主張する。
しかしながら、本件債権の放棄が行われた事業年度(本件事業年度)末の前後における代表者の収入の状況及び本件事業年度中の代表者からの売掛金の回収の状況を考慮すると、本件債権の全額が回収不能とは認められない。また、本件債権を放棄した事実は認められるが、本件債権の放棄が書面により行われたことを示す証拠がないことからすれば、債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額はないのであるから、本件債権の放棄は同通達の(4)に掲げる事実に該当しない。さらに、法人税基本通達9−6−1の(1)ないし(3)に掲げる事実に関する証拠はなく、これらの事実も認められない。したがって、本件債権の放棄は法人税基本通達9−6−1に定める法律上の貸倒れに該当せず、請求人が本件債権の放棄をしたとして計上した雑損失の金額は、貸倒損失として損金の額に算入されない。そして、本件債権の放棄は、回収不能とはいえない債権を放棄したものであるから、対価なくして経済的価値を有する債権を債権者が任意に処分したものであり、かつ、その行為について通常の経済取引として是認できる合理的な理由が存在するとは認められないから、請求人が本件債権の放棄をしたとして計上した雑損失の金額は、寄附金の額に該当する。
《参照条文等》
法人税法第22条第3項
法人税法第37条
法人税基本通達9−6−1
《参考判決・裁決》
名古屋地裁平成8年3月22日判決(税資215号960頁)
東京高裁平成7年5月30日判決(税資209号940頁)
宇都宮地裁平成15年5月29日判決(税資253号順号9355)
大阪高裁平成17年2月18日判決(税資255号順号9936)
子会社に対する売掛債権の放棄に係る損失は法人税法上の寄附金に該当するとして、原処分の一部を取り消した事例(法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分並びに復興特別法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成28年4月14日裁決)
《ポイント》
本事例は、請求人は子会社に対する売掛債権を有効に放棄したものと認められるところ、当該売掛債権の放棄に係る損失は法人税法上の寄附金に該当するとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、債権放棄に関する請求人と子会社との間の意思について、回収不能額が不確定な状態の下、子会社に対する売掛債権(本件売掛債権)の全額を放棄する旨の内容虚偽の債権放棄声明文(本件声明文)を作成し交付することで子会社の清算を進めることを企図し、その交付後において、子会社の請求人に対する返済不足額として確定した回収不能額を債権放棄する趣旨であることが明らかであるなどとして、本件声明文の交付をもって請求人が本件売掛債権を放棄したとは認められない旨主張する。
しかしながら、本件売掛債権の放棄に至る経緯等からすれば、請求人は、子会社を破産させることなく清算する必要から本件売掛債権の全額を放棄したと認めるのが自然であり、本件売掛債権の放棄は、請求人の真意に基づくものといえることから、本件声明文の交付をもって、請求人は、本件売掛債権を有効に放棄したものと認められる。そして、請求人が子会社の清算に伴う損失負担を行う理由は認められないので、本件売掛債権の放棄に経済的合理性があるとはいえず、当該子会社の債務超過が相当期間継続した事実もないことから、本件売掛債権の放棄に係る損失の額は法人税法上の寄附金の額に該当する。
《参照条文等》
国税通則法第68条第1項
法人税法第37条第7項
租税特別措置法第66条の4第3項
法人税基本通達9−4−1、9−6−1