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繰延資産の償却等
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
欠損会社から有償取得した開発費等の償却費は寄付金に当たるとした原処分を相当でないとした事例
裁決事例集 No.3 - 22頁
請求人が事業を承継した旧会社(欠損会社)から有償取得した営業権として計上した金額は、旧会社が販路開拓のため相当な資金を投下したことによって生じた特定商品の販売による収益力の購入対価又は開発費の引継対価であるから、営業又は開発費的な繰延資産に当たると認めるのが相当であり、請求人が当期においてこれを償却したことは相当と認められる。
昭和46年8月13日裁決
スキー場開設のために支出した村道改良費は繰延資産に該当するとした事例
裁決事例集 No.13 - 31頁
請求人は、スキー場開設のため支出した村道改良費は開発費であると主張するが、本件村道は本来林道として開設された路線であり、その拡幅及び改良工事は、請求人がスキー客を誘致し、スキー場経営の成果をあげるためには、道路の構造を改良し、安全施設の設置等を行わなければならなかったものであり、その費用は自己が便益を受ける公共的施設の改良のために支出する費用に当たる。
昭和51年11月16日裁決
飲食業を営む前賃借人からその各店舗を転借するに際し支払った対価は営業権の対価ではなく繰延資産の対価であるとした事例
裁決事例集 No.19 - 85頁
営業権とはその企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びに、それらの独占性等企業がこれを持つことにより、同種の事業を営む他の企業の稼得している通常の収益(いわゆる平均的収益)より大きな収益、つまり、超過収益を稼得できる無形の財産的価値を有している相対的な事実関係を指称するものと解されるところ、特殊飲食物販売業を営む請求人が喫茶、ラーメン等を営む前賃借人から店舗及びその造作備品等の譲受けに際して支払った対価について、[1]前賃借人が営んでいた事業に係る客層と請求人が前賃借人から譲り受けた各店舗において営むことを予定していた事業に係る客層とは、同一であるとはいえないことから、前賃借人の有していた取引関係が請求人にとって超過収益力を稼得できる無形の財産的価値を有しているものとは認められないこと、[2]請求人と前賃借人との間においてされた当該対価の支払に係る契約は、店舗賃貸借契約の付随的契約と認められることから、当該対価の額は、営業権の取得価額に算入することなく、法人税法施行令第14条第1項第9号ロに規定する繰延資産の対価であると認定するのが相当である。
昭和55年3月31日裁決
店舗を開設するに当たり、前の賃借人に支払った本件金員は、繰延資産たる「資産を賃借するために支出する費用」に該当するものであり、その償却期間は、店舗が設置されている建造物の耐用年数を基に見積もるべきであるとした事例
裁決事例集 No.35 - 115頁
請求人が店舗の開設に当たり、当該店舗の前の賃借人に支払った金員は、店舗を賃借して使用するために支出する権利金に類似する必須の費用であるということができ、法人税法施行令第14条第1項第9号ロに規定する繰延資産に該当する。また、当該店舗の設置されている建造物は、鉄筋コンクリート造りの高架線路(構築物で鉄道業用の橋りょう)であるところから、その存廃が高架線路と同じくすると認められるので、その償却期間は、高架線路の耐用年数から計算される見積残存耐用年数を基として算定することが相当である。
昭和63年6月21日裁決
地方公共団体に対する寄付金として支出した金員は、請求人が建設を予定しているゴルフ場の開発行為に伴う実質的な負担金であるから、繰延資産に該当するとした事例
裁決事例集 No.38 - 177頁
請求人は、本件金員は地方公共団体に対する純然たる寄付金であって、負担金ではないから、法人税法第37条第3項第1号の規定により全額損金算入が認められるべきであると主張するが、本件金員の支出が本件ゴルフ場の開発行為の許可のための条件とされており、当該市長は本件金員を開発等指導要綱に基づく本件ゴルフ場の開発行為に係る水道布設工事の負担金として採納することとしていたことが認められるから、請求人は、本件ゴルフ場の開発行為に起因して本件金員を支出し、これによってその許可を得るという特別の利益を受けたことになるので、当該市長が本件金員を寄付金として採納したとしても、これを地方公共団体に対する純然たる寄付金とする余地はない。
そして、上記水道布設工事は、本件ゴルフ場の開発行為に起因して着工されたものであること及び請求人が上記水道布設工事により布設された導水管を現に利用していること、また、本件金員を支出した効果が1年以上に及ぶことは明らかであるから、本件金員は、繰延資産に該当する。
平成元年12月5日裁決
貸室の入居に当たり前賃借人から買い取った造作及び備品の買取費用は、その造作及び備品をすぐ取り壊し、新たな造作を取得したこと等からみて、繰延資産に該当するとした事例
前賃借人に支払った造作及び備品の買取費用は、[1]本件貸室は、引渡しを受けた日の翌日から本件造作等の取壊し又は廃棄及び新店舗の改修工事が始まり、請求人が本件造作等を利用した事実はないこと、[2]前賃借人の営業していた麻雀店と、請求人が新店舗にて営業しようとしていたバーとでは業種が全く異なること等から、前賃借人が営業していた麻雀店舗としての本件造作等の利用価値に着目して支出したものではなく、既存の本件造作等を取壊し又は廃棄して、新たな内部造作を施してバーを営業できるという価値に着目しての支出と認められ、実質的には建物の賃借に際して支払う権利金とその性質を異にするものではなく、繰延資産に該当する。
平成7年7月7日裁決
共同開発契約に基づいて支払った負担金は、役務の提供を受けるために支出する費用で、支出の効果が1年以上に及ぶことから繰延資産に該当するとした事例(
平成25年4月1日から平成26年3月31日まで及び平成26年4月1日から平成27年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分並びに平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・
棄却、
一部取消し、平成30年10月10日裁決)
《ポイント》
本事例は、企業会計においては、費用収益対応の原則がとられており、法人税法においても同原則が妥当するものと解されるところ、法人税法上の繰延資産は、費用を支出しても、それにより当該費用と収益の対応関係が即時的に完結せず、その後においても収益を生み出す性質を有する場合のその継続的な収益に着目し、複数年にわたり償却(損金算入)を行うという制度であるから、「支出の効果」についても同原則に照らして考慮すべく、「支出の効果」とは、費用収益対応の原則における「収益」の発生を意味するものであって、「支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの」というのは、費用収益対応の原則の下、当該費用の支出が1年以上に及ぶ継続的な収益を発生させる性質を有するものをいうと解するのが相当であるとしたものである。
《要旨》
請求人は、製品の共同開発契約(本件契約)に基づき一方の契約当事者(本件当事者)に支払った負担金(本件負担金)について、本件契約の製品に係る大臣の承認(本承認)を得るために本件当事者から開示された資料等は、共同開発の成果であって請求人が自己開発したものと同様であること、また、本件負担金の支出には、本承認が得られないリスクがありその支出の効果がその後に及ぶものといえないことなどから、本件負担金は繰延資産に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件負担金の対象となる各業務は、本件当事者が担当する業務であり、ほとんどが本件契約の締結日までに完了していたことに加え、請求人は本承認の申請に必要なデータを本件当事者から取得し、本件契約の締結日から短期間で本承認の申請をしていたことなどから、請求人が当該共同開発の主体であったとみることはできず、本件負担金は、本件当事者が開発の過程で得た成果の提供という役務の提供を受けるために支出する費用であると認められる。そして、当該製品は現に製造販売されていることに加え、本承認の取得後5年ごとに大臣の調査を受けなければならないことなどからすると、本承認を取得した効果は少なくとも5年は継続するということができる。したがって、本件負担金は、役務の提供を受けるために支出する費用で、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものと認められるから、繰延資産に該当する。
なお、平成27年3月期に繰延資産の償却超過額の損金不算入額が増加したことに伴い、平成28年3月期に繰延資産の償却超過額の前期からの繰越額のうち当期損金算入額が増加したことから、平成28年3月期に一部取消しが発生したものである。
《参照条文等》
法人税法第2条第24号
法人税法施行令第14条第1項第6号ハ
《参考判決・裁決》
東京高裁平成16年12月13日判決(税資254号順号9859)