所得金額の計算

寄付金の範囲

  1. 収益の帰属事業年度
  2. 益金の額の範囲及び計算
  3. 損失の帰属事業年度
  4. 損金の額の範囲及び計算
    1. 売上原価
    2. 山林ぶ育費
    3. 有価証券の評価
    4. 固定資産の取得価額
    5. 減価償却資産の償却等
    6. 繰延資産の償却等
    7. 役員報酬、賞与及び退職給与
    8. 使用人給与、賞与及び退職給与
    9. 寄付金
      1. 寄付金の範囲(6件)
      2. 金銭、経済的利益の無償供与
      3. 無利息貸付け
      4. その他
    10. 外注費
    11. 海外渡航費
    12. 賃貸料、使用料
    13. 売上割戻し
    14. 弔慰金
    15. 支払利息
    16. 為替差損益
    17. 貸倒損失及び債権償却特別勘定
    18. 横領損失
    19. 損害賠償金
    20. 不動産取引に係る手数料等
    21. 福利厚生費
    22. 資産の評価損
    23. 燃料費、消耗品費
    24. 雑損失
    25. 使途不明金
    26. その他の費用
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は交際費ではなく寄付金に該当するとした事例

裁決事例集 No.32 - 245頁

 請求人は、特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は、その支出の経緯や当該政治団体が請求人の事業関係者等に当たらないことから、寄付金や交際費等に該当しないと主張するが、一般に寄付金とは、金銭その他資産の贈与又は経済的な利益の供与のうち、事業の遂行に直接関係のあるもの以外のもの、すなわち、事業の遂行に直接関係ないもの及び事業の遂行との関係が明らかでないものと解され、特定の政治団体に対する本件支出金は、請求人の事業遂行に直接関係ないものであるので寄付金に該当すると認めるのが相当である。

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本件土地の譲渡価額と時価との差額が生ずることについて合理的な理由があるとは認められないから、その差額は寄付金に該当するとした事例

裁決事例集 No.41 - 229頁

 原処分庁が採用した取引事例の譲渡価額は、本件土地に隣接し、かつ、大規模地であり本件土地との類似性は高く、当該取引事例を基に時点修正して時価を算定した原処分には合理性がある。本件土地は当該取引事例地よりも街路条件及び交通・接近条件で優れていること及び実測面積よりも少ない公簿面積によって原処分庁の時価算定が行われていることを考慮すると、本件土地の時価は、原処分庁の算定時価を上回るものと推認され、原処分庁の認定した時価は相当である。
 法人税法第37条第6項に規定するいわゆる低額譲渡の場合における「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」とは譲渡の対価の額と時価との差額が生ずること(無償性)について、合理的な理由が認められない場合のその差額をいうものと解されるところ、本件土地の時価と譲渡価額とに差額が生じることについて合理的な理由があるとは認められないから、この差額は寄付金に該当する。

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請求人が非上場株式を関係会社の代表者に対して額面金額で譲渡した価額は、通常取引価額に比べ低額であるから、その価額と譲渡価額との差額は寄付金であると認定した事例

裁決事例集 No.57 - 342頁

 請求人が自己の所有する関係会社の非上場株式を同社の代表取締役に1株当たりの額面金額で譲渡した価額は、法人税基本通達9−1−15を援用し評価通達の例により計算した通常取引価額に比べ低額であるから、その価額と譲渡価額との差額は寄付金であるとした原処分に対し、請求人は、本件株式の通常取引価額を単純に純資産価額方式により算定することは、実態認識を誤るものであり、法人税基本通達の本旨にもとり極めて不合理であるから、本件株式の通常取引価額は、将来の配当期待権の価値を資本還元した価額に重点をおき、市場流通性を考慮した純資産価額方式との併用により算定すべきであると主張する。
 しかしながら、請求人の主張する算定方式には合理性が認められず、また、取引相場のない株式の価額を定める評価通達は、当該株式の価額を合理的、かつ、その実態に即して評価し得るものと認められ、実務上定着しているので一般的に妥当性と合理性を有するものであるから、当該通達により算定された通常取引価額と譲渡価額との差額は寄付金に当たるとした原処分は相当である。

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請求人が財団法人に対して支出した本件出捐金は基本財産とすることを指定して支出したものであるから、寄付金に該当するとした原処分が適法とされた事例

裁決事例集 No.58 - 180頁

 請求人は、振興協会に対する出捐金について、[1]振興協会は請求人らが便益を受けるために出捐金を支出して設立した財団法人であること、[2]振興協会の事業のすべてが請求人らが便益を受ける事業であり、振興協会が存続する限り、その事業から、請求人らは便益を受けるものであることから、本件出捐金は自己が便益を受けるために支出する費用で、その支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶものと認められるので、繰延資産に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件出捐金は、請求人の臨時総会の決議を経て任意に拠出されたものであること、一定の公益目的のために提供される財産である公益法人の基本財産とすることを指定して拠出され、基本財産として組み入れられていることが認められる。
 さらに、振興協会の基本財産は、原則として処分し、又は担保に供することができず、解散時においても請求人に返還されないこと、振興協会の行う事業は、基本財産以外の財産である運用財産によって運営されることが認められる。また、請求人が本件出捐金の拠出によって振興協会から特別の利益を受けるとも認められない。
 したがって、本件出捐金の拠出は、請求人から振興協会に対してなされた金銭の贈与に当たり、本件出捐金は法人税法第37条第6項に規定する寄付金となり、繰延資産には該当しない。

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紛争を回避するために支払う金員は当該紛争を回避することにより利益を受ける者が負担すべきであるところ、請求人が支払手数料名目で支払った金員は受注先が紛争を回避するための支出であって請求人が負担すべき費用ではないから、受注先への経済的利益の供与であり、寄付金に該当するとした事例

裁決事例集 No.71 - 429頁

 請求人は、H社に対して支払った金員(以下「本件金員」という。)について、請求人がG社から受託した宗教法人F会の施設の建設に係る近隣対策等業務に対するH社の妨害を排除するために支払ったもので、業務遂行上必要な費用であり、寄付金の額には該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人の上記近隣対策等業務をH社が妨害した事実は認められず、本件金員はH社とG社との間で生じた紛争を回避するためにH社へ支払われたものと認めることが相当である。そして、紛争を回避するための費用は特段の事情がない限り紛争当事者が負担すべきものであるところ、本件において請求人が当該費用を負担すべき特段の事情は認められず、本件金員がG社との間で清算された事実もない。
 したがって、請求人による本件金員の支出はG社に対する経済的利益の供与に当たるから、本件金員の額は法人税法第37条第3項に規定する寄附金の額に該当する。

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請求人が業務委託費の精算されていない費用として国外関連者に支払った金員は、国外関連者の欠損を補てんするための寄附金であるとした事例

裁決事例集 No.73 - 405頁

 請求人は、本件サービス業務の未精算費用があった旨主張する。
 しかしながら、本件サービス業務に関する料金及び支払条件は、本件旧契約に準じて、その都度、両当事者間で検討及び合意されていたと認められ、K社は、本件事業年度における本件サービス業務の精算として、既に毎月ごとに精算金を受領している。
 また、請求人は、本件見直しを行った結果、本件サービス業務の未精算費用があった旨主張するが、一般の取引通念に照らせば、取引上、未精算費用があった場合には、会社間で当該未精算費用の額、支払方法等についての検討や話し合いがされてしかるべきであり、その結果を両社ともに文書で記録しておくのが通常である。
 ところが、本件の場合、本件調査担当職員が、M課長に対して本件金員の計算根拠について説明を求めても具体的な計算根拠の説明及び資料の提出はなく、また、T部長は、本件サービス業務の未精算費用は積み上げて計算したものではなく、具体的に計算した資料はない旨答述しており、両社間で当該未精算費用の額、支払方法等について具体的に検討などをした事実は認められない。
 そして、本件金員の支払原因については、M課長の各メールの記載内容の信用性は、その作成時期等から極めて高く、それに加えて、K社の各事業年度の決算状況、本件業績レビューの記載内容及びM課長の答述からすると、1K社は、設立以来3期連続欠損の状況にあり、平成15年3月期の決算も○○○○ドルの欠損が見込まれたため、これを解消し単年度でいわゆる黒字化するための方策として、請求人が業務委託費を支払うことで支援することとし、2幹部職員の話し合いで、当該業務委託費を○○○○円とすることに決まり、本件新契約書が作成され、請求人が本件金員を支払ったものと認められる。
 そうすると、本件サービス業務の未精算費用があったとは認められず、本件金員の支払原因は、K社の欠損を補てんするために援助としてされた金銭の贈与であると認められる。
 以上、検討の結果、本件金員を支払った行為は、金銭の贈与に該当するというべきであるから、本件業務委託費は法人税法第37条第7項に規定する寄附金に該当する。

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