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その他の費用
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
請求人が同族グループ法人へ譲渡したとする土地建物等は、引き続き請求人の借入金の担保に供されており、所有権移転の登記もされておらず、請求人名義で他に賃貸されていることから、譲渡はなかったと認定し譲渡損の損金算入を否認した更正処分が適法であるとした事例
請求人は、自己が所有する土地建物等の同族グループ法人への譲渡により譲渡損を計上したものであって、不動産売買契約は有効に成立しており、その価額も適正で代金決済も行われているので、譲渡損の計上は認められるべきであると主張する。
しかしながら、本件は、[1]不動産売買契約書に記載されている請求人の義務である抵当権の抹消及び所有権の移転登記が履行されていないこと、[2]同契約後においても、引き続き請求人を賃貸人とした賃貸借契約が継続していること、[3]新たな賃借人との賃貸借契約においても請求人が賃貸人となっていること及び[4]請求人が譲渡したとする日の後、原処分庁が請求人の滞納国税の徴収のため本件土地建物等の差押処分を行っているが、本件契約上の譲受人である同族グループ法人から何らの異議が申し立てられていないこと等から、本件土地建物等の譲渡はなかったものといわざるを得ないから、本件土地建物等の譲渡損を損金の額に算入することはできない。
平成13年5月29日裁決
本件費用は、請求人がその支払日等を具体的に明らかにしないことから損金の額に算入できないとした事例
請求人は、本件費用の支払先等は明らかにできないが、本件費用は事業の継続を確保するうえで必要であるから損金の額に算入されるべきである旨主張するが、法人税法第22条第3項の規定により損金の額に算入される費用は、その支払先及び使途が明らかであることを要するところ、請求人は当審判所にそれを明らかにする具体的資料を提出せず、また当審判所の調査によってもそれを確認することができないことから、本件費用は損金の額に算入することはできない。
平成13年10月10日裁決
和解金の支払が剰余金の分配と認められ資本等取引に該当するとして損金の額に算入できないとした事例
《ポイント》
この事例は、訴訟上の和解に基づき請求人が支払った和解金の性格について、訴訟の経緯、対立点及び和解において請求人が当該和解金を支払うに至った経過並びに和解調書の和解条項内容及び請求人の会計処理の事実から認定したものである。
《要旨》
請求人は、本件和解(訴訟上の和解)は、原告ら(L及びNら)の請求内容(出資持分の払戻請求及び退職金の支払請求)を認めた内容の和解ではなく、多様な意味合いを包含した金額面での和解であり、本件和解金からLの退職金を控除した金員(本件金員)は、経営上当然の経済行為に基づく支払金という性格を意味しており、出資持分があることを根拠として支払ったものではないから、本件金員の額からLの出資額などを控除した額(本件特別損失額)は本件事業年度の損金の額に計上できる旨主張する。
しかしながら、本件訴訟の経緯、対立点及び和解において請求人が本件和解金を支払うに至った経過並びに和解調書の和解条項内容及び請求人の会計処理の事実についてみると、請求人は、原告らに出資持分の払戻請求権相当の権利を認めるなど、本件和解金を支払うことで請求人と原告らの債権債務関係を消滅させたものと推認されることから、本件金員からNの退職金相当額を差し引いた金員は、出資者たる地位に基づき支払われた金員であるといえ、当該金員から請求人が資本金勘定から減額したLの出資金相当額などを控除した金員は、剰余金の分配に当たると認められるので、法人税法第22条《各事業年度の所得金額の計算》第5項に規定する資本等取引に該当する。また、平成8年3月期に請求人がNに対する役員退職金として支出した金員相当額が本件和解金の計算に含められた経緯等から判断すると、当該退職金相当額については、請求人が真に支払を受けた者に代わって仮払金・立替金の類として支払ったものであると考えるのが自然である。したがって、本件特別損失額は、法人税法第22条第3項の規定により本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
《参照条文等》
法人税法第22条第3項、第5項
《参考判決・裁決》
平成20年1月23日裁決(裁決事例集No.75・78頁)
業務に関連する資格取得のために専門学校に入学した従業員に対して、請求人が奨学金として負担した金員は貸付金と認められるから、当該奨学金は損金の額に算入されないとした事例
《要旨》
請求人は、請求人に勤務する職員で看護師等の資格取得のために看護専門学校に入学した者に対し奨学金として負担した金員については、当該奨学金に係る奨学金貸与規則どおりに運用されている実態がなく、奨学金の返還を目的としていないことなどから、支出した事業年度の損金に算入することも認められるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、当該奨学金貸与規則に基づき、奨学金申請書を提出した者に対し奨学金を支給していることが認められ、また、奨学金の返還については、当該奨学金貸与規則は規定どおり一定期間の勤務を条件に免除されることが予定されていることから、その奨学金は、支給時点においては債務免除の条件が付された貸付金であり、損金の額に算入することはできず、また、各事業年度終了の日までに、その返還免除の意思表示がされていないことから、各事業年度の損金の額に算入することはできない。
《参照条文等》
法人税法第22条第3項
決定処分において損金の額に含まれていないと主張する経費のうち一部は当該事業年度の損金の額に算入することが認められるとした事例(
平成21年10月1日から平成22年9月30日までの事業年度の法人税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分、
平成22年10月1日から平成26年9月30日までの各事業年度の法人税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分ほか、
平成21年10月1日から平成26年9月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分・
一部取消し、
棄却・平成28年11月7日裁決)
《ポイント》
本事例は、審査請求に至って初めてされたさらに認められるべき経費支出がある旨の主張について、請求人において業務関連性の立証がある支出は損金の額に算入されるが、請求人においてその立証がない支出は損金の額に算入されないとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、決定処分(本件決定処分)に係る不動産賃貸事業の所得の計算において、損金の額に算入された経費以外に追加して損金の額に算入すべき経費(本件追加経費)はない旨主張する。
しかしながら、請求人は総勘定元帳等その他の帳簿書類等を一切作成しておらず、本件決定処分を受けた後、本審査請求に至って初めて本件追加経費があると主張して当該追加経費に係る証拠として領収証等を当審判所に対して提出したものであるが、その一部については請求人の当該不動産賃貸事業に関連して支出したものと認められることから損金の額に算入することができる。他方、それ以外の領収証等に係る支出については、当該業務との関連性の立証等がないこと等から損金該当性を認めることはできず、損金の額に算入することはできない。
《参考判決・裁決》
東京高裁平成7年9月28日判決(税資213号772頁)
請求人が支払った客引きに対する報酬について原処分庁の認定額を超えると判断した事例(
平成29年6月1日から平成30年5月31日までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、
平成29年6月1日から平成30年5月31日までの事業年度の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、
平成29年6月1日から平成30年5月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、
平成29年6月1日から平成30年5月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、
平成30年6月1日から令和元年5月31日までの事業年度の法人税の更正処分、
平成30年6月1日から令和元年5月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分、
平成30年6月1日から令和元年5月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び無申告加算税の変更決定処分・
棄却、
一部取消し、

却下)
《ポイント》
本事例は、請求人が収支の管理に使用していた封筒に記載された内容には信用性があると判断し、その記載内容から、請求人が客引きに対して支払った報酬の額は原処分庁が損金の額に算入した金額を超えるとして、原処分の一部を取り消した事例である。
《要旨》
原処分庁は、請求人が客引きに役務の提供の対価として支払った報酬(本件客引き報酬)であると主張する金額について、請求人が日々の売上金額及び支出金額等を記載した封筒(本件各封筒)を保管しているものの、そのほとんどについて支出の実態を確認することができないことなどを理由に、原処分庁が認定した金額を超える部分については本件客引き報酬であるとは認められない旨主張する。
しかしながら、本件各封筒のうち、支出金額の使途として「給料」等の文言を記載したもの、又は支払の相手方として氏名等を記載したものであり、かつ、他の使途に係る支出金額と区分して記載したものについては、請求人が複数の客引きらから役務の提供を受け、本件客引き報酬を支払った事実及びその金額が記録されたものと認められる。したがって、上記の認定ができる支出金額については、本件客引き報酬として損金の額に算入すべきと認められる。
《参照条文等》
法人税法第22条