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固定資産の取得価額
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
鉄道の高架下を賃借するために支払った権利金は繰延資産ではなく借地権類似の権利の対価に当たるとした事例
裁決事例集 No.4 - 14頁
請求人は鉄道の高架下の賃借は建物の賃借であると主張するが、その賃借物件は高架鉄道の道床、脚柱によって囲まれた部分に隔壁を施した箱型の敷地を含めた空間であるから、この高架下空間を賃借するために支払った権利金は、利用範囲が極めて限定された借地権類似の権利の対価と解するのが相当であり、したがって繰延資産としての償却は認められない。
昭和47年5月12日裁決
資産の取得についての紛争を解決するための和解金は当該資産の取得価額に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 No.5 - 23頁
資産の譲受けに当たりその販売契約に基づく売買代金の支払を完了しているが、その売買契約の無効を主張する売主との間に長年にわたり訴訟上の紛争が係属している場合において、その紛争を一切清算し、当該資産の所有者としてこれを完全な支配下に置くための代償として支払われたものと認められる和解金は、当該資産を取得するための費用としてその取得価額に算入するのが相当である。
昭和47年12月25日裁決
取得時効の完成した土地について、その所有権を確認させるため等に支出した和解金は、損金に該当せず、当該土地の取得価額に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 No.13 - 14頁
土地所有権の帰属についての訴訟上の紛争を終息させ、取得時効に基づく請求人の所有権を確認せしめることを条件として支出した和解金は、当該土地の取得価額に算入するのが相当である。すなわち、和解金を支払うことにより、所有権移転登記手続が可能となり、この資産の利用価値と交換価値が完全に確保されるに至るからである。
昭和52年3月31日裁決
スキー場用地の賃貸借契約に付随して支出された立木補償金は借地権の対価に該当するとした事例
裁決事例集 No.13 - 22頁
スキー場用地の賃貸借契約に付随して支出された立木補償費は、当該立木の伐採が立木そのものに経済的商品的価値を認め、これを伐採、販売することを意図してなされたものではなく、スキー場の開設のためには、借地内にある立木が支障となるので、これを伐採除却し、そのあとを整地するためになされたものと認められるから、その費用は損金に算入すべきではなく借地権の取得価額とすることが相当である。
昭和51年11月16日裁決
共同住宅を建築するに当たって市に納入した義務教育施設整備等協力金は当該共同住宅の取得価額を構成するとした事例
裁決事例集 No.17 - 44頁
共同住宅を建築するに当たって市に納入した義務教育施設整備等協力金については、市はこれを寄付金として受け入れていることが認められるが、市の定めた開発指導要綱によれば、当該要綱に協力しない者に対しては、必要に応じて建築の制限、公共施設の使用制限その他の行政上の措置を行うことがある旨を定めており、当該協力金の納入が中高層建築物を建築するための必須的なものとなっていることが認められるから、当該協力金が当該共同住宅を建築するために支出されたものであることは明らかであり、また、減価償却資産の取得価額には、当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額が含まれることとされており、当該費用が義務的なものか任意的なものかによってその取扱いに差異が生ずるものとは解されないので、本件協力金の額は、当該共同住宅の取得価額に含めるべきものである。
昭和53年12月18日裁決
市下水道工事による工場の操業能率低下に伴い取得した仮工場の取得価額のうち機能回復補償金相当額までの金額は修繕費等として損金算入することができるとした事例
裁決事例集 No.27 - 216頁
市が施行した下水道工事に起因して作業能率が低下し、それにより収受した補償金で仮工場を取得したが、当該補償金は機械作業能率の著しい低下を復旧させるため、一時的に取得する仮工場の建設費に主眼が置かれて支払われたものであるから、仮工場の取得価額のうち当該補償金(経費補償に係るものを除く。)の金額までの部分は、実質的には、機能復旧のための支出であって、法人税法施行令第132条に規定する資本的支出に当たらず、損金算入することができる。
昭和59年3月22日裁決
崖地に施した防壁等工事に要した支出金は資本的支出であると認定した事例
裁決事例集 No.28 - 250頁
本件崖地は、請求人の経営する病院の敷地に隣接するもので、取得後20数年の間に自然現象による浸食のあったことが認められるが、この間請求人は何ら防護設備を設けることなく推移したところ、病院の改築を契機に崖地の崩壊防止を兼ねて防護設備工事を施行した。この工事は、崖地の突出部分を削り取ることにより病院敷地としての有効面積を約60平方メートル拡大させたほか、その防護設備は厚さ15センチメートルの鉄筋コンクリートによるものであって、当該工事費中に修繕費の部分を認めることはできず、その費用は土地の取得価額と構築物たる防壁の取得価額に計上するのが相当である。
昭和59年11月30日裁決
宅地開発行為に伴い市に無償提供した道路用地の取得価額は、地方公共団体に対する寄付金の額とはならず、開発宅地の取得価額を構成するとした事例
裁決事例集 No.30 - 162頁
請求人は、宅地開発行為に伴う本件土地の市に対する無償提供は法人税法第37条第3項第1号に規定する地方公共団体に対する寄付金に該当すると主張するが、請求人が、宅地開発行為の許可の申請をするに当たり、公共施設の管理者である市に対して、市道に接する部分の本件土地を、公共道路用地として無償提供し、市道の拡幅工事を行ったのは、都市計画法上の開発行為の規制により、本件土地部分に道路を設置する必要があったことによるものであり、そこに設置される道路の効用は、開発土地に吸収され、その宅地としての効用を形成するものと認められるから、その道路の無償提供は名目的なものにすぎず、それにより請求人は損失を受けていないというべきである。したがって、本件土地の無償提供は、地方公共団体に対する寄付金には該当せず、本件土地の取得価額は、開発土地の取得価額を構成するものと認めるのが相当である。
昭和60年10月31日裁決
土地の取得に際して売主に支払った固定資産税等に相当する金額は当該土地の取得価額に算入すべきであるとした事例
請求人は、土地の取得に際して売主に支払った固定資産税等について、その経済的実質を考慮すると租税公課そのものであるから、損金の額に算入すべきであると主張するが、土地等の非減価償却資産についても、法人税法第22条第4項、同法施行令第54条を適用し、資産の取得のために実質的に欠かせない費用と認められるものがあれば、それは「資産の購入のために要した費用」とするのが相当であるところ、本件において、買主である請求人は地方税法上の当該固定資産税等の納税義務者でないから、請求人が支払った当該金員は、固定資産税等として市町村に納付するものでなく、固定資産税等の負担なしに当該土地を取得できる対価として売主に支払う固定資産税等に相当するものといえるため、それは、本件土地の取得のために実質的に欠かせない費用であり、「資産の購入のために要した費用」として当該土地の購入の代価に加算するのが相当である。
平成13年9月3日裁決
事業用借地権の設定に際して支払った一時金で返還されない金額は、借地権の取得価額に算入すべきであるとした事例
請求人は、借地借家法により新たに規定された事業用借地権は、改正前借地法上の借地権と明らかに内容が異なっており、現行法人税法にない新たな課税客体であり、換言すれば現行法人税法は歴史的・時系列的にみても、事業用借地権等を包含していないことは明らかであるから、法人税法施行令第12条《固定資産の範囲》を根拠とした本件更正処分は違法無効であると主張する。
しかしながら、事業用借地権は、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上20年以下とする借地権をいうものとされ、普通借地権について適用される契約の更新に関する規定(借地借家法第3条ないし第8条)、建物買取請求権に関する規定(同法第13条)及び借地契約の更新後の建物再築の許可に関する規定(同法第18条)などが適用されない旨規定されているものの借地権であることには変わりがない。
また、法人税法上の「土地の上に存する権利」から除外する規定も特に存しないことを考えあわせると、事業用借地権は法人税法上の「土地の上に存する権利」に含まれると解される。
そうすると、本件土地を賃借するために土地所有者に支払った本件一時金で返還されない金額は、当該借地権の取得価額に算入すべきであると認められるので損金の額に算入できない。
平成14年9月17日裁決
請求人は、競売により取得した本件建物を当初から利用する計画もなく、取り壊して跡地を利用する目的であったと認められることから、本件建物の取得価額及び解体費等は本件土地の取得価額に算入すべきとした事例
請求人は、本件建屋は改装して製造工場として利用する目的で取得したもので、初めから取壊しをする予定はなかったから、本件建屋の取得価額は、本件土地の取得価額には含まれない旨主張する。
しかしながら、原処分関係資料及び当審判所の調査において、その意思決定を示す具体的資料はなく、競売に係る評価書によれば本件建屋は従前工場として有害物質が使用されていた旨記載されており、そして、請求人の監査役が本件土地及び本件建物等を取得する直前に土壌汚染の調査方法等についてP県保健福祉環境事務所に相談していることからすれば、請求人は、競売に参加する時点において、本件建屋が従前工場であり有害物質が使用されていたことを承知しており、本件建屋が食品物の製造に適さない可能性があることを想定した上で、本件土地及び本件建物等を取得したものと認められる。
また、本件土地及び本件建物等の競売価格はその固定資産税評価額の約5分の1の金額であることからみて、本件建屋を取り壊しても、その跡地を利用する価値があったからこそ競売への参加を決定したものと認められる。
そして、請求人は、稟議書の記載内容から、平成16年12月の時点では本件建屋を解体して、新工場を建設することを決めていたものと認められ、平成16年10月から平成17年8月にかけて、本件排水施設及び本件建屋を順次取り壊し、その後、その跡地を利用して平成18年1月に本件社屋を増築するとともに、同年2月に別棟を新築取得していることから、取得後1年以内に本件建屋の取壊しに着手したと認められ、また、取得後に事情変更等があったとは認められない。
これらを総合すれば、請求人は、当初から本件建屋を利用する計画はなく、それを取り壊して、その跡地を利用する目的であったと認められ、法人税基本通達7-3-6の「その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかである」と同視しうる状況にあったものと認められる。
そうすると、本件では、本件建屋の取得価額を本件社屋の取得価額に含めて減価償却を行っているが、上記のとおり、本件建屋は取得後事業の用に供されることなく取り壊されているので、本件建屋の取得価額に係る減価償却費は損金の額に算入することは相当ではなく、また、本件建屋の取得価額は、本件社屋の取得価額とは別に、本件排水施設解体費等とともに本件土地の取得価額に算入するのが合理的であるというべきである。
また、本件タンク設備等についても、食品製造工場として利用できるものではなく、平成17年6月までに取り壊されており、本件タンク設備等撤去工事費は、本件タンク設備等を取り壊して、本件土地を使用するために要した費用であると認められることから、本件土地の取得価額に算入すべきである。
以上のことから、本件建屋の帳簿価額及び本件解体工事費等は、本件各事業年度の損金の額に算入することはできず、本件土地の取得価額に算入すべきである。
平成20年3月24日裁決
不動産の取得に際して売主へ支払った固定資産税等相当額は、取得した当該不動産の取得価額に算入すべきであるとした事例
《ポイント》
本事例は、請求人が取得した不動産には、土地、建物のほか建物付属設備が含まれていたことから、それぞれの取得価額を基に本件事業年度における各資産の償却限度額等を再計算して、原処分の一部を取り消したものである。
《要旨》
請求人は、不動産の取得に際して請求人が売主へ支払った固定資産税等相当額は、地方税法上の納税義務者として支払う固定資産税等そのものではないものの、請求人と売主との間で、それぞれの当該不動産を所有する期間に対応する固定資産税等を負担したものであり、損金の額に算入すべきものである旨主張する。
しかしながら、地方税法上、固定資産税等の納税義務者は、その賦課期日である毎年1月1日現在における固定資産の所有者であると解されるところ、賦課期日後に所有者に異動が生じたからといって課税関係に変動が生じるものではなく、同日後に固定資産の所有者となった者が納税義務を負うことはないから、固定資産の売買の当事者間において売買後の期間に対応する、いわゆる未経過分の固定資産税等相当額が授受されたとしても、買主において地方税法上の固定資産税等の納税義務に伴う負担とみることはできない。そうすると、請求人が売主へ支払った固定資産税等相当額は、当該不動産に係る売買契約書の定めにより請求人と売主との間に生じる債権債務関係に基づいて授受されたものであって、また、当該不動産の売買に伴って授受されたものであり事後費用とはいえないことからすれば、当該固定資産税等相当額は、当該不動産の購入の代価の一部であると認めるのが相当である。したがって、当該固定資産税等相当額は取得した不動産の取得価額に算入すべきである。
《参照条文等》
法人税法施行令第54条
法人税基本通達7−3−16の2
地方税法第343条
《参考判決・裁決》
平成24年3月13日裁決(裁決事例集No.86)
未経過固定資産税等相当額は譲受資産に係る購入対価を構成するものとして固定資産の取得価額に算入すべきであるとした事例
《要旨》
請求人は、不動産を譲り受けた際に譲渡人に支払った未経過固定資産税等相当額(当該不動産に係るその譲受けの年度の固定資産税及び都市計画税のうち当該不動産の引渡日以後の所有期間分に相当する額をいう。)は、固定資産税等そのものであり租税公課であるから不動産の取得価額に含まれない旨主張する。
しかしながら、固定資産税等は地方税法に基づき1月1日の不動産の所有者が納税義務を負うことになっており、賦課期日後に所有者となった譲受人が固定資産税等の納税義務を負うものではないから、譲受人が譲渡人に支払った未経過固定資産税等相当額を租税公課そのものであるということはできない。そして、売買当事者間で合意に基づき授受された未経過固定資産税等相当額は、あくまでも合意された売買の取引条件の一つであり、当該条件を満たさないことには売買取引そのものが完了しないと考えられるから、当該未経過固定資産税等相当額は取得関連費用ではなく、狭義の購入の代価として取得価額に含まれるとするのが相当である。
《参照条文等》
法人税法施行令第54条第1項
法人税基本通達7−3−16の2
《参考判決・裁決》
平成24年3月13日裁決(裁決事例集No.86)