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所得税法の特例

特定事業の用地買収等の場合の譲渡所得の特別控除

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
  2. 譲渡所得の特例
    1. 長期譲渡所得と短期譲渡所得
    2. 長期譲渡所得に係る課税の特例
    3. 短期譲渡所得の課税の特例
    4. 収用等の場合の譲渡所得の特別控除等
    5. 特定事業の用地買収等の場合の譲渡所得の特別控除(2件)
    6. 居住用財産の譲渡所得の特別控除
    7. 居住用財産の買換えの場合の課税の特例
    8. 特定の事業用資産の買換えの場合等の課税の特例
    9. 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火共同住宅の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
    10. 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例
    11. その他
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制
  8. 寄附金特別控除

あっせん手続等の一部が実施要領に従っていなかったとしても、そのことが特別控除の趣旨目的を滅却させるほど重大であるとまではいえない場合には、あっせん証明書が取り消されない限り、有効な証明書として特別控除の適用は認められるが、実体が伴っているかどうかの判断は最終的には課税庁の判断にゆだねられているとした事例

裁決事例集 No.64 - 256頁

 原処分庁は本件譲渡に係る農用地等の権利移動に係るあっせん手続が農水省通達(実施要領)に定める手続に沿ったものではないから農業振興地域の整備に関する法律(農振法)第18条の規定の趣旨に適合したものではなく、本件譲渡について本件特別控除を適用することはできない旨主張する。
 本件特別控除は農振法第23条第1項及び第18条の各規定に該当することを前提とするものであるから、課税庁はその該当性の判断に当たり現実に行われた農業委員会のあっせん事業が上記農振法の各規定に基づいて適正に行われたものかどうかの調査を行う場合も当然にあり得るが、その場合であっても、上記法令に違反することがその趣旨目的を滅却させるほど重大であり、あっせん証明書が無効なものであると評価できる場合はともかく、証明書が取り消されない限り有効な証明書として本件特別控除の適用は認められると解される。
 本件では、あっせん手続や証明書の発行手続に実施要領に従っていなかった点があったとしても、各認定事実によれば、このことが法の趣旨目的を滅却させるほど重大であり、あっせん証明書が無効なものであるとまでは認められないから、本件処分は取り消すのが相当である。

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土地の譲渡が「収用の対償に充てるために買い取られる場合」に該当しないとして、租税特別措置法第34条の2の規定の適用が認められないとした事例

裁決事例集 No.75 - 274頁

 県企業局も県農林水産部も、それぞれの設置の根拠法令は異なるものの、いずれも県知事の管轄下にある補助機関であり、県の行政組識の一構成機関であると認められる。そうすると、県企業局がその事業の用に供するために、県農林水産部が管理・使用している事業用地を自らの管理下に移転させる場合には、財産管理者である県農林水産部との間で管理換えの手続を取ることとなる。そして、本件においても当該管理換えの手続が取られたものであり、そのことは、本件管理換え協定書からも明らかである。さらに、県農林水産部から県企業局への管理換えがあった平成17年2月7日の前後を通じ、本件事業用地の所有者がA県となっていることからも、収用又は買取りがなされたものではないことが認められる。
  以上のことから、県企業局への本件事業用地の管理の移転は、土地収用法等による収用でもなければ、資産についての買取りの申出を拒むときは収用されることとなる場合の買取り、すなわち収用権を背景とした買取りでもないこととなる。
  租税特別措置法第34条の2第1項は、個人の有する土地等を特定住宅地造成事業等のために譲渡した場合には、一定の要件の下に譲渡所得の金額の計算上1,500万円が控除される旨を規定しており、この特例(以下「本件特例」という。)の対象となる譲渡として、同条第2項第2号において「(措置法)第33条第1項第1号に規定する土地収用法等に基づく収用(同項第2号の買取り‥‥‥を含む。)を行う者若しくはその者に代わるべき者として政令で定める者によって当該収用の対償に充てるため買い取られる場合」が規定されている。
  このような譲渡が本件特例の対象とされているのは、公共事業の施行者が土地等を収用等により円滑に取得するためには、事業用地の譲渡者に対して代替地を提供することが必要不可欠である場合もあることから、公共事業の施行者が代替地として提供するために必要な土地、すなわち対償地を容易に取得できるようにとの趣旨からであると解され、同法第34条の2第1項の規定は、税負担の軽減の特例又は例外規定であって、その解釈及び適用は厳格でなければならないというべきである。
  本件についてみると、上記のとおり本件事業用地の管理換えは、収用又は収用権を背景とした買取りではないから、県企業局は、同法第34条の2第2項第2号に規定する収用を行う者若しくはその者に代わるべき者として政令で定める者には該当せず、また、本件譲渡物件の県農林水産部への提供についても、同号に規定する収用の対償に充てるために買い取られる場合に該当しない。よって本件土地の譲渡については、本件特例を適用することはできない。

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