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所得税法の特例

相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
  2. 譲渡所得の特例
    1. 長期譲渡所得と短期譲渡所得
    2. 長期譲渡所得に係る課税の特例
    3. 短期譲渡所得の課税の特例
    4. 収用等の場合の譲渡所得の特別控除等
    5. 特定事業の用地買収等の場合の譲渡所得の特別控除
    6. 居住用財産の譲渡所得の特別控除
    7. 居住用財産の買換えの場合の課税の特例
    8. 特定の事業用資産の買換えの場合等の課税の特例
    9. 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火共同住宅の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
    10. 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(6件)
    11. その他
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制

相続税の申告期限の翌日から2年を通過した日以後に譲渡された相続により取得した土地の譲渡所得について、租税特別措置法第39条の規定の適用は認められないとした事例

裁決事例集 No.19 - 139頁

 相続により取得した土地を相続税の申告期限の翌日から2年を経過した日以後に譲渡した場合において、その譲渡日がその2年を経過した日以後になったことが、仮に当該譲渡の譲受者の資金事情によるものであるとしても、租税特別措置法(昭和51年法律第5号による改正前のもの)第39条の規定の適用について、かかる特別の事情を参酌して同条の規定の適用を認めるべき旨を定めた法令上の規定は存しないので、当該土地の譲渡所得について同条の規定の適用は認められない。

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遺留分減殺請求により取得した不動産を取得後1月で譲渡しても、その譲渡が相続税の法定申告期限の翌日以後2年経過後である場合には、相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例の適用がないとした事例

裁決事例集 No.40 - 272頁

 請求人は、租税特別措置法第39条“相続財産に係る譲渡所得の課税の特例”に規定する「(相続税法)第27条第1項の規定による(相続税の)申告書の提出期限」は、遺留分減殺請求の調停の成立した日、又は遺留分減殺請求の意思表示をした日の翌日から6月以内と解すべきであるから、本件譲渡について、同条を適用すべきであると主張するが、相続税の申告書の提出期限は、被相続人の死亡を覚知することにより、相続財産の一定額を取得し得る地位に立つことを知った日の翌日から6月以内と解すべきである。本件譲渡は相続税の申告書の提出期限の翌日以後2年を経過する日までの間の譲渡に該当しないので、措置法第39条の適用はない。

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代償金を支払って取得した相続土地を譲渡した場合の取得費の額に加算する相続税額の計算に当たり、当該代償金の額を圧縮した原処分は相当であるとした事例

裁決事例集 No.53 - 275頁

 請求人は、租税特別措置法通達39−14(代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合の取得費加算額の計算)は、納税者に不利になる取扱いをするものであり、租税法規の解釈に反するものであるから、更正処分は取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、租税特別措置法第39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)は、相続により財産を取得した個人で納付すべき相続税額が算出された者が、相続税の課税対象となった財産を一定期間内に譲渡した場合には、相続税と所得税が課税され租税負担が重くなることから、譲渡所得の計算上、譲渡資産に対応する相続税相当額を取得費に準じて扱うことを目的として創設された制度の趣旨からすると、代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合において、譲渡土地に対応する相続税相当額を上回る部分についてまで同条が認めたものではないと解するのが相当であるから、原処分庁の計算方法は、同条の規定の趣旨に即した合理的なものと認められる。
 したがって、原処分庁が譲渡土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、取得費の額に加算される相続税額の算定において、これに相当する代償金を控除した更正処分は適法である。

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遺留分減殺請求権を行使して取得した宅地を譲渡しても、その譲渡が相続税の法定申告期限の翌日以後2年経過後である場合には、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の適用がないとした事例

裁決事例集 No.57 - 267頁

 請求人は、遺留分減殺請求権を行使して本件宅地を取得したものであるが、遺留分を侵害していた者が相続税法第32条に規定する更正の請求をしたため、遺留分権利者たる請求人も同法第30条に規定する期限後申告を余儀なくされ、その相続税を納付するために本件宅地を譲渡したのであるから、租税特別措置法第39条第1項にいう相続税法第27条第1項の「相続の開始があったことを知った日」は、遺留分減殺請求訴訟の判決が確定した日」と読み替えて租税特別措置法第39条第1項を適用すべきであると主張する。
 ところで、相続税法(平成4年法律第16号による改正前のもの。)第27条第1項は、「相続又は遺贈により財産を取得した者は、・・・その相続の開始があったことを知った日の翌日から6月以内」に申告書を提出しなければならないと規定しているところ、この「相続の開始があったことを知った日」とは、相続人が被相続人の自然死又は擬制死亡を覚知することにより、自己のために被相続人の権利義務を包括的に承継し得る地位を取得したことを知った日であり、相続の単純又は限定の承認を行って相続人の地位を確定的に取得した日、あるいは、遺産分割の協議又は調停の成立若しくは審判により、相続人が具体的に相続財産の全部又は一部を取得した日ではないと解されている。
 そして、遺留分権利者は、一般の法定相続人と同じく相続の開始により相続財産の一定額を不可侵的に取得し得る地位に立つものであるから、遺留分権利者の相続税の提出期限の起算日についても、一般の相続の場合と同様に考えるべきである。
 したがって、遺留分権利者について、相続税法第27条第1項の「相続の開始があったことを知った日」とは、自然死又は擬制死亡を覚知することにより、相続財産の一定額を不可侵的に取得しうる地位に立ったことを知った日と解するのが相当であり、自ら遺留分減殺請求を行ってその遺留分を確定的に確保した日、あるいは、遺留分減殺請求に係る判決が確定しそのことによって具体的な相続財産を取得した日と解するのは相当でない。
 本件譲渡は相続税の申告書の提出期限の翌日以後2年(平成6年法律第22号による改正後の措置法では3年。)を経過する日までの間の譲渡に該当しないので、租税特別措置法第39条第1項の適用はない。

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いわゆる超過物納に係る還付金相当額について譲渡所得の金額を計算する場合において、その物納許可に基づく物納財産の収納が相続税の法定申告期限から2年経過後であっても、本件譲渡が本件特例の適用期間を経過した後にされたものである以上、租税特別措置法第39条第1項の適用はないとされた事例

裁決事例集 No.57 - 278頁

  1.  請求人は、相続の開始があったことを平成3年8月27日に知ったと認められるから、相続税の申告期限は平成4年2月27日となる。そうすると、本件の場合、租税特別措置法第39条第1項の規定による特例を適用することができる譲渡は、平成3年8月28日から平成6年2月27日までの間に行われたものでなければならないところ、本件不動産が国に収納され、還付金が生じて譲渡となったのは、平成8年10月15日で、特例適用期間経過後のことであるから、譲渡所得の計算上、本件特例は適用できないことになる。
  2.  請求人は、特例の適用期間内に物納申請に対する許可及び本件不動産の収納が行われなかったのは、国税局の事務処理の遅延によるものであって、請求人の落ち度ではないから、本件特例は認められるべきである旨主張するが、同特例は、本来課されるべき税額を政策的見地から特に軽減するものであるから、租税負担公平の原則に照らし、その解釈は厳格になされるべきところ、租税特別措置法第39条第1項が特例の適用期間の徒過について格別の救済措置を設けていないから、上記適用期間について例外を認めることは、法が予定していないことである。

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租税特別措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された金額」は本件各土地の相続税の課税価格に算入された価格に基づく金額であるとした事例(平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分・一部取消し・令和元年7月5日裁決)

令和元年7月5日裁決

《ポイント》
 本事例は、租税特別措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された金額」は本件各土地の自用地としての価額に借地権割合を乗じた金額ではなく、相続税の課税価格に算入された本件各土地の貸家建付地としての価額に借地権割合を乗じた金額となると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、各土地(本件各土地)に借地権を設定したのであるから、租税特別措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「譲渡をした資産」は、本件各土地の自用地としての価額に借地権割合を乗じた金額となるのであって、当該金額は、本件各土地の相続税評価額を上回ることとなることから、結局、「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は、本件各土地の相続税評価額の全額となる旨主張する。
 しかしながら、当該課税価格とはあくまで本件各土地に係る相続税の課税価格に算入された価格に基づく金額であって、本件の場合、「当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は貸家建付地評価額である。また、本件においては、各借地権(本件各借地権)が本件各土地の全体に占める割合(本件割合)と本件土地の周辺地域の借地権割合とを併せ考慮すれば、本件各借地権の設定契約により譲渡したものとみなされる本件各借地権の設定に係る対価は、本件各土地の権利の本件割合相当分に当たるものと認められる。したがって、「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」として本件各借地権が本件各土地の相続税の課税価格のうちに占める価額とは、本件各土地が相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額すなわち貸家建付地評価額に本件割合を乗じた価額となる。ただし、譲渡費用の一部が計上漏れとなっていることが認められることから、本件更正処分の一部を取り消すことが相当である。

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成12年11月30日判決(訟月48巻1号147頁)

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