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所得税法の特例

住宅借入金(取得)等特別控除

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
  2. 譲渡所得の特例
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除(25件)
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制
  8. 寄附金特別控除

賃貸用共同住宅と併設された居住用住宅部分について住宅取得控除の適用はないとした事例

裁決事例集 No.9 - 35頁

 住宅取得控除の対象となる家屋の要件は、1棟の家屋の床面積が租税特別措置法施行令(昭和49年政令第78号による改正前のもの)第26条第1項第1号に規定する床面積以下であり、かつ、その床面積の2分の1以上に相当する部分を自己の居住の用に供していることである。
 したがって、1棟の家屋が賃貸用と居住用とに区分されており、それぞれの居住用部分の床面積が同号に規定する床面積以下であっても、その家屋の総床面積が同号の要件を満たさないときは、住宅取得控除の適用はない。

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従来の建物の一部を取り壊し増築したものについて租税特別措置法第41条第1項に規定する新築住宅に該当しないとする原処分庁の主張を退けた事例

裁決事例集 No.24 - 173頁

 租税特別措置法(昭和55年法律第9号による改正前のもの)第41条第1項にいう「新築」の意味は、これを現況に則し実質的に解すべきであって、単に登記簿その他の関係書類の上で、それが「増築」と記載されていることだけを理由として、形式的にその「新築」性を否定するのは相当でなく、本件建物は、旧建物を取り壊し、その場所に立て直したものであると認められるから、これを「増築」とした原処分は相当でない。

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家屋を取得した日から6か月以内に居住の用に供した事実が認めらないから住宅取得控除の適用はないとした事例

裁決事例集 No.29 - 200頁

 請求人は、昭和54年11月に取得した本件家屋につき住宅取得控除が適用されるべきであると主張するが、本件家屋における昭和54年11月から昭和55年8月ころまでの電気、ガス及び水道の使用状況をみると、電気及びガスは全く使用されておらず、また、水道も極めて少量しか使用されていないこと、請求人は本件家屋に電話を架設しなかったこと及び請求人は本件家屋に居住していないとの近隣居住者の答述があることから、請求人が本件家屋をその取得の日から6か月以内に居住の用に供したとは認められないので、本件家屋につき租税特別措置法(昭和55年法律第9号による改正前のもの)第41条に規定する住宅取得控除の適用がないとした原処分は相当である。

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既存住宅の共有持分の追加取得は、租税特別措置法第41条“住宅の取得をした場合の所得税額の特別控除”第1項に規定する「既存住宅」の取得に当たるとした事例

裁決事例集 No.39 - 505頁

 共有持分権は一個独立の所有権たる性質を有するものであって、通常の所有権と同じく目的物を使用・収益・処分する権能を持つものと解されるから、居住の用に供する家屋の共有持分の取得は住宅取得特別控除制度が適用される「既存住宅の取得」に当たると解するのが相当である。共有持分権の取得は既存住宅の取得に当たらないとする原処分庁の主張の趣旨は、同制度が持家促進の目的から設けられた立法趣旨に照らし相当でないということにあるとうかがわれるが、昭和58年の租税特別措置法の一部改正により持家居住者が既存住宅を取得した場合にも同制度の適用を認めることとされた法改正の経緯からみて、上記のとおり解したとしても、その立法の趣旨に反するものとまではいえない。すなわち、既に居住用家屋を有する者が他の居住用家屋を2以上取得することとなる場合のほかは租税特別措置法第41条の適用が認められるものであることから、既に居住用家屋の共有持分を追加取得した場合であっても、同居している夫婦間又は親子間におけるように居住状態の変化の伴わない売買であればともかく、かかる事情がうかがわれない本件にあっては同条の適用があるものと解するのが相当である。

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住宅取得等特別控除に係る借入金債務の成立時期について、金銭消費貸借契約が成立したのは居住開始の翌年であるとした事例

裁決事例集 No.43 - 452頁

 租税特別措置法第41条第1項に規定する借入金とは、その年12月31日における現実の借入金の残高と解するのが相当であるところ、請求人の場合、本件金銭消費貸借契約が成立したのは、本件家屋に居住することとなった年の翌年であるから、当該居住することとなった年分中には借入金債務は成立していないというべきである。
 なお、本件家屋に居住することとなった年の12月31日までに、公庫からの融資予約通知の受領、公庫への融資基本約定書の差し入れ及び融資予約金に係る保証料の支払があったとしても、これらはいずれも本件金銭消費貸借契約を締結するための準備手続とみるのが相当であるから、当該事実があることをもって本件金銭消費貸借契約が成立したものとみることはできない。

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住宅取得等特別控除の適用に当たり、事務所等兼用住宅については、床面積240平方メートル以下の要件は、居住の用に供する部分のみでなく、一棟の家屋全体の床面積で判定すべきであるとした事例

裁決事例集 No.48 - 147頁

 請求人は、本件家屋の居住専用部分の床面積が213.39平方メートルであるとして、自らの持分である6分の5について住宅取得等特別控除を適用し、平成5年分の所得税の確定申告をしたところ、原処分庁は、本件家屋の床面積は244.41平方メートルであり、租税特別措置法施行令第26条第1項に規定する家屋に当たらないので、住宅取得等特別控除の適用は受けられないとして更正処分をした。
 請求人は、本件家屋について、その居住の用に供する部分の床面積をもって、措置法施行令第26条第1項第1号に規定する「一棟の家屋で床面積が、240平方メートル以下」の判定をすべきであると主張するが、事務所等兼用住宅について、住宅取得等特別控除の対象となる家屋に該当するためには、その家屋の床面積の2分の1以上の部分が専ら居住の用に供されている必要があることのほか、事務所等の部分を含めたところの一棟の家屋全体の床面積が240平方メートル以下で、かつ、50平方メートル以上であることが必要であると解するのが相当である。

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年末近くに入居したため、その年に融資が間に合わず借入金の年末残高証明書の発行を受けられなかった場合、住宅取得等特別控除は結果的に4年間しか適用がないとされた事例

裁決事例集 No.51 - 272頁

 請求人は、請求人のように年末近くに新築住宅に入居したため、住宅金融公庫からの融資が翌年になり、入居した年の年末残高証明書の交付を受けることができない場合、住宅取得等特別控除(平成元年改正前のもの)の適用を4年間しか受けられず、5年間の適用を受けた者に比べ、不公平、不平等であるから、「年末残高証明書が交付された日の属する年以後5年間」は適用があるものと解し、その適用を認めるべきである旨主張する。
 しかし、住宅取得等特別控除は「当該居住の用に供した日の属する年以後5年間の各年」について適用される旨規定されており、この規定は特則・例外規定であり厳格に解すべきものであるから、請求人が主張するように解することはできず、請求人の主張は採用できない。

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住宅取得等特別控除の対象となる家屋の取得の対価の額には、不動産仲介手数料や不動産登記費用等は含まれないとした事例

裁決事例集 No.53 - 283頁

 請求人は、中古住宅の取得に際して支払った不動産仲介手数料や不動産登記費用等は、家屋の取得に伴う経済的負担を構成する以上、仲介手数料等を家屋の取得の対価の額に含めることは租税特別措置法第41条(住宅の取得等をした場合の所得税額の特別控除)の立法の趣旨に沿うというべきであると主張する。
 ところで、租税特別措置法第41条第1項は、居住用家屋を取得した場合にその取得に係る資金を一定の金融機関等から借り入れた場合には、住宅取得等特別控除の適用がある旨規定している。
 ある支出が「居住用の家屋の取得等に係る請負代金若しくは取得等の対価の額」とするためには、当該支出が居住用に係る構築物等の取得の対価の額に充てられることが一つの要件と解されているところ、仲介手数料等は、家屋と併せて同一の者から取得した対価の額に充てられたものでないこと、また、家屋と仲介手数料等とは実務的に区分計算が困難であるとも認められないから、仲介手数料等は家屋の取得の対価の額に含まれないと解するのが相当である。

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父親所有の家屋に増改築を行った場合において、増改築後に当該家屋を取得した場合にも住宅取得等特別控除が適用されるとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 No.58 - 140頁

 請求人は、租税特別措置法第41条第3項に規定する「増改築等」には、既に所有している家屋に係る増改築のみならず、増改築後に当該家屋を取得するに至った場合も含まれると解すべきである旨主張するが、同条項は「当該居住者が所有している家屋につき増築、改築その他政令で定める工事」と規定しており、増改築時点で当該家屋を所有していることが適用要件と解されることから、請求人の見解は現行法上採り得ない。
 また、請求人は、以前に行ったリフォームにより共有状態となった旨、増改築の計画段階で父から2分の1の持分を譲り受けた旨主張するが、請求人は主張を裏付ける的確な証拠を提出しておらず、また、他人所有の不動産を増改築した場合には、原則として、その増改築部分の建物の所有権は建物に附合し建物本体の所有者の所有に帰することとなるのであるから、リフォームあるいは増改築を行ったこと自体から当然に請求人に共有持分が発生すると解することはできない。

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請求人が他の者と共有する家屋の改修工事を行った際に、費用の全額を負担していても、その全額は住宅取得等特別控除の対象とすることはできないとした事例

裁決事例集 No.61 - 364頁

 請求人は、[1]本件家屋の改修工事費用の全額を実際に負担しているから、請求人の住宅取得等特別控除の対象となる増改築等に要した費用の額は、当該改修工事費用の全額である旨及び[2]当該工事費用の支出があったことにより本件家屋の請求人の持分を変更しているから、登記簿上の持分に基づいて行われた更正処分は事実を誤認している旨主張する。
 ところで、本件家屋の改修工事により付加された部分は、本件家屋と一体となっていることから民法第242条により本件家屋に附合したこととなり、その所有権は本件家屋の共有者にそれぞれの持分に応じて帰属することになる。
 そうすると、増改築部分についても共有者が各々の持分に応じて所有していると解されるから、請求人の住宅取得等特別控除の対象となる増改築等に要した費用の額は、本件家屋の改修工事に要した費用の額のうち請求人の持分に相当する部分となる。
 また、不動産登記はその真正なることを保証するために不動産登記法に規定する厳格な手続きによってなされており、登記には登記簿上表示される法律関係が実体法上も存在するものと推定される効力があり、登記簿上の法律関係が一応真正なものとして取り扱われる。
 もとより、反対の証拠によりこの推定を覆すことは可能であるが、請求人は持分変更の登記をしなかった理由を回答するのみで持分が変更されているとする主張を立証するに足りる証拠資料を提出せず、また、当審判所の調査によっても請求人の持分が変更されているとの心証を得ることはできないことから、請求人の本件家屋の持分は登記簿に記載された2分の1であると認めるのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。

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租税特別措置法第41条第1項及び租税特別措置法施行令第26条第2項に規定する建築の意義には増改築も含まれると解すべきであるから住宅借入金等特別控除の適用要件に該当するとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.62 - 173頁

 請求人は、建築基準法における建築には増改築が含まれるから、租税特別措置法(以下「措置法」第41条第1項及び租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」第26条第2項(以下、両規定を併せて「本件措置法規定等」という。)に規定する建築にも増改築が含まれると解すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件措置法規定等に規定する建築には、下記のとおり、増改築は含まれず、建築基準法における建築の意義とは別意に解するのが相当であり、請求人の主張は採用できない。
 (1)措置法第41条第1項は、居住者が、[1]居住用家屋の新築、[2]居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得、[3]居住用家屋で建築後使用されたことのある家屋で政令で定めるものの取得、[4]その者の居住の用に供している家屋で政令で定めるものの増改築等をし、これらの家屋をその者の居住の用に供した場合において、一定の要件の下に、住宅借入金等特別控除の適用をする旨規定している。
 (2)上記(1)の[3]の政令で定めるものは、措置法施行令第26条第2項第3号の規定によれば、当該家屋が耐火建築物である場合には、その取得の日以前25年以内に建築されたものであるとされている。
 (3)上記(1)の[4]の「増改築等」とは、措置法第41条第4項において、当該居住者が所有している家屋につき行う増築、改築その他の政令で定める工事で当該工事に要した費用の額が百万円を超えるものであることその他の政令で定める要件を満たすものである旨規定している。
 (4)措置法第41条第1項の規定から判断すると、上記(1)の[1]は、居住者自らが建築主となって新築した建物について規定し、[2]及び[3]は、居住者以外の者が建築した建物で居住者が承継取得したものについてそれぞれ規定したものであって、建物の建築後、居住の用に供されたことのない建物は[2]に、居住の用に供されたことのある建物は[3]に該当し、また、現に居住している者がその建物に増改築等をした場合が[4]に該当することになる。
 (5)また、住宅借入金等特別控除は、住宅政策の一環として、個人の持家取得の促進及び居住水準の向上を図ることなどを目的として設けられた制度であり、上記(1)の[3]の既存住宅の取得については、その良質性を確保する趣旨から、上記(2)のとおり、建築後の経過年数に一定の制限が加えられている。
 (6)ところで、建築基準法第1条《目的》は、同法は国民の生命、健康及び財産の保護を図るため、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関して守られるべき最低の基準を定めた法律である旨規定しており、その趣旨目的は、上記(4)の住宅借入金等特別控除のそれとは異にしているから、本件措置法規定等の適用については必ずしも建築基準法における用語の意義をそのまま引用しなければならないものではない。
 (7)上記(2)から(6)までに述べたことから判断すると、本件措置法規定等に規定する建築には増改築は含まれないと解するのが相当である。

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土地の売買契約と家屋の請負契約は措置法施行令第26条第7項第5号の要件を満たさないから、請求人の借入金は住宅借入金等特別控除の対象とならないとした事例

裁決事例集 No.63 - 255頁

 請求人は、[1]本件土地の売買契約と本件家屋の請負契約は、同時に同じ場所で締結されており、当該売買契約は租税特別措置法施行令第26条第7項第五号の要件(建築条件付契約)を満たすものであり、また、[2]本件借入金の保証人との保証契約により本件家屋を目的とする抵当権は実質的に設定されており、本件借入金は同項第六号の要件(抵当権の設定)を満たすものであるから、本件借入金の金額のうち本件土地の取得に要した資金に充てた部分の金額は、租税特別措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等に該当する旨主張する。
 しかしながら、当該請負契約と別個の契約である当該売買契約が租税特別措置法施行令第26条第7項五号の要件を満たさないのは明らかであり、また、本件家屋を目的とする抵当権は、本件年分の翌々年において設定されていることが認められるから、請求人の主張には理由がない。

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住宅借入金等特別控除の対象となる家屋に該当するか否か(床面積基準)の判定に当たり、同一人の所有に属する一棟の建物は、区分所有建物として表示登記又は保存登記がなされていない限り、一個の建物であると解するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 274頁

 請求人は、本件家屋(鉄筋コンクリート造陸屋根7階建ての建物)は、その構造上区分された数個の部分を独立して住居、その他の用途に供することができるものであるから、住宅借入金等特別控除の対象となる家屋の床面積基準の判定に当たっては、本件家屋の登記簿等の形式的な記載ではなく、実質主義に照らし、本件居住用部分(本件家屋の6階及び7階部分)の床面積により判断されるべきである旨主張する。
 しかしながら、一棟の建物につき区分所有が成立するためには、建物の各部分が独立の構造を有し、構造上区分された各部分が独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用に供することができるだけでは足りず、その各部分が所有権の客体として、取引上、別個のものとされることが必要で、その前提として、所有者において各部分を別個の建物とする意思が必須の要件であるとされている。
 そして、その意思が客観的に外部から認識され得るものでなければ、区分された部分が別個のものとして取引の対象とはなり得ないから、一棟の建物が同一人の所有に属するときは、区分された部分が別個のものであることを客観的に認識し得るものとして区分建物の表示登記又は保存登記がなされることを要すると解される。
 したがって、その登記がなされていない限り、同一人の所有に属する一棟の建物は一個の建物であるとするのが相当である。
 本件において請求人は、本件居住用部分を区分せず、本件家屋を一棟の建物として表示登記をし、請求人を所有者とする所有権保存登記をしているのであるから、本件居住用部分につき区分所有が成立していると解することはできず、本件家屋が一棟の建物を区分したものであると認めることはできない。
 そうすると、本件家屋が租税特別措置法施行令第26条第1項に規定する要件に該当するか否かの判定に当たっては、本件居住用部分のみで判断すべきでなく、本件家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されているか否かにより判断することとなる。

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請求人の増改築等の工事は、家屋を居住の用に供する前に行われていることから、住宅取得等特別控除の対象とならないとした事例

裁決事例集 No.65 - 312頁

 請求人は、増改築等の工事前に、本件借家から家財等の搬入を開始したこと及び本件家屋のガス、水道等が本件家屋の取得時点において使用可能であったこと等を理由に、本件家屋を居住の用に供したのは増改築等の工事前である旨主張する。
 しかしながら、請求人が届け出た住民票には、増改築等工事後に転居した旨記載されていること、ガス、水道の両方が開栓されたのは増改築等工事終了後であること、大型家具類等は、増改築等工事後に運送業者によって本件家屋に搬入されていること、増改築等工事は、増築した場所に風呂及び洗面所を移設する工事であること、及び増改築等工事の期間中に請求人の実家において寝泊りしていたことを考え併せると、請求人が増改築等工事の開始前に真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続し、本件家屋を生活の拠点として利用していたと認めることはできず、この点に関する請求人の主張は採用できない。

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同一日に宅地と居住用家屋を異なる業者から取得した請求人が、宅地の取得に係る債務のみを有している場合には、住宅借入金等特別控除の適用はないとした事例

裁決事例集 No.66 - 182頁

 請求人は、本件家屋及び本件土地を、同一日にそれぞれ異なる業者から取得しているが、これは土地・建物の一括購入で、租税特別措置法施行令第26条第18項ではなく、同条第10項の同時取得に該当し、同時取得・一体借入れとして住宅借入金等特別控除の適用がある旨主張する。
 しかしながら、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用の前提となる居住用家屋の取得に要する資金に充てるための借入金を有しておらず、また、請求人の場合、適用対象となる住宅借入金等を土地等の取得又は借入金等の形態による4つに分類されたグループ(同時取得・一体借入れ型、先行取得・一体借入れ型、先行取得・分離借入れ型、建築条件付以外の先行取得・分離借入れ型)のいずれにも該当しないので、住宅借入金等特別控除の適用をすることはできない。

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本件土地は既存家屋とともに取得したものとして、住宅借入金等特別控除の適用を受けていることから、本件土地の取得に係る借入金をその後に新築した本件家屋の取得に係る借入金に含めて住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできないとした事例

裁決事例集 No.68 - 115頁

 審査請求人は、本件土地を取得した日以後2年以内に本件家屋を新築したから、本件土地の取得に係る借入金は、住宅借入金等特別控除の適用対象となる旨主張する。
 しかしながら、審査請求人は、本件土地を本件既存家屋とともに取得したものとして、本件既存家屋及びその敷地の用に供されている本件土地の取得に係る借入金について、住宅借入金等特別控除を受けていることから、本件土地の取得に係る借入金をその後に新築した本件家屋の取得に係る借入金に含めて住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできない。

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父親が所有する家屋について増改築工事を行い、増改築工事後にその家屋に居住を開始したとしても、「居住の用に供している家屋で政令に定めるものの増改築等」に該当しないから租税特別措置法第41条(住宅借入金等を有する場合の特別税額控除)の適用はないとした事例

裁決事例集 No.70 - 189頁

 請求人は、増改築後にしか所有権を取得できないにもかかわらず、増改築前に所有権を有していない場合には住宅借入金等特別控除の適用を認めないとする租税特別措置法第41条第4項の規定は、当該控除の制度の趣旨に反し著しく不当であり、一戸建ての建物を第三者から購入した者よりも不利な扱いをすることになるので、不合理な差別を禁止し、法の下の平等を規定した憲法に違反する。
 したがって、本件増改築に対して住宅借入金等特別控除が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、租税特別措置法第41条第1項は、居住者が、国内において、その者の居住の用に供している家屋の増改築等をした場合、同条第4項は、第1項に規定する住宅借入金等特別控除が適用される増改築等の目的となる家屋は、当該居住者が所有している家屋である旨それぞれ規定しており、居住の用に供し、かつ、所有しているか否かの判断の基準となる時は、増改築等の工事がされた時であることは文理上明らかである。
 本件では、請求人は、本件増改築の工事がされた時点で本件家屋に居住しておらず、所有もしていないのであるから、本件家屋は、住宅借入金等特別控除が適用される増改築等の目的となる家屋に当たらず、本件増改築に対して住宅借入金等特別控除を適用する余地はない。
 したがって、本件増改築に対して住宅借入金等特別控除が適用されるべきであるとの請求人の主張には理由がない。
 なお、租税特別措置法第41条第4項の規定が憲法に違反するか否かの判断は、当審判所の権限に属さない事項であるので、審理の限りでない。

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住宅の共有持分を追加取得したことは、租税特別措置法施行令第26条第2項の「居住の用に供する家屋を2以上有する場合」には該当しないとした事例

裁決事例集 No.77 - 272頁

 原処分庁は、妻と共有していた居住用の家屋に関し、住宅借入金等特別控除を適用して所得税の確定申告をしていた請求人が、その後離婚し、財産分与により取得した前妻の持分を含めて同控除を適用して所得税の申告をしたことについて、共有持分の追加取得は既存住宅の取得に当たり、租税特別措置法施行令第26条第2項が「居住の用に供する家屋を2以上有する場合」に住宅借入金等特別控除の重複適用を認めていないことから、請求人は当初の持分取得に係る控除と共有持分の追加取得に係る控除を重複して受けることはできないと主張する。
 しかしながら、既に居住の用に供する家屋の共有持分を有する者が他の共有持分を追加取得したとしても、それは、新たに別の家屋を有することとなるものではなく、既に居住の用に供する家屋の持分を追加取得したことにすぎず、共有持分の追加取得後の所有権の及ぶ対象は当該家屋の一個のみである。また、持分の取得後の前後を通じて、当該家屋を主としてその居住の用に供している実態に変わりはない。
 したがって、請求人の共有持分の追加取得は、租税特別措置法施行令第26条第2項の「居住の用に供する家屋を2以上有する場合」に該当しない。

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請求人が取得した家屋を1棟の建物として登記した上で、その一部を居住用部分としている場合において、区分所有の意思表示が客観的に認識できないことから、住宅借入金等特別控除の適用は認められないとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、租税特別措置法第41条第1項の適用に当たっては、取得した建物が、借入金、面積、使用割合の3条件についてその適否が判断されれば足り、所有権が登記されているか否かが問われるものではない旨主張する。
 しかしながら、一棟の建物につき区分所有が成立するためには、建物の各部分が独立の構造を有し、区分された数個の部分で、独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用に供することができるだけでは足らず、その各部分が所有権の客体として、取引上、別個の物とされることが必要であり、その前提として、所有者の各部分を各別の建物とする意思が必須の要件であるところ、右意思は客観的に外部から認識され得るものでなければ別個の物として取引の対象となり得ないから、一棟の建物が同一人の所有に属するときは、右意思を客観的に認識し得るものとして区分建物の表示登記又はその保存登記がなされることを要すると解すべく、右登記が経由されない限り同一人の所有に属する一棟の建物は一個の建物であると解するのが相当である。
 本件家屋については、平成19年6月○日にこれを一棟の建物として表示登記が経由され、同月○日、一棟の建物として請求人のために所有権保存登記がなされたものであるから、本件家屋は一棟の建物として登記された一個の建物といわざるを得ず、本件居住用部分を区分所有したものと認めることはできない。
 そして、請求人が居住の用に供している部分の割合は、本件家屋の床面積の2分の1以上でないことから、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができる家屋を取得したことにはならないので、同控除の適用はできない。

《参照条文等》
租税特別措置法第41条第1項
租税特別措置法施行令第26条第1項

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既存住宅の取得の日とは、当該住宅の引渡しを受けた日であるとした事例

平成23年10月14日裁決

《ポイント》
 この事例は、住宅借入金等特別控除の対象となる既存住宅(いわゆる中古住宅)は取得の日から6月以内に居住の用に供したものに限るという要件における「取得の日」とは、既存住宅の引渡しを受けた日か、その既存住宅の引渡し後に行われた改装工事等の完了の日かが争われたものである。

《要旨》
 請求人は、請求人が居住の用に供した既存住宅(本件建物)の取得の日は、本件建物の改装工事及び外装工事並びに追加変更工事の完了の日である旨主張する。
 しかしながら、住宅借入金等特別控除の適用要件とされる家屋の取得の日とは、居住の用に供することが可能となったと認められる日、すなわち、その家屋の所有者が住宅としての機能を有する状態でその家屋の引渡しを受けた日を指すものと解するのが相当であるところ、本件建物は既存住宅であるから、請求人が住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、本件建物を、その取得の日から6月以内に請求人の居住の用に供していなければならないが、請求人が本件建物を取得した日は、上記各工事が完了した日ではなく、本件建物の引渡しを受けた日であり、請求人が本件建物を居住の用に供した日は、取得した日から9月を経過した日であるから、請求人は、住宅借入金等特別控除の規定を適用することはできない。

《参照条文等》
 租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第41条第1項

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新たに建築された家屋は、登記上、増築を原因としているものの、既存家屋の残存部分とは別棟であり、既存家屋と一体となっているとは認められないことから、新築住宅として住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるとした事例

平成23年10月17日裁決

《ポイント》
 租税特別措置法第41条に規定する「新築」に該当するか否かについて、登記簿その他の関係書類に記載された内容が実情にそぐわない場合には、建築家屋の現況及び建築経過等を総合し、判断するべきである。
 この事例は、新たに建築した家屋は、増築が登記原因となっているものの、既存家屋の残存部分と一体となったものではなく、新たに建築した家屋と既存家屋の残存部分とを事後的に廊下により接合したものであることから、新築住宅と認めるのが相当としたものである。

《要旨》
 原処分庁は、新たに建築された家屋(本件建築家屋)は、既存家屋の一部に増築したものであるとして建築確認申請及び登記がされているだけではなく、本件建築家屋と既存家屋の残存部分は、木製廊下を介して建物内部の移動ができる一体的な構造であり、また、請求人が本件建築家屋に居住を開始した時点においては、木製廊下が建築されていなかったとする事実は確認できないことから、本件建築家屋は新築でなく増築に当たる旨主張する。
 しかしながら、新たに建築された家屋は、家屋として、請求人夫妻とその子、両親及び祖母の全員が十分生活できる設備が整っている一方、既存家屋の残存部分は、居住に必要な設備として電灯設備及びトイレがあるだけで、既存家屋の残存部分のみで生活ができる設備が整っているとはいえない。また、まる1本件建築家屋と既存家屋の残存部分の梁は一体となっていないこと、まる2木製廊下と本件建築家屋の床の高さは約18センチメートルの段差が生じていることからみても、本件建築家屋は木製廊下によって既存家屋の残存部分とつながっているものの、本件建築家屋と既存家屋の残存部分とは、構造的に一体となっているとは認めらない。すなわち、本件建築家屋は、既存家屋の残存部分とは別棟であり、これは正に新築住宅にほかならない。

《参照条文等》
 租税特別措置法第41条

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成14年2月28日判決(訟月48巻12号3016頁)
 昭和57年8月10日裁決(裁決事例集No.24・173頁)

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住宅借入金等特別控除の対象となる「居住用家屋」とは、個人が当該家屋を2以上有する場合には、「その者が主としてその居住の用に供すると認められる一の家屋」をいうとした事例

平成24年12月5日裁決

《ポイント》
 本件は、「居住用家屋」を複数有している場合には、1「主たる居住用家屋」をその取得の日から6月以内に居住の用に供し、かつ、21の居住日以後その年の12月31日まで引き続き当該「主たる居住用家屋」を居住の用に供している場合にのみ、住宅借入金等特別控除の適用があるとした事例である。

《要旨》
 請求人は、住所地である@県所在の家屋(本件D家屋)のほかに、平成20年にa市所在の家屋(本件E家屋)を取得し、かつ、本件E家屋をその取得の日から6月以内に居住の用に供しているから、住所地を@県からa市に異動した日の属する平成22年分の所得税について、本件E家屋を対象として住宅借入金等特別控除の適用を認めるべきである旨主張する。
 しかしながら、租税特別措置法第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する住宅借入金等特別控除の対象となる「居住用家屋」とは、租税特別措置法施行令第26条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する「個人がその居住の用に供する家屋」を指し、個人が当該家屋を2以上有する場合には、「その者が主としてその居住の用に供すると認められる一の家屋」(主たる居住用家屋)をいうものと解されるところ、請求人は、本件E家屋の取得後6月以内に居住の用に供したときまでの間に、同家屋の生活環境を整え、その後、定期的にa市へ赴いた際に、日常生活の拠点として同家屋を利用していたものの、毎月の大半の日を本件D家屋で起居していたのであるから、上記期間中、請求人は、各家屋相互間の比較において、本件D家屋を中心として日常生活を送っていたものであり、同家屋が請求人の主たる生活の拠点として利用されていた家屋、すなわち「主たる居住用家屋」であったと認められる。他方で、上記期間中、本件E家屋は、請求人の「主たる居住用家屋」ではなく、住宅借入金等特別控除の対象となる「居住用家屋」には当たらないから、請求人は、本件E家屋を対象として住宅借入金等特別控除の適用を受けることができない。

《参照条文等》
 租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの)第41条第1項
 租税特別措置法施行令第26条第1項

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住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合の書類の添付がないとして住宅借入金等特別控除を適用することができないとした事例(平成23年分及び24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成23年分の所得税に係る還付金の充当処分・棄却・平成26年1月28日裁決)

平成26年1月28日裁決

《ポイント》
 本事例は、租税特別措置法第41条第17項に規定するとおり、住宅借入金等特別控除は、居住用家屋の取得等を明らかにする書類を確定申告書に添付している場合に限り適用することができるところ、登記事項証明書は添付書類の例示として規定しているものであり、登記事項証明書の添付がないことのみをもって住宅借入金等特別控除の書類添付の要件を満たさないというものではなく、それに代わる書類の提出があれば住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるのであるが、請求人の提出した各書類のいずれによっても、当該居住用家屋の取得した日は明らかではないから、住宅借入金等特別控除を適用することはできないと判断したものである。  

《要旨》
 請求人は、登記された事実を証明することを租税特別措置法施行規則第18条の21《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の適用を受ける場合の添付書類等》第9項は求めていないことから、確定申告書に、住民票、売買契約書、司法書士に対する登記申請手続の依頼書、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書等を添付していれば、登記事項証明書を添付していなくても、住宅借入金等特別控除を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、租税特別措置法第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する居住用家屋の取得の日とは、現実に自己の居住の用に供することが可能となったと認められる日、すなわち、その家屋について、支配が移転したときを指し、例えば、その家屋の所有権を有することを前提として、その家屋の引渡しないし所有権移転登記がされた日はこれに該当すると解するのが相当であるところ、請求人の提出した各書類のいずれによっても、少なくとも、請求人が本件物件を取得した日は明らかではないから、住宅借入金等特別控除を適用することはできない。
 また、請求人は、審判所に提出した物件の引渡証及び登記事項証明書のとおり、物件の引渡しを受け、共有持分割合を2分の1とする登記が完了しており、請求人に、住宅借入金等特別控除の適用を受ける権利が実体法上あることは明らかである旨主張する。しかしながら、住宅借入金等特別控除に係る制度が、その適用を受けるに当たり、確定申告書に適用金額記載と書類添付をすることを手続上の要件として法定したものであるから、確定申告書に書類添付のない場合には、実体法上の適用要件を満たすかどうかにかかわらず、住宅借入金等特別控除の適用は認められない。

《参照条文等》
 租税特別措置法第41条(平成25年法律第5号による改正前のもの)
 租税特別措置法施行規則第18条の21(平成24年財務省令第65号による改正前のもの)

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住宅借入金等特別控除制度の適用に関し、その対象とされた住宅の取得は、租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第5項に規定する特定取得には当たらないとした事例(平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成30年7月5日裁決)

平成30年7月5日裁決

《ポイント》
 本件は、審査請求人がその居住用家屋の取得の際に支払った仲介手数料は、租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第5項に規定する「住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額」には当たらないから、当該家屋の取得は同項に規定する特定取得には該当しないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)(措置法)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第5項に規定する「住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額」には定義規定は置かれておらず、請求人が既存住宅(本件住宅)の取得(本件取得)の際に支払った仲介手数料(本件仲介手数料)は同項に規定する住宅の取得等に係る費用の額に含まれるところ、本件仲介手数料には新消費税率による消費税等の額が含まれているから、本件取得は同項に規定する特定取得に該当する旨主張する。
 しかしながら、同項に規定する「住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額」とは、居住用家屋の新築又は既存住宅の取得に係る対価の額又は増改築等に係る費用の額をいうと解するべきであるから、請求人の主張は採用できない。そして、請求人は、本件住宅を消費税等の負担なく取得したのであるから、本件取得は、同項に規定する特定取得には該当せず、このことは、本件仲介手数料に含まれる消費税等の額の合計額が新消費税率により課されるべき消費税等の額に相当する税額であるか否かによって左右されない。

《参照条文等》
 租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第41条第1項、同条第5項

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換価代金等の配当処分の取消しを求める審査請求は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとした事例(配当処分・棄却・平成30年10月29日裁決)

平成30年10月29日裁決

《ポイント》
 本事例は、税務署長は、配当処分の取消しにより、再度適法な配当処分をすべき地位に置かれることになることから、換価代金等の配当処分の取消しを求める審査請求は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、配当処分(本件配当処分)は、換価代金等の交付期日に配当が実施され、その効力が消滅していること、処分の効力が消滅した後において、処分の取消しによって得られる実益がないことから、本審査請求は不服申立ての利益を欠く不適法なものである旨主張する。
 しかしながら、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了すると、配当処分はその目的を完了して処分の効力が消滅したと解されるが、その場合であっても、配当処分の取消しにより、税務署長は、再度適法な配当処分をすべき地位に置かれることになると解されるから、処分の名宛人は、配当金額の交付を受け得るべき地位を回復することとなり、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するということができる。したがって、請求人は、換価代金等が交付された後においても、本件配当処分の取消しを求めるにつき不服申立ての利益を有するから、本審査請求は適法なものである。

《参照条文等》
 国税徴収法第129条、第131条

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