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事業用資産の判定
- 不動産所得及び事業所得等の特例
- 譲渡所得の特例
- 株式等に係る譲渡所得等の特例
- 住宅借入金(取得)等特別控除
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
- タックスヘイブン対策税制
- 寄附金特別控除
一時貸付けに係る土地について事業用資産に当たらないとした事例
裁決事例集 No.1 - 45頁
譲渡した資産は、譲渡時において貸し付けられていたが、当該貸付けは、相当の対価を得て継続的に行われているものとは認められないので、当該資産は事業用資産とはならない。
昭和45年8月12日裁決
譲渡した山林素地について事業用資産に当たらないとした事例
裁決事例集 No.2 - 35頁
山林からは継続して収益をあげていないこと、所有山林の面積、植林の実施状況等からみて、山林業と称するに足る事業を営んでいるとは認められないので、譲渡した山林素地は事業用資産とはならない。
昭和46年6月8日裁決
農地を雑種地に地目変更の上宅地造成して譲渡した土地は事業用資産に当たるとした事例
裁決事例集 No.8 - 52頁
請求人は農地の譲渡に当たり、その売買契約に先立って、当該農地を埋立造成した上で譲渡する旨の念書を譲受人に差し出しており、その時点では間違いなく農地であり、かつ、その造成も土地の形質変更を伴うような性格のものでなく引渡しまでの期間も短期間であるので、事業の用に供している資産の譲渡と認め、事業用資産の買換えの特例の適用を認めるのが相当である。
昭和49年7月5日裁決
賃貸借契約の解除後相当期間内にした土地の譲渡について、租税特別措置法第37条第1項に規定する事業用資産の譲渡に該当するとした事例
裁決事例集 No.19 - 124頁
租税特別措置法(昭和53年法律第11号による改正前のもの)第37条第1項に規定する特定の事業用資産については、現実に事業の用に供されているもののほか、事業への現実の供用を了した後においても、相当の期間内はいまだ事業用資産としての性質を失うものではないと解するのが相当であって、どの程度の期間が相当であるかは、個々の事実関係について当該資産の種類、構造等の特性、事業の用に供さなくなった理由、その後における当該資産の現状及び使用目的等を総合判断すべきところ、本件土地は長期間賃貸していたもので賃借人の都合により賃貸借契約が解約されたものであり、請求人は当該契約の解除後も当該土地を継続して貸し付ける意思を保有し、貸付先を探索していたが、貸付先の探索ができなかったことから売却する意思を固め不動産仲介業者に、仲介を依頼して売却したものであること、そして、当該契約が解除された後における貸付先の探索時期、売却する意思を固めた時期及び実際に売却した時期についてみると、それぞれの期間はいずれも比較的短期間であること、なお、この間において当該土地につき事業用資産としての性格を失わせるような格別の事情も見受けられないことから、当該土地は、少なくともその売却時においては事業用資産としての性格を失っていたものとみるのは相当ではないと解する。
したがって、当該土地は事業用資産に該当しないとしてなされた原処分は、事実を誤認したものであり相当ではない。
昭和55年2月5日裁決
買換えにより取得した土地が農業の用に供されていない場合の譲渡所得について、租税特別措置法第37条第1項の規定は認められないとした事例
裁決事例集 No.20 - 279頁
請求人が市街化区域内の農地を譲渡し、その譲渡代金をもって市街化調整区域内にある土地を取得した場合において、当該土地について、請求人は売主に地目を畑から雑種地に変えさせており、また、売主は駐車場の用に供するために工事を施工していること、請求人は取得後農業の用に供することなく、駐車場として賃貸していることが認められるので、当該取得土地は、租税特別措置法(昭和55年法律第9号による改正前のもの)第37条第1項の表第5号に掲げる農業の用に供される土地等には該当しないとして、本件土地の譲渡所得については、同項の規定は適用されないとした原処分は相当である。
昭和55年4月11日裁決
買換資産として取得した農地が自己の農業の用に供されていない場合の譲渡所得について租税特別措置法第37条第1項の規定の適用は認められないとした事例
裁決事例集 No.21 - 249頁
農業所得を有する者とは、自らが耕作の方法等を決定して耕作し、又は他人に耕作させ、その耕作の結果生じた利益なり損失を自己に帰属させる者をいうと解すべきところ、請求人は本件買換資産たる農地につきその耕作を他人に一切まかせて、単に小作料に相当する玄米を受け取っているのみであるから、これによる所得は農業所得とするのは相当でなく、したがって、本件買換資産は自己の農業の用に供している農地とは認められず、租税特別措置法(昭和53年法律第11号による改正前のもの)第37条第1項の表第5号に規定する買換資産に該当しないので、本件の譲渡所得については同項の規定の適用は認められない。
昭和56年3月5日裁決
駐車場として賃貸していた土地の譲渡所得について租税特別措置法第37条第1項の規定の適用は認められないとした事例
裁決事例集 No.21 - 257頁
譲渡した土地は、前年7月から駐車場として賃貸していたが、当該土地の譲渡契約締結の話合いの状況及び当該土地の上に建設されるマンションの建設計画の進ちょくの状況に照らし当該賃貸は一時的なものにすぎず、相当の対価を得て継続的に行う事業に準ずるものに該当するとはいえないから、租税特別措置法(昭和55年法律第9号による改正前のもの)第37条第1項の規定の適用は認められない。
昭和56年3月31日裁決
譲渡した山林素地は事業(林業)用資産に当たらないとした事例
裁決事例集 No.23 - 247頁
請求人は過去4年間、山林の伐採又は譲渡による山林所得の申告をしておらず、過去における土地の譲渡に山林の譲渡が含まれていたとしても、その価格は格別取り上げる必要がない程度のものであると認められること及び本件譲渡直前において請求人が所有していた土地の面積は事業たる林業を経営している程度のものとは認められないことなどから請求人は林業を営んでいたとは認められないから、本件山林素地の譲渡は、租税特別措置法(昭和55年法律第9号による改正前のもの)第37条に規定する事業用資産の譲渡とは認められない。
昭和56年12月28日裁決
水田預託契約に基づいて農協に預託していた水田の譲渡は事業用資産の譲渡に当たらないとした事例
裁決事例集 No.30 - 195頁
請求人は、国の水田利用再編対策実施要綱に基づく水田預託契約により農協に預託した水田について、同農協から請求人自らが委託を受けて、除草、害虫駆除等を行って保全管理をしたものであること等から、当該水田は租税特別措置法(昭和58年法律第11号による改正前のもの)第37条第1項に規定する事業用資産に該当する旨主張するが、[1]請求人は自らの意思に基づいて耕作することを停止し農協に預託したものであり、資産の買換えのために耕作を停止したものではないこと、[2]請求人は耕作可能な状態に管理していたが、これは農協から委託を受け、その受託者としての保全管理作業であって農業経営のための業務とは認められないこと、[3]請求人は本件土地について農協と水田預託契約を締結したことによって自ら本件土地を耕作する意思を放棄したというべきであることなどから、本件土地は事業用資産とは認められない。
昭和60年10月31日裁決
譲渡土地は租税特別措置法第37条第1項に規定する事業の用に供していた資産に該当しないとした事例
裁決事例集 No.37 - 269頁
譲渡された土地の利用状況は、特定の者の駐車場としての表示や施設が設置されることもなく、その近隣へ勤務する者や所用のあった者が随時、必要に応じて自動車を駐車していた程度であり、また、本件譲渡土地を事業の用に供する積極的な意図は認められず、近い将来貸付けの用に供されることが客観的に明白でないと認められるから、本件土地は租税特別措置法第37条第1項に規定する事業の用に供していた資産に該当しない。
平成1年3月31日裁決
兄の経営する会社の従業員に固定資産税及び修繕費の負担をさせて居住させていた土地建物は事業用資産に該当しないとした事例
裁決事例集 No.37 - 282頁
請求人が譲渡した土地は、その土地の上にあった建物と共に、請求人から管理を委任された兄がその経営する会社の従業員に固定資産税及び修繕費を負担させて居住させていたものであるところ、[1]賃貸借期間、賃貸料等についての取決めがないこと、[2]請求人は、本件土地を譲渡した後に兄から報告を受けるまで、その従業員への貸付けの事実を報告されていなかったこと等の事実を総合勘案すると、その貸付けは、維持・管理の目的で従業員に使用させていたと認めるのが相当であるから、相当の対価を得る目的で貸し付け、かつ、相当の対価を得ていたものとは認められない。
また、その土地の上にあった建物を取り壊した後、その土地は建設会社に貸し付けられたが、それは、貸付期間が6か月間延長されたものの1年6か月であったこと及び使用目的が橋梁架換工事のための仮設道路用地であったこと等からすると、一時的に貸し付けていたにすぎないと認めるのが相当である。
したがって、本件土地の貸付けは、事業に準ずるものとは認められず、原処分庁が本件土地が事業用資産には該当しないとして、その譲渡につき租税特別措置法第37条の規定を適用しなかったことは相当である。
平成1年6月20日裁決
同族会社への土地の貸付けは使用貸借による貸付けと認められ当該土地は事業用資産には該当しないと認定した事例
裁決事例集 No.41 - 355頁
請求人は、[1]本件土地の借受人である同族会社が業績不振であることから賃料を免除しているが、賃貸料の授受がないとしても、賃貸であることには変わりはない、また、[2]租税特別措置法第69条の3“小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例”の取扱上、同族会社に貸し付けられている土地は、その貸付けが使用貸借であっても「事業の用に供されていた宅地等」に該当するものとして取り扱っているので、同法第37条“特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例”の適用に当たってもこれと同様に取り扱うべきある旨主張するが、同法第69条の3と第37条の規定はその趣旨、目的を本質的に異にするものであるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。当該土地の貸付けが賃貸借によるものではなく使用貸借による貸付けと認められる以上、当該土地の譲渡については、措置法第37条の適用はない。
平成3年2月5日裁決
譲渡物件は、譲渡時まで約1年10か月の間空閑地であったが、譲渡に至る経緯等を総合すると、いまだ事業用資産としての従前の性質を失っていなかったと判断されるが、しかしながら、本件買換物件の賃貸料の額は相当の対価とはいえず、したがって、本件買換物件は事業用資産には該当しないので租税特別措置法第37条第1項の規定の適用は認められないとした事例
裁決事例集 No.42 - 259頁
譲渡物件のうち、甲土地上にあった共同住宅がすべて取り壊され、譲渡時まで約1年10か月の間空閑地のままであったが、譲渡に至る経緯等を総合すると、この期間は「相当の期間」の範囲を超えていないものと認められるので、本件土地は、譲渡時には事業用資産としての従前の性質を失っていなかったと判断されるが、しかしながら一方、買換資産として取得した貸店舗の年間賃貸料1,200,000円は、取得価額の0.3パーセントにしかならず、普通預金の利率に比しても極めて低廉であり、かつ、本件賃貸料の額から固定資産税及び借入金利息を控除すれば利益が生じないことが明らかであるから、相当の対価とはいえず、本件買換物件は事業用資産には該当しない。したがって、租税特別措置法第37条第1項の規定の適用を認めなかった原処分は相当である。
平成3年7月15日裁決
駐車場として貸し付けていた本件土地は、事業に準ずるものの用に供する資産として政令で定めるものに該当せず、租税特別措置法第37条第1項の規定の適用は認められないとした事例
裁決事例集 No.42 - 271頁
本件土地の駐車場としての貸付状況等は、[1]貸付契約が専ら口頭によるものであって契約書の作成もなく、契約期間の定めもないこと、[2]駐車場に係る施設等は、砕石敷き、フェンス、ラインロープ及び立て看板等であること、[3]貸付期間は昭和59年7月から昭和62年2月までで、貸付台数は2台から4台、各年の利益(収入金額から固定資産税、減価償却費等の経費を控除した金額)は、昭和59年が△15,451円、昭和60年が1,345円、昭和61年が27,155円であること等から、本件土地の貸付けは、租税特別措置法施行令第25条第2項に規定する「事業と称するにいたらない不動産の貸付け・・・で・・・相当の対価を得て継続的に行う」ものには該当せず、したがって、本件土地については租税特別措置法第37条第1項の規定の適用は認められない。
平成3年10月9日裁決
賃貸借契約の解除後に取得した土地の譲渡は、租税特別措置法第37条第1項に規定する事業用資産の譲渡に当たらないとした事例
本件土地は、相続開始当時、被相続人の三女の夫名義であったところ、[1]相続開始後に三女の夫によって賃貸借契約を解除された後は事業の用に供することを停止し、[2]請求人らは、被相続人に登記名義が回復された後も、新たに賃貸することもなく空閑地として放置したままで、事業を行う意図が近い将来において実現されることが客観的に明白であったという状況になく、[3]調停後直ちに作成した合意書に従って譲渡していることから、駐車場としての事業への共用は賃貸借契約を解除した時点をもって終了し、その時点での事業用資産としての性格を失ったと解するのが相当である。
平成4年12月9日裁決
譲渡された土地は、譲渡を前提として一時的に短期間貸し付けられたものであり、租税特別措置法第37条第1項に規定する事業用資産(租税特別措置法施行令第25条第2項に規定する事業に準ずるものを含む。)とは認められないとした事例
請求人は、長期の賃貸を予定した借地を譲渡したとして、当該土地が租税特別措置法第37条に規定する事業用資産又は同法施行令第25条第2項に規定する準事業用資産に該当する旨主張するが、請求人は売買交渉の段階において、買受人において当該土地を取得しなければならない事情を承知の上で賃貸借をし、賃貸借を継続するのであれば通常必要でない当該土地の分筆登記を、賃貸借と同一時期にしていることから、当該分筆登記はその後の譲渡の準備のために行ったと認められ、賃貸借開始当時の請求人の真意は土地の譲渡を前提としたものであると推認されるから、当該土地は、相当期間継続して賃貸することを予定したものではなく、譲渡が成立するまでの間、一時的に賃貸したにすぎず、このことは、事業と称するにいたる不動産の貸付けに当たるとはいえず、また、租税特別措置法施行令第25条第2項に規定する相当を対価を得て継続的に行う事業に準ずるものにも該当しない。
平成6年6月1日裁決
買換資産の同族会社に対する貸付けは、無償貸付けであることから、特定の事業用資産の買換特例の適用がないと認定した事例
特定の事業用資産の買換特例は、買換資産を取得した日から1年以内に事業又は事業に準ずるものの用に供されなければならないところ(租税特別措置法第37条第1項、租税特別措置法施行令第25条第2項)、請求人らは「事業に準ずるもの」とは、買換資産の機能からみて自家用にも事業用にも使用される可能性のある資産の貸付けをいうものであり、本件買換資産は、賃借人であるL社がカラオケボックス事業として使用していることは明らかであることから、本件買換特例の適用対象資産に該当する旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法施行令第25条第2項に規定する「事業に準ずるもの」とは、事業と称するに至らない不動産等の貸付けで相当の対価を得て継続的に行うものとされていることから、賃貸された買換資産の機能によって本件買換特例の適否が判断されるべきものではない。
ところで、被相続人は、買換資産を取得した日に当該資産をL社に賃貸しているものの、同社から賃貸料を収受していないことから、被相続人の本件買換資産の貸付行為は、L社に対する無償貸付けと認められるので、本件買換特例の適用要件である事業用又は事業に準ずるものの用にも該当しないと認めるのが相当である。
したがって、譲渡資産に係る課税長期譲渡所得金額の計算上、本件買換特例の適用がないとした原処分は相当である。
平成7年6月14日裁決
譲渡土地は平成元年から耕作放棄されているので、特定の事業用資産の買換特例の適用がないと認定した事例
請求人は、平成3年1月に譲渡した農地は親子3人の生活を賄うとともに減反政策にも協力してきたことを考慮し、本件買換特例の適用対象資産に該当する旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法は一定の政策目的で定められた特則・例外規定であるから、その解釈適用は、厳格にされなければならないところ、特定の事業用資産の買換特例は、譲渡資産が事業の用に供されていることを大前提としている。
ところで、請求人は、水田農業確立対策要綱に基づき、譲渡土地を預託水田として助成金の交付を受けていたが、市道工事の終了した昭和62年頃、譲渡土地に土盛を行い自家用の野菜を植栽し昭和63年11月頃の収穫を最後に耕作を止め、放置していた旨審判所に答述していることから、当該土地の譲渡時(平成3年1月)において、当該土地は事業(農業)の用に供されていないことが明らかである。
したがって、譲渡土地が租税特別措置法第37条に規定する買換特例の適用対象資産に該当しないとした更正処分は相当である。
平成7年7月31日裁決
譲渡土地に係る賃貸契約は実態を伴わないものであるから、特定の事業用資産の買換特例が適用できないとして請求人の主張を排斥した事例
請求人は、昭和63年9月1日付でS社と締結した譲渡土地に係る賃貸契約に基づく地代収入について平成元年分及び平成2年分の確定申告を行っており、当該土地は租税特別措置法施行令第25条第2項に規定する事業に準ずる資産に該当するので、租税特別措置法第37条(特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例)第1項が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、次の事実によれば、昭和63年9月1日付の譲渡土地に係る賃貸契約は、平成元年10月頃に租税特別措置法第37条第1項の規定を受けんがために日付を遡及して作成されたものであって、その実態を伴わないものであるから、譲渡土地が同条に規定する買換特例の適用対象資産に該当しないとした更正処分は相当である。
- 請求人は、昭和58年に大学を卒業した後、譲渡土地上にある賃貸建物の所有者であるLと生計を一にしたことがなく、また、海外勤務地であるa国から昭和63年9月14日に帰国していること。
- Lは、平成元年8月にg県の計量保安課の立入調査を受けた際、担当官から移転の指導を受けたので、1の賃貸建物の移転を決意した旨答述していること。
- 譲渡土地の仲介業者であるFは、[1]譲渡土地の売りの具体的な話は平成元年8月ないし9月に受けて、同年10月に専任媒介契約を締結し、[2]その際、Lから税金の相談も受けたが、土地と建物の所有者が異なっていたので、顧問税理士と良く相談するようにと説明した旨答述していること。
平成8年3月1日裁決
譲渡土地は、昭和63年9月1日から譲渡(平成2年4月24日)するまで事業の用に供していないので、特定の事業用資産の買換特例が適用できないとして請求人の主張を排斥した事例
請求人は、譲渡資産を事業の用に供しなくなっても相当の期間(おおむね3年間)内は事業用資産としての性質を失うものでないから、譲渡土地のうち565平方メートルは、租税特別措置法第37条(特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例)第1項に規定する事業用資産に該当する旨主張する。
ところで、租税特別措置法第37条第1項に規定する事業の用に供しているものの譲渡とは、原則として、譲渡の時点において現に事業又は事業に準ずるものの用に供されている資産に限られている。しかし、事業用資産として供用が停止された場合には、その時点で直ちに非事業用資産となるのではなく、供用停止後も事業継続の意図があると認められるものについては、相当の期間内は、いまだ事業用資産としての性質を失うものではないと解するのが相当であって、この相当の期間とは、客観的に明白な事業継続の意思の有無、事業用資産の種類、構造等の特性、事業の用に供しなくなった具体的な理由、供用停止後の資産の状況及び供用停止後の買換えの準備活動等を総合して判断するのが相当である。
しかしながら、譲渡土地上にある事務所兼工場及びプレハブ建物の利用状況について、請求人の長男及びJ社(譲渡土地の前賃借人)の代表者であるZは、審判所に対し、[1]昭和63年8月31日以後は空家の状態であったこと、[2]本件建物の1階はメッキ工場と事務所、2階は食堂、プレハブは汚水処理等に使用していたが、昭和61年6月に移転した後は保守管理や除雪等を一切行っていなかったため窓やシャッターが壊れ、昭和63年8月の時点では使用不能の状態であった旨答述している。
以上のことから、譲渡土地は、譲渡時点において事業用資産としての性質を既に失っていたと認めるのが相当であるから、原処分庁が譲渡土地に係る譲渡所得金額の計算に当たり、租税特別措置法第37条第1項の適用がないとした更正処分は適法である。
平成8年4月11日裁決
請求人は事業として山林業を営んでいたとは認められないことから、譲渡した山林素地は事業用資産とはいえず、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例は適用できないとした事例
請求人は約○○ヘクタールの山林素地を所有していたが、過去7年間において、請求人に山林の伐採又は譲渡による所得があったのは、平成15年分、平成17年分及び平成18年分の3年分であり、いずれも森林組合又は下草刈りを行う業者からの依頼に応じて山林を伐採したことによる所得である。そして、山林所得がある各年分でいずれも山林所得の金額の計算上損失が生じており、収入金額を見ても、平成15年分は約○○○○円あるものの、平成17年分は約○○○○円、平成18年分は○○○○円と僅少であるから、請求人が、営利を目的として反復継続して、山林の伐採又は譲渡を行っていたとはいえない。
さらに、請求人は、山林素地を遅くとも平成3年1月までには取得しており、その所有期間は長期間に及んでいたにもかかわらず、その間、新たな植林をしていないと認められる。したがって、請求人が植林を計画的に企画遂行していたともいえない。
以上のとおり、請求人は、営利を目的とした山林の伐採又は譲渡を反復継続して行っておらず、長期間にわたって植林をしていないから、請求人が下草刈りなどの山林の管理を行っていたとしても、これに費やす労務もまた僅少であったと認められる。加えて、請求人には、平成18年分の所得税の確定申告において、事業所得(農業)、不動産賃貸による不動産所得、給与所得を申告したことに照らすと、山林所得の基因となる業務は従たる経済活動であったとみるべきである。
そうすると、山林の伐採又は譲渡の反復継続性及びその金額、植林の計画的な企画遂行、さらに、これらに費やす労務の程度、社会的地位などのいずれの観点から見ても、請求人が、本件譲渡の当時において、自己の計算と危険において独立して、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる山林業を営んでいたとはいえない。
したがって、請求人が事業として山林業を営んでいたとは認められないから、本件山林素地は、事業の用に供する資産とはいえず、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、特定事業用資産の買換えの特例を適用することはできない。
平成20年10月27日裁決