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その他
- 不動産所得及び事業所得等の特例
- 譲渡所得の特例
- 株式等に係る譲渡所得等の特例
- 住宅借入金(取得)等特別控除
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
- タックスヘイブン対策税制
- 寄附金特別控除
離婚に伴う裁判上の和解に基づき居住用土地の2分の1を分筆して相手方に所有権の移転登記をしたことにつき、離婚を機会に行った請求人らの共有に属する土地の共有物分割であり、譲渡所得は発生しないとした事例
請求人は、離婚に伴う裁判上の和解に基づき財産分与を原因として、本件土地の2分の1を相手方に移転登記をしたが、本件土地は、その取得資金である借入金の返済状況等から、実質は共働きをしていた妻との各2分の1を持分とする共有財産であったものであるから、本件和解では便宜的に財産分与という表現が使われてはいるが、これは共有物の分割であり、譲渡所得は発生しない旨主張する。
本件土地の購入資金とした住宅金融公庫からの借入金は、請求人と妻が、それぞれ自己の名で支払を受けるほぼ同額の給与を合わせ管理していた生活費から共同で返済しており、また、妻の母からの借入金の返済も同様に請求人らの収入から等しく行われたものとみるのが相当である。そうすると、請求人と妻との間では、本件土地の所有権は両者の共有に属していたとするのが相当である。したがって、本件は、請求人らの共有に属する土地を離婚を機会に分割して清算したものとみるのが相当であり、譲渡所得は発生しないというべきである。
平成6年3月30日裁決
減額更正処分により発生した過誤納金を収納未済額に充当した結果、物納許可を受けた相続税額を超える価額の財産により物納されたこととなり、物納財産の収納許可額と物納許可を受けた相続税額との差額が金銭で還付され、その差額に対して譲渡所得が課税された事例
請求人は、本件過誤納金について、原処分庁が請求人の納付すべき税額を減少させる更正処分をしたことから、金銭で納付していた税額が還付されたものであり、相続税の物納許可による過誤納金が還付されたものではないことから、譲渡所得の課税対象とはならない旨主張するが、当該更正処分により生じた過納金は、国税通則法第57条第1項の規定に従って適法に請求人の納付すべき税額に充当されているところ、本件過誤納金は、物納許可を受けた相続税額を超える価額の財産により物納されたことから、物納財産の収納価額と物納許可された相続税額との差額が請求人に金銭をもって還付されたものであり、租税特別措置法第40条の3に規定されている物納許可を受けて物納した財産に当たらないから、同条の規定の適用はなく、通常の資産の譲渡と同様に、譲渡所得の課税対象になる。
平成12年3月14日裁決
ワラントの権利行使期間が徒過したことによる損失について取得費又は譲渡費用として控除することを認めなかった事例
請求人は、ワラントの権利行使期間が徒過し失効したことによる損失(以下「失効損失」という。)について、ワラントを著しく低い価額で譲渡した場合の取扱い及び法人税法における損金算入との取扱いとの課税の公平から、他の株式等に係る譲渡所得の金額の計算上、取得費又は譲渡費用として控除すべきである旨主張する。
しかしながら、ワラントの失効とは、権利行使期間の徒過により、発行会社の株式を一定の条件で購入することのできる権利が消滅することであって、資産の譲渡には該当しないものであるから、ワラントの取得価額を他の株式等に係る譲渡所得の金額の計算上、取得費又は譲渡費用として控除することはできない。
また、所得税法には、法人税法の取扱いを準用する旨の規定はないことから、請求人の主張には理由がない。
平成12年5月22日裁決
特定口座内において受入非特定上場株式等を譲渡した場合におけるその取得価額は、実際の取得価額ではなく、みなし取得価額であるとした事例
本件株式は、請求人がD証券株式会社からA証券B支店に現物を持ち込み、保管委託されていたものが、特定口座の開設とともに同口座に移管されたものであるから、受入非特定上場株式等に該当し、本件株式の譲渡所得の計算上控除される取得価額は、みなし取得価額となる。
請求人は、実際の取得価額が認められないとすれば、当該譲渡により損をしているのに税金を支払わなければならず酷であるとして、みなし取得価額が適用される上場株式について実際の取得価額により所得計算をすべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は自ら特定口座により株式等の譲渡所得の計算をすることを選択しているところ、A証券B支店は、特定口座の開設時に請求人に対し受入非特定上場株式等の取得価額がみなし取得価額になるということを説明しており、請求人は、本件株式の取得価額がみなし取得価額の適用を受けることを十分に知りえる状況にあったものと認められ、また、A証券は、平成16年末を期限に実際の取得価額への見直しが可能であるとして請求人に対し再点検をするよう通知していたにもかかわらず、請求人は、取得価額の見直しの申出を行っていないことが認められる。
これらの事情に照らせば、本件株式の譲渡所得の計算上、実際の取得価額が認められないからといって、酷であるとは認められないから、請求人の主張は採用できない。
平成18年9月5日裁決
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例について、連続して確定申告書が提出されていないため適用することはできないとした事例(平成24年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分(平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をあわせ審理)、平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分・棄却・平成28年3月7日裁決)
《ポイント》
本事例は、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例の適用について、譲渡損失の発生年分以降、確定申告書が時系列的に連続して提出されていることが要件であるとしたものである。
《要旨》
請求人は、租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除》第6項に規定する特例(本件特例)の適用に当たり、その手続要件である同条8項に規定する「連続して確定申告書を提出している場合」とは、更正の請求等により、結果として上場株式等に係る譲渡損失の金額に関して譲渡所得等の金額の計算の連続性が確認できればいいから、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書が、本件特例の適用を受ける年分の確定申告書の後に提出されても、本件特例を適用することができる旨主張する。
しかしながら、同条8項は、「上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき・・・確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合であって」と規定しているところ、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出と本件特例の適用を受ける年分の確定申告書の提出との先後関係については、同項が「その後において」と規定していることからすれば、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出が先であることは、文理上明らかである。したがって、請求人は、本件特例を適用することはできない。
《参照条文等》
租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)第37条の12の2
《参考判決・裁決》
平成20年3月14日裁決(裁決事例集No.75)