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貸倒損失
証券外務員が行った取引先への融資に係る回収不能額を貸倒損失として事業所得の金額の計算上必要経費に算入した事例
裁決事例集 No.24 - 39頁
証券外務員はその勧誘の実を上げるために、取引先に対して資金を貸し付け、又は株式を貸与して融資の便を図るようなことを通常行っていると認められるところから、これらの行為に係る債権を回収することができないこととなった金額は、事業所得の金額の計算上、これを貸倒損失として必要経費に算入するのが相当である。
昭和57年5月21日裁決
税理士が関与先に貸し付けた貸付金の貸倒れによる損失の金額は、税理士業務に係る事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 No.31 - 37頁
所得税法第51条第2項に規定する「事業の遂行上生じた貸付金」は、当該事業所得の基因となる事業の範囲に属する事由によって生じたもの、つまり、当該事業所得を得るために通常必要とされる貸付金がこれに該当すると解されるところ、税理士である請求人は貸金を業としていないこと及び税理士業務の範囲に関与先に対する貸付金の貸付けは含まれていないことから、当該貸付金の貸付けが請求人の事業所得の基因となる事業の範囲に属する事由によって生じたものと認めることはできないし、また、事業所得を得るために必要な貸付けであったと認めることはできないので、当該貸付金は当該事業所得を生ずべき事業の遂行上生じた貸付金に該当しない。
したがって、当該貸付金の貸倒れによる損失の金額は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
昭和61年6月30日裁決
取引先から受領した約束手形については、債務者が和議の取下げをした時点において債権の回収が不能になったと認められることから、貸倒損失として必要経費の額に算入すべきであるとした事例
請求人が取引先から受領した約束手形に係る貸倒損失については、当該手形の債務者は、[1]後に取り下げてはいるものの和議の申立てを行っていること、[2]主要な営業種目である宅地建物取引業者の免許を取り消されていること、[3]残余財産もなく債務の弁済ができないような状況にあること等から、遅くとも債務者が和議の取下げをした時点において債権の回収が不能になったと認めるのが相当である。
平成4年9月7日裁決
請求人が貸倒れとなったと主張する債務者3名に対する貸付金は、いずれも請求人の営む事業に関して生じた貸付金ではないとした事例
請求人が貸倒れとなったと主張する債務者3名に対する貸付金は、いずれも請求人の営む不動産仲介業に関して生じた貸付金ではなく、かつ、請求人は貸金業を営んでいないこと等の理由から、請求人の事業遂行上生じた貸付金と認めることはできず、当該貸付金に係る貸倒損失を事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできない。
平成4年12月9日裁決
請求人が債権譲渡により生じたとする貸倒損失は認められず、また、修正申告書を作成するに当たって支払ったとする決算事務手数料は、必要経費に算入されないとした事例
- 請求人は、本件譲渡契約書に基づき、貸付債権を債権総額の3%でF社に譲渡したのは事実であるから、債権譲渡により生じた損失の金額は、譲渡日の属する年分の必要経費に算入すべきである旨主張する。しかしながら、F社は、本件譲渡契約書に係る貸付債権の回収額を請求人に報告し、請求人は、他の各店舗同様、F社が回収した金額について売上報告書を作成しているほか、F社が回収した金額の60%相当の額をF社に対する集金手数料として支払っていることから、本件譲渡契約書は形式的なもので、実質は債権の取立て委託とみるのが相当であり、請求人の主張は認められない。
- 請求人は、修正申告書を作成するに当たり、決算事務手数料として566,500,000円をK及びLに支払っており、これらの金額は、事業活動に直接関連する必要経費であるから、事業所得の必要経費に算入すべきである旨主張する。しかしながら、請求人は、既に関与税理士により修正申告書が作成されていたにもかかわらず、新たに修正申告書の作成をK及びLに依頼したことに対して支払われた支出であり、この支出は、請求人の営む事業の遂行上、通常かつ一般的に必要と認められる客観性を有しているとはいえないことから、事業所得の金額の計算上必要経費には算入されない。
平成15年3月25日裁決
税理士である請求人の、関与先への貸付金が、税理士業の遂行上生じた貸付金とは認められないから、請求人が当該貸付金に係る貸倒引当金として繰り入れた金額は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できないとした事例
請求人は、[1]本件貸付金は、永きにわたり主要かつ収益性のある顧問先に対し、資金の必要性を検討して金銭を貸し付けたものであり、この行為は請求人の本来の業務に付随するものであること、[2]本件顧問先に対して金銭を貸し付けることにより、本件顧問先が発展することは、請求人の職業上の利益を将来にわたり享受させるものであること、[3]税理士紀律規則第6条の2の規定があることをもって、請求人が本件顧問先に貸し付けた行為は税理士本来の業務に準ずる行為であること及び[4]所得税基本通達51ー10の(2)(以下「本件通達」という。)の「自己の製品の販売強化、企業合理化等のため、特約店、下請先等に貸し付けている貸付金」を「自己顧問契約の強化・企業合理化等のため、特約ある永年顧問先等に貸し付けている貸付金」と読み替えるべきであることから、本件貸付金は税理士業の遂行上生じたものであり、これに係る貸倒引当金については所得税法第52条が適用され、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、所得税法第52条にいう「事業の遂行上生じた貸付金」とは、当該事業の遂行と何らかの関連を有する限りの貸付金のすべてをいうものではなく、その業種業態からみて、当該事業所得を得るために通常必要であると客観的に認め得る貸付金をいうものと解されるところ、[1]税理士としての請求人と本件顧問先との関係は、税理士法第2条(税理士は租税に関し税務代理、税務書類の作成、税務相談等の人的役務を関与先に提供し、報酬を得ることを業とする旨規定)に規定する業務の範囲を出ず、この範囲に金銭の貸付けが含まれないことは明らかであり、客観的にみて金銭の貸付けは、請求人の税理士としての事業所得を得るために通常必要な行為であるとは認められないこと、[2]たとえ請求人が本件顧問先に対して金銭を貸し付けることにより、本件顧問先からの税理士報酬の増加、すなわち事業所得の増加を期待し、現実に税理士報酬の増加があったとしても、それは派生的に生じた間接的結果にとどまり、本件貸付金は、税理士としての事業所得を得るために通常必要なものであると認めることはできないこと、[3]税理士紀律規則第6条の2の規定は、J税理士会が会員である税理士を対象として税理士の品位保持及び紛争防止のために慎むべき事項を定めた内部規則であり、当該規則をもって税理士に貸金行為を認める根拠であるとはいえないこと及び[4]本件通達は所得税法第51条第2項の規定の対象となる債権に限られることから、事業の遂行上生じた債権の範囲を例示したものであるところ、税理士の業務の範囲には金銭を貸し付ける行為が含まれないことは明らかであって、請求人の主張するように本件通達を解釈することはできないことから、本件貸付金については、請求人の事業の遂行上生じたものとは認められず、請求人が各年分の本件貸付金に係る貸倒引当金として繰り入れた金額は、請求人の各年分の事業所得の必要経費に算入することはできない。
平成17年2月23日裁決
請求人が有する破産会社に対する売掛債権の貸倒損失の計上時期は、配当可能な財産がなくその全額が客観的に回収不能となったと認められる破産手続終結の決定がなされた時点であるとした事例
請求人は、平成16年に取引先であるG社の破産管財人から受けたファックスにより、G社の破産終結を知り得たのであるから、所得税基本通達51−12《回収不能の貸金等の貸倒れ》の定めにより、請求人がG社に対して有する債権の本件貸倒損失の計上時期は平成16年分となる旨主張する。
しかしながら、請求人が当該ファックスの受信時にG社の破産終結を知り得た事実は認められるものの、裁判所が破産法人に配当可能な財産がないことを認めた場合には、廃止決定又は終結決定をして、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、これらの決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、当然、破産法人に配当可能な財産はないのであって、当該決定等により請求人がG社に対して有する債権もその全額が客観的に回収不能となったと認めるのが相当である。よって、請求人の本件貸倒損失の計上時期は、G社の破産手続終結の決定がなされた平成14年分となる。
《参照条文等》
所得税法第51条第2項
所得税基本通達51−12
未収リース相当額の債権に係る貸倒損失は事業の遂行上生じたものであるとした事例
《要旨》
原処分庁は、本件契約に基因する未収リース料相当額の債権は、被相続人(請求人らの父)の事業の遂行上及び事業の遂行に付随して生じたものと認められず、同債権に係る貸倒損失の額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入できず、雑所得の金額の計算上必要経費に算入される金額であり、雑所得の金額を限度として必要経費に算入すべきであると主張する。
しかしながら、本件契約に係るリースは、取引先の事業に対する支援の一環として行われたものであると認められるとともに、当該リースを含む被相続人の設備・装置等の販売・設置やリース等に係る業務は、営利性、有償性を有することはもとより、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められ、未収リース料相当額の債権に係る所得は、事業から生じる所得として、同人の事業所得に該当するものというべきであり、そして、未収リース相当額の債権は貸倒れになったと認められるから、同人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
《参照条文等》
所得税法第27条、第35条、第37条、第51条、第52条
所得税法施行令第63条、第144条、第184条の2(平成19年政令第82号による改正前のもの)
《参考判決・裁決》
名古屋高裁平成5年9月30日判決(税資198号1213頁)