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ゴルフ会員権の譲渡による所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 譲渡所得
- 総合課税・分離課税の区分
- 造成土地の譲渡による所得
- 遺留分減殺請求に基づく所得
- 株券発行のない株式の譲渡による所得
- 不動産の譲渡等の事実の認定
- 錯誤による現物出資
- 代償分割
- 借地権等の設定の対価
- ゴルフ会員権の譲渡による所得(3件)
- 譲渡の日の認定事項
- 農地転用金
- 土地の交換分合
- 譲渡の意義
- 所得の区分
- 一時所得
- 雑所得
本件ゴルフ会員権に係る取引は、所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡とは認められないとした事例
請求人は、請求人がゴルフ会員権をK社に売却し、K社が本件会員権を同日に同額でL社に売却し、請求人が4日後に本件会員権を同額でL社から買い戻したことにより、請求人の所得税が軽減されることは請求人にとって経済的合理性を有するものであり、合理的な方法によって支払税額の軽減を図ることは国民の権利として当然許容されるべきであるとともに、有価証券市場において認められる翌日買戻取引が、ゴルフ会員権の売買において認められないということは考えがたく、一般的にゴルフ会員権の売買における翌日買戻取引は不自然な取引ではないとみなされるべきであり、本件会員権の譲渡は譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は[1]本件取引の約定を行うとともに本件売却計算書が発行された日のわずか4日後に本件買戻しの約定を行い、[2]本件取引の売買代金を受け取った翌日に本件買戻しに係る売買代金を支払っているが、[3]それらの代金の額は同額であり、[4]当該代金は2日の間にK社から請求人及びL社を経てK社に還流しており[5]本件一連の取引に伴う本件各会員権の名義変更ができず、あるいはそれを行っておらず、[6]請求人が手数料を負担したことを除けば本件一連の取引の前後の状況に変わりなく、[7]本件一連の取引は本件各会員権の譲渡損失を作り出すことを目的としたものと認められる。
したがって、本件一連の取引は形式的な取引であって、実体の伴わないものであり、真に売買があったと認めることができないので、本件取引は所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡があったことにはならない。
平成11年2月8日裁決
請求人が行った本件ゴルフ会員権の売却及び再取得に関わる一連の行為は、請求人が、所得税の軽減を目的として、虚偽の売却計算書等を作成させ、売買取引の外形を仮装した実態のないものと認められるから、本件譲渡に係る損失の発生及びこれに係る損益通算を認めなかった更正処分並びに重加算税賦課決定処分は適法であるとした事例
請求人は、本件ゴルフ会員権の相場が購入価額の半額となり、更に下がると考えられたこと等からそれを売却し、その後の事情から同会員権を再取得したものであるから、本件譲渡により譲渡損失が生じている旨主張する。
しかしながら、会員証及びネームプレートの交付がされていないこと、請求人が売却から再取得の間にメンバーとして2回にわたりプレーしていること、年会費の清算がされていないこと等の事実からすると、本件売却及び再取得は、所得税の軽減を目的としてされた、実態のない仮装のものであるから、本件譲渡によって損失が発生したものと認めることはできない。
また、請求人による本件ゴルフ会員権の売却から再取得に至る一連の行為は、所得税の軽減を目的として、本件買取計算書及び本件売却計算書により売買取引の外形を仮装したものであり、そして、請求人は、仮装した本件買取計算書に基づき、本件ゴルフ会員権の譲渡によって損失が生じたとして、他の各種所得の金額と損益通算した確定申告書を提出したものであるから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
平成13年5月30日裁決
預託金会員制ゴルフ会員権であった旧会員権の譲渡が譲渡所得の基因となる資産の譲渡に当たるとした事例
《ポイント》
本事例は、ゴルフ場の事業譲渡後に請求人が譲渡した旧ゴルフ場経営会社が発行した旧ゴルフ会員権は、新・旧ゴルフ場経営会社の間の取り決めにより、その譲渡の時点までの間、旧ゴルフ会員権に基づくプレー権が維持されていたことから、請求人が譲渡したゴルフ会員権は旧ゴルフ会員権であると判断したものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人の有していた旧運営会社に対する旧ゴルフ場の優先的施設利用権(プレー権)及び
預託金返還請求権などから成る契約上の地位(旧会員権)については、旧運営会社から新運営会社への事業譲渡(本件事業譲渡)により、上記
のプレー権が消滅したものと認められ、また、旧会員権を有する会員(旧会員)に対しては、上記
のプレー権とは別の権利である暫定的プレー権が付与されたものと認められるから、本件事業譲渡後における旧ゴルフ場の会員権は、上記
のみを内容とするものであり、当該会員権の譲渡は、譲渡所得の基因となる資産の譲渡に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件事業譲渡に際しては、旧運営会社と旧会員との間の旧会員権に係る権利義務関係の処理について、(イ)旧会員のうち本件事業譲渡後も引き続き、新運営会社に対する新ゴルフ場のプレー権及び預託金返還請求権などから成る契約上の地位(新会員権)の保有を希望する者に対しては、旧会員権そのものを会員権管理会社に取得させるのと引き換えに、新会員権を付与させ、また、(ロ)新会員権の取得を希望しない旧会員についても、上記(イ)の旧会員権の取得及び新会員権の付与に係る手続が完了するまでの間、旧会員が新ゴルフ場を利用することができるよう、新運営会社の親会社であるスポンサー会社が旧会員の優先的施設利用を承認することを取り決めたものと認めるのが相当であるから、本件事業譲渡において、新会員権の取得を希望する旧会員から会員権管理会社に対する譲渡の対象とされたのは、上記のプレー権及び上記
の預託金返還請求権から成る契約上の地位としての旧会員権そのものであって、旧会員権の譲渡時においてプレー権の存在が前提とされていたものといわざるを得ない。したがって、新会員権の取得を希望する請求人は、旧運営会社に対するプレー権を含む契約上の地位としての旧会員権を会員権管理会社に譲渡したものと認められるから、譲渡所得の基因となる資産を譲渡したものと認められる。
《参照条文等》
所得税法第33条第1項