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借地権等の設定の対価
借地権の更新料が土地の時価の10分の5以下である場合には、当該更新料が地代の年額の20倍に相当する金額を超えるとしても、譲渡所得には該当しないとされた事例
請求人は、本件土地の借地権の更新料は、当該土地の地代の年額の20倍に相当する金額を超えるものであるから、所得税法施行令第79条第3項の規定により譲渡所得の収入金額に該当する旨主張する。
ところで、所得税法施行令第79条第1項では、借地権の設定のうち、当該設定が建物若しくは構築物の所有を目的とする借地権等の設定である場合において、当該設定の対価として支払をうける金額がその土地の更地価額の10分の5に相当する金額を超えるときは、当該設定行為を資産の譲渡とみなす旨規定している。同条第3項では、その設定により受ける金額が、その設定により支払を受ける地代の年額の20倍に相当する金額以下である場合には、資産の譲渡には当たらないものと推定する旨規定しているが、この規定は、同条第1項にいう資産の譲渡とみなされる行為に当たるか否かを判定する上での推定規定であるから、当該行為が資産の譲渡に当たるか否かを同項により判定した場合には、同条第3項の規定を適用する余地はないものと解される。
そこで、本件土地の更地価額と借地権の更新料を検討すると、本件更新料は土地の更地価額の10分の5以下であると認められることから、当該更新料の金額が地代の年額の20倍に相当する金額を超えていたとしても、本件更新料は不動産所得の総収入金額に算入されるべきものである。
平成11年3月23日裁決
いわゆる連担建築物設計制度における余剰容積移転の対価として受領した金員は譲渡所得とは認められないとした事例
請求人は、余剰容積移転のための対価として受領した金員について、所得税法第33条第1項の資産の譲渡に該当することから、譲渡所得として課税されるべきである旨主張する。
しかしながら、余剰容積移転の対価は、土地所有権の一部譲渡を意味するものではなく、移転側が、移転を受ける側に対して自己の土地を建築上利用させるために、その土地における建築上の利用制限を受けることに対する対価であると解するのが相当であることから、「土地を使用させる行為」に当たり、原則不動産所得に該当し、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項に該当する場合に限り、譲渡所得として課税されることになる。
そうすると、本件余剰容積利用権は、建築基準法第86条第2項に規定する連担建築物設計制度の適用により容積率が事実上緩和されたことに基づいて発生したものであり、私法上の契約形態としては不作為地役権を設定する方式によっていることから、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項のいずれにも該当せず、不動産所得と解するのが相当である。
平成20年4月3日裁決