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不動産の譲渡等の事実の認定
債務返済に信ぴょう性がなく現有の家屋に借家人の地位しか有しない場合は、譲渡担保に当たらないとした事例
請求人は、形式上は売買であるが現にその物件に居住しており、かつ、その後に債務を弁済しているから譲渡担保であると主張するが、[1]債務の弁済を証する領収証に信ぴょう性がなく、相手方に入金経理の事実もないこと、[2]譲渡家屋の取壊しを前提として売買したと認められ、現に相手方が自己資金で家屋を新築しており、請求人は借家人にすぎないこと及び[3]月額地代の実質は借入金利息であると主張するが、その年利率は通常の利息に比し極めて低率であることから、譲渡担保としての要件に該当しない。
平成4年5月14日裁決
夫婦の財産関係についていわゆる別産制を前提とする場合、夫婦が婚姻中に相互の協力、寄与等によって得た資産であっても、いずれか一方の名義となっている財産は、単なる名義貸しによるものであることが明らかである場合を除き、当然に共有とはならず、その名義人を所有者として取り扱うのが相当であるとした事例
請求人らは、本件不動産の所有権は、被相続人とその妻であるHの離婚前においてその全部若しくは2分の1がHに帰属している旨主張する。
ところで、民法第762条によれば、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中に自己の名で得た財産はその特有財産とし、夫婦のいずれかに属するか明らかでない財産はその共有に属するものと推定する旨規定されており、夫婦の財産関係について、いわゆる別産制をとっていると解されるから、夫婦が婚姻中に得た所得やそれによって取得した財産の全てが、当然に夫婦の共有となるものではない。
そうすると、夫婦が婚姻中に相互の協力、寄与によって得た資産であっても、いずれか一方の名義となっている場合には、その取得資金の拠出等の事実に基づき、他方の特有財産であることが明らかであるとき若しくは夫婦の共有財産であることが明らかであるときなど、当該名義が単なる名義貸しによるものであることが明らかである場合を除き、その名義人を当該資産の所有者として取り扱うのが相当である。
これを本件についてみると、請求人の提出資料からは、Hが本件不動産の取得資金の全部又は一部を拠出した事実若しくは被相続人からHに事業を引き継いだ時点で本件不動産の所有権がHに移転している事実を認定することはできず、また、原処分関係資料及び当審判所の調査によっても同様である。
したがって、本件不動産は、被相続人が婚姻中に自己の名義で取得しているのであるから、民法第762条の規定により被相続人の特有財産であり、被相続人とHの共有となるものではないところ、その名義が被相続人名義となっていることについて、単なる名義貸しによるものであることが明らかであるとは認定できず、Hに所有権が移転したとする事実も認められないことから、被相続人をその所有者として取り扱うのが相当である。
平成11年7月23日裁決
譲渡所得の基因となった土地の所有権移転登記を抹消すべき旨の判決があったとしても譲渡所得の課税処分を取り消すべき理由にはならないとした事例
請求人は、本件土地の寄附に基因してされた譲渡所得の課税は、その後、本件土地の所有権移転登記を抹消すべき旨の確定判決があったから取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件判決は、原告と被告が親類関係にあるなどの状況下においてなされ、また、本件登記が無効となるべき事実は認められないから、本件判決があったとしても譲渡所得の課税処分を取り消すべき理由にはならない。
平成13年6月22日裁決