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譲渡の日の認定事項
いわゆるエスクロー契約により、株式及び新株引受権の売買契約によって生ずる売主の補償責任の履行を担保するため売買代金の一部を第三者に1年間預託する方法で取引がされた場合、当該預託された売買代金相当額は、株券等の引き渡し時の総収入金額に計上すべきこととされた事例
請求人らは、本件エスクロー資金は売主の補償責任を担保するため第三者に預託されたものであり、エスクロー期間が終了する平成10年3月14日まで受け取ることができる金額が確定しないから、平成9年分の譲渡所得に係る総収入金額に該当しない旨主張するが、所得税法第36条第1項による総収入金額の計算上、資産の譲渡に基づく収入金額は、当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転した日の属する年分の総収入金額に算入すべきものと解するのが相当とするところ、請求人らが認めるように、本件株券は、買収契約書により平成9年3月14日に買主に引き渡されているのであるから、本件エスクロー資金を含む譲渡価額の総額は、平成9年分の譲渡所得に係る総収入金額に該当する。
平成12年4月14日裁決
源泉徴収を選択した特定口座を通じて行った特定口座保管上場株式の譲渡について、選択により約定日の時点で総収入金額に算入することはできないとした事例(平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分・棄却・平成29年5月8日裁決)
《ポイント》
本事例は、法令解釈を基に、源泉徴収選択口座の制度を利用することを選択した者は、同制度において前提とされる計算と異なる日を選択して申告することは予定されていないと解すべきであると判断したものである。
《要旨》
請求人は、源泉徴収の選択をした特定口座(源泉徴収選択口座)を通じて行われた上場株式の譲渡(本件譲渡)について、本件譲渡に関する契約の効力発生の日(約定日)を本件譲渡に係る譲渡所得の収入すべき時期として申告を行うことは可能であると主張する。
しかしながら、源泉徴収選択口座の制度を利用することを選択した者は、譲渡をした日を基準に金融商品取引業者等が収入金額及び必要経費等の計算を行うことを前提に同制度を選択したものと解されるため、同制度において前提とされる計算と異なる日を選択して申告を行うことは予定されていないと解すべきであり、本件においては、特定口座内において処理される収入金額等の額が受渡日を基準に計算され、その状況により特定口座年間取引報告書も作成され請求人に報告されていること、また、特定口座源泉徴収選択届出書の提出期限が、特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る決済日であること、さらに、本件譲渡に係る所得税等の源泉徴収は、受渡日に行われていることから、金融商品取引業者等は、受渡日を基準として所得計算等を行っていたといえ、金融商品取引業者等の行う所得計算等に基づき申告を行うことを選択した後において、約定日を本件譲渡に係る譲渡所得の収入すべき時期として申告することはできない。
《参照条文等》
租税特別措置法第37条の11の3第1項、第3項及び第7項、第37条の11の4第1項及び第2項
租税特別措置法通達(株式等譲渡所得等関係)37の10-1、37の11の3-14