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農地
- 評価の原則
- 土地及び土地の上に存する権利
- 家屋及び庭園設備
- 動産
- 取引相場のない株式
- 出資の評価
- 預貯金
- 貸付金債権等
- 預託金制のゴルフ会員権
- 施設建築物の一部の給付を受ける権利
- 構築物
農業の主たる従事者の死亡により、市町村長に買取りの申出ができる生産緑地の価額は、生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価するのが相当であるとした事例
請求人は、財産評価基本通達40−2(生産緑地の評価)の(2)に定める買取りの申出ができる生産緑地とは、課税時期において、被相続人が市町村長に対し生産緑地買取申出書の提出済み又は買取り申出の手続中のものに限る旨主張する。
ところで、相続税法第22条(評価の原則)は、相続により取得した財産の価額について取得時の時価と規定しているところ、生産緑地に指定された場合は、指定告示日から30年間は建築物の新築、宅地造成等の行為制限が付され(生産緑地法第8条)、指定告示日から30年経過又は農業の主たる従事者の死亡により、市町村長に対して生産緑地を時価で買取りの申出ができる(同法第10条)こととされている。
生産緑地の評価について、相続税法第22条の規定を受けて財産評価基本通達40−2の(1)は、行為制限の解除の前提となっている買取りの申出をすることができる日までの期間に応じて定めた一定の割合を減額して評価することとしており、また、主たる従事者が死亡したときは、同通達40−2の(2)により、生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価することとしているが、これは、農業の主たる従事者の死亡を前提とした買取り申出の手続を同従事者が行うことを予定したものとは考えられず、農業の主たる従事者が死亡したときは、当該生産緑地を相続により取得した相続人が買取りの申出をすることができる場合を予定したものと解されるから、請求人の主張には理由がない。
したがって、財産評価基本通達40−2の(2)に定めに基づき本件生産緑地の価額を生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価した本件更正処分は適法である。
平成9年2月17日裁決
相続開始日現在、都市計画案の生産緑地地区内にあった農地について、相続開始後、生産緑地として指定されたとしても、財産評価基本通達40−2を適用して評価することはできないとした事例
生産緑地とは、生産緑地法第3条第1項に規定する生産緑地地区内の土地であり、生産緑地地区は都市計画法の規定による都市計画の手続により決定される。そして、都市計画の決定及び変更決定は、都市計画案の縦覧などの一定の手続を踏まえて都市計画法第20条第1項の規定による告示により決定し、その効力は、同条3項の規定により当該告示のあった日から生ずることとされている。
請求人は、本件農地は、相続開始日現在において、生産緑地地区内にある農地ではないが、被相続人が生産緑地地区とする都市計画案の同意書を提出し、縦覧対象地域として県報にも公示され、法定申告期限までには生産緑地として告示され制限が加えられているから、財産評価基本通達40−2を適用して評価すべきと主張する。しかしながら、Q都市計画生産緑地地区の効力が生じた日は平成13年11月16日であるから、相続開始日において、本件農地は生産緑地として制限がある土地とは認められないので、財産評価基本通達40−2を適用して評価することはできない。
請求人は、原処分庁の判断には平成3年4月18日参議院建設委員会の附帯決議が全く加味されておらず、違法である旨主張するが、特定市街化区域農地等に係る税制については、平成3年度の税制改正により平成4年において経過措置が講じられており、その限度を超える緩和は予定されていないものと解され、本件農地のように、当該経過措置の適用期間を経過した後に開始した相続により取得した農地等については、たとえ生産緑地の申請をしていたとしても、当該経過措置を適用あるいは準用して財産評価基本通達40−2の生産緑地の評価を適用することはできない。
平成16年6月22日裁決
農業経営基盤強化促進法の規定による農用地利用集積計画により設定された賃貸借に基づき貸し付けられている農地の価額は、自用地としての価額からその価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価すべきであるとした事例
請求人は、農業経営基盤強化促進法(旧農用地利用増進法)の規定による農用地利用集積計画により設定された賃貸借に基づき貸し付けられている農地について、評価基本通達41《貸し付けられている農地の評価》の(1)に定める耕作権の目的となっている農地にほかならないから、同通達に従い評価すべきであり、「農用地利用増進法等の規定により設定された賃貸借により貸し付けられた農用地等の評価について」通達(昭和56年直評10、以下「評価個別通達」という。)の適用が強制されるべきではない旨主張する。
しかしながら、農用地利用集積計画により設定された賃貸借により生ずる賃借権は、賃貸期間終了により離作料の支払もなく当然に農地が返還されるものであり、農地法の規定により強い保護を受け、また一定の価額で取引され離作料の対象となるいわゆる耕作権とはその性質が異なることから、同賃貸借により貸し付けられている農地については、評価基本通達41の定め(70%評価)によらず、評価個別通達により、その賃貸借の期間がおおむね10年以内であることから、相続税法第23条《地上権及び永小作権》の規定に照らし、その農地の自用地としての価額から、その価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価するのが相当であると解される。
平成17年1月19日裁決
農地法施行前に設定されていた農地の賃借権について、賃貸借の効力が生じており、農地法第20条《農地又は採草牧草地の賃借権の解約等の制限》第1項の規定の適用があるから、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当するとした事例
財産評価基本通達41の(1)は、耕作権の目的となっている農地については、その農地の自用地としての価額から、同通達42の定めにより評価した耕作権の価額を控除した金額によって評価することとし、耕作権については、農地法第20条第1項の規定の適用がある賃借権に限られるところ、本件農地の一部については、農地法施行(昭和27年10月21日)前から引き続き賃貸されていることが認められる。
農地法施行前における農地の賃借権の設定等に関しては、農地法の前身である農地調整法第5条及び第6条が昭和20年12月29日に改正(昭和21年2月1日施行)され、同法第5条は「農地ノ所有権、賃借権、地上権其ノ他ノ権利ノ設定又ハ移転ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当事者ニ於テ地方長官又ハ市町村長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ」と規定され、同法第6条第3号において、「農地ヲ耕作ノ目的ニ供スル為前条ニ掲グル権利ヲ取得スル場合」は前条の規定は適用しないとされた。次いで、農地調整法第5条及び第6条が、昭和21年10月21日に改正(昭和21年11月22日施行)され、同法第5条の「認可」が「許可」(地方長官)又は「承認」(市町村農業委員会)に改められ、同法第6条が削除されたことによって、以後、賃借権の設定等については許可又は承認が必要とされることとなったが、その施行前に開始された賃貸借は、同法上、この許可又は承認を要することなく有効に成立しているものと解されている。
そして、賃借権の設定等について許可又は承認が必要とされることとなった昭和21年11月22日前に賃貸借された農地の賃借人は、農地法施行後に改めて農地の賃借権の設定等に係る許可を要することはなく、又、その後賃借人に相続が開始した場合には、その相続人は、その賃借権を適法に承継したものと扱われることから、かかる賃借権は、その解約等を行う場合、農地法第20条第1項の規定により都道府県知事の許可が必要であることから、同法の保護を受ける賃借権、つまり、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当することとなる。
したがって、昭和21年11月22日前に賃貸借が開始された農地については、自用地としての価額から財産評価基本通達に定める耕作権の価額を控除して評価するのが相当と認められる。
平成18年6月19日裁決
倍率方式で評価する地域内に所在する市街地農地を評価するに当たり、当該農地が宅地であるものとした場合における固定資産税評価額が明らかな場合には、当該固定資産税評価額を基として当該農地が宅地であるものとした場合の価額を算定すべきであり、また、控除すべき造成費に給水管等敷設費は含まれないとした事例
1 財産評価基本通達40において、市街地農地の価額は、その農地が宅地であるとした場合の1当たりの価額から宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当する金額を控除して評価することとしており、倍率方式によって評価する地域内に所在する場合には、その農地が宅地であるとした場合の価額の算定をどのように行うかが問題となるところ、財産評価基本通達では、その農地が宅地であるとした場合の1当たりの価額は、その付近にある宅地について同通達11に定める方式によって評価した1当たりの価額を基とし、その宅地とその農地との位置、形状等の条件の差を考慮して評価するとして実務上の取扱いを定めている。
X市においては、市街化区域内に所在する田及び畑の固定資産税評価額は、その農地が宅地であるとした場合の価額から造成費相当額を控除することによって求められているから、原則として、市街化区域内に所在する農地の固定資産税評価額の算出過程においては、評価対象地が宅地であるとした場合の固定資産税評価額そのものが算定されていることになるのであり、評価対象地が宅地であるとした場合の固定資産税評価額そのものが算定可能である場合には、あえて付近の宅地の価額を基に算定するまでもなく、その固定資産税評価額を基に評価するのが相当である。
2 農地を宅地に転用するとは、農地を建築物の建築の用に供するためにその地面や地盤の変更を行うことをいうものと解されるが、実際にはその地域、土質、造成規模、造成目的などの条件によってその内容は種々異なることになる。その具体的な内容としては、宅地以外の土地を宅地化するために土地の形質を変更するために行われる整地、土盛り又は土止めに係る工事と、造成の目的が、戸建住宅、アパート、マンション、工場、倉庫、構築物の敷地などの各用途の別により必要とされる個別の工事とが考えられる。このうち、の造成工事については、その土地上にどのような建物等を建築するかの個別事情に左右される部分が大きいことから各建築物に附属する費用とも捕らえることができる。市街地農地を評価するに当たって造成費相当額を控除するのは、市街地農地の価額の形成要因が、農地としての利用ではなく宅地としての利用を前提としたものであり、その要因は近隣の更地である宅地と変わりがなく、また、更地である宅地との比較においては、宅地造成費相当額分だけの格差があるものと認められることによる。そのために通常必要とされる宅地造成費とは、どのような建築物が建築されるかにかかわらず必要とされる整地、土盛り又は土止めに要する金額を指すものと解するのが相当である。
この点について、請求人らは、宅地造成費に給水管等敷設費を含めているが、給水管等敷設費は、宅地を戸建住宅の敷地として利用するための個別の費用であり、このような費用は上記の造成工事費に該当すると認められるから、宅地比準方式により土地を評価する上で控除の対象となる宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費には当たらないものと認められる。
平成19年11月5日裁決
評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、広大な市街地農地として評価するのが相当であるとした事例
《ポイント》
この事例は、評価対象地である市街地農地が宅地であるとした場合に「広大地」に該当するか否かについて、評価対象地の属する地域内の開発事例を詳細かつ具体的に調査し、その調査結果を評価対象地の状況と併せ検討することにより、公共公益的施設用地の負担の適否を判断し、評価対象地は「広大地」に該当するとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、本件土地は、路地状開発によれば容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその算定の基礎とすることができること及び本件土地の属する地域(本件地域)内には路地状開発の事例が複数見受けられることから、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理的な開発方法に当たると認めるのが相当で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担の必要は認められないから、財産評価基本通達40−2《広大な市街地農地》に定める広大な市街地農地として評価することはできない旨主張する。
しかしながら、本件地域内の開発状況を見ると、本件土地と同規模程度の面積の土地で公共公益的施設用地の負担をしないで開発された事例がないこと、周辺地域の路地状開発において見られる路地状敷地の数は2ないし4であり、原処分庁主張の開発想定図にある7つもの連続した路地状敷地を配置した開発事例はない。加えて、本件土地の形状、他の道路との接続状況及び面積等を総合的に勘案すると、本件土地は、道路を開設して開発するのが経済的に最も合理的な開発方法と認められる。
したがって、本件土地は、広大な市街地農地として評価するのが相当である。
《参照条文等》
財産評価基本通達40−2