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貸宅地
- 評価の原則
- 土地及び土地の上に存する権利
- 家屋及び庭園設備
- 動産
- 取引相場のない株式
- 出資の評価
- 預貯金
- 貸付金債権等
- 預託金制のゴルフ会員権
- 施設建築物の一部の給付を受ける権利
- 構築物
バッティングセンターの待合フロアー等の建築物が借地上にあったとしても、その敷地は借地権の目的となっている土地に当たらないとされた事例
評価通達にいう借地権とは借地借家法第2条第1項に規定する建物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいい、この「建物の所有を目的とする」とは、借地使用の主たる目的がその地上に建物を建築し、これを所有することにある場合をいうのであるから、借地人がその地上に建物を建築し、所有使用とする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、「建物の所有を目的とする」に当たらないと解される。
これを本件についてみると、賃借人は本件敷地を含む本件土地を昭和53年ころから本件相続開始日まで引き続いてバッティングセンター経営の事業用地として利用し、本件待合フロアー等はバッティングセンターと構造上一体となっており、本件建築物はいずれもバッティングセンターの経営に必要な付属建築物として建築されたものと認められるから、本件土地の賃貸借の主たる目的は、バッティングセンターとして使用することにあると言える。
そうすると、賃借人が本件建築物を建築所有していたとしても、それは本件土地をバッティングセンターとして使用するための従たる目的にすぎないというべきであるから、本件賃貸借は、借地借家法第2条第1項に規定する建物の所有を目的とする賃借権に該当せず、したがって、本件敷地には、借地権は存在しない。
平成12年6月27日裁決
被相続人の所有に係る相続人の居住用家屋の敷地は、借地権の目的となっている土地ではなく自用地であるとした事例
請求人は、本件相続税の計算に当たり、本件被相続人の所有する本件土地に請求人の自宅を昭和52年に新築する際、被相続人と請求人との間で借地契約を締結し、これに基づき地代を支払っていたことなどから、本件土地は貸地(底地)である旨主張する。
しかしながら、本件土地の利用関係は、権利金の授受がなされておらず、かつ、地代の額が近隣の相場の半分以下であること、被相続人から請求人らに対して地代の額を上回る相当額の生活費の支払や現金の贈与がなされていることなどから、親子という特殊関係に基づく使用貸借であって、賃貸借ではないと解するべきである。
平成13年9月27日裁決
相続土地に係る賃借関係の実態は使用貸借と解するのが相当であると認定し、また、相続財産を売却して弁済に充てることを予定している被相続人の保証債務は相続税の債務控除の対象にならないとした事例
請求人らは、本件土地に係る貸借関係は建物の所有を目的とする賃貸借であるから、借地権の目的となっている貸宅地として評価すべきである旨主張するが、被相続人と本件土地を利用する団体とは、被相続人が団体の役員という特殊関係にあり、本件土地の貸借関係は、被相続人の好意及び両者の信頼関係を基盤としたもので、その実態は使用貸借と解するのが相当である。
請求人らは、相続開始時点で、相続人が相続財産の売却により代位弁済を予定している保証債務の額は債務控除の対象とすべき旨主張するが、課税時期において、主たる債務者が債務を弁済不能の状態にあるとは認められず、また、保証人である被相続人が本件保証債務を履行しなければならない状況にあったものとも認められず、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらない。
平成14年1月31日裁決
被相続人と請求人との間の土地の使用貸借契約は、宅地転用される前に解除されており、その後の土地の賃貸借契約における賃貸人は被相続人であるから、相続開始時には建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認められるとして、借地権相当額を控除して評価するのが相当とした事例
原処分庁は、P町宅地について、賃貸借契約に請求人が使用借権を有する立場で参加していること及び賃料を請求人が収受している実態があることをもって、利用関係は、請求人が被相続人から使用貸借により借地したものを他の者に転貸したものである旨、またK社使用宅地については被相続人が農業者年金を受給するため被相続人と請求人との間で使用貸借契約を締結していたことを主たる理由として、請求人が被相続人から使用貸借により借地し、それを賃借人に転貸していたものと主張する。
しかしながら、P町宅地の利用関係は、昭和56年2月20日に「農地法第3条による使用貸借解約による通知書」を提出した日までの間は、請求人を相手方として使用借権が設定されていたものと推認されるが、同日以後は、被相続人が農地法の手続を経た上で、これらの土地を宅地に転用し、被相続人が賃貸人となって、順次、賃借人に対して賃貸し、賃借人が建物を建築して利用していることが認められる。そして、P町宅地に係る本件土地賃貸借契約書には、賃貸人の承継人として請求人名が記載されているだけで、どのような権限を有することになるのかは明らかではないが、[1]賃貸人は被相続人と明記されていること及び[2]農地に関しての被相続人と請求人との間の使用貸借は宅地転用される前にすでに解除されていることから、当該記載をもって、原処分庁主張のとおりに解することはできないし、また、賃料を現実に享受している者が誰であるかのみによって同宅地の利用関係が決せられることにもならないので、原処分庁の主張には理由がない。
K社使用宅地については、請求人と被相続人との間の使用貸借契約が解除された経緯は、P町宅地と同様であると認められ、また、借地人である同族会社から無償返還届出書は提出されておらず、また、過去に借地権の認定課税が行われていないとしても、そのことが利用関係に影響して借地権の目的となっているか否かを左右するものでないことは明らかであるから、本件相続開始時において、同宅地は借地権設定の目的となっている宅地と認めるのが相当である。
以上から、いずれの宅地についても相続開始時において建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認めるのが相当であり、自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額によって評価するのが相当であるので、原処分庁の主張は採用できない。
平成15年5月19日裁決
貸宅地の評価においては、一般に借地権価額控除方式には合理性があり、また、請求人らが採用した収益還元方式の「純収益」や「還元率」は標準化されたものとは認められないとして、請求人らの主張する評価方式を排斥した事例
財産評価基本通達では、貸宅地の価額は、借地権価額控除方式により評価するとしているが、この評価方法は、借地権の取引慣行のある地域では、底地価額は、単なる地代徴収権の価額にとどまらず、むしろ将来、借地権を併合して完全所有権とする潜在的価値に着目して価額形成されているのが一般的であると認められ、このような場合には、底地価額を借地権価額控除方式により評価するのが相当であると考えられることなどによるものであると解される。この評価方法は、相続税法第22条の趣旨及び財産評価基本通達の考え方に照らし、当審判所においても合理性を有するものと認められるから、請求人らの「宅地上の借地権の価額と貸宅地(底地)の価額との総和は自用地としての価額よりも低い水準にとどまるものであるから、評価基本通達が定める借地権価額控除方式により算定した価額を時価とするのは相当ではない」との主張は相当ではない。
また、請求人らは、本件鑑定評価が収益還元方式による収益価格と底地取引事例から決定した底地権割合により求めた試算価格を加重平均する評価方法が合理的な評価方法であると主張する。
しかしながら、収益還元方式は、標準化された適正な「純収益」を用いて、これを適正な「還元利率」で還元する必要があるところ、一般に、収益還元方式による土地の価額の測定においては、「純収益」の標準化や、「資本還元率」の設定に当たり、その客観的、理論的な算定方法も見いだし難い状況にあるものと認められ、本件鑑定評価においても、その根拠は示されていない。
さらに、借地権割合については、原処分庁において、長年にわたり、借地権の売買実例価額、精通者意見価額等を基として評定され、公開されているものであるから、一定の地域における借地権の実勢価額を反映しているものと考えられるが、本件鑑定評価において収集した取引事例には底地割合にかなりのばらつきがあるということから、取引事例から求められた底地割合が、その地域の底地の実勢価額を反映し得るほどの指標性をもつものとは認め難いと言わざるを得ない。
以上のことから、請求人らの主張する評価方法には、相続税法第22条の趣旨及び財産評価基本通達の考え方に照らして、いずれも合理性を有するものとは認めがたい。
平成15年9月2日裁決
地方公共団体に貸し付けられている土地の価額について、何ら減損していないので借地権相当額を何ら減額すべき事由はなく、自用地としての価額と同額で評価するのが相当であるとした事例
本件土地の賃貸借契約締結に際し、賃借人であるP市から賃貸人である被相続人に対し権利金等の一時金の授受がないこと、賃貸借契約の期間中であっても被相続人はP市に対して更地時価による本件土地の買取請求ができ、P市はその請求に対し異議なく応じる旨の特約があることは、P市は借地権者としての経済的利益について享受しないものとしたと認められるところであり、一方、本件土地の価額は、何ら減損することなく自用地と同額の価額として保証されているものと認められる。そうすると、P市及び被相続人は賃貸借契約において、本件土地における借地権の経済的価値を認識しない旨を定めたものというべきであるから、本件土地の評価に当たっては借地権相当額を何ら減額すべき事由はないのであって、自用地としての価額と同額で評価するのが相当である。
平成16年3月5日裁決
中古車展示場用地としての本件土地の賃貸借契約は、その土地使用の主たる目的がその地上に建物を建造し、所有することには当たらないとして、本件土地は、貸宅地として借地権を控除して評価することはできないとした事例
請求人らは、本件土地の中古車展示場等の敷地としての賃貸借契約について、貸付けの際に建物の建築を承諾していたこと及び本件建物は堅固建物であり建物表示登記がされていることから、借地法の適用があり、本件土地は貸宅地として評価すべきと主張する。
しかしながら、借地法第1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、土地賃借人の土地使用の主たる目的が、その地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有する場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときはこれに該当しないと解されるところ、[1]本件建物等は、あくまでも本件土地の一部を占めるにすぎず、大部分は自動車展示場及び進入路として利用されていること、[2]賃貸借契約書では、本件土地の賃貸借の目的を、自動車展示場、自動車置場及び営業事務所の敷地とし、営業所の建物の建築は認めているものの、永久建造物とすることはできず、建物の表示登記及び保存登記を禁じていること、[3]本件建物等は、鋼板葺の軽量な屋根を支える簡易な構造の建物で堅固建築物とは認められず、その収去は借主の負担において行うとされていること、及び[4]賃貸借契約には権利金の取決めがなく、土地の賃借人は、土地の明渡しに際して立退料を請求しないと答述していることから、本件賃貸借は、本件建物等の所有を主たる目的とするものとは認められない。
平成17年5月17日裁決
権利関係が錯綜した貸宅地の評価について、財産評価基本通達によらず原処分庁側の鑑定評価額によることが合理的であるとした事例
- 請求人らは、本件貸宅地については、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に基づき算定した評価額は時価を超えている状態にあることから、評価通達によらず、他の合理的な方法に基づき時価を算定すべきであり、具体的には、R不動産鑑定士の鑑定評価額(以下「請求人ら鑑定額」という。)が時価である旨主張する。一方、原処分庁は、道路の用に供されている部分のある6区画については、L不動産鑑定士らの鑑定評価額(以下「原処分庁鑑定額」という。)を基としてその道路部分の鑑定額を補正した金額(以下「原処分庁評価額」という。)が、それ以外の2区画については原処分庁鑑定額が時価である旨主張する。
- しかしながら、時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解されるところ、課税実務上、土地等の評価については、評価通達に定められた画一的な評価方法が採用されているが、これは、個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により、評価額に格差が生じることを避けがたく、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどから、課税の適正や納税者間の公平を図ることが合理的であるという理由によるものと解される。
ただし、評価通達に基づき算定された土地等の評価額が、客観的交換価値を上回るなど、評価通達に基づき評価することが著しく不適当と認められる特別な事情がある場合には、評価通達に基づく評価方法によらず、その他の合理的な評価方法により評価することができると解される。 - 本件貸宅地の評価額については、評価通達に基づき算定した評価額が、請求人ら鑑定額及び原処分庁評価額・原処分庁鑑定額のいずれをも上回っていることから、これらの鑑定額等について検討したところ、次のとおりである。
(1)請求人ら鑑定額
請求人ら鑑定額は、年間支払賃料を還元利回りで還元して算定した地代徴収権の価値と、更地価格を割引率で割り引いて算定した更地の復帰価値との合計額から、市場性の減退等を理由とした減額をして、底地価格を決定している。
しかしながら、地代の還元利回りと更地への復帰価値を算定するための割引率とは異なる性質のものであるにもかかわらず、特段の理由もなく同一の利率を採用していることから、その利率は適切なものとは認められない。また、更地の復帰価値の基準となる更地価格の決定に当たって、鑑定評価を行う場合に規準としなければならないとされている地価公示価格を、数値の具体的な算定根拠が明らかでない個別格差を乗じて調整しているなど、その更地価格は合理性が認められない。更に、市場性の減退を理由とした減額にも具体的な根拠が示されていない。
以上のことから、請求人ら鑑定額は採用することはできない。
(2)原処分庁評価額・原処分庁鑑定額
原処分庁鑑定額における底地価格の決定は、還元利回り、割引率、更地価格とも相当であり、請求人ら鑑定額に比べ合理性が認められる。
しかしながら、原処分庁評価額は、原処分庁鑑定額において判定された道路部分の価値率10%を、評価通達の定めを準用して0%に置き換え、同鑑定額を補正して算定しているが、評価通達によらず不動産鑑定評価基準により評価するものであるから、単に、評価通達における取扱いを根拠として、当該価値率を0%とすることは相当とは認められない。道路部分の価値率は、原処分庁鑑定額が採用した10%とするのが相当である。
平成17年7月7日裁決
本件土地の賃貸借では権利金の授受に代えて相当の地代が授受されていたから、本件土地の評価において、財産評価基本通達25の定めによる借地権の価額は控除できないとした事例
請求人は、相続により取得した貸宅地である本件土地について、財産評価基本通達25の定めに基づき、本件土地の自用地としての価額からその借地権の価額を控除した金額によって評価すべきである旨主張する。
しかしながら、貸宅地の評価において、借地権の価額を控除するのは、借地権の設定により、当該宅地の自用地としての価額のうち借地権部分に相当する経済的価値の地主から借地人への移転があり、借地人が経済的に相当の価額を有する借地権を取得したとみるべき経済的実態が存在するからであって、この場合、借地権部分に相当する経済的価値の移転の対価というべき権利金を授受することが広く行われていることからすると、借地権の設定に当たり権利金を授受する取引上の慣行があるにもかかわらず権利金を授受しなかった場合であっても、その土地の使用の対価として相当の地代を授受するときは、地主にとって経済的実態において自用地と異なることのない土地となることから、借地人への経済的価値の移転はなく、控除すべき借地権の価額もないこととなる。
これを本件についてみると、本件土地は、借地権の設定に際し、通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域内にあるところ、本件土地の賃貸借契約は、権利金の授受に代えて相当の地代を授受する内容であったと認められることから、本件土地の借地権部分に相当する経済的価値の賃貸人から賃借人への移転があったとは認められず、また、本件相続開始日においても相当の地代を収受していたと認められる。
そうすると、本件土地の価額は、財産評価基本通達25の(1)の評価方法によることはできず、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」の6の定めにより、本件土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価するのが相当である。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達25
「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1、3、6
法人税法施行令第137条
法人税基本通達13−1−2
平成22年2月15日裁決
借地権の設定されている土地の評価に当たり、自用地としての価額から控除すべき借地権の価額はないとした事例
《ポイント》
この事例は、借地権の設定されている土地の評価に当たり、賃貸人と賃借人との間においては、借地権の価額についての認識のないことが明らかであることから、当該土地は、自用地としての価額により評価すべきであるとしたものである。
《要旨》
請求人は、請求人の父(本件被相続人)の相続(本件相続)により取得した土地(本件土地)を、本件相続開始の日において、図書館建物及び駐車場施設の敷地としてa市との間で賃貸借契約を締結し(本件賃貸借契約)、賃貸していたのであるから、本件土地の価額は、財産評価基本通達25《貸宅地の評価》の定めに従い、自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額で評価すべきである旨主張する。
しかしながら、確かに、本件賃貸借契約に係る契約書(本件賃貸借契約書)の記載内容及びその解釈並びに本件土地の使用の主目的からすれば、本件土地には、当該図書館建物の所有を目的とする借地権の設定がされたものと認められるものの、本件賃貸借契約書には、本件被相続人が本件土地の譲渡を希望するなどの場合には、賃借人であるa市は更地価格を意味する「適正価格」で買い取る旨が定められていること、
本件賃貸借契約における賃貸料の額からみて、本件土地上の借地権の価額については何ら考慮されていないこと、
a市が本件土地に係る鑑定評価を依頼した際に、a市は本件土地を買い取るに当たって考慮すべき借地権の価額は存在していなかったと認識していたものと認められ、また、実際にも本件土地は鑑定評価額に近似した価額で請求人からa市に譲渡されており、借地権の存在を考慮した価額で譲渡されたものではないことが明らかであることなどからすると、本件相続開始の日において、借地権が存した本件土地の自用地の価額から控除すべき借地権の価額はなかったと認められる。このような場合には、財産評価基本通達を形式的に適用すべきではなく、本件土地の評価に当たり、自用地としての価額から借地権の価額を控除しないこととするのが相当である。
《参照条文等》
借地借家法第2条
相続税法第22条
第三者に貸し付けられている被相続人と他の共同相続人との共有建物の敷地の評価に当たり、当該敷地には当該他の共同相続人の当該建物に係る地上権は存在しないとした事例
《ポイント》
本事例は、親族間で土地の無償使用を許す関係を地上権の設定と認めるためには、当事者が何らかの理由で特に強固な権利を設定することを意図したと認めるべき特段の事情が存在することを必要とすべき旨示した最高裁判決に即して、建物の所有に係る共同相続人の評価対象地上の権利は、せいぜい使用貸借によるものとみざるを得ないと判断したものである。
《要旨》
請求人らは、相続した本件土地の上に、本件被相続人及び他の共同相続人ら(本件被相続人ら)が所有する本件建物が存しているところ、本件土地の使用料は無償であるものの、本件建物が存する権原は、本件建物の所有を目的とする地上権である旨主張する。
しかしながら、親族間で土地の無償使用を許す関係を地上権の設定と認めるためには、当事者が何らかの理由で特に強固な権利を設定することを意図したと認めるべき特段の事情が存在することを必要と解すべきであるところ、本件建物を本件被相続人らの共有とした理由からすれば、わざわざ本件被相続人にとって著しい負担となる無償の地上権を設定する必要もないこと、
本件被相続人と当該他の共同相続人らとの間で、地上権を設定する場合に通常取るであろう行動が、取れたにもかかわらず、これを取っていないこと及び
本件においては上記特段の事情も見当たらないことからすると、本件建物の所有に係る当該他の共同相続人らの本件土地上の権利は、せいぜい使用貸借によるものとみざるを得ない。そして、本件建物の建築後、本件相続開始に至るまで、権利関係に変動があったことを認めるに足る証拠はないから、本件相続開始時点で、本件土地上に、当該他の共同相続人の地上権が存在していたとは認められない。
《参照条文等》
民法第265条、第593条
借地借家法第2条第1号、第10条第1項
財産評価基本通達25(1)
《参考判決・裁決》
最高裁昭和47年7月18日第三小法廷判決(集民106号475頁)