財産の評価

各影響要因に基づく加減

  1. 評価の原則
  2. 土地及び土地の上に存する権利
    1. 評価基準の適用
    2. 倍率方式による評価
    3. 路線価による評価
    4. 各影響要因に基づく加減(27件)
    5. 私道
    6. 土地区画整理事業施行区域内の土地
    7. 貸宅地
    8. 使用貸借に係る土地
    9. 賃借権
    10. 借地権
    11. 区分地上権
    12. 土地所有権移転請求権
    13. 貸家建付他
    14. 雑種地
    15. 農地
    16. 山林
    17. その他
  3. 家屋及び庭園設備
  4. 動産
  5. 取引相場のない株式
  6. 出資の評価
  7. 預貯金
  8. 貸付金債権等
  9. 預託金制のゴルフ会員権
  10. 施設建築物の一部の給付を受ける権利
  11. 構築物

高圧線が架設されている線下地の相続税評価額を更地価額の20パーセント減で評価した事例

裁決事例集 No.3 - 25頁

 高圧線が架設されている線下地の相続税に係る財産評価に当たり、原処分庁が採用した更地価格に対する低減率は、その立地条件、高圧線の種類及び建造物に対する築造制限の内容、近傍類地の売買実例、精通者の意見、土地収用裁決例、電力会社が支払う地役権の価額等を総合判断すると、請求人等にとって決して不利なものであるとはいえず、相続税財産評価基準による更地価格をその低減率により減価した価格を基礎として、本件線下地を評価した原処分は相当である。

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相続によって取得した土地が無道路地に当たらないとした事例

裁決事例集 No.32 - 263頁

 相続によって取得した本件土地と県道との間には請求人所有の土地が存し、本件土地に直接沿接する道路は存しないが、本件土地と県道との間にある請求人所有の土地とは相続開始以前から請求人が一体として利用しており、本件土地が道路に直接接していないことによる利用価値の低下があるとは認められないから、本件土地は無道路地として評価額を減額すべきものには当たらない。

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1. 請求人が土地の価額に影響を及ぼすと主張する諸要因は、路線価額に折込み済みであるとした事例2. 借地権の目的となっている宅地は、評価通達によって評価すべきであり、収受している地代を基にして収益還元法によって評価すべきでないとした事例

裁決事例集 No.41 - 313頁

  1.  請求人は、本件宅地は、下水処理場に近接し、かつ、駅から遠い等地理的条件が悪いので、路線価額の2分の1相当額で評価すべきであると主張するが、本件宅地の正面路線価とした路線価額は、隣接する路線の価額に比べていずれも相当程度低くなっており、下水処理場に近接していること等の評価に影響する諸々の事情が折り込まれていることは明らかで、請求人の主張は採用できない。
  2.  請求人は、貸宅地は、自用地の場合と異なり、市場性又は換金性に欠けるとともに土地の価額が上昇しても地代の値上げもできない状況にあり、また、土地所有者が地代以外の収益を受領し得るのは借地権の譲渡承諾料あるいは増改築時の承諾料であるが、いずれも何十年に1回あるかないかわからないものであるから、実際に収受している地代を基として収益還元方式で評価すべきであると主張する。
     しかしながら、収益還元方式による評価は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益を算定するために予測される諸要素を的確に把握すること、及び収益還元率を正しく定めなければならないが、これらの諸要素を客観的に把握することが困難であることから、これによる評価額は、相続財産の取得時の時価を性格に反映しているものとは認められず、理論的にはともかく、本件貸宅地の評価方法としては採用することができない。
     原処分は、本件貸宅地の価額を、評価通達及び評価基準に従って評価しているが、評価基準は、借地権及び底地部分の売買実例及び精通者の意見価格等を参考にして類似する地域ごとに定められており、特段不合理な点があるとは認められない。

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本件宅地がいわゆる大規模画地(面大地)であるとしても、所在近隣地域の同程度の面積の宅地の売買実例価額と比較してもその評価額は時価を上回るものではないとした事例

裁決事例集 No.51 - 548頁

 請求人は、本件宅地が590平方メートルと近隣地域の標準的な宅地より広大であるから、評価基本通達の定めによらず、鑑定評価額により評価すべきであると主張するが、[1]本件宅地の周辺は、マンション敷地としての需要が定着しており、本件宅地のような地積の宅地の価額が低いとは認められず、[2]本件宅地の所在するP市内の地積が400平方メートル以上の土地の売買実例価額はその大部分が路線価を上回っていることが認められるから、請求人の主張する鑑定評価額が客観的交換価値を証明したものとはいえず、原処分の評価額が正当である。

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本件貸駐車場は、不整形地ではあるがその程度が比較的小さいので、不整形地補正は適用できず、また、本件賃貸マンションの敷地と一体利用とは認められないので、当該入居者の利用部分は貸家建付地の評価ができないとして請求人らの主張を排斥した事例

裁決事例集 No.51 - 575頁

 請求人らは、本件貸駐車場用地(607平方メートル)は、[1]不整形地部分の面積82平方メートルについて、不整形地補正を適用して7パーセントの評価減及び[2]本件賃貸マンションの入居者が利用している部分は、当該マンションと一体利用であるから、貸家建付地として評価すべきである旨主張する。
 しかし、不整形地の評価は、画地の形状が不整形であるため画地の全部が宅地としての機能を十分に発揮できない場合に、整形地と比較した場合の利用価値の低下を価額に取り込むのであるから、画地の形状が正方形等でないとしても、その画地の地積がおおむね適正規模以上で、かつ、不整形の程度が比較的小さい場合など、宅地としての利用に特に支障がないものは、不整形地補正を要しないと解するのが相当である。
 本件貸駐車場は、その面積が適正規模で、不整形の程度が13パーセントと比較的小さいことから、その機能、便益が現在の地形をもって特に支障があるとは認められないので、不整形地補正を要しないのが相当である。
 また、本件貸駐車場は、一画地全体がアスファルト舗装をした上で、隣接する本件賃貸マンションの敷地とフェンスにより区分され、33台の貸駐車場(15台はマンションの入居者が、残りの18台はそれ以外の者が利用)としており、更に、マンションの賃料と駐車場の利用料とが明確に区分されていることからみて、当該マンションの敷地と本件貸駐車場の利用が一体の状況にあるとは認められないので、当該貸駐車場を貸家建付地として評価することは相当でない。

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A土地及びB土地の評価については、取引事例及び公示価格を基に土地価格比準表の地域格差及び個別格差の補正率を適用して算定し、また、X社の出資の評価については、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額が控除できないとした事例

裁決事例集 No.53 - 400頁

 請求人は、[1]A土地及びB土地の鑑定評価額をもって課税価格とすべきであり、[2]X社の出資の評価に当たり、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額を控除すべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人の鑑定評価書には種々の問題があり、また、原処分庁の評価方法による価額は時価の証明にならないことから、審判所が、取引事例及び公示価格を基に土地価格比準表の地域格差及び個別格差の補正率を適用しA土地及びB土地の価額を算定すると、[1]A土地の標準的画地価格は、取引事例に基づく比準価格とA公示地を規準とした規準価格の平均額に街路条件等の個別格差率、地積及び持分を乗ずると3億6,349万円となり、[2]B土地の標準的画地価格は、取引事例に基づく比準価格とC公示地を規準とした規準価格の平均額に行政的条件等の個別格差率及び地積を乗ずると5億4,526万円となり、この額から借家人の権利21パーセントを控除すると4億3,075万円となることから、これらの価額は、更正処分の額を上回り、更正処分に違法は認められない。
 また、出資の評価については、[1]現物出資により被相続人が取得したX社の出資400口を財産評価基本通達の純資産価額方式により評価すると、その価額は時価26億円のものを400万円(5万円×80口)で法人が受け入れた結果、多額の評価差額が生ずることとなり、[2]X社の出資の評価に当たり、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額が控除されることに着目して行われたことが容易に推認でき、[3]具体的には、X社の出資400口を13億円と評価し、その取得資金である借入金26億円を債務に計上すると、差額の約13億円が他の相続財産の価額から控除される結果、これらの行動を取らなかった者と相続税額の負担に多額の差が生ずることとなることから、し意的に作りだされた評価差額に対して51パーセントの法人税等相当額が控除できないとした更正処分は適法である。

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相続により取得した土地が無道路地であるとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.65 - 703頁

 道路とは広く一般公衆の通行の用に供されている物的施設をいうものと解されるところ、それには法律上公物としての性質を認めて特殊の法的規制を加えた公道と、その開設、維持、管理等について若干の保護、助成等のための規制を設けられた私道、あるいは何らの規制を設けられていない私道が存在する。
 建築基準法に規定する位置指定道路は道路交通法第2条に規定する「一般交通の用に供するその他の場所」に該当し、他の道路と等しく同法の適用を受け各種の規制を受けるとともに、敷地である土地について所有権の移転、抵当権の設定・移転のほかは、一般の交通を阻害するような方法で私権を行使することはできない。
 本件土地は位置指定道路に間口距離4.2メートルで接しているから、財産評価基本通達に定める無道路地に該当しない。

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[1]評価対象地は当該地域の標準的な使用に供されているとはいえず、開発を了しているとはいい難いこと等から広大地に該当するとし、また、[2]無道路地の評価において、実際に利用している路線が二つある場合は、通路開設費用の価額の低い方の路線が利用通路であると解するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.71 - 533頁

  1.  原処分庁は、自治会の集会所敷地として使用され既に開発を了しており、隣接地と比較しても著しく広大な地積とは認められないから、広大地補正の適用は認められない旨主張する。
     しかしながら、[1]当該地域の標準的な使用は戸建住宅地と認められるところ、本件土地は、自治会の集会所敷地として利用されているものの、半分以上が空閑地となっていることからすれば標準的な使用に供されているとはいえないので開発を了しているとはいい難いこと、及び、[2]当該地域内の標準的な宅地の5倍程度の地積を有し、また、戸建住宅とする場合には都市計画法第4条第14号に規定する道路の負担が必要と認められることからすれば、広大地に該当するものと解するのが相当であり、原処分庁の主張には理由がない。
  2.  財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)20−2《無道路地の評価》は、通路開設費用は接道義務に基づき最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額とする旨定めていることから、無道路地において、実際に利用している路線が二つある場合には、通路開設費用の価額の低い方の路線が利用路線であると解するのが相当である。
     そうすると、本件においては、北側の道路も東側の道路も実際に利用されているが、北側の道路を利用路線とする方が必要となる地積が少ない結果、接続道路の価額が少ないこととなるので北側の道路が利用路線となる。
     したがって、東側の道路を利用路線として通路開設費用を算定している請求人及び原処分庁の主張には理由がない。

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財産評価基本通達24−4《広大地の評価》に定める「その地域における標準的な宅地の地積」については、1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、4道路、5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域における標準的な宅地の地積に基づいて判断するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.72 - 565頁

 財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(以下「本件通達」という。)を定めた趣旨は、評価の対象となる宅地の面積が、1当該宅地の価額の形成に関して直接影響を与えるような特性を持つ当該宅地の属する地域の標準的な宅地の面積に比して著しく広大で、2評価時点において、当該宅地を当該地域において経済的に最も合理的な特定の用途に供するためには、公共公益的施設用地の負担が必要な都市計画法に規定する開発行為を行わなければならない土地である場合にあっては、当該開発行為により土地の区画形質の変更をした際に、公園等の公共公益的施設用地としてかなりの潰れ地が生じ、このような土地の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として、価格が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものである。
 このような本件通達を定めた趣旨等にかんがみれば、本件通達でいう評価宅地の属する「その地域」とは、1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、4道路、5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、本件各土地が属する「その地域」とは、市道n線、市道k線、市道p線、及び県道m号線に囲まれた地域(以下「本件地域」という。)をいうものと解するのが相当であり、本件地域における宅地の利用状況は、一部は住宅用地として使用されているものの、大部分は、倉庫敷地、事務所敷地及び駐車場に利用されており、それらの地積の平均は、約1,970平方メートル程度であると認められるから、本件各土地は、本件地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地であるとはいえず、本件通達を適用することはできない。

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評価対象地がマンション適地等に該当する場合には、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の適用はないとした事例

裁決事例集 No.74 - 326頁

 本件土地が属する地域は、1幹線道路沿であることから、規模に規制のない店舗等を許容する第二種住居地域に指定され、その結果、幹線道路の交通量を勘案して、沿道の後背地にある主に第一種中高層住居専用地域の住環境を保護する効果をもたらしている地域であり、2商業・文化機能等を強化した建造物の誘導等を推進する地域にあり、駅前商業地域に隣接して極めて交通の便も良く、中高層の集合住宅等のほか大規模な店舗や事務所の建築に適した地域で、3現に戸建住宅の他、アパート、マンション、店舗併用住宅などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在し、4加えて、建築物の建築をするために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、集合住宅等や商業施設などが建築されている状況にあり、特に、本件土地と幹線道路を挟んで南側に位置する本件土地と規模、形状、接道状況が酷似する土地には、7階建ての分譲マンションが建築されている。
 そうすると、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的にみても、マンション適地等に該当するものと認められ、財産評価基本通達24−4に定める広大地には該当しない。

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評価対象地につき、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たる場合には、公共公益的施設用地の負担の必要性がないため、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の適用はないとした事例

裁決事例集 No.74 - 342頁

 1本件土地は、路地状開発により、本件地域における標準的な宅地の地積に分割することが可能であり、2本件分割図による路地状開発が路地状部分の幅員を満たすなど都市計画法等の法令などに反しておらず、3容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその基礎とされ、さらに、4本件隣接地が道路を開設することなく路地状開発されているという各事実が認められることからすると、本件土地については、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たると認めるのが相当であり、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものには該当しないから、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の定めの適用はない。

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土地区画整理事業地内の評価対象地につき、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないことから、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の適用はないとした事例

裁決事例集 No.77 - 383頁

 財産評価基本通達24−4に定める「経済的に最も合理的な」開発については、1その地域の利用状況に合った宅地の地積に分割されること、2当該分割による開発が、都市計画法等の法令に反していないこと、3容積率及び建ぺい率も経済的に利用されることなどを考慮して判断すべきところ、本件甲土地及び本件乙土地のA路線の道路沿いは、一区画が600平方メートル以上の店舗等の商業施設の敷地、C路線の道路沿いは、一区画が150平方メートルから300平方メートル前後の戸建住宅の敷地としての、また、本件丙土地の近隣地域は、一区画が350平方メートルから700平方メートルの戸建住宅や中高層の共同住宅の敷地としての利用が、それぞれ本件区画整理地内における経済的に最も合理的であると認めるのが相当である。
 本件各土地に、「経済的に最も合理的な」開発を行った場合、公共公益的施設用地の負担が必要かどうかについて検討すると、請求人は、戸建住宅分譲用地の開発では公共道路の取付けは必要であると主張し、本件各土地の開発を想定した土地利用計画図と題する資料を当審判所に提出しているが、当該資料は、本件各土地について、中央部分に幅員6メートルの道路を取り付け、本件甲土地は地積が3,013平方メートルのところ、一区画の地積217.4平方メートルの12区画で道路敷設地積を404.2平方メートル、また、本件乙土地は地積が1,719平方メートルのところ、一区画の地積177.2平方メートルの8区画で道路敷設地積を301.4平方メートル、さらに、本件丙土地は地積1,384平方メートルのところ、一区画の地積135.3平方メートルの8区画で道路敷設地積を301.6平方メートルとしたものであるが、このような開発は、近隣地域の利用状況に沿ったものであると考えるのは困難であり、また、本件区画整理地内には必ずしも道路を敷設しない開発も認められるところ、本件各土地について、道路を敷設し、殊更に細分化して開発する合理的な理由や必然性は見当たらないことから、請求人の主張する利用方法が経済的に最も合理的であると認めることはできない。
 そこで、当審判所において、経済的に最も合理的であると認められる利用を前提とし、一区画の面積及び接道義務の基準、本件各土地の地形並びに本件区画整理地内の近隣地域の利用状況をしんしゃくして開発想定図を作成すると、本件各土地については、公共公益的施設として道路を敷設することなく開発することが経済的に最も合理的であると認められる。
 そうすると、本件各土地の開発を行うとした場合に、公共公益的施設用地として道路が必要と認められないので、本件各土地の評価に当たって財産評価基本通達24−4の適用はできないこととなる。

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相続により取得した土地は、いわゆるマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24−4に定める広大地に該当しないとした事例

裁決事例集 No.78 - 432頁

 請求人らは、請求人らの一人が相続により取得した本件土地(1,075平方メートル)の最有効使用は、本件土地が存する本件地域の状況及び本件土地の個別的要因を考慮すると、中高層の集合住宅等の敷地として利用することなく、建築資金が小額でリスクの小さい戸建住宅の敷地として利用することである旨主張する。
 しかしながら、本件地域では、まる1平成X年にその用途地域が住宅地域から近隣商業地域に変更され、建ぺい率は80%、容積率は300%と中高層の集合住宅等を建設することが可能であること、まる2平成X年以降、市に対して開発許可申請がなされていないことから、1,000平方メートル以上の土地について開発行為をした場合に公共公益的施設の負担が必要な開発は行われていないこと、まる3本件相続の開始以前10年間において、戸建住宅よりむしろ中高層の集合住宅等が多く建築されていることが認められる。次に、本件土地についてみると、本件土地の形状、接面道路の幅員、本件土地と接面道路との接する距離、接面道路と県道・国道との距離に加えて、容積率が300%と定められていることなどからしても、本件土地に中高層の集合住宅等を建築することに特段の支障を来す状況は見受けられない。なお、平成10年8月には、本件地域内の約830平方メートルの土地に11階建の事務所ビルが建築されており、本件土地と同規模の土地が細分化されることなく一体として利用されている。以上の事実を勘案すると、本件土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の用に供することではなく、中高層の集合住宅等の敷地の用に供することであると認められる。したがって、本件土地はマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24−4に定める広大地に該当するとして評価することはできない。

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評価対象地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていることから、「広大地」には当たらないとした事例

平成23年4月21日裁決

《ポイント》
 この事例は、既に開発行為を了した共同住宅用地について、その共同住宅(建物)の状況から近い将来の開発行為を要しないこと及びその存する地域の標準的使用形態の一つに適合していることから、当該共同住宅用地は有効利用されているとして、「広大地」には当たらないと判断したものである。

《要旨》
 請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、賃貸マンションの敷地となっているところ、地価公示法によれば賃貸マンションを建築することが地域の標準的使用とはなり得ないこと及び本件各土地が所在する地域の近傍地域が一群の戸建住宅分譲用地へと移行しつつあることからすると、本件各土地は「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」には該当しないなどと主張して、本件各土地は、財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、広大地通達の趣旨に照らすと、評価対象宅地につき、評価時点における当該宅地の属する地域の標準的使用に照らして、当該宅地を分割することなく一体として使用することが最有効使用であると認められる場合には、広大地に該当しないと解するのが相当であり、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地や現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地などについては、特段の事情がない限り、広大地には該当しないものと解せられるところ、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として使用されており、本件各土地について、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない上、本件各土地の存する地域においては、戸建住宅用地、共同住宅用地、法人等事業用地、倉庫・車庫・工場用地の各用途のいずれもが標準的な使用形態であると認められることからすると、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らして有効に利用されているものと認められる。
 したがって、本件各土地は、広大地には該当しないものと認めるのが相当である。

《参照条文等》
 財産評価基本通達24−4

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成20年8月29日判決(税資258号順号11014)
 東京地裁平成17年11月10日判決(税資255号順号10199)

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評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、「広大地」として評価するのが相当であるとした事例

平成23年5月9日裁決

《ポイント》
 この事例は、広大地通達の適用について、評価対象地の属する地域内の開発事例を詳細かつ具体的に調査し、その調査結果と評価対象地の状況とを併せ検討することにより、公共公益的施設用地の負担の要否を判断し、評価対象地は「広大地」に該当するとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、本件土地が属する財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(本件通達)に定める「その地域」(本件地域)の標準的な宅地の地積に基づき区画割をすると、本件土地は4区画に分割して路地状開発することが可能であること、路地状開発を行うとした場合は、路地状部分の土地は、通路に限らず駐車場として利用でき、建ぺい率・容積率の算定上道路を開設するよりも有利な点があること、また、本件地域に路地状開発の事例もあることから、路地状開発による開発が経済的に最も合理的な開発であるとして、本件土地は本件通達に定める広大地に当たらない旨主張する。
 しかしながら、原処分庁の主張する本件地域の標準的な宅地の地積の算定は誤っており、正しい地積に基づき区画割をすると本件土地は4区画又は5区画に分割して開発するのが経済的に合理的であると認められる。また、本件地域においては、路地状開発による事例もみられるものの、当該事例は道路の開設による開発がもとより困難な土地の事例であり、本件土地とは条件を異にする。他方、本件地域において本件土地と地積、形状及び公道との接続状況及び面積等並びに本件地域における近年の土地の開発状況等からすれば、本件土地については、道路を開設して戸建住宅の敷地として分譲開発するのが経済的に最も合理的な開発方法であると認められる。
 したがって、本件土地は、本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。

《参照条文等》
 財産評価基本通達24−4

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共同住宅の敷地として利用されている評価対象地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても有効利用されていることから、広大地には当たらないとした事例

平成23年9月5日裁決

《ポイント》
 この事例は、評価対象地が所在する町内の全建物の築年数及び種類を調査し、財産評価基本通達24−4にいう当該評価対象地が属する「その地域」とは、当該町内の西側部分であると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、まる1本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件における経済的に最も合理的な開発行為である戸建分譲開発を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であること、まる2路線価方式による土地の評価は、更地として評価することを前提としており、公共公益的施設用地の負担の要否は、開発行為を行うとした場合に負担を要するか否かで判断すべきであり、本件土地の現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(広大地通達)の定めの適用を排除すべきではないことから、本件土地は、同通達に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や評価時点において宅地として有効利用されている建築物の敷地用地については、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情のない限り、広大地通達に定める広大地に該当しないと解されるところ、本件土地の場合、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件土地の属する地域(本件地域)は、戸建住宅と共同住宅の混在する地域であって、これらの用途のいずれもが本件地域における標準的な利用形態と認められることからすれば、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されていると認められる。したがって、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は広大地通達にいう広大地には該当しない。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達24−4

《参考判決・裁決》
 平成23年4月21日裁決(裁決事例集No.83)

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評価対象地は、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大とは認められないから広大地に該当しないとした事例

平成23年12月6日裁決

《ポイント》
 この事例は、評価対象地(約1,100平方メートル)は国道沿線地域に所在し、その地域の標準的使用は、戸建住宅の敷地ではなく、1,000平方メートル以上の低層店舗等の敷地と認められ、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大とは認められず、財産評価基本通達24−4に定める広大地に該当しないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、本件土地を戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に開発道路の設置という公共公益的施設用地の負担が必要であるから、本件土地が財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件土地は、その所在する地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは認められない。仮に、本件土地の地積が著しく広大であるとしても、まる1本件土地を低層店舗等の敷地として区画割する場合に公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められず、また、まる2本件土地を戸建住宅の敷地として分譲開発したとしても、公共公益的施設用地の負担が必要ではない路地状開発による区画割の方が、開発道路を設置する区画割に比べて経済的に合理的であると認められる。したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達24−4

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戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないことから広大地には該当しないとした事例

平成23年12月6日裁決

《ポイント》
 この事例は、評価すべき財産(本件B土地)は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは認められるものの、請求人が主張する建築基準法第42条第1項第5号に規定する「位置指定道路」の拡幅のための用地提供が、公共公益的施設用地の負担と認められるか否かにつき判断したものである。

《要旨》
 請求人は、本件B土地において開発行為を行うとした場合に、本件B土地に接面する位置指定道路幅を拡幅する必要があり、当該拡幅のための用地提供は公共公益的施設用地の提供と同じであるので、本件B土地は、財産評価基本通達(評価通達)24−4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、広大地通達を定めた趣旨は、開発行為により当該開発区域内に道路や公園等の公共公益的施設用地の開設が必要な場合には、相当規模の潰れ地が生じることになり、評価通達15《奥行価格補正》から20−5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までに定める減額補正では十分とはいえないので、相当規模の潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として減額補正することとしたものであるところ、請求人が主張する位置指定道路に係る拡幅部分の提供は、開発区域内に新たな道路を提供する場合とは異なり、評価通達15から20−5までに定める減額補正では十分とはいえないほどの規模の潰れ地が生じたとは認められず、公共公益的施設用地を負担したものとみることはできない。したがって、本件B土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達24−4

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相続により取得した土地は、いわゆるマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24−4に定める広大地に該当しないとした事例

平成24年7月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、相続により取得した土地は、いわゆるマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24−4に定める広大地に該当しない旨判断したが、財産評価基本通達15に定める奥行価格補正について、財産評価基本通達20の(2)ではなく(4)に基づき計算すべきであると判断して原処分の一部を取り消したものである。

《要旨》
 請求人は、本件土地が財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(本件通達)の適用がないとされる、いわゆるマンション適地等に当たるか否かについて、まる1本件土地の周辺地域の状況は戸建住宅とマンションが混在している地域であること、まる2専門家が本件土地は、マンションの敷地よりも戸建住宅の敷地に適しているとの意見を述べていることなどからすると、本件土地はマンション適地等に該当しない旨主張する。
 しかしながら、マンション適地等であると認められる場合とは、本件通達に定める「その地域」におけるマンション等の建築の状況、用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制、また、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性等から判断して、評価対象地をマンション等の敷地とすることが経済的に最も合理的であると認められる場合を指すと解するのが相当であるところ、まる1本件土地の存する「その地域」は、マンション等の建築に係る規制が厳しくない地域であること、まる2本件土地は公共施設及び商業施設との接近性に優れていること、まる3「その地域」には複数のマンションが存すること、まる4「その地域」において、本件相続開始前10年間における500平方メートル以上の土地に係る建物の建築事例は2件あり、いずれもマンションの建築事例であること、まる5本件相続開始日後、現に本件土地上にマンションが建築されていることからすると、本件土地は明らかにマンション適地等に該当するものと認められる。

《参照条文等》
 財産評価基本通達15、20、24−4

《参考判決・裁決》
 平成23年9月5日裁決(裁決事例集No.84)
 平成21年12月15日裁決(裁決事例集No.78・432頁)

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評価対象地が存する「その地域」の周辺地域の開発状況に照らし、同土地につき開発を行うとした場合は公共公益的施設用地の負担が必要となるから、広大地に該当するとした事例

平成24年8月28日裁決

《要旨》
 原処分庁は、相続財産である本件土地の評価に当たり、財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(本件通達)に定める「その地域」は甲地域であり、甲地域の標準的な宅地の地積に基づき区画割すると路地状開発することが可能であること、また、甲地域内における路地状開発の事例は数多く存在し、一般的に行われていることなどから、本件土地については、路地状開発による開発が経済的に最も合理的な開発であり、公共公益的施設用地の負担の必要はなく、本件通達に定める広大地に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件通達に定める「その地域」は、本件土地と使用状況の連続性、地域の一体性が認められる丙地域と認めるのが相当であり、また、丙地域内においては、道路開設による開発事例と路地状開発事例とが存するものの、本件土地はいずれの事例の画地とも条件を異にするところ、丙地域は、将来、甲地域と同様な街並みになることが予想されることから甲地域における開発事例をみてみると、本件土地と類似する土地での路地状開発の事例はないことに加えて、本件土地において路地状開発を行うとする場合には原処分庁主張の開発想定図にある開発を行うことが想定されるが、その想定される路地の長さを有する開発事例もないことからすると、本件土地については、道路開設による開発を行うのが経済的に最も合理的な開発であると認められる。したがって、本件土地は、公共公益的施設用地の負担の必要があるものであり、本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達24−4

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不整形地の評価をするに当たって原処分庁が採用した想定方法による整形地は財産評価基本通達20に定める想定整形地に当たらないとした事例

平成24年10月10日裁決

《ポイント》
 本事例は、財産評価基本通達20の解釈等及び屈折路に内接する不整形地に係る想定整形地のとり方を、それぞれ初めて明らかにしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、屈折路に内接する本件土地について、財産評価基本通達20《不整形地の評価》(本件通達)に定める評価をするに当たって、整形地の想定方法として、本件土地の全域を含むく形のうち最も面積の小さいものとすべきであり、原処分庁の採用した想定方法はこれに該当するものである旨主張する。
 本件通達の趣旨は、評価対象地が不整形の場合はその画地全部を宅地として十分に機能させることができず、整形地に比して利用価値が減少することを考慮して、利用価値が減少していると認められる範囲で補正するというものであり、この趣旨からすれば、整形地の想定方法が複数ある場合には、その想定方法自体が不合理なものでない限り、その想定されたもののうち、最も小さい面積のものを想定整形地として評価するのが合理的である。
 しかしながら、本件土地についてみると、本件通達に定める想定整形地とは、評価対象地の画地全域を囲む正面路線に面する最小面積のく形となっているものをいうことからすると、請求人らの主張する想定整形地のとり方に不合理な点は認められないが、原処分庁の主張する想定整形地は、正面路線に面したく形ではないことから、本件通達に定める想定整形地そのものには当たらない。したがって、本件土地の整形地の想定方法は、請求人らの主張する方法によるべきである。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達20

《参考判決・裁決》
 仙台高裁平成19年1月26日判決(税資257号順号10617)

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請求人らが相続により取得した土地は、財産評価基本通達24−4に定める広大地に当たるとして処分の全部を取り消した事例(平成25年6月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成28年2月9日裁決)

平成28年2月9日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人ら以外の第三者が所有する位置指定道路(本件位置指定道路といい、その所有者らを本件私道所有者らという。)に接する土地(本件土地)について、都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(開発行為)を行うとした場合、本件私道所有者らの同意を要するとしても、そのような事情は本件土地自体に起因する客観的な事情ではないから財産の評価に当たって考慮されず、本件位置指定道路を利用した開発行為を行うことが経済的に最も合理的であり、当該開発行為においては、公共公益的施設用地の負担は必要ないので、本件土地は、財産評価基本通達24−4《広大地の評価》に定める広大地(広大地)に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件位置指定道路は、本件私道所有者らが所有するもので、被相続人及び請求人らは本件位置指定道路に係る権利を何ら有していない。そのため、本件位置指定道路を利用した開発の可否は、本件私道所有者らの意向に左右されるものであるところ、本件土地については、請求人らの主張するように、本件土地の敷地内に新たな道路を開設して行う開発方法が想定でき、その開発の方法が十分合理性を有するものである以上、このような場合にまで、第三者の所有に係る土地を利用しての開発方法を想定することに合理性があるとはいえない。そして、請求人らの主張する開発方法においては、公共公益的施設用地の負担が必要であると認められるから、本件土地は広大地に該当する。

《参照条文等》
 財産評価基本通達24−4

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請求人らが相続により取得した土地の一部は、財産評価基本通達24−4に定める広大地に当たるとして処分の一部を取り消した事例(平成23年4月相続開始に係る相続税の各更正処分(各更正の請求に対してされた各再更正処分をあわせ審理)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(各変更決定処分後のもの)・一部取消し・平成28年2月29日裁決)

平成28年2月29日裁決

《要旨》
 4区画の各土地(本件各土地)の財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(本件通達)の適用につき、原処分庁は、本件各土地のうち3区画の各土地(本件1ないし3土地)の本件通達に定める「その地域」(本件地域)は、財産評価基本通達14−2《地区》(6)の中小工業地区として定められた地域(原処分庁主張地域)であり、本件1ないし3土地は、いずれも原処分庁主張地域の標準的な宅地の地積と同程度であるから、本件通達の適用はない旨主張し、請求人らは本件各土地の本件地域は、道路等の施設の状況等を勘案した住居表示を基本単位とする地域(請求人ら主張地域)であり、本件各土地は、いずれも、請求人ら主張地域の標準的な宅地の地積に比して広大な土地で、かつ、開発に当たっては公共公益的施設用地の負担が必要な土地であるから、本件通達の適用はある旨主張する。
 しかしながら、本件各土地の本件地域は、本件1ないし3土地と同土地の以外の土地(本件4土地)で相違し、本件1ないし3土地の本件地域は、原処分庁主張地域を含んだより広範な地域(審判所認定地域1)であり、また、本件4土地の本件地域は、請求人ら主張地域のうち河川により分断された地域(審判所認定地域2)であると認められる。そして、本件1ないし3土地は、いずれも、審判所認定地域1の標準的な宅地の地積に比して広大な土地で、かつ、開発に当たっては公共公益的施設用地の負担が必要な土地であるから、本件通達の適用はある一方で、本件4土地は、審判所認定地域2の標準的な宅地の地積と同程度であるから、本件通達の適用はない。

《参照条文等》
 財産評価基本通達24−4

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成24年2月10日判決(税資262号順号11876)

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本件土地の想定整形地の間口距離、奥行距離は、建築計画概要書の写しにある配置図によれば、原処分庁が主張するものとは異なるとした事例(平成24年4月相続開始に係る相続税の丸1各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、丸2各更正処分・丸1一部取消し、丸2棄却・平成28年5月6日裁決)

平成28年5月6日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人らが相続により取得した東側と西側でそれぞれ道路に接する不整形な土地(本件土地)について、財産評価基本通達20《不整形地の評価》にいう「想定整形地」の間口距離は50.35m、奥行距離は35.0mであるから、本件土地の評価につき適用すべき同通達に定める不整形地補正率は0.98となる旨主張する。
 しかしながら、建築計画概要書の写しにある配置図によれば、本件土地に係る想定整形地の間口距離は50.50m、奥行距離は35.28mであるから、本件土地の評価につき適用すべき同通達に定める不整形地補正率は0.97となる。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達20

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評価対象土地はマンション適地と認められることから広大地には該当しないが、当該土地の評価に当たり控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、土壌汚染対策工事見積金額の80%とするのが相当であると判断した事例(平成27年1月相続開始に係る相続税の更正処分・一部取消し・令和元年11月12日裁決)

令和元年11月12日裁決

《ポイント》
 本事例は、評価対象土地はマンション適地であると認められることから広大地には該当しないが、当該土地の評価に当たり控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、土壌汚染対策工事を単独で行うのではなく、当該土地に新築する建物の建築工事を並行して行うという事情の下における土壌汚染対策工事費用の金額とするのは相当ではなく、当該土地を評価するに際し減額すべき金額は、公正に算出された土壌汚染対策工事費用見積金額の80%相当額とすることが相当と認めたものでる。

《要旨》
 請求人らは、その地域に存するマンションの棟数は少なく、マンション建築の進行度合いが遅いこと及び同地域におけるマンションの敷地の占有割合も大きくないことからすると、評価対象土地(本件土地)は、明らかにマンションの敷地に適しているとは認めらないから、マンション適地に該当しない旨主張する。
 しかしながら、その地域における大規模な土地については、主としてマンションが建築されている上に、相続の開始時の前年にもマンションが建築されていること、本件土地はマンションの建築に係る規制が厳しくない地域に存し、都心への交通接近性、公共施設及び商業施設への接近性に優れていることなどからすると、本件土地はマンション適地であると認められる。
 また、原処分庁は、本件土地の評価につき控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、請求人らが実際に負担した土壌汚染対策工事費用の金額の80%相当額とすべきであり、実額が明らかである以上、請求人らが主張する土壌汚染対策工事費用の見積金額の80%相当額を減額することは相当でない旨主張する。
 しかしながら、当該実額は本件土地に新築する建物の建築業者に同建物の建築工事と本件土地の土壌汚染対策工事を並行して行わせることにより、重複工事部分の費用を節減させて行うという事情の下における土壌汚染対策工事費用の金額であるから、本件土地の評価につき、減額する金額として相当でない。そして、請求人らの主張する土壌汚染対策工事費用の見積金額は公正に算出された適正なものと認められるから、本件土地を評価するに際し減額すべき土壌汚染の浄化費用の金額は当該見積金額の80%相当額とすることが相当であって、原処分の一部を取消すべきである。

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相続税の課税財産である土地が、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するとして、評価上減額すべきとした事例

令和2年6月2日裁決

《ポイント》
 本事例は、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するか否かの判断に当たり、評価上適用すべき路線価に騒音要因がしんしゃくされておらず、合理的と認められる方法に基づく騒音測定結果で相当程度の騒音が日常的に発生していることが明らかにされ、固定資産税の評価上も騒音による減価が行われていたことをもって、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当すると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、相続財産である土地(本件土地)について、請求人が行った列車走行による騒音測定では、騒音による取引金額への影響を確認できないから、国税庁ホームページのタックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」において示された10%減額して評価する取扱い(本件取扱い)を適用することはできない旨主張する。
 しかしながら、1本件土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因がしんしゃくされていないこと、2本件土地において列車通過時に実際に騒音が生じていること、3本件土地の所在する自治体は、本件土地の固定資産税評価額の算定上、鉄道騒音補正を適用したことが認められるから、本件土地は、騒音により取引金額に影響を受ける宅地に該当すると認められる。したがって、これらを併せて判断すると、本件土地においては相当程度の騒音が日常的に発生し、騒音により取引金額に影響を受けていたと認めるのが相当であるから、本件土地は、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するとして、本件取扱いを適用して評価すべきである。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 財産評価基本通達1(3)、11、13、14

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成27年12月17日判決(判時2282号22頁)

評価対象地は、相続開始日において、土壌汚染のある土地と認められ、当該評価対象地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきとした事例

令和3年12月1日裁決

《ポイント》
 本事例は、法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じていない評価対象地について、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であるとして、当該評価対象地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、評価対象地(本件各土地)は法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じておらず、本件各土地の価格形成に影響を及ぼすような土壌汚染は認められないから、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除する必要はない旨主張する。
 しかしながら、本件各土地は、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であることから、本件各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきである。そして、本件各土地及びその周辺の状況や土壌汚染の状況から、本件各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去であると認められるところ、請求人が主張する土壌汚染対策工事の各見積額(本件各見積額)の算定過程に特段不合理な点は見当たらず、浄化・改善費用の金額として相当であると認められるので、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額として本件各見積額の80%相当額を控除して評価するのが相当である。

《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達1の(3)

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