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2棟以上所有する場合の家屋の譲渡
- 不動産所得及び事業所得等の特例
- 譲渡所得の特例
- 株式等に係る譲渡所得等の特例
- 住宅借入金(取得)等特別控除
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
- タックスヘイブン対策税制
- 寄附金特別控除
譲渡した家屋は生活の本拠として居住の用に供していたものではないから租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当しないとした事例
裁決事例集 No.19 - 107頁
租税特別措置法(昭和53年法律第11号による改正前のもの)第35条第1項の規定の適用について、個人が所有する唯一の居住用家屋を譲渡した場合には、複数所有する家屋のうちの一つを譲渡した場合と異なり、「主として」であると「従として」であろうと、その者が、その家屋に居住している事実が少しでも認められる限り、居住用の認定を緩やかに解釈して特例の適用を認めるべきであると主張するが、「その居住の用に供している家屋」とは、その者が生活の拠点として利用している家屋をいい、これに該当するかどうかは、その家屋への入居の目的、その者及び配偶者等の日常生活の状況その他の事情等を総合勘案して判断すべきであって、本件譲渡家屋は、請求人が管理を兼ねて請求人の仕事を処理するため旅館やホテルの利用に代えて一時的に利用したものであり、生活の拠点として居住の用に供していたものとは認められないから、当該家屋の譲渡所得については、同条同項の規定を適用することはできない。
昭和54年9月20日裁決
譲渡した家屋は生活の本拠として居住の用に供していたものであるから租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当するとした事例
裁決事例集 No.19 - 117頁
譲渡した家屋は、請求人が永住する目的で新築し、昭和42年10月から昭和48年3月まで居住していたものであること、請求人が昭和48年4月から昭和51年9月ころまで自己所有の別件家屋に居住した経緯について相当の事情が認められること、当該別件の家屋に居住していた間譲渡した家屋における電話が存置されたままであったこと、譲渡した家屋については改造工事を行い、その後は空家にしていたこと等から請求人の当該別件家屋における居住は、家庭的事情が解消するまでの一時的なものであったと認められ、他方、請求人の昭和51年9月ころから昭和52年4月までの間の譲渡した家屋における居住は、生活に通常必要な電気、水道、ガス及び電話の使用状況並びに請求人の次女及び三女が、譲渡した家屋の所在地を校区とする学校にそれぞれ通学していたこと等から一時的なものでなく、恒久的な居住の状態であったと認められるから、本件譲渡した家屋及びその敷地の譲渡所得については、租税特別措置法(昭和53年法律第11号による改正前のもの)第35条第1項の規定を適用するのが相当である。
昭和55年1月24日裁決
譲渡された家屋は電話の架設状況等からみて生活の本拠として居住の用に供していたものと認められるから租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当するとした事例
裁決事例集 No.27 - 256頁
請求人は本件家屋のほか居住可能なマンションを所有していて請求人の生活環境や電気等の使用実績からみてそのいずれも住居として利用していたと推認することができるが、[1]昭和52年夏ころマンションから本件家屋に生活用品等の搬入をしていること、[2]同年8月2日マンションに架設していた電話を本件家屋に移設していること、[3]請求人が官公署に提出した文書には本件家屋の所在地を住所として記載しており文書の送達受領にそごを生じたことがないこと、[4]マンションを譲渡した際、その譲渡に係る所得税の確定申告において租税特別措置法第35条の規定の適用を受けていないこと等から、本件家屋を生活の本拠としていたと認められ本件物件の譲渡は租税特別措置法(昭和57年法律第8号による改正前のもの)第35条第1項に規定する居住用財産の譲渡に当たる。
昭和59年4月28日裁決
譲渡した家屋は、主として居住の用に供していたものとはいえないから、租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当しないとした事例
裁決事例集 No.38 - 221頁
請求人が居住用財産であると主張する本件家屋は、[1]請求人が本件家屋に転居した目的が、本件家屋内の古い家財道具を処分し、また、本件家屋に居住していた請求人の母らの転居準備を手伝うためであると認められること、[2]請求人と生計を一にする妻子は、請求人が本件家屋に転居した後も、本件家屋に転居するための何らの準備もせず、請求人が転居する以前に居住していた家屋に居住していたこと、[3]請求人は、本件家屋から会社へ通勤していたとはいえ、土曜日及び日曜日はほとんど毎週、それ以外の日も必要に応じて、妻子の居住する家屋に戻って生活していたことなどを総合すると、主として居住の用に供していた一の家屋ということはできないから、本件家屋は租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当しない。
平成1年10月30日裁決
請求人には生活の本拠とする居宅があるところ、譲渡したマンションへの居住目的は譲渡するまでの間の一時的なものとみるのが相当であり、譲渡所得について租税特別措置法第35条の規定による特別控除はできないとした事例
請求人は、本件マンションには、借家人が立ち退いた後間もなく居住を開始し、ほぼ毎週月曜日から金曜日まで寝泊まりしたのであるから、本件マンションは特例に規定する居住用財産に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人はS市に居宅を有し、同所には生計を一にする家族が居住し、土曜日及び日曜日は毎週、それ以外の日でも必要に応じてS市の居宅で家族と共に過ごすという生活を送っていたこと及びS市に請求人の事務所を有していたこと等を考慮すると、請求人が生活の本拠として居住の用に供していたのは本件マンションではなく、S市の居宅とみるのが相当である。
本件マンションに係る電気、ガス及び水道の使用を開始したのは平成元年11月以降であり、かつ、これらの使用量は極めて少ないことが認められる。特に、平成元年12月から同2年2月までの電気の使用量は零であること及び請求人の住民登録は平成2年3月4日からS市の居宅であること等からみると、その居住目的は、本件マンションを譲渡するまでの間の一時的なものであったとみるのが相当であり、本件特例の規定の適用をすることはできない。
平成5年6月25日裁決
請求人が、従前家族とともに居住していた借家の近くに取得したマンションは、譲渡時点においては、生活の本拠として認められないので租税特別措置法第35条の適用はないが、かつての居住状態から、同マンションを生活の本拠と理解していたことは相当の理由があると認められる等から、重加算税の賦課は相当でないとした事例
昭和53年に取得した本件マンションについては、請求人は長男が未成年のころは、その世話のため、本件マンションを主として居住の用に供していたといえる状況にあったとしても、[1]夫と義母が残ったと主張する従前居住していた借家を、請求人が資金を出して取得していること、[2]長男は既に独立した生計を営んでいること等から、本件マンションの譲渡の時点では、これを生活の本拠とする理由等は認められず、上記の取得した借家が請求人の居住の用に供していた家屋と認められる。
しかし、[1]本件マンションを請求人名義で取得し、かつ長男を居住させて、一時的にではあっても長男とともに居住の用に供していたことから、これを生活の本拠と理解していたことには、相当の理由があり、[2]本件マンションの譲渡直前に住民登録を本件マンションの所在地に移したのは、登記簿上の住所に住民登録上の住所を符号させるためにしたもので、そのことをもって仮装行為とは認められない等から、重加算税を賦課することは相当でない。
平成6年3月23日裁決
二以上の家屋が併せて一構えの家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないとした事例
租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、本件特例の適用対象となる家屋は、主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る旨規定しているところ、本件特例の適用対象となる家屋の判定に当たり、二棟以上の家屋が併せて一構えの家屋であるといえるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
本件家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件A家屋と、本件BC家屋とは、それぞれ別個独立の家屋であると認められ、これらの各家屋を併せて一構えの家屋であるということはできない。そして、請求人は、妻及び長男と共に本件A家屋で日常生活を営んでいたのに対し、本件BC家屋は、もともと飲食店の店舗等として使用し、廃業後は、一部に荷物等をおいて物置に使用していたにすぎないから、請求人が主として居住の用に供していた家屋は本件A家屋であると認められ、本件BC家屋は本件特例の適用対象となる居住用家屋には該当しない。また、租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限り、本件特例の適用がある旨規定しているところ、本件A家屋の2階の3室のうち、Kに賃貸していた1室及びLに賃貸し、同人の退去後に使用していなかった1室は、本件譲渡の以前に貸室とされており、請求人がこれを居住の用に転用し、ある程度の期間継続して居住の用に供していたとは認められないから、当該部分は「居住の用に供している部分」に当たらない。
したがって、本件A家屋の1階の全部及び2階の1室並びに本件A家屋の敷地の用に供されている本件借地権のうちその居住の用に供していた部分に限り、本件特例を適用するのが相当である。
平成21年11月20日裁決