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その他
- 収益の帰属事業年度
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- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
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- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
子会社の代表取締役に就任した使用人兼務役員に支払った使用人分給与を子会社に対する寄付金と認定したことは相当でないとした事例
裁決事例集 No.30 - 169頁
原処分庁は、請求人の取締役営業部長が子会社の代表取締役として同社の経営に従事していたことは明らかであり、また、同人が子会社と請求人双方の業務を兼ねていたとしても、請求人の使用人としての職務に常時従事することはできないと認められるので、同人は請求人の使用人兼務役員とはなり得ないものであって、請求人が同人に支払った使用人分給与は子会社に対する寄付金となると主張するが、同人は、子会社の代表取締役に就任した後においても子会社の経営に参画し、その業務に従事していたものと認めることはできず、請求人の使用人兼務役員として業務に従事しており、その職務が就任前と格別異なるところは認められず、役員としての報酬及び使用人としての給与も、特別に増額されていないことが認められるから、本件使用人分給与を子会社に対する寄付金と認定したことは、相当でない。
昭和60年11月21日裁決
公益法人等が収益事業から公益事業へ支出した金額につき、これと見合う金額を元入金として受け入れているときは、いわゆるみなし寄付金に当たらないとした事例
裁決事例集 No.39 - 297頁
法人税法第37条“寄付金の損金不算入”第4項にいう収益事業から公益事業への資産の支出とは、現に収益事業に属する資産を公益事業へ支出して、これにつき明確に区分経理をし、かつ、その資産がその公益法人等の本来の事業のための資金として使用されることをいうものと解されるから、収益事業から公益事業へ資産を支出したとしても、直ちにその支出した資産の額に相当する金額を元入金として公益事業から収益事業へ受け入れた場合には、法人税法第37条第4項にいう支出には当たらず、また、これにつき明確に区分経理したことにはならないから、当該収益事業から公益事業への支出額は、みなし寄付金には該当しない。
平成2年3月8日裁決
関係会社に損失が生じたときには請求人がその損失の一切を賠償する旨の契約書を作成し、この契約書に基づきした損失補てんは寄付金に該当するとした事例
請求人は、関係会社との間で、両者間における商取引に起因して関係会社が被った一切の損害は請求人が賠償する旨の契約書を作成し、この契約書に基づき、関係会社に対し損失補てんをした金額を雑損失勘定に計上して損金処理をしているが、本件契約における損害賠償の内容は、関係会社の責めに帰すべきものについても賠償を行うこととなっており、請求人が関係会社の損失を一方的に負担するという不自然、不合理なもので経済的合理性を欠くものであり、また、関係会社は、請求人から本件損失補てんを受けなければ直ちに休業、倒産等の事態に陥るとも認められない。
したがって、請求人がした関係会社に対する損失補てんは、法人税法第37条第6項に規定する寄付金に該当するとした原処分は、相当である。
平成6年3月31日裁決
外国子会社に対する業務委託費として経費に計上した金員は、外国子会社に対する資金援助に当たり、寄附金と認定された事例
請求人は、請求人の製品を韓国市場に広めるため、外国子会社を設立、発行済株式の総数を保有して同社との間で業務委託契約を締結し、その契約に基づく役務の提供に対して毎月100万円の業務委託費を支払ったと主張するが、請求人が審査請求に及んで本件業務委託の役務提供の事実を証明する資料として提出した証拠書類は、その資料内容及び業務内容において外国子会社の従業員から同社の社長に対する通常業務の一貫としての連絡、伺いの域を超えない報告書等であることから、外国子会社は、請求人に対し、役務の提供をしていたとはいえず、業務委託費は本件契約に基づく役務の提供の対価とは認められない。
したがって、本件業務委託費は、法人税法第37条第6項、措置法第66条の4第1項及び第3項の規定により、外国子会社に対する寄附金と認めるのが相当である。
平成12年12月14日裁決
外注費として支出した工事代金等につき対価性がなく寄附金に該当するとした原処分の一部を取り消した事例
《ポイント》
一般に、会計帳簿は業務上の金員の動きがそのまま記載されるものであるから、特段の事情のない限り、会計帳簿に記載されたとおりの事実を認めることができるところ、原処分庁が会計帳簿に記載された事実(費用)について対価性がないと認定する場合には、原処分庁がその立証責任を負うことになる。
この事例では、請求人が会計帳簿に記載された事実と異なる事実を主張したことから、請求人において、かかる事実の存在や異なる事実を会計帳簿に記載することとなった事情などの特段の事情を立証する必要があるとしたものである。
《裁決の要旨》
請求人は、各事業年度に追加の外注費として支出し損金の額に算入した金員(本件支出金)は、過去に施工された工事に係る追加の支払を現場名を付け替えて支出したもの、及び
実際の工事対価の支払として支出したものであり、対価性があることから、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金には当たらない旨主張し、一方、原処分庁は、本件支出金にはいずれも対価性がなく寄附金に当たる旨主張する。
上記に係る本件支出金については、請求人の会計帳簿等に記載された現場と関係がない上、請求人が主張する追加支払に合理的理由や支払うべき特段の事情があったとはいえず、対価性のない支出であると認められることから寄附金に該当する。一方、
に係る本件支出金については、実際に工事が行われており、当該工事に係る対価であると認められることから寄附金に該当しない。
《参照条文等》
法人税法第37条第7項
請求人が損金の額に算入したグループ法人に対する業務委託料は、当該グループ法人に対する資金援助を仮装して計上されたものであり、対価性がなく寄附金の額に該当するとした事例
《ポイント》
この事例は、グループ法人に対する各業務委託料は、当該各業務委託料に係る各契約に基づく役務提供が認められないこと及び委託先法人に対する貸付債権と相殺されていることから、グループ法人に対して債務を消滅させる経済的利益の無償の供与と判断し、グループ法人への貸付金には該当しないと判断したことにより、原処分のうち、貸付金としてその利息を計上すべきとした部分を取り消したものである。
《要旨》
請求人は、グループ法人との間で締結した各業務委託契約に基づく業務は行われているから、費用計上した各業務委託料は損金の額に算入されるべきである旨主張し、原処分庁は、当該契約は実体のない架空の業務委託契約であり、当該各委託料は請求人の会長が実質支配するグループ法人への貸付金等であるとした上、当該貸付けに係る利息相当額は益金の額に算入すべきである旨主張する。
当該各委託料は、役務提供の有無にかかわらずに支払われている対価性のないものであること
当該各委託料がグループ法人に対する貸付債権と相殺されていることからすると、その計上額は、請求人がグループ法人に対して債務消滅という経済的利益を無償で供与したこととなり、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金の額に該当すると認めるのが相当である。
したがって、請求人の主張には理由がなく、また、当該各委託料が貸付金に当たるとして利息相当額を益金の額に算入すべきであるとする原処分庁の主張にも理由がない。
《参照条文等》
法人税法第22条、第37条