ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例要旨 >> 租税特別措置法関係 >> 優良住宅地の造成等のための譲渡の特例


所得税法の特例

優良住宅地の造成等のための譲渡の特例

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
  2. 譲渡所得の特例
    1. 長期譲渡所得と短期譲渡所得
    2. 長期譲渡所得に係る課税の特例
      1. 長期譲渡所得の課税の特例
      2. 優良住宅地の造成等のための譲渡の特例(8件)
      3. 特定市街化区域農地等を譲渡した場合の課税の特例
    3. 短期譲渡所得の課税の特例
    4. 収用等の場合の譲渡所得の特別控除等
    5. 特定事業の用地買収等の場合の譲渡所得の特別控除
    6. 居住用財産の譲渡所得の特別控除
    7. 居住用財産の買換えの場合の課税の特例
    8. 特定の事業用資産の買換えの場合等の課税の特例
    9. 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火共同住宅の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
    10. 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例
    11. その他
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制

土地の譲渡者が都市計画法に基づく開発行為の許可を受け、造成者が当該許可を受けていない場合には、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例は適用されないとした事例

裁決事例集 No.27 - 249頁

 租税特別措置法(昭和57年法律第8号による改正前のもの)第31条の2の規定は土地の譲渡を受けた者が都市計画法に基づく開発行為の許可を受けた場合に限り適用されるものであるところ、請求人は、本件譲渡が特例の施行直後であったため、土地の譲渡をした者が開発行為の許可を受けた場合でも適用があると誤解したものであって、その他の点ではすべての要件を満たしているので特例を適用すべきであると主張するが、租税特別措置法に規定する税負担の軽減の適用要件は厳格に解すべきであり、本件譲渡はその適用要件を欠いたものであるから、請求人の主張は認められない。

トップに戻る

譲渡した土地の譲受人とその土地に関し開発許可を受けて開発行為をした者とが異なっているから、当該譲渡について租税特別措置法第31条の2の規定は適用できないとした事例

裁決事例集 No.29 - 185頁

 請求人は、本件土地の実質的な譲受人は本件土地に関し開発許可を受けて開発行為をした会社であるから、本件土地の譲渡につき、優良住宅地のための譲渡による課税の特例が適用されるべきであると主張するが、請求人から本件土地を譲り受けた会社は、その土地の転売先である開発会社から本件土地の取得資金の融資を受ける等、本件譲受会社と開発会社との関係が相当密接であったことはうかがえるものの、両者は互いに独立した法人格を有し、本件に関しても独立して意思決定をしており、本件譲受会社は、開発会社の代理人として本件土地を取得したものでなく、又は開発会社のダミーであったとは認められないから、請求人の主張は採用できない。
 また、請求人は、本件のように請求人から直接土地を取得した者とその土地につき開発許可を受けて優良住宅地の造成をした者とが異なる場合でも、課税の特例は優良住宅地の供給の促進に資する趣旨で設けられたものであるから、それが適用されるべきであると主張するが、その主張は法の規定を拡大解釈して適用することを求めているものであって採用することはできない。
 したがって、本件土地の譲渡について租税特別措置法(昭和56年法律第13号による改正前のもの)第31条の2の規定を適用すべきであるとの請求人の主張には理由がない。

トップに戻る

地方税法附則第29条の5第1項に規定する長期営農継続農地として認定を受けた農地につき、その譲渡者が都市計画法に基づく開発行為の許可を受け、譲受者が当該許可を受けていない場合には、その譲渡は租税特別措置法施行令第20条の3第2項第1号に掲げる土地等の譲渡(租税特別措置法第31条の2第2項第4号に掲げる土地等の譲渡)に該当せず、特定市街化区域農地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例は適用されないとした事例

裁決事例集 No.33 - 161頁

 本件譲渡は、長期営農継続農地を住宅建設の用に供される一団の宅地として造成するための譲渡であることは認められるが、その譲渡が租税特別措置法(昭和60年法律第7号による改正前のもの)第31条の2第2項第4号に規定する譲渡に該当するためには、その譲受人が開発許可を受けている者であることが要件とされているところ、本件土地について開発許可を受けた者は請求人自身であって譲受人ではない。したがって、本件譲渡は同号に規定する譲渡に該当しない譲渡であるから、特定市街化区域農地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(同法第31条の3)が適用されないとして請求人の納付すべき税額を算定した更正は適法である。

トップに戻る

本件土地の買主が当該土地を転売しているので、租税特別措置法第31条の2第2項第9号に該当しないとして請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.51 - 208頁

 請求人は、本件土地の実質的な買主はX社であるから、租税特別措置法第31条の2(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)第2項第9号に該当する。仮に、本件土地の買主がW社であったとしても、同社が同号に規定する優良住宅を建設しなかったことについて請求人には何ら瑕疵がないので、同条が適用されるべきである旨主張する。
 ところで、租税特別措置法第31条の2第2項第9号は、優良住宅の建設を行う個人又は法人に対する土地等の譲渡で、当該土地等が優良住宅の用に供されるものと、また、同号括弧書には、優良住宅の建設を行う法人として「当該建設を行う法人の合併による消滅により当該建設に関する事業を引き継いだ合併法人が当該建設を行う場合には、当該合併により消滅した法人又は当該合併法人」を含む旨規定されている。

  1.  原処分関係資料及び審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
    1.  請求人は平成5年9月3日の契約に基づき売買代金2億6,965万円をW社から、W社は平成5年12月20日の契約に基づき売買代金2億6,262万円をX社から受領していること。
    2.  請求人は、本件土地の売主を請求人、買主をW社としてP市長に国土利用計画法の届出をし、平成5年9月3日の契約の残金受領時に登記済権利証等をW社に渡した旨答述していること。
    3.  X社の担当者は、本件土地についてW社と平成5年12月20日に売買契約を締結し、即日決済したが、請求人と交渉したことはない旨答述していること。
    4.  W社とX社が合併した事実はないこと。
  2.  以上の事実によれば、本件土地の買主であるW社が、当該土地をX社に転売していることから、請求人の本件土地の譲渡は、租税特別措置法第31条の2第2項第9号に規定する特例適用要件を欠くこととなるので、本件更正処分は適法である。

トップに戻る

譲渡土地上に建設された中高層の耐火共同住宅に係る検査済証の建築主は、Z社と当該土地の譲受人以外のH社であるから、当該土地の譲渡について租税特別措置法第31条の2第2項第9号(現行法は第11号)の規定が適用できないとして請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.51 - 220頁

 請求人は、譲渡土地上に建設した中高層の耐火共同住宅に係る検査済証の建築主をZ社とH社の連名にしたのは、請求人が関知しないものであり、また、租税特別措置法第31条の2(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)の立法趣旨である優良住宅地の供給に寄与していることから、同条第2項第9号が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、租税特別措置法第31条の2第2項第9号は、一団の住宅又は中高層の耐火共同住宅(特例建物)の建設を行う個人又は法人に対する土地の譲渡で、当該土地が特例建物の用に供されるもののうち、大蔵省令で定めるところにより証明がされたものをいう旨規定していることから、当該土地の譲受人以外の者が特例建物を建設した場合には、本件特例が適用できないと解される。
 また、租税特別措置法施行規則第13条の3第1項第9号ハは「当該一団の住宅又は中高層の耐火共同住宅に係る建築基準法第7条第3項に規定する検査済証の写し」と規定していることから、本件特例適用に係る証明書(適正な申請、届出に基づいて発行されたものに限る。)により、当該土地の譲渡が優良住宅地等の譲渡に該当することについて証明されなければ、本件特例が適用できないと解される。
 ところで、請求人が提出した特例建物に係る検査済証によれば、特例建物は、Z社とH社(本件土地の譲受法人でもなく、Z社との合併法人でもない。)の共同建設であることから、本件土地の譲渡は、租税特別措置法第31条の2第2項第9号の適用対象となる譲渡に該当しないこととなるので、同条第1項の規定の適用がないとして行った更正処分は適法である。

トップに戻る

第一種市街地再開発事業に係る権利変換により取得した施設建築物及び施設建築敷地に関する権利を譲渡した場合に、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の課税の特例を認めなかった事例

裁決事例集 No.61 - 304頁

 第一種市街地再開発事業は権利変換方式により行われるため、同事業施行地内の土地等は、権利変換期日において施設建築物の権利床及び保留床並びに施設建築敷地に変換され、従前の権利関係は消滅するから、事業施行者にとって事業の用に供すべき土地等は、権利変換期日に確保されたこととなる。
 そうすると、租税特別措置法第31条の2第1項の規定(本件特例)及び同条第2項第4号が制定された目的及び経緯並びに第一種市街地再開発事業の目的とを踏まえると、本件特例の適用対象となる租税特別措置法第31条の2第2項第4号に規定する「第一種市街地再開発事業の用に供される土地等の譲渡」とは、第一種市街地再開発事業の施行の前段階である事業用地の確保に資する譲渡、すなわち、権利変換期日以前の譲渡に限られるものと解される。
 これを本件についてみると、本件権利の譲渡は、本件権利変換期日後の譲渡であるから、本件権利の譲渡に係る所得税額の計算上、本件特例の適用は認められない。

トップに戻る

請求人が行った土地の譲渡は、租税特別措置法第31条の2第1項に規定する「優良住宅地等のための譲渡」には該当しないとした事例(平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成25年12月12日裁決)

平成25年12月12日裁決

《要旨》
 請求人は、譲渡した土地(本件土地)の譲受人(本件譲受人)が開発許可申請を行い、それに基づく開発許可を受け、本件土地の造成工事(本件造成工事)を業者に行わせていることから、実質的に本件造成工事を行っているのは本件譲受人であるので、本件土地の譲渡は、租税特別措置法(措置法)第31条の2《優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》第2項第13号に掲げる土地の譲渡に該当する旨主張する。
 しかしながら、まる1請求人は、注文者として本件造成工事の請負契約をしてその代金を負担し、一方、請求人から請け負った業者が本件造成工事を行ったこと、まる2開発許可を容易に得るために、建設業者である本件譲受人が、農地転用申請及び開発許可申請をしたこと、まる3本件土地の所有権について、売買契約のとおり、開発許可に係る宅地造成がなされた後に請求人から本件譲受人に所有権が移転していること、まる4請求人は所得税の譲渡所得の計算において、本件造成工事の代金を取得費に計上しており、本件造成工事が完了した後に本件土地を譲渡した旨の認識を表明したことが、それぞれ認められ、これらを総合すると、本件造成工事は、本件土地の所有者である請求人の負担と責任おいて行われたというべきであるから、本件造成工事を本件譲受人自らが行ったものではないと認められる。したがって、本件土地の譲渡は、措置法第31条の2第2項第13号に掲げる土地の譲渡には該当しない。

《参照条文等》
  租税特別措置法第31条の2第2項第13号

《参考判決・裁決》
  東京地裁平成13年3月29日判決(税資250号順号8869)

トップに戻る

開発許可を受けたのは受託者であって、不動産信託の受益者としての権利(受益権)の譲受人でないため、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用はないとした事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成28年6月3日裁決)

平成28年6月3日裁決

《ポイント》
 本事例は、信託財産に属する資産が土地等である所得税法第13条第1項に規定する受益者等課税信託の信託受益権が譲渡された場合には、当該信託財産に属する資産である土地等が譲渡されたことになるところ、当該土地等の開発許可を受けたのは受託者であって、当該信託受益権の譲受人でないため、優良住宅他の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用はないと判断したものである。

《要旨》
 請求人らは、信託法第16条《信託財産の範囲》第1項及び所得税法第13条《信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属》第1項の規定からすると、信託財産に関する受託者の行為は受益者の行為と同一人格の行為であるとみなされることから、当該信託の受託者が都市計画法第29条《開発行為の許可》第1項に基づく開発許可を取得すれば、当該許可を受けた地位は、信託受益権が譲渡された場合の受益者である譲受人も有するというべきであり、当該譲受人は、租税特別措置法第31条の2《優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》第2項第13号(本件特例)の「開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う」法人に該当するなどと主張する。
 しかしながら、本件特例は本来課されるべき租税を政策的な見地から特に軽減するものであるから、租税公平主義に照らし、その解釈は条文の文言に即して厳格にされるべきであり、条文の文言を離れてみだりに拡張解釈や類推解釈をすることは許されないことに鑑みれば、本件が対象土地に係る信託受益権(本件受益権)の譲渡であり、本件受益権の譲受人自身が開発許可を取得していない以上は、開発許可を受けた者に対する譲渡との要件を満たさないものとして、本件特例の適用を受けることはできない。

《参照条文等》
 所得税法第13条第1項
 租税特別措置法第31条の2第2項第13号

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成13年3月29日判決(税資250号順号8869)

トップに戻る