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経済的利益の供与
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
損益計算法により算定した簿外所得金額と社内に留保された簿外資産との差額を代表者に対する貸付金と認定しその受取利息相当額を役員報酬とした原処分を取り消した事例
裁決事例集 No.24 - 93頁
原処分庁は、甲勘定の金額を代表者甲に対する貸付金と認定しているが、[1]同勘定は、既往の事業年度の更正において原処分庁が損益計算法によって算定した請求人の所得金額と請求人の資産として留保されている金額との差額を仮勘定として処理したものであること、[2]原処分庁は、既往の事業年度については、かかる理由から同勘定の金額に対し受取利息の認定をしていないこと、[3]当事業年度以降の原処分に係る調査において、請求人と代表者甲との間に金銭消費貸借契約が成立していたとする事実は認められないこと等の事実によれば、同勘定の金額を代表者甲に対する貸付金と認定することは相当でない。
したがって、原処分庁が当該甲勘定の金額を代表者甲に対する貸付金と認定し、これに対して年10パーセントの割合で算定した受取利息の額を代表者甲に対する経済的利益の供与と認め役員報酬として源泉所得税の納税告知をしたことは相当でない。
昭和57年6月10日裁決
請求人が請求人の代表者の母及び義姉に支払った外注費は請求人の代表者に対する経済的利益の供与と認めるのが相当であるが、このうち毎月定額支給した金額は役員報酬として損金算入すべきであるとした事例
裁決事例集 No.34 - 67頁
請求人は請求人の代表者の母及び義姉に外注費を支払っているが、関係者の答述、通勤、勤務状況から、同人らは請求人の業務に従事したとは認められないから、同人らに支給した金員は請求人の代表者に対する経済的利益の供与と認められる。また、このうち毎月定額支給される金額は役員報酬と認定すべきであり、当該役員報酬認定額が法人税法施行令第69条に該当しない以上、損金に算入するのが相当である。
昭和62年12月24日裁決
請求人名義の車両を代表者に対し贈与等をした事実はなく給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらしたとは認められないとした事例
《ポイント》
本事例は、代表者の妻が個人的に使用している請求人名義の車両は、代表者の妻が無償で専属的に使用していると認められるから、当該車両の使用につき通常支払うべき使用料の額に相当する経済的な利益を享受していると認められるものの、当該車両を代表者に贈与したとまでは認められないとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人の実質経営者(実質経営者)の妻が個人使用するために請求人名義で取得した車両(本件車両)について、請求人が実質経営者の指示により本件車両の取得費等を費用に計上していること、実質経営者の妻は請求人の役員又は従業員ではなく、実質経営者が請求人の100%株主であることからすれば、本件車両の取得費等は、実質経営者に対する役員給与に当たり、また、個人で使用する目的で取得した本件車両の取得費等を請求人の費用に計上したことは、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第3項に規定する隠ぺい又は仮装による役員給与に当たる旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件車両の購入に関する注文の当事者であり、信販会社を通じて本件車両の売買代金を支払い、自動車車検証に使用者として記載されていることからすると、本件車両の所有者は請求人であると認めるのが相当であり、請求人から実質経営者に対して本件車両の贈与があった等、請求人が一定の行為をしたことにより実質的に実質経営者に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらしたとまでは認めることができず、仮装隠ぺいと認めるに足る証拠もない。ただし、実質経営者の妻は、実質経営者の権限を利用して、本件車両を専属的に利用していることが認められるから、実質経営者は、本件車両の使用につき通常支払うべき使用料の額に相当する経済的な利益を享受しているというべきであり、当該経済的な利益の額は、実質経営者に対する役員給与に当たる。
《参照条文等》
法人税法第34条