所得金額の計算

過大報酬の判定

  1. 収益の帰属事業年度
  2. 益金の額の範囲及び計算
  3. 損失の帰属事業年度
  4. 損金の額の範囲及び計算
    1. 売上原価
    2. 山林ぶ育費
    3. 有価証券の評価
    4. 固定資産の取得価額
    5. 減価償却資産の償却等
    6. 繰延資産の償却等
    7. 役員報酬、賞与及び退職給与
      1. 役員の範囲
      2. 使用人兼務役員の範囲
      3. 役員報酬
        1. 賞与との区分
        2. 経済的利益の供与
        3. 過大報酬の判定(7件)
        4. その他
      4. 役員賞与
      5. 役員退職給与
    8. 使用人給与、賞与及び退職給与
    9. 寄付金
    10. 外注費
    11. 海外渡航費
    12. 賃貸料、使用料
    13. 売上割戻し
    14. 弔慰金
    15. 支払利息
    16. 為替差損益
    17. 貸倒損失及び債権償却特別勘定
    18. 横領損失
    19. 損害賠償金
    20. 不動産取引に係る手数料等
    21. 福利厚生費
    22. 資産の評価損
    23. 燃料費、消耗品費
    24. 雑損失
    25. 使途不明金
    26. その他の費用
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

株主が一堂に会して株主総会が開催されなかったとしても、請求人のように役員が90パーセント以上の株式を有している同族会社において、当該役員により作成された議事録は、実質的に株主総会が開催され、決議が行われた上で作成されたものとみるべきであり、過大な役員報酬の判定はこの議事録に基づいて行うのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.45 - 213頁

 請求人は当初、株主総会の議事録であるとして甲議事録を提示し、その後に至って乙議事録を正規のものであるとして提示した。さらに請求人は、実際には株主総会は開催されておらず、株主総会の決議も存在しないので、役員報酬の額が相当な金額であるか否かは株主総会の議事録によるべきではなく、当該役員の職務内容からみて判断すべきであると主張した。しかし、本件においては、請求人の株主が一堂に会して株主総会が開催され決議が行われたと判断することはできないとしても、[1]請求人は、議事録の原案の作成を代理人に依頼していること、[2]代理人は、原案を作成するに当たって代表者に対し、あらかじめ「各事業年度の計算書類の承認は行われたか、役員報酬の額が前事業年度に比べて変更されたか否か、変更後の金額はいくらか」の点について確認していること、[3]原案を請求人の代表者は代理人から受け取り、代表者は原案に押印した後、他の役員にもこれを回付し、同人らも代表者と同様に押印し、議事録を作成していること、[4]役員の有する株式数の合計は、発行済株式総数の90パーセントを超えていること等からみると、実質的に株主総会が開催され、決議に基づいて議事録が作成されたとみるのが相当である。
 そして、株主総会の決議に基づいて作成された議事録は、甲議事録であると認められ、原処分庁が役員報酬が過大かどうかの判断を甲議事録に基づき行ったことは相当である。

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非常勤の取締役3名に対して支給した役員報酬額は、当該取締役の職務の内容等に照らし不相当に高額であるので、当該取締役の職務の対価として相当であると認められる金額を超える部分の金額は、損金の額に算入することはできないとした事例

裁決事例集 No.54 - 306頁

 代表者の妻ら3名の取締役(以下「本件取締役」という。)に対して支払われた役員報酬額は、[1]本件取締役は業務執行権を有せず具体的な職務執行の内容が不明確であり、また、代表者の答述によれば、役員報酬額等は社員総会において支給総額を決定し、代表者及び他の役員一族でそれぞれ折半することとしていること等を併せ考慮すれば、本件取締役の職務内容は請求人の経営に深くかかわるものとは認められないこと、[2]請求人の各事業年度の売上高・売上総利益の伸び率に比較すると、当該各事業年度の本件取締役の支給額は、相当高い伸び率であると認められること、[3]本件取締役の役員報酬額は、いずれも請求人の類似法人で本件取締役と職務内容が類似すると認められる非常勤の取締役に対する役員報酬額の平均額と比較すると極めて高額であると認められること等から、本件取締役の役員報酬額はその職務の対価として相当ではなく、類似法人の平均的な役員報酬額を超える部分の金額は、不相当に高額な部分の金額であって損金の額に算入されないというべきである。

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取締役会長に支払われた役員報酬及び役員退職給与には、不相当に高額な部分の金額が含まれているとは認められないとした事例

裁決事例集 No.63 - 309頁

 原処分庁は、請求人が取締役会長に支払った役員報酬の額及び退職給与の額につき、同人は長期入院のため通常の勤務ができなかったものであり、非常勤取締役と認められ、そして、類似法人の非常勤取締役に対する役員報酬の支給状況によると、同人に対する適正報酬額は50万円と認められるから、それを超える部分は、法人税法第34条第1項に規定する「不相当に高額な部分の金額」に当たるため損金の額に算入できず、また、退職給与の額のうち、この適正報酬額を基礎として算定した金額を超える部分も、法人税法第36条に規定する「不相当に高額な部分の金額」に当たるため、損金の額に算入できない旨主張するが、取締役会長は、入退院を繰り返しているものの、相当程度の頻度で請求人の職務に従事していたもので、同人は常勤の取締役と認められ、そして、類似法人の常勤取締役会長に対する役員報酬の支給状況等に基づき検討すると、同人に対する役員報酬の額が不相当に高額であるとは認められないから、原処分庁の主張は採用できない。
 他方、請求人は、取締役会長に支払った見舞金につき、合理的な社内規定に基づくものであり、その全額が福利厚生費に該当する旨主張するが、類似法人の役員に対する見舞金の支給状況によると、福利厚生費としての見舞金の上限は入院一回当たり5万円と認められるから、当該金額を超える部分は取締役会長に対する賞与に該当する。

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非常勤取締役に対する役員報酬について、類似法人から算出した報酬額を適正と判断した事例

裁決事例集 No.70 - 215頁

 請求人は、非常勤取締役である代表者の母に対する適正報酬額は、当該取締役が代表取締役のよき相談相手として経営に参画していることから、請求人の従業員に対する給与の支給額を参酌して算定することが最も妥当であり、原処分庁が不相当に高額な部分として損金の額に算入できないとした額は過大であると主張する。
 しかしながら、法人税法施行令第69条第1号に照らしてみると、[1]よき相談相手というのも客観性・具体性に欠け、その裏づけとなる確たる証拠資料はないこと、また、当該取締役には決められた仕事はないこと、[2]特定の従業員の給与の支給額に照らすことについては、当該従業員の職務の内容や勤務の状況等を明らかにしないこと及び請求人の収益の状況如何にかかわらず本件取締役の職務の内容からして、当該従業員に支給されている給与額をもってその根拠とならないこと、そして、[3]原処分庁が、請求人と業種、事業規模などが類似し、請求人の所在する地域の非常勤取締役が存する法人を選定したこと及び当該類似法人に存する非常勤取締役に支給された年間報酬額の平均額をもって本件取締役に対する適正報酬額を算出した方法は妥当なものと認められることなどを勘案すると、原処分庁が、本件役員報酬のうち、不相当に高額な部分として算定した金額は相当と認められる。

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役員報酬の金額のうち、請求人と同種の事業を営み事業規模が同程度の類似法人の適正報酬額を超える部分の金額は不相当に高額であるから損金の額に算入されないとした事例

裁決事例集 No.76 - 285頁

 請求人は、請求人の代表者の妻である役員Hは、請求人の重要な職務に常に従事し、請求人の業績に多大な貢献をしており、常勤役員に該当する旨主張する。
 しかしながら、1Hの職務内容及び役員報酬の支給状況、2請求人の売上高及び収益の状況、3請求人の使用人に対する給料の支給状況、4類似法人の役員報酬の支給状況等をみると、Hは、特に重要な職務には従事しておらず、その従事日数も1か月のうち2日から3日と職務の従事程度が低いにもかかわらず、その報酬額は、請求人の売上高及び収益並びに使用人給与に比し相当高い伸び率を示しており、さらに、類似法人の平均役員報酬額に比しても極めて高額であることから、類似法人の平均役員報酬額を超える金額は、法人税法第34条第1項に規定する「不相当に高額な部分の金額」に該当する。

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請求人の代表取締役に対する役員給与の額のうち、同業類似法人の代表者に対する役員給与の額の最高額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額であるとした事例(1平成25年8月1日から平成27年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分並びに平成25年8月1日から平成26年7月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、2平成22年8月1日から平成25年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分ほか・1一部取消し、2棄却・平成29年4月25日裁決)

平成29年4月25日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人の同業類似法人における代表者に対する役員給与の最高額と比較すると、請求人の代表取締役(本件代表者)に対する役員給与(本件役員給与)の額は、極めて高額であり、明らかに不相当に高額な部分があるから、当該最高額を本件代表者に対する役員給与相当額とし、本件役員給与の額のうち役員給与相当額を超える部分の金額は、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない旨主張し、請求人は、本件代表者の職務は格別であり、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性を有するものではないから、本件役員給与の額について不相当に高額な部分の金額はない旨主張する。
 しかしながら、審判所の調査の結果、本件代表者の職務の内容が特別に高額な役員給与を支給すべきほどのものとは評価し難く、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性があるものと認められる。そして、本件代表者の職務内容に大きな変化はなく、請求人の収益の状況及び使用人給与の支給状況もおおむね一定であるところ、本件役員給与の額は同業類似法人の代表者に対する役員給与の額の最高額を上回るものであり、しかも当該最高額を支給する法人は、請求人よりも相当に経営状況が良好と評価される点を鑑みれば、本件役員給与の額のうち当該最高額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額であるといえる。ただし、原処分庁が抽出した同業類似法人の中に、請求人とは業種の異なる法人が認められることから、同社を同業類似法人から除外した上で役員給与相当額を算定し、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額を計算すると、原処分の額を下回ることから、原処分の一部を取り消すのが相当である。

《参照条文等》
 法人税法第34条第2項
 法人税法施行令第70条第1項

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請求人の取締役に対する給与の額に不相当に高額な部分はないとした事例(1平成27年12月1日から平成28年11月30日まで、平成28年12月1日から平成29年11月30日まで、平成29年12月1日から平成30年11月30日まで、平成30年12月1日から令和元年11月30日まで及び令和元年12月1日から令和2年11月30日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(平成30年12月1日から令和元年11月30日までの事業年度の法人税の更正をすべき理由がない旨の通知処分を併せ審理)、2平成27年12月1日から平成28年11月30日まで、平成28年12月1日から平成29年11月30日まで、平成29年12月1日から平成30年11月30日まで及び令和元年12月1日から令和2年11月30日までの各課税事業年度の地方法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、3平成30年12月1日から令和元年11月30日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分(更正をすべき理由がない旨の通知処分を併せ審理)・1全部取消し、一部取消し、2全部取消し、3一部取消し)

令和4年7月1日裁決

《ポイント》
 本事例は、法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対する役員給与について、請求人の代表者が作成した書面に当該取締役の役員報酬として記載された金額は、その算出過程及び書面の作成過程から、当該取締役に対する給与の積算根拠にすぎず、いわゆる形式基準限度額には当たらないと判断した事例である。

《要旨》
 原処分庁は、各取締役が受けるべき報酬の割当額の決定を一任された代表取締役が作成した「取締役の報酬金額に対する決定書」(本件決定書)に記載された報酬金額は、法人税法施行令(令和3年政令第39号による改正前のもの。)第70条《過大な役員給与の額》第1号ロの「金銭の額の限度額」(形式基準限度額)に当たり、法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役(本件取締役)に対しこれを超えて支給された金額は、不相当に高額な役員給与である旨主張する。
 しかしながら、当該代表取締役は、本件取締役に対する役員給与について、取締役分と使用人分を勘案した上で、その合計額を支給額として決定したと認められ、本件決定書に記載された金額は本件取締役に対する給与の額の積算根拠にすぎず、本件取締役の給与に係る形式基準限度額とは認められない。

《参照条文等》
 法人税法第34条第2項
 法人税法施行令第70条第1号

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