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取得価額
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
納付すべき消費税が決算期末において課税売上高及び課税仕入高を集計し算出されることをもって、直ちに消費税に係る経理処理が期末一括税抜経理方式を採用したことにはならないとした事例
請求人は、納付すべき消費税は決算期末において課税期間分の課税売上高及び課税仕入高を集計し算出するのであるから、消費税の経理処理は自動的に期末一括税抜経理方式を採用したことになる旨主張するが、期末一括税抜経理方式とは、法人税の課税所得を計算する際、事業年度末に期中において税込処理した消費税を一括して税抜処理する方式であるところ、納付すべき消費税額を算出したからといって直ちに消費税の経理処理が税抜経理方式となるものではない。
したがって、請求人が消費税の経理処理について税抜経理方式を適用していたとは認められず、また、収益に係る取引につき税込経理している以上、他の科目について税抜経理を行うことは認められないから、固定資産の取得価額が200,000円未満かどうかは税込価額により判断する。
平成4年3月31日裁決
建物の売買契約において、譲受人が負担することとした当該建物に係る譲渡日以降の期間に対応する未経過分の固定資産税に相当する金額は、譲受けに係る資産の購入の代価を構成するものとして建物の取得価額に算入すべきとした事例
《要旨》
請求人は、土地建物の譲渡契約における譲渡日以降の期間に対応する未経過分の固定資産税に相当する金額(未経過固定資産税相当額)を請求人が負担したことについて、未経過固定資産税相当額は、譲り受けた土地建物の取得価額に算入されるが、請求人が減価償却資産として計上している建物は、取得した建物のうち事業の用に供する本件建物のみであるから、本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、繰延資産である開業費に含まれる旨主張する。
しかしながら、固定資産税は、その賦課期日である1月1日現在の所有者に課されるもので、賦課期日後に当該固定資産が譲渡された場合であってもその譲渡前の所有者が納税義務者とされていることから、売買当事者においてその譲渡時点における未経過固定資産税相当額を譲受人に負担させようとする取引慣行は、いわば売買の取引条件の一つとして行われるものであると考えられる。したがって、譲受人が未経過固定資産税相当額を負担することは、租税公課としての固定資産税の負担ではなく、飽くまでも売買の取引条件としての負担であることから、譲受人にとって未経過固定資産税相当額は、譲受けに係る資産の購入の代価を構成するものとして、当該資産の取得価額に含まれることとなる。
そうすると、請求人が譲渡契約において取得の目的としている建物は、本件建物のみであることからすれば、請求人が支払った本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、本件建物の購入の代価の一部として支払ったものと認めるのが相当であるから、その全額を本件建物の取得価額に算入すべきである。
《参照条文等》
法人税法施行令第54条第1項第1号
法人税基本通達7−3−16の2
《参考判決・裁決》
平成20年3月24日裁決(裁決事例集No.75・342頁)
競売により一括で取得した土地及び建物等の取得価額の区分について、固定資産税評価額の比率によってあん分することが相当であるとした事例(
平22.12.1〜平23.11.30の事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、
平22.12.1〜平23.11.30の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・
棄却、
一部取消し・平成27年6月1日裁決)
《要旨》
請求人は、請求人が競売により一括で取得した土地及び建物(本件建物)等の取得価額の区分について、原処分庁が用いた土地及び家屋の固定資産税評価額の比率によってあん分する方法ではなく、請求人が依頼した不動産鑑定士の鑑定評価における土地と建物等の評価額の比率によってあん分し、法人税に係る建物等の減価償却費の額を計算すべきである旨主張する。
しかしながら、鑑定評価による価額を用いたあん分法も一応合理性が認められる方法であるところ、請求人が用いた不動産鑑定士の評価額の計算が本件建物と構造の異なる建物に基づく査定を行っているなど必ずしも合理性のある算出方法となっていない一方、原処分庁が用いた土地及び家屋の固定資産税評価額は、いずれも同一の評価機関により算定されたものであり、かつ、同一時期の時価を反映しているものであることから合理性があるというべきである。よって、固定資産税評価額の比率によってあん分することが相当である。
なお、原処分庁の固定資産税評価額の比率によるあん分は、本件建物に設置されたディスプレイ設備に係る固定資産税評価額に相当する額が含まれていないことから、原処分庁の計算は誤りである。
《参照条文等》
法人税法第31条第1項
一括取得した土地及び建物について、各資産の取得価額等の算定に当たり、不動産鑑定評価における積算価格比によりあん分するのが合理的であるとした事例(
平成30年3月1日から平成31年2月28日まで及び平成31年3月1日から令和2年2月29日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに令和2年3月1日から令和3年2月28日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、
令和2年3月1日から令和3年2月28日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、
平成30年3月1日から平成31年2月28日まで及び平成31年3月1日から令和2年2月29日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・
一部取消し、棄却
一部取消し)
《ポイント》
本事例は、請求人が一括取得した土地及び建物について各資産の取得価額等を算定するに当たり、建物の価値を増加させると認められる改修工事が行われていた建物及びこれと一括取得した土地については、当該価値の増加が反映されていないと認められる固定資産税評価額の比ではなく、不動産鑑定評価における積算価格比によりあん分するのが合理的であると判断した事例である。
《要旨》
請求人は、売買により一括取得した土地及び建物について、まず当該土地の路線価に地積を乗じることにより当該土地の売買代金相当額を算出し、これを売買代金の総額から差し引くことにより当該建物の売買代金相当額を算出する方法(本件差引法)により算出すべきである旨主張する。
しかしながら、本件差引法を用いて土地及び建物の売買代金相当額を区分した場合、土地の売買代金相当額に反映されるべき価額が反映されず、土地の売買代金相当額が客観的な時価に比して低額になる一方、当該価額が建物の売買代金相当額に転嫁され、建物の売買代金相当額が客観的な時価に比して高額になるという看過し難い不均衡が生じるから、本件差引法は合理的とは認められない。
一方、原処分庁は、当該土地及び建物の各売買代金相当額は、土地及び建物の売買代金総額を各資産の固定資産税評価額比によりあん分する方法(固定資産税評価額比あん分法)により算出すべきである旨主張するところ、確かに、固定資産税評価額比は、土地及び建物の価額比を推認する手がかりとして一般的な合理性を有するものであるから、固定資産税評価額比あん分法は、一般的には合理的な算定方法であると認められる。
しかしながら、本件の一部の建物には時価を増加させると認められる改修工事が実施されていたにもかかわらず、当該建物の固定資産税評価額にはこれらの時価の増加が反映されていない。
他方、当該一部の建物及びこれと一括取得された土地について請求人が提出した不動産鑑定評価書における土地及び建物の積算価格の比は、土地及び建物の時価の価額比を推認する手がかりとして一定の合理性が認められる上、改修工事の実施を踏まえたものであり、当該一部の土地・建物については、固定資産税評価額比あん分法よりも当該積算価格比によりあん分する方法を用いることがより合理的であると認められる。
したがって、当該一部の土地・建物については当該積算価格比によりあん分する方法を、他の土地・建物については、固定資産税評価額比あん分法を用いるのが相当である。
《参照条文等》
法人税法施行令第54条
消費税法第30条