リース取引
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
リース会社から割賦で買い受け、同日当該リース会社にリースするとの契約により、当該資産につき、少額減価償却資産として、購入価額の全額を損金算入した経理処理について、これを認めなかった原処分は適法であるとした事例
請求人、リース会社、メーカー、最終使用者における一連の取引は、リース会社が本件物件を最終使用者に賃貸するに当たり、実質的には本件物件を取得することのない請求人を介在させ、請求人において少額減価償却資産の取得価額の一時損金算入の規定を適用し損失の先出しという経済的効果を生じさせることを目的として、請求人が本件物件を取得しこれを賃貸するという法形式を採用することを約して行ったものとみるのが自然で実態に則したものであり、請求人がリース物件を取得し、これを賃貸しているという実態は認められないので、減価償却を認めないとした原処分は適法である。
平成5年12月15日裁決
企業会計上ファイナンスリースは資産の取得を原則としていることから、機械設備に係る減価償却費の損金算入を認めるべきとする請求人の主張に対し、リース契約の内容及び取引の実態から判断すると通常の賃貸借取引に該当するとした事例
請求人は、Q公社とリース契約を締結して使用することとなった大型精密機械について、企業会計上ファイナンスリースは資産の取得を原則としていることから、本件機械設備を自己所有資産とすることにより特別償却を含めた減価償却費の損金算入を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、リース取引の取扱いについては、税法上具体的な規定はないので、基本的には法人税法第22条第4項の規定にのっとり、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って会計処理されるべきであり、税務上リース取引について、これを法形式どおり一般の賃貸借と同様に取り扱うことに課税上の弊害があるものは別として原則的にはその法形式に従って会計処理を行うべきである。
また、ファイナンスリースに係る法人税の取扱いについては、その経済的実質において一般の賃貸借と同様に取り扱うことに課税上の弊害があると認められるものについては売買取引等として取り扱うこととし、昭和53年通達でその処理の統一を図ることとしたものである。
そうすると、本件リース取引について、リース契約の内容及び取引の実態から判断すると、本件機械設備は請求人がQ公社から取得したものではなく通常の賃貸借取引であることが認められ、また、昭和53年通達に定める売買として取り扱うリース取引にも該当しない。
平成10年3月13日裁決
建物附属設備のセール&リースバック取引を金融取引であると認定した事例
請求人は、本件賃貸借契約は20年契約であるが、5年後にK社の関係会社へ譲渡することが可能であるというオプション付であること、6年目以降の賃料が不確定であること及び賃貸借期間終了後に行われる物件の売却価格が不明であることから、賃貸借期間中に支払われる賃料の合計額がフルペイアウト要件を満たすとは明確にいえないと主張する。
しかしながら、本件賃貸借契約に基づき請求人が受領する20年間の賃料の合計額は、「本件資産の購入簿価」とほぼ一致する金額に「20年間の社債利息」及び「社債発行費用償却分」を加えた金額となり、リース物件の取得価額及びその取引に係る付随費用の合計額のおおむね全部を支弁することになる。
また、本件賃貸借契約には、原則として中途解約禁止条項があるものの、仮に、K社が中途で解約する場合には規定損害金を支払うことになっているので、賃料等の総額はリース物件の取得価額及びその取引に係る付随費用の合計額のおおむね全部を支弁することになる。
以上のことから、本件賃貸借契約は、フルペイアウトに該当すると認められ、また、中途解約禁止条項が定められていることを併せ考えると、本件賃貸借契約は、リース取引に該当すると認められる。
本件取引は、通常の売買や賃貸借と異なり、K社の保有資産のオフバランス化及び資金調達を目的とした中古資産のセール&リースバック取引であること等から、その経済的実質は売買代金の支払いという形式での金銭の貸付けと賃料の支払いという形式での元利金の返済であると認められ、実質的に金融取引と認められる。
本件各更正処分は、本件取引が税務上金融取引に該当すると認定した上で、消費税等相当額を含めて授受された金額につき貸付金の額並びに返済額及び利息の額を算定しており、その返済額及び利息の額は通常の金融取引における元本と利息の区分計算の方法である元利均等残債方式により算定されていると認められ、この計算は相当と認められる。
平成14年7月9日裁決
請求人の行うリースバック取引が法人税法施行令第136条の3第2項に規定する実質的に金銭の貸借であると認められる一連の取引に該当するとした事例
請求人は、リース業を営むJ社から同社が顧客へリースしている物件をいったん買い取り、当該物件を直ちにJ社へリースする取引及び
試薬品販売業を営むK社から同社がL大学へリースしている物件をいったん買い取り、当該物件を直ちにK社へリースする取引について、このようなリースバック取引を行う当事者の意図はリース取引を行うことであり、当事者にとって合理的かつ効率的な取引で、リースバックする相当な理由があるから、法人税法施行令第136条の3第2項に規定する実質的に金銭の貸借であると認められるリース取引には当たらない旨主張する。
しかしながら、上記リースバック取引に関して、請求人がリースを行っているといえる実態は認められず、一方で、請求人から上記リース会社等にリース物件の購入代金として移転した金銭が当該リース物件のリース料として回収されている実態があるから、本件リースバック取引は、実質的に金銭の貸借であると認められる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
平成18年10月19日裁決
設備の賃借及び転貸はいずれも法人税法上のリース取引に該当し、売買があったものとして処理することが相当とした事例(平成25年1月1日から平成25年12月31日まで、平成26年1月1日から平成26年12月31日まで及び平成27年1月1日から平成27年12月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成25年1月1日から平成25年12月31日まで及び平成26年1月1日から平成26年12月31日までの各課税事業年度の復興特別法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成27年1月1日から平成27年12月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、平成25年1月1日から平成25年12月31日まで、平成26年1月1日から平成26年12月31日まで及び平成27年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成30年8月23日裁決)
《ポイント》
本事例は、請求人が、設備の賃借及び転貸のいずれも賃貸借取引として処理していたことに対し、原処分庁は、設備の賃借を売買取引、転貸を賃貸借取引として原処分を行ったところ、審判所は、いずれも売買取引として処理すべきとした上で、延払基準の方法により収益の額及び費用の額を計算するのが相当であるとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人による設備(本件リース資産)を賃借する取引(本件リース取引)は、法人税法第64条の2《リース取引に係る所得の金額の計算》第3項に規定するリース取引(法人税法上のリース取引)に該当する旨主張する。確かに、本件リース取引は、資産の賃貸借であり、中途解約禁止要件及びフルペイアウト要件のいずれも充足し法人税法上のリース取引に該当するものと認められるが、請求人は、さらに本件リース資産を本件リース取引とほぼ同条件で転リースしていることから、当該転リース取引についても同様に法人税法上のリース取引に該当するものと認められる。よって、本件リース取引のみならず、当該転リース取引についても売買があったものとして処理することが相当であり、当該転リース取引に係る収益の額及び費用の額は、法人税基本通達2−4−2の2《売買があったものとされたリース取引》の定めにより、法人税法63条《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》第1項の延払基準の方法により計算した収益の額及び費用の額とし、各事業年度の課税所得を計算することとなる。
《参照条文等》
法人税法(平成30年法律第7号による改正前のもの)第63条第1項、第64条の2第1項、第3項及び第4項
法人税法施行令(平成30年政令第132号による改正前のもの)第124条第1項及び第2項、第131条の2第2項
法人税基本通達(平成30年5月30日付課法2-8による改正前のもの)2-4-2の2